27.勇気の結果
声を出して訴えると、姉妹は呆然としていた。そ、そうだよね……。突然、こんなこと言っても困っちゃうよね。
「えっと、その……最初は一人でやろうと思ったんですけど、心配してくれる人がいて、このままじゃダメだって思ったんですよね。それで、誰か良い人をって探していたんです」
何を話せばいいのか分からず、思ったことを口にしてしまう。気持ちが焦って、どんどん言葉が出ていく。
「でも、どうしたらいいのか分からずに、見ているだけになってしまって。どの人がいいかなんて分からなくて。でも、自分から誘う勇気もなくて……。そうしたら、人助けをきっかけにって思って、人を助けたらこんな結果に……」
まさか、人助けで自分が追い詰められるとは思いもしなかった。それをきっかけにして、仲良くしてくれる人がいてくれれば。そんな甘い考えは早々に打ち切られてしまった。
「その、わ、私……今までほとんど人と関わってこなかったんです」
一度口を開いてしまうと、もう止まらなかった。
「だから、何が正しいのかもよく分からなくて。普通の人がどうやって仲良くなるのかとか、どういう距離感で話せばいいのかとか、そういうの全然知らなくて……。変なことを言ったら嫌われるんじゃないかとか、迷惑なんじゃないかとか、そんなことばっかり考えてしまうんです」
自分でも何を言っているんだろうと思う。だけど、今さら止められない。
「誰かに話しかけようとしても、相手は忙しいかもしれないとか、私なんかに話しかけられても困るんじゃないかとか考えてしまって……。それで結局、何も出来なくなってしまうんです。今回だって、本当はもっと早く相談した方が良かったと思うんですけど、迷惑だったらどうしようって考えていたら、気づいたら時間が経っていて……」
言葉が次から次へと溢れ出す。
「で、でも、このままじゃダメだとも思ったんです! 私、一人じゃ何も出来ないですし、ずっと逃げてばっかりでしたし。だから変わらなくちゃいけないって思って、それで、その……」
ちらりと二人を見る。視線が合った瞬間、恥ずかしさで逃げ出したくなった。
「お、お二人が声をかけてくれたんです」
それだけは、はっきりと言えた。
「私みたいなのに優しくしてくれて、話を聞いてくれて……。それで、その……お二人といる時は、あんまり怖くなかったんです」
胸の前で指をもじもじさせる。
「だから、もしかしたら、この二人となら大丈夫かもしれないって思ったんです。ダンジョンに行くのも、一緒なら何とかなるかもしれないって」
言いながら、自分がどれだけ勝手なことを言っているのか理解していた。
「す、すいません!」
勢いよく頭を下げる。
「勝手に見てました! 値踏みみたいなことしてました! この人なら大丈夫かなとか、この人は怖くないかなとか、そんなことばっかり考えていて!」
顔が熱い。穴があったら入りたい。
「本当に失礼ですよね……。お二人からしたら、そんなつもりで話しかけていたわけじゃないかもしれないのに……」
声がどんどん小さくなる。だけど、最後だけは伝えなければならない。
「でも……今の私には、お二人に頼るしかないんです」
ぎゅっと拳を握って、顔を上げる。不安で胸が押し潰されそうだった。
「だから、その……もし嫌じゃなかったら……私と、時々でいいので、一緒にダンジョンに潜ってもらえませんか?」
そう言い終えた瞬間、再び深々と頭を下げた。恥ずかしさと緊張で、今にも倒れてしまいそうだった。こんなに緊張したのは初めてだ。
姉妹は何も喋らずにいて、それが少し不安になる。おそるおそる顔をあげてみると、二人はぽかんとしていたが、顔を見合わせると笑った。
「リマってすっごい喋るね! 全然喋らないかと思っちゃった!」
「ね、びっくりしたわ。まさか、そんな風に思っていたなんてね」
「あわわっ、すいません! 一方的に話してしまって! い、嫌……でしたか?」
「ううん。よく分かって、安心した」
よ、良かった……気持ち悪がれたりしていなかった。
姉妹は顔を見合わせると、頷き合い、再び私を見た。
「本当はね、リマを見た時は一人で心配だったから、誘おうって思ってたんだよ!」
「だけど、一人で冒険者ギルドに来る子なんて、訳アリじゃない? だから、踏み込まない方がいいと思ったの」
「子供の冒険者ってだけで、何か抱えているのはあるよね。向上心高い子供だったら、他のギルドにいっちゃうしね」
「だから、どうしようかって悩んでいたんだけど……リマから言ってくれて助かったよ」
……迷惑がられていない? それどころか、前から気にかけてくれていた?
それを知ると、体の力が抜けた。
「よ、良かったです……。ずっと、一人だったので……」
「一人で行動するのが嫌だったの?」
「いえ、それにはちょっとした事情があって……。でも、一人で行動するのもなって思って……」
そういうと、姉妹は少し考え込んだ。二人で何かこそこそ話し合うと、メイルスが口を開く。
「だったら、他の子供の冒険者も紹介しようか? 南ギルドの子供の冒険者なら、あいつらみたいに無理やり仲間に引き込もうっていう子はいないよ」
「みんな、ちゃんと良い子だよ! 時々、集まって情報交換もしているんだよ!」
「そ、そうなんですか?」
「一人よりも大勢のほうがいいよ。繋がっていれば、困った時は助けてくれるから」
「そ、それじゃあ……お願いできますか?」
そういうと、姉妹は頷いてくれた。まさか、一気に人と出会うことになるなんて、ビックリだ。
すると、隣のエルリカが私の腕を叩いてくる。振り向くと、「私の言った通りでしょ」と自慢げに鼻息を荒くしていた。
だから、頭を撫でて感謝をした。




