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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第四章

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29.姉妹とのダンジョン

 ダンジョンがある建物の中。一人で席に座って、姉妹を待つ。今日は初めての他の人と一緒にダンジョンに潜る日。


「ねぇ、エルリカ。何かおかしいところはない?」


「全然ないよ! 今日も可愛いよ!」


「話しかとか平気かな……。嫌な事とか言わないかな……」


「丁寧な口調を止めたらいいんじゃない? 今のように話せると、距離がグッと縮まって仲良くなれるかも」


 不安な気持ちをエルリカに伝えると、明るい返事が返ってくる。そうできればいいのだが、緊張して出来る気がしない。


「困ったことがあったら、リマの魔法で即解決! そしたら、見直されてもっと仲良くなれるよ! 力を見せればいいんだ!」


「いや、それはちょっと……」


 力を見せると、引かれるかもしれない。何でこんな子供が、こんな力を持っているんだって。そうなると、せっかく出来た繋がりが消えてしまうかもしれない。


「控えめに使って、ほどほどに活躍して、それで仲良くなれれば……」


「もう、リマは謙虚なんだから。それだと、仲良くできるものも出来ないよ」


 エルリカが怒ったように尻尾で頬を叩いてきた。正直、どんな距離感で仲良くしていけばいいのか分からないから、どうしたら分からない。


 積極的にいって引かれた嫌だなとか、控えめにして面白くないって思われるのも嫌だとか。いい塩梅が見つからない。


「おーい、リマ! おまたせ!」


 すると、メイルスの声がした。顔を上げると、メイルスとピエネッタがやってきた。


「リマ、おまたせ! ちゃんと来てくれたね! よしよし!」


「それはどういう意味ですか?」


「だって、リマの様子を見ていると、怖くなって来ないかと思っちゃった!」


 うっ、私の印象ってそういうのなんだ。もう少し、明るくした方がいいのかな?


「ふふっ、それだけピエネッタはリマと一緒に行くのを楽しみにしていたんだよ」


「お姉ちゃん、それは言わないで!」


「さぁ、行こうか」


 楽しみにしてくれた? その言葉に心が少しだけ軽くなった。


 メイルスが先頭に進むと、その後を私たちが追っていく。


「今日は三人いるから、初心者の森の奥へ行っても大丈夫じゃない?」


「それは、ちゃんと連係が取れてからにしよう。いきなり奥へ行っても、連係が取れなくなったら困るから」


「もう、お姉ちゃんは慎重なんだから。もっと、がっつり行って、たくさん稼がなくっちゃ! リマはどう思う?」


「わ、私は最初はほどほどがいいです……」


「ほら、みなさい」


「えー、つまんない!」


 ……たくさん話を聞くのは大変だけど、楽しい。これがパーティーっていうもの? エルリカが二人もいる感じがする。


 そうして私たちは光の扉をくぐり、ダンジョンへと入って行った。


「私が槍で、ピエネッタが剣。二人とも近接なんだよね。そこで、遠距離攻撃のリマが加わると……とてもバランスが取れていると思うんだけど」


「魔法使いってあんまり数がいないんだよね。だから、リマがいてくれて本当に助かる!」


 どうやら、バランスが取れたパーティーになっているみたいだ。それに魔法使いの数が少ないから、私の存在だけでもかなり有利になるみたいだ。


 これは頑張らないと。気合を入れていると、初心者の森に近づいた。


「じゃあ、ここからは戦闘態勢ね。それと、薬草探しも忘れずに」


「リマのことは守ってあげるから、安心して!」


「は、はい……。私も精一杯頑張ります」


 姉妹が先頭を歩くと、その後ろを私が続く。森の中を歩き、薬草を見つけながら、少し奥まで進んでいく。


 探索魔法をかけながら進んでいると、近くに魔物の気配がした。


「あの……あっち側に魔物がいるみたいです」


「えっ? そうなの?」


「何で分かるの?」


 姉妹は不思議そうにこちらを見てくる。これは話しても大丈夫な力なのか? 驚かないか? でも、ちゃんと話した方が、いい印象を持たれそうだ。


「えっと、周囲の状況が分かる魔法があるんです」


「そんな魔法があるの? 魔法には詳しくないから分からないけれど、それってとっても便利じゃない?」


「ははーん。だから、リマは一人でもやってこれたんだね。リマは凄い魔法使いだ!」


 ……思ったよりも普通の反応だ。だったら、これくらいの力は問題ないってことか。もう少し、力を見せても大丈夫?


 そんなことを考えながら進んでいくと、木の陰にゴブリンの集団がいた。


「数は……五体ね。ちょっと多いわね」


「いつもだと苦戦しちゃうけど、今日は違うよ。だって、リマがいてくれるんだから!」


「は、はい! 私に任せてください!」


 ようやく、力を示すときがやってきた。どれくらいの威力がいいのか分からないけれど、私が役に立つって二人に示さなくっちゃ。


「じゃあ、魔法の威力、見せてもらうよ」


「ファイトだよ、リマ!」


「はい!」


 私が前に出ると、ゴブリンに向かって手を翳す。威力は抑えて、確実に仕留めるように。あまり目立たないようにもしなくっちゃ。それから、それから……。


「リマ、いいよ」


「っ! はい!」


 その声で現実に引き戻され、高まった魔力を魔法に変えた。そして、手の先から小さな火の玉が出て、一直線にゴブリンに飛んだ。


 着弾した瞬間、小さな爆発が起こり、ゴブリンは全員吹き飛んだ。煙が晴れると、地面にはゴブリンが倒れてピクリとも動かない。


「ふぅ……こんな感じですが」


 そう言って二人を見ると――凄く驚いた顔をしてこっちを見ていた。痛い沈黙が流れている。


 ……もしかして、やりすぎた!?

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