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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第四章

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30.協力

 ビクビクしながら姉妹を見ていると、ピエネッタの目が輝きだした。


「すっごーい! お姉ちゃん、今の見た!? 一瞬でゴブリンをやっつけちゃったよ!」


 興奮気味でメイルスに訴えかけると、その声にようやくメイルスは我に返った。


「う、うん……。魔法って見たことなかったけど、こんなに凄いものだったんだね」


「ね! シュッていって、ドカーンッだったもん! めちゃくちゃ強いんだね」


 ど、どうしよう! なんか凄い力を持っているって思われちゃった!? 普通じゃないって思われちゃった!?


「えっと、あのっ、あれは、その……はりきって凄い力が出ちゃったんです! だから、いつもはもうちょっと弱いですよ! そんなに怖くないですよ!」


 と、とにかく! そんなに強くないことをアピールしないと! 私は普通、私は普通!


「怖いとかは思ってないけど、凄く強いなとは思ったよ。だって、一瞬で五体のゴブリンを倒しちゃったんだから」


「うっ!」


「そんなに謙遜しなくてもいいよ。リマの実力が見えて、安心したよ。リマもちゃんと戦えるんだって」


「そうそう! リマの姿を見ていると、本当に戦えるの? って、不安だったし」


「そ、そうなんですか……」


 ということは、力を見せて正解だったってこと? でも、力を見せすぎると、利用される可能性も……。


「でも、私たちの実力を見せれなかったのは残念だったね。これでも、結構戦えるんだから」


「だから、今度は私たちにやらせてね。リマにも私たちの力を知ってもらいたいし」


「は、はい……」


 ……利用されない? それどころか、力を見せてくれる? 対等ってこういうことなのかな……。スラムとは全然違う……。


 姉妹の様子を見て、戸惑いを感じつつも、どこかホッとした気持ちだった。力を求めているんじゃない、そう思わせてくれるものだった。


 ◇


 ゴブリンの体から魔石を取り出すと、また森を進み始めた。


「リマの探索魔法って使えるの? それで、魔物の位置とか分かる?」


「はい、大体なら……」


「だったら、探索してくれない? そしたら、探す手間が省けるし」


 その言葉に私は頷き、探索魔法を発動させた。すると、近くに魔物の気配がした。


「あっちにいるみたいです」


「ありがとう。リマがせっかく見つけてくれたんだから、今度は私たちの出番ね」


「うん! リマ、見てて。私たちで魔物を倒しちゃうんだから! 信じてね!」


 ほ、本当に見ているだけでいいの? 援護とかしなくてもいいの? 便利なら使った方が良いと思うけど……。


 そんな考えがよぎるが、もしかしたら私の考え方が普通ではないような気がしてきた。信じていないから、こんな風に思ってしまうのだろうか?


 だったら、私はやることは、信じること。この二人が魔物を倒すって信じて、見守ることが必要なのかもしれない。


「あっ、いたよ!」


 ピエネッタの声に我に返ると、視線を向ける。すると、木々の隙間からゴブリンの姿を発見した。


「じゃあ、ピエネッタ。いつも通り、ね」


「うん、任せて。リマ、見ていてね!」


「あっ……」


 二人は武器を構えると、駆け出して行ってしまった。手を出したい気持ちをぐっとこらえて、二人を見守る。


 木々の間を抜けた先には、三体ほどのゴブリンがいた。ゴブリンたちは突然現れた人影に気付き、ギャギャッと声を上げる。


 その瞬間、先頭を走っていたメイルスが地面を蹴った。


「はあっ!」


 鋭い踏み込みと共に槍を突き出す。穂先が一体の胸に突き刺さり、ゴブリンが悲鳴を上げた。


 しかし、それだけでは終わらない。メイルスは槍を引き抜くと、そのまま大きく横薙ぎに振るった。


 ブンッという風切り音。長い槍の柄が隣にいたゴブリンの胴体に叩きつけられた。


「ギャッ!?」


 吹き飛ばされたゴブリンが地面を転がる。


「今だよ!」


「うん!」


 すぐ後ろから飛び出したピエネッタが剣を構えた。倒れたゴブリンに向かって一直線に駆ける。


「えいっ!」


 短い気合いと共に剣を突き下ろした。


 ザシュッ。


 刃がゴブリンの胸を貫く。ゴブリンはびくりと身体を震わせ、そのまま動かなくなった。


「やった!」


 けれど喜ぶ暇はない。残ったゴブリンたちが二人へ襲い掛かる。その前に再びメイルスが前へ出た。


「ピエネッタ!」


「任せて!」


 息の合った返事。メイルスは槍を大きく振り回した。長いリーチを活かした一撃が、突っ込んできたゴブリンの肩へ命中する。


「ギャアッ!」


 勢いよく弾き飛ばされたゴブリンが地面へ倒れ込む。そこへピエネッタが駆け寄った。


「ていっ!」


 剣を突き出し、とどめを刺す。さらにもう一体。


 メイルスの槍が唸りを上げる。今度は槍の石突きがゴブリンの腹にめり込んだ。


「ギッ!?」


 苦しそうな声を上げて膝をつくゴブリン。


 その隙を逃さず、ピエネッタの剣が首元へ突き立った。あっという間に三体を倒してしまった。


 森の中に静寂が戻る。私は思わず目をぱちぱちと瞬かせた。


「す、凄い……」


 メイルスは倒れたゴブリンから槍を引き抜き、ふぅと息を吐く。ピエネッタも剣を振って血を払うと、満面の笑みでこちらを振り返った。


「どうだった!?」


「えっ、あっ、その……」


 本当に見ているだけで終わってしまった。二人とも危なげなく戦っていたし、連携もぴったりだった。


「すごく強かったです……」


「えへへー♪」


 ピエネッタが嬉しそうに胸を張る。一方でメイルスは少し照れたように笑った。


「これで分かったでしょ? 私たちもちゃんと戦えるんだよ」


「だから、リマだけが頑張る必要はないんだよ。みんなで協力しようってこと!」


「え?」


「だって、リマ……一人でやろうとしていたでしょ? せっかく、仲間がいるんだし頼ってもらわなきゃ」


 もしかして、私の不安に気づいていた? だから、二人は自分たちでも出来るってことを証明したかった?


 ……どうやら、私の考えが間違っていたみたい。この二人は私のことをちゃんと考えてくれている。だから、信じなきゃダメだったんだ。


 利用するとかの話しじゃない。協力できるかって話しだ。今まで協力したことなんてなかったから、どうすればいいのか分からない。だから、少しずつ出来るようにならなくっちゃ。


「二人が戦えるのは分かりました。だから、これからは協力しましょう」


「そうこなくっちゃ! さて、薬草探しもやらなくちゃね」


「薬草探し、めんどくさーい! 魔物と戦っている方が楽!」


 ピエネッタの言葉に私たちは笑い合った。一緒に冒険するのも悪くない。

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