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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第四章

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31.仲間になれるように

「あった、あった! 薬草、あったよー!」


 ピエネッタの声に顔を上げて振り向くと、薬草を手に取って飛び跳ねていた。


「ふふん! 私でもちゃんと薬草見つけられるんだからね!」


「そう言って、今日初めて見つけたじゃない。もっと、注意深く見ないと」


「だって、飽きるんだもん! 魔物討伐の方が面白いよ!」


 そんな明るい話し声が聞こえると、自然と笑える。誰かと一緒にいて、こんなに笑えるなんて思わなかった。


「良かったですね、ピエネッタ」


「リマに薬草の探し方のコツ、聞いたら? リマが一番見つけているよ」


「私は私のやり方があるの!」


 今まで一人で採取していた静けさが嘘のように明るい。人数が多いと、ここまで賑やかになるなんて驚きだ。


 お陰でただの仕事だった採取と魔物討伐が違って見えてくる。淡々とこなしていたけれど、誰かがいると頑張ろうっていう気になれた。


「そろそろ、帰りませんか? これ以上いると、夕方になってしまいます」


「そうね、頃合いかも。無理はせずに帰りましょう」


「じゃあ、帰り道は魔物討伐ね! ちょっとでも稼がないと!」


「だったら、薬草探しをもっと頑張ってくれたらいいのに」


「あー、あー! 聞こえない、聞こえない!」


 メイリスの小言には、ピエネッタは耳をふさいで応戦した。そんな微笑ましい姉妹の様子を見ているだけで、癒やされている自分がいる。


 そうして、薬草採取もほどほどで終わらせると、出口に向かって歩き出した。ピエネッタが魔物討伐をしたいということで、探索魔法を使って魔物を探し出す。


「えへへ。リマ、ありがとう!」


「ピエネッタに付き合わせちゃって、ごめんね」


「いえ、いいんですよ。私も役に立ちたいですし」


 以前の私なら利用されないように力を制御しないと、そう思っていた。だけど、今は違う。何かの役に立ちたい、そう思い始めていた。


 これが、信じるってことなのかな? 今まで裏切られると思って信じてこなかったけれど、私が信じてなかったから裏切られていたのかもしれない。


「あっ、そろそろ魔物が出てきますよ」


「よし! じゃあ、リマが先制攻撃ね! 次に私たちが行くから! お姉ちゃん、頼んだよ!」


「はいはい」


 少しずつでも信じていこう。そしたら、普通の仲間が出来るかもしれない。


 ◇


「リマ、今日は一緒に来てくれてありがとう。お陰で、いつもよりも報酬が高かったわ」


「リマって凄いね! 魔法が得意だから、色んな事で助かっちゃった!」


「私も、一人よりも行動しやすかったです。ありがとうございました」


 冒険者ギルドの帰り、私たちは手にした報酬の多さに笑顔だった。誰かがいるだけで、こんなにも楽しくて、こんなにも結果が出るなんて思わなかった。


「どう? 私たちとの冒険も悪くないでしょ?」


「少しは信用してくれるようになった?」


 その言葉にドキリとした。私の心なんて、とうに見透かしていたのかもしれない。


「……はい。今日一日で、お二人が信用出来る人だっていうのが分かりました」


「えへへ。やったね、お姉ちゃん!」


「そうね」


 私の言葉に姉妹はとても嬉しそうにはにかんだ。


「色々と事情があるのはお互い様だから、無理にとは言わないけれど。これからも、一緒にダンジョンに行って欲しいな」


「私たちじゃなくて、他の子たちも同じ気持ちだよ!」


「……はい。私から一歩踏み出していこうと思います」


「その意気」


「ねー」


 二人の温かい言葉を聞いていると、不思議と勇気が湧いてきた。今まで私は、裏切られるのが怖くて誰も信じようとしなかった。


 でも、変わりたいと思うなら待っているだけじゃ駄目だ。仲間が欲しいなら、自分から踏み出さないといけない。


 少しずつでも信じる努力をしていこう。そんな前向きな気持ちが胸の中に芽生えていた。


「じゃあね、リマ」


「また誘うからね! リマも誘って!」


「はい、ありがとうございます」


 二人に手を振って別れると、その場を後にする。すると、ずっと傍にいてきれたエルリカが肩に乗ってきた。


「リマ、この一日で大分成長したね! 人との距離が近くなったよ!」


「そ、そうかな……。ちゃんと普通に出来ていた?」


「うん、うん。普通だったよ。よく頑張ったね」


 そう言って、エルリカは頬に頭をこすり付けて褒めてくれた。


 人を信じるのは怖いことだと思っていた。裏切られたら傷付くし、利用されたら苦しくなるから。


 だけど、誰も信じなければ、一人のまま何も変わらないのだと気付いた。メイルスとピエネッタは、私の力じゃなくて私自身を見てくれた。


 だから私も、この人たちを信じてみたいと思えた。きっと信じるというのは、相手を疑わないことじゃない。


 怖くても一歩近付いてみることなんだと思う。今日の私は、その一歩を踏み出せた気がした。


「リマ、明日も頑張ろう!」


「うん!」


 晴れ晴れとした気持ちで箱庭へと戻っていった。

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