36.犯人を捕まえろ
翌日、犯人を捕まえるため、私たちは作戦を実行した。まず、何食わぬ顔でダンジョンに入り、初心者の森に入って行く。
メンバーはもちろん、いつものメンバーだけ。同ギルドの大人の力は借りない。だって、そうしたら犯人がおびき出せないかもしれないから。だから、私たちだけでやるしかなかった。
初心者の森に広がって、いつも通りに採取と魔物討伐を行う。普通を装うための下準備だ。
犯人は私たちが採取した素材や魔石を狙っているから、襲ってくるなら夕方間近になってからだ。その時間まで私たちはいつも通りに過ごした。
そして、夕方間近になると、私は探索魔法で森の様子を探る。今から森に入ってくる冒険者がいないか確認するためだ。
もし、今は入ってくる冒険者がいれば、それは犯人で間違いない。逃さないように、徹底的に調べ上げた。
「リマ、どう? 誰かいる?」
「まだいないみたいだけど……あっ!」
探索魔法をかけていると、反応があった。森の入り口から十人程度の冒険者入ってきた。どうやら、犯人と思われる冒険者を釣れたみたいだ。
私は思念魔法でメンバーに意思を伝える。
(今、森に犯人と思われる冒険者が入ってきました。各自、所定の位置についてください)
そう伝えると、探索魔法に反応があった。ばらばらに散らばっていた子供たちが距離を縮め始める。誰が襲われてもいいように、すぐに駆けつけれるようにするためだ。
私も犯人の動向を伺いながら、みんなとの距離を詰めた。そして、犯人と思われる反応が一グループに急接近しているのが分かった。それはメイルスとピエネッタのグループだった。
(メイルスとピエネッタの所に犯人が近づいていきます。接触まであと数分です)
それから、他のグループに具体的な位置を知らせ、距離を縮めさせる。すると、二人に接敵する直前には、周囲に子供冒険者のグループが取り囲む状態になった。
これで、あとは現場を取り押さえるだけだ。私は急いで、二人の下へと向かっていった。
そして、二人が犯人たちと接触する。二つのグループが立ち止まり、動かなくなった。周囲にいる子供たちのグループが至近距離まで詰めてきた。
しばらく膠着状態だったが、ピクリと犯人たちが動き出すと、一斉に子供冒険者のグループが襲い掛かった。
どうやら、決定的な場面になったみたいだ。その場所はごちゃごちゃになって、探索魔法でもよく分からない状況になっている。
私は急いで現場に駆けつけた。近づくと、争う声が聞こえてきた。木々を抜け、その場にようやくたどり着いた。
「くそっ! こいつら!」
「切り殺すぞ!」
「やっちまおう!」
犯人たちが襲い掛かってくる、子供たちに向かって剣を抜き去った。
「危ない!」
だけど、魔法は打てない。子供冒険者に当たるからだ。こんな時は、どうしたら!
「リマ! 付与魔法があるよ! それで、子供たちを強化するんだ!」
「分かった!」
付与魔法を頭に思い浮かべると、記憶が溢れ出してきた。使い方は――。
「みんなに魔法をかけます!」
魔力を高め、付与魔法を発動させた。体が強化され、身体能力が上がる魔法だ。それを、子供冒険者全員にかけた。
すると――。
「すげぇ! 体がめちゃくちゃ動く!」
「凄く強くなった!」
「これだったら、いける!」
子供冒険者の動きが機敏になった。大人顔負けのスピードを出し、大人の力にも負けないパワーだ。
子供冒険者が一斉に飛び掛かると、犯人たちは押され始めた。
「なんだ、これ!? こいつら、強いぞ!」
「くそっ! どうにかしろ!」
「魔法だ! 魔法を使え!」
その言葉に一人の犯人が杖を構えた。詠唱を始め、魔法を放つ気だ。このままだと子供冒険者に直撃してしまう。
何か、良い魔法は……結界の魔法? よし、この魔法を――!
魔力を高め、結界の魔法を発動させる。発動させる場所は――詠唱している犯人の周り。
すると、詠唱をしている犯人は結界の中に閉じ込められた。その瞬間、中で魔法が放たれる。
凄まじい風が吹き荒れ、結界の中にいた犯人は切り刻まれ、その場に力なく倒れ込んだ。
「みんな、今です!」
声を上げると、強化された子供冒険者が一斉に犯人に飛び掛かる。人数はこちらが多いため、手の数が足りない犯人たちはタコ殴りにされている。
その攻勢を止められなかった犯人は立っていられず、地面に倒れ伏した。そこへ子供冒険者の強烈な一撃が入り、犯人たちは完全に沈黙した。
「よし! 犯人をやっつけたぞ!」
「やったー!」
「俺たちでも出来るんだな!」
動かなくなった犯人を見て、子供冒険者は喜びの声を上げた。みんなで手を重ね合わせて、勝利を祝っている。私もその輪に加わり、みんなから感謝された。
「リマの魔法、すげーな! お陰で助かったよ!」
「南ギルド一の魔法使いだよね!」
「リマがいてくれて良かったー!」
そんな声が聞こえてきて、なんだか恥ずかしくなってしまった。一人で照れていると、メイルスが犯人に近づく。
「犯人の顔を晒そう」
そう言って、覆面を取ると――。
「あっ、こいつ!」
メイルスの声はまるで知っているかのようなものだった。気になって顔を覗いてみると――以前、ギルドに強引に勧誘してきた冒険者だった。




