33.異変
「やぁ、リマ! 明日は空いてる?」
「すいません。明日は家でポーション作りをしたいので」
「そっか。だったら、また今度時間が合ったら一緒に行こうよ」
「はい。お願いします」
冒険者ギルドで換金をしていると、子供冒険者に誘われた。丁寧に断ると、その子供冒険者は納得したように離れていった。
「あっ、リマじゃん。オッス! 明日、空いている?」
「すいません。明日はポーション作りを……」
「ん、分かった。今度時間が出来たら付き合ってよ」
「はい」
ダンジョンから帰ってくる子供冒険者たちに次々と声をかけられる。その後に帰ってきた子供冒険者にも声をかけられ、冒険者ギルドは賑やかな声が響いた。
あれからしばらく、一緒のギルドの子供たちとダンジョンに潜ったりした。どの子も良い子たちばかりで、問題もなく、それどころか良いことばかりだった。
みんなが率先して協力してくれるお陰で、魔物討伐はスムーズ。薬草採取も捗り。一人で活動するよりも、とても有意義な事ばかり起きていた。
積極的な子もいれば、じっくりと考えながら行動する子もいる。でも、どんな子だって、ちゃんと相手を思いやる気持ちを持って接してくれた。
だから、とても過ごしやすかった。スラムでは感じたことのない安心感に、これは夢ではないかと思ったくらいだ。
姉妹が繋いでくれた関係は大きくなり、南ギルド内にいる子供冒険者と全員顔見知りになり、みんなと一緒にダンジョンに潜ることが出来ていた。
仲間が増えるだけで、こんなにも心が軽くなるなんて思ってもみなかった。なんで私は一人で頑張っていたんだろう、そう思ってしまうほどに。
もう少し早く、一歩を踏み出していたら、また状況が変わっていたのだろうか? そう思うが、今となってはどうすることも出来ない。
「なぁ、リマ。ちょっと買い食いしていかないか?」
「いいですね、行きましょう」
「ちょっと待てよ! 俺たちも行くから!」
一人の提案で色んな子供が乗っかる。すると、ばらばらだった子供たちがひと固まりになって、とても賑やかになった。
その輪に入っていた時、また扉が開いて子供冒険者がやってきた。それは、あの姉妹冒険者だった。
「あっ。メイルスにピエネッタ! 帰ってきたんですね!」
久しぶりに見た姉妹に嬉しくなって駆け寄る。二人は俯いていた顔を上げると、とても苦し気に顔を歪めていた。
「えっ……。どうしたんですか?」
「……酷い目にあってきた」
「うぅ……」
その様子に心が冷えた。メイルスは苦しそうに顔を歪め、ピエネッタは涙を堪えていたからだ。
その尋常ではない様子に、周りにいた子供冒険者たちが集まってきた。
「二人とも、どうした!? 強い魔物でも会ったのか!?」
「……いいや、違う」
体を見たところ、大きな怪我はなさそうだった。そしたら、どんな目にあっというのだろうか?
「初心者狩りにあった」
その言葉に空気は張り詰め、みんながざわついた。その言葉の意味は知らなくてもなんとなく分かってしまう。
「初心者の森で顔を隠した大人がいて、集めたものを出さないと痛い目に見るぞって言われて……」
「……今日の収穫、全部取られちゃった」
そう言うと、メイルスは悔しそうに俯き、ピエネッタの目からは涙がこぼれた。
初心者の森には、冒険者になって日の浅い者しかいない。冒険者の中で一番底辺な存在だ。上の冒険者には逆らえない存在だ。それを狙ってきた。
上の冒険者に囲まれれば、言うことを聞かなくてはならない。それが、自分の命を守る最善の手だ。
逆らえない相手を狙う、本当に最低な手段だ。
「二人とも……大丈夫ですか?」
「……あぁ、怪我はしてないからそこは大丈夫。だけど、これからの活動がしづらくなるかも」
「まさか、初心者狩りが続くってことか?」
「……うん、そんなことを言ってた」
この一度だけじゃない、また続いていく。その言葉に子供冒険者たちはざわめいた。
「どうする!? しばらく、初心者の森に行かない方がいいか?」
「だけど、いついなくなるか分からないよ。それを待つのは……」
「ここは冒険者ギルドに助けを求めようよ!」
それが一番いい解決方法かも。私たちは頷き合い、カウンターに集まった。
「あら? みんな、どうしたの?」
驚いていたお姉さんに事情を話すと、とても深刻そうな顔をした。
「しばらくは出ていなかったけれど、状況が変わったみたいね。話し合ってみるから、明日は初心者の森には近づかないで頂戴」
どうやら、対策してくれるみたいだ。とても親切な冒険者ギルドで本当に良かった。
私たちは安堵の顔をして、カウンターを離れた。
「これで問題解決すればいいですね」
「出来れば、今日襲ってきたやつらを捕まえて欲しいね」
「きっと捕まえてくれるだろう」
私たちは安心して、冒険者ギルドを離れていった。きっと、冒険者ギルドがなんとかしてくれる。そう思っていた。
だから、この件が長引くなんて、この時は全然思ってもみなかった。




