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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第三章

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26.姉妹冒険者

「どう? 少しは落ち着いた?」


「はい、お陰様で」


 ギルドの建物内にある、自由席に座った。人で混雑しているが、誰も話しかけてこない状況に心が落ち着き始めた。


「自己紹介がまだだったわね。私はメイルスで十二歳になるわ。で、この子が――」


「お姉ちゃんばっかり話してずるい! 私はピエネッタ、十歳だよ!」


 落ち着いた様子で自己紹介をするメイルスと元気な様子のピエネッタ。顔がそっくりで見比べていると驚いてしまう。


「あの……私はリマです。十歳になります」


「あっ! 私と同じ! ほら、やっぱり私と同じ年だったんだよ! へへっ、賭けは私の勝ち!」


「今はそんな話しはどうでもいいでしょう? もう、ごめんなさい、気分悪くした?」


「いえ、大丈夫です。でも、いつ賭けたんですか?」


「あー……。あなたが南の冒険者ギルドに通い始めた時からかな?」


 そんな前から?


「あの……そんなに目立ってました?」


「目立ってたよ! だって、子供で一人で冒険者ギルドに通っているんだもん! 訳アリって感じだったよ!」


 やっぱり、一人で通うところは見られていたのか。それに訳アリって……そこまで見抜かれていたなんて。


「まぁ、そんな訳であなたのことは以前から知っていたの」


「でも、一人でダンジョンに潜るのって凄いよね。一人で行って、何でもないって顔で戻ってくるんだから。本当にビックリしちゃったよ」


「えっ」


 一人だったら逆に目立ってたってことか……。私、始めからダメな選択をしていたみたい。これじゃあ、何かあるって思われても仕方がない。


 うぅ、そしたら取っつきづらいって思われていたかもしれない。もっと、誰かと交流を図るべきだった。


「それで、本当にあなた一人で大丈夫なの?」


 その質問にドキリとした。一人でも平気だけど、それってやっぱり異常っていうこと。それを認めてしまえば、私は異常者に見られるかもしれない。


 だけど、ここまで一人でやってきて、一人ではダメでしたっていうと、逆に疑われる。でも、それを否定すると、やっぱり異常者っていうことで……。


「ふふっ、何を悩んでいるの?」


「えっ、ちょっと……今までの自分の行動が変だったかなって……」


「変だったよ! だって、普通は誰かと一緒に行って欲しいってお願いしたりするもん! 一人でなんて無理なんだから!」


「や、やっぱりそうだよね……」


 目立たないようにしていたのに、本当は目立っていただなんて! こ、これじゃあ、余計に一緒に行動しづらくなったよ。


「やっぱり、あなた……訳アリなのね?」


 その言葉にドキリとした。ここはどうするべきか……。ちらりとエルリカを見ると、言えというように強い視線で訴えかけてきた。


「その、本当に訳アリで……。前の町で生きづらくなって、この町に来たんです」


「やっぱりー!? 絶対に他の町から来た子って思ってたよ! 見慣れない顔だったし、慣れていないような気がしたし!」


「その……受け入れがたいですかね」


「そんなことないわよ。この町は元々出入りが激しいから。だから、また新しい人が来たって思っただけ」


 ……そのことについては、そんなに怪しまれていない? よ、良かった……。


「一人は危ないんだから気を付けないと。それこそ、周りがすべて敵だっていう気持ちで立ち向かわなくっちゃ」


「す、すべて敵……」


「そうじゃないと、すぐに奪われて、騙されて、酷い目に合っちゃうんだから。リマみたいな可愛い女の子はすぐに食い物にされちゃうよ!」


「き、気を付けます……」


 これでも気を付けているつもりなんだけど、全然足りない。今回の事でよく分かった。


 その時、エルリカが何度も私の腕を叩いてきた。一体、どうしたんだろう? 視線を向けると、何度も姉妹の方を見ていた。


「ほら、その猫ちゃんも心配しているでしょ。一人は危険だから、止めておいた方がいいと思うけど」


「利用しやすそうだって思われたら最後だよ! 周りにはそんな奴らばっかりなんだから!」


 やっぱり、そうだよね。だったら、これ以上に気を付けていって――と、その時。エルリカが私の腕を噛んだ。


「いたっ! ど、どうしたの!?」


 突然の事で驚いていると、エルリカが私の肩に乗った。そして、耳に口を近づける。


「こら、リマ! ここは、仲間にしてもらうチャンスでしょ! 自分からいかなくてどうするの!?」


 ……そういうチャンスだった? ただ、注意をされているものだと……。


「この二人はリマのことを心配してくれているんだよ! ということは、リマに気があるってこと! ここを攻めないでどうするの!」


 えっ、そうなの!? ……親切にしてくれるってことは、少しでも私のことを気にしてくれているから?


 あんまり人付き合いしてこなかったから、分からないよ。ほ、本当に言ってもいいのかな?


 二人を見ると、緊張してくる。もし、断られたらどうしよう……。ただ、親切にしてくれているだけかも……。


 だけど、ここで逃すと、話すきっかけがなくなってしまうかもしれない。だったら、勇気を出して――!


「あ、あのっ!」


 声を出すと、二人を驚いたようにこちらを見た。緊張して言葉が喉につっかえる。呑み込みそうになるところを、一気に吐き出す。


「わ、私と……一緒にダンジョンに行ってくれませんか!?」

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