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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第四章

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35/39

35.狙われている

「やっぱり、初心者の森だよな! 草原の倍以上も稼げる!」


「久しぶりにいっぱい手に入ったから良かったよー」


「俺なんてこんなにだぞ!」


 冒険者ギルドに戻ると、子供冒険者たちが上機嫌で自分たちの取ってきたものを見せあっていた。その光景は久しぶりに見た、嬉しい光景。思わず私もその輪に加わる。


「私もいっぱい取れました」


「リマもか! 相変わらず薬草の量がえぐいな」


「じゃあ、今度一緒に森に行こうよ!」


 みんなで会話をして、盛り上がる。それだけで、今までの不安が消し飛ぶようだった。


「やぁ、みんなの帰ってきたの?」


「あっ、メイルス! 問題ありませんでした?」


「初心者狩りに合わなかったから、以前と変わりない稼ぎになると思う」


 どうやら、メイルスたちも普通に採取と魔物討伐が出来たらしい。二人の喜んだ顔を見て、私はホッとした。


 これでいつも通りに戻れる。そう思っていると――また子供冒険者がギルドの中に入ってくる。


 その姿を見て、私たちは息を呑み込んだ。服が皺だらけで、顔にあおたんが出来ていた。まるで、何者かに襲われたような姿だった。


「どうした!? 魔物にやられたのか!?」


 私たちはワッとなって、その子たちを取り囲んだ。すると、その子たちは力なくその場に座り込み、今にも泣きそうな顔をした。


「……初心者狩りに合った」


 重い言葉に空気が張り詰める。


「集団で囲まれて、出すもの出さなきゃ痛い目見るぞって言われて……抵抗したら……」


「……全部取られた。魔石も薬草も全部……」


「せっかく、集めたものだったのに……」


 初心者狩りに合った子供たちは悔しそうに顔を歪めた。もう大丈夫だと思っていたのに、初心者狩りに合うとは思わなかったみたいだ。


「まず、その怪我を治すのがいいと思います。私のポーションを使ってください」


「だけど、それはリマの物じゃ……」


「仲間が傷だらけになっているのに、見過ごすことは出来ません」


 私はリュックから取り出す振りをして、空間収納からポーションを取り出した。


「……だったら、まずこの怪我をギルドの人に見せるよ。それからでもいい?」


 そうか、まず報告をしなくちゃいけない。私はポーションを引っ込めて、みんなでカウンターに駆け寄った。


「お姉さん! また、初心者狩りにあったって!」


「それは本当!?」


 それから、襲われた子供たちはお姉さんに報告をした。すると、お姉さんは深刻そうな顔をする。


「まさか、初心者の森に行った途端に襲われるだなんて……。私たちの詰め甘かったわ、ごめんなさい」


「お姉さんやギルドが悪いわけじゃないです。この時を狙っていた犯人が悪いと思います」


「……やっぱり、狙っているよね」


「他のギルドでは報告がなかったのに、どうしてウチらだけ……」


 犯人の動きはあからさまだった。私たちがいないとわかると、姿を見せず。私たちが初心者の森に行くと、すぐに狙ってくる。


 これは私たちを狙っている動きだ。


「次は絶対に捕まえるわ。だから、しばらくは森に近づかない方がいいわ」


「……でも、それだと同じことの繰り返しになります。大人の冒険者が初心者の森に入るのを見られると、犯人は絶対に現れません」


 この動きを見て分かった。犯人はこちらの動きを見ている。それで、行動するべきか否かを判断している。


 これは完全に私たちを狙った動きだ。


「でも、それだと……捕まえる手段がないわ」


 お姉さんはそういうが、多分本当は気づいている。私たちを狙っているって言うことが分かっているんだから、私たちを囮にすればいい。


 だけど、それを言わないのは、きっと私たちを身を心配してくれているからだ。他の子たちもそれが分かっているのか、口ごもっている。


 早く解決しないと、みんなの生活が危ない。みんな事情があって危ない冒険者稼業をしている。だから、稼がなければいけない。


「……また草原で?」


「でも、あんまり稼げないし……」


「どうしよう……一日で3000デルは稼がないといけないのに」


 生活がかかっているのに、思うように稼げないのはとても辛い。その気持ち、痛いほど分かる。


 追い詰められると、危険を冒すしかない。そうすると、失敗した時に怪我では済まなくなる可能性だってある。


 仲良くしてくれた子供たちをそんな危険に晒すわけには行かない。私はギュッと手を握ると、お姉さんに訴えた。


「だったら、私が犯人を捕まえます」


「えっ? リマちゃんが? そんなの危険よ!」


「おい、リマ! 正気か!?」


「相手は大人の冒険者がいっぱいなんだぞ!」


 私の言葉に周りは騒然となった。それもそうだろう。一人で多数の冒険者を捕まえようとしているのだから。


「大丈夫です。私には魔法が使えます。その魔法でやっつけます」


「リマちゃんの魔法が凄いっていうのは、みんなから聞いているけれど……。それでも危ないわよ」


「でも、このままだと私たちの生活が成り立たなくなります。だから、誰かがどうにかしなければなりません」


 私にはおじいさんから引き継いだ力がある。それを使えば、きっと多数の冒険者でも勝てる。


 だけど、どれだけの力を持っているから分からない周りは私を止めようとした。だけど、私は頑なに自分が捕まえると訴えた。


 すると、周りがシンと静まり返った。その時、メイリスが声を上げる。


「リマだけにやらせるのは違うと思う。だから、私も協力する」


「私も! 私も協力するよ!」


「メイリス……ピエネッタ……」


 危険を承知で姉妹が名乗り出てくれた。すると、周りの様子が変わる。


「リマだけに危険な目には合わせない! 俺も捕まえる!」


「みんなでやれば怖くない! 絶対に出来る!」


「やってやろうぜ!」


 姉妹に言葉に感化された子供冒険者たちが一斉に声を上げる。こんなにも協力してくれる子供たちがいる。そのことに胸がジンと熱くなる。


 スラムでは絶対にこんなことが起きなかった。だけど、今は――。


「みんな、ありがとうございます。絶対に捕まえましょう」

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― 新着の感想 ―
リマの全力で証拠も何もかも消滅…
リマ、覚悟を決めたんだね。やる以上は徹底的に。 二度と同じ事をする気にならないように、徹底的に叩き潰す事。 みんなで相談して、できる限り準備は行おう。 じいじは、ワクワクしてきたぞ!
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