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アンブロシアの種  作者: でれ
第1章
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1-4 愛と理由

1章4話愛と理由

「貴方は私達の宝物」


 穏やかで優しい声が爽やかな風に乗って耳に届く。顔も覚えていない誰かに言われたセリフ、今度は直接見知らぬ少年がそう囁いた。


「なんで……」

「聞き覚えはあるようだね。この言葉は大事な人がくれたのかい?」

「いや、分からないんだ。病院生活が長くて。家族がいたかもしれないけど本当に覚えてないんだ。でもその言葉だけはずっと覚えている。」

「神はね、強く愛されていた君に目をつけたんだ。神々は愛に非常に惹かれる。君に注がれた愛が、新しい人生の切符になったんだ。」

「愛されていた?俺が?」

「人を選ぶ基準は色々あるけれど、神は気まぐれで移ろいやすい。それなのに君を選んだ時はとても嬉しそうだったんだ。タカラくんに掛けられたこの言葉を添えて、私に丁重に扱えと命じた。」

「誰が、誰が言ってくれたか分かるの?」

「そこまで聞いてないね。すまない。」

「いや、いいんだ…」


 強く愛されていたなんて、夢みたいだ。身寄りのないこの俺を愛してくれていた人が居た。その強い愛情で新しい人生を貰えたんだ。縁のない、知らないものだと思っていたのにこの命がここにあるのは愛されていたおかげなのだと分かった。


 それを知って俺は、この新しい命に感謝しなくてはならない。今までできなかったこと、やりたかったことを愛してくれていた誰かへ語り合うために生きなきゃならない。


 初めて感じる生への活力。新しい人生に不安はあるけれど、どちらかと言えば楽しみで仕方ない。


 少年へ振り向くと穏やかな笑みを浮かべて優しい栗色の髪が光に透けて綺麗に見えた。人ならざるものの美しさを感じて俺はこの少年の言っていることを信じるしかないのだ。


「わかった。これ以上あーだこーだ言っても仕方ない。とりあえず俺は生きていて、新しい世界に居て、そして自由に冒険するってことだな。」

「いいね。飲み込んでくれて助かったよ。数日、私は君のそばにいて、この世界での生き方について少しだけ知るお手伝いするよ。全てを知っているけど、何があってどうなるかは君自身が見つけると良い。君には限りない時間がある。怯えずに進むが良い。」


「そう、だな。限りない時間かぁ。大袈裟だけどその通りかもね。」


「大袈裟ではないかもしれないよ。そのうちわかるさ」

「ん?わかった?」


 少年は俺の手を引いて、活気のある声が聞こえる方へと向かう。少し歩くと町が見えた。木造の木がいくつか並び、馬に乗った人、露店、子どもが走り回る道端、少し大きな井戸に並ぶ人たち。賑わっているけどどこか田舎さを感じさせる優しい陽の光が似合う町並み。


「どこいくの?ここは?」

「ここはこの身体の少年が住んでいる町さ。私は身体を借りているだけでこの少年には家族がいる。君も一緒に少しの間住んでもらおう。」

「いや、いくらなんでも息子が連れてきた赤の他人を受け入れないだろ!」

「転生者にはね、ユニークなスキルが神からもらえるんだ。君のはとても面白い。ちょうどいいからその目で確かめると良い。」

「えぇ?スキル?魔法とかの世界ならそれもありえるか…なんかそれがわかる画面とかないの?」

「んーそれについては追々。そのうちわかるさ。」

「そうなの?まぁ、物は試しか」


 村の中心から離れたところだろうか。人数が減り、夕日が木造の家たちを照らす。一つの家の前に着くと、庭が見え、小さな畑と鶏が地面をつっついていた。家を見るとしっかりした木造で、空いている窓には庭に咲いている花と同じ花が花瓶に添えられている。


 少年は何の躊躇いもなくドアに手をかけ、ただいまーと大きく声を出した。その声は俺と喋っていた落ち着いた声と異なり、無邪気に年相応に振る舞う。


「まぁ、ノア!おかえりなさい。」


 足音がして目を向けると優しそうな女性がこちらを出迎える。真っ直ぐにノアと呼ばれた少年に笑顔を向けると、すぐに俺の存在に気づいた。


「あら?お友達…?」

「は、はじめまして、タカラです。」

「タカラさん?はじめまして!うちの子がお世話になっているみたいで」

「母ちゃん、今日からしばらく、数日くらいタカラが泊まりたいんだけどいいかな」

「の、ノア?くん?」

「あらぁそうなの?お友達ならいいわよぉ」

「へ?」

「良かった!僕の部屋で過ごすから!」

「うふふ。友達と一緒でよかったわね。」

「え?へ?」

「狭い家だけど寛いでねぇ」


 女性は笑顔で迎え入れてくれて、そのまま夕飯もうすぐよとだけ言ってキッチンへ向かっていく。唖然としているとノアは俺の手を引いて一つの部屋へと案内してくれた。

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