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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第三章

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21.まずは下調べ

 丁寧に髪を梳かし、服をしっかり着て、上にローブを羽織る。その姿を鏡の前で確認する。


「ねぇ、エルリカ。おかしいところはない?」


「うん、完璧だよ! どこからどう見ても、可愛い女の子って感じ!」


「もう、そういうことじゃないよ。服装に乱れがないかってこと」


「大丈夫、大丈夫! なんたって、リマは完璧だからね!」


 エルリカが呑気にそういうが、私は気になって仕方がない。それはきっと、私が物乞いだったという負い目があるからだろう。物乞いに見えないように、神経を使っている。


 今日はパーティーに入れてくれる人たちがいるか、確認する日。話しかけた時にもし身なりで嫌な顔をされたら嫌だから、ちゃんとする。


「……うん、良い感じ。これなら、物乞いに見えない」


「もう、リマは慎重なんだから。冒険者なんだから、そんな細かいことを気にする人なんていないよ」


「こういうところをちゃんとしていると、仕事もちゃんとするっていう印象が持たれると思うの。だから、少しでも気を付けないと」


「そうかなー」


 エルリカは納得してないように首を傾げた。


「まぁ、リマが気になるのならいいよ。じゃあ、冒険者ギルドに行こうか」


「うん!」


 そうして、私たちは朝早くから冒険者ギルドに向かうことになった。


 ◇


 朝一で冒険者ギルドに行くと、まばらにしか冒険者がいない。どの冒険者の疲れた顔をしていて、空気は重かった。


 一晩中、ダンジョンに潜っていた冒険者たちだ。ダンジョンが開かれる時間にダンジョンから戻ってきたようだ。


 その冒険者はどれも大人の人で、私よりもランクが高い人。一緒にパーティーを組むにはランクが違いすぎるため、除外だ。


「リマと一緒に冒険してくれる人がいなさそうだね。出直す?」


「ううん、冒険者ギルドで様子を見るの。それで、良い人が来るまで待つ」


「あー、なるほど! ここで出会いを待っていたら出会えるかも!」


「その前に、ボードを確認しよう。もしかしたら、メンバー募集しているかも」


「うんうん、行こう」


 私たちはボードの近くに寄ると、張り紙を確認した。すると、パーティーメンバー募集の張り紙がたくさんあった。


「結構募集しているね。この中で、初心者の森辺りで活動しているパーティーはあるかな?」


「んー……初心者の森はないかも」


「あちゃー、そっか。初心者の森程度じゃ、どうにかなるから募集をしないのかな?」


 それはあり得る話だ。初心者が一人で冒険者になるって、かなり生活が追い詰められていないとない。


 一人で冒険者に鳴るのは難しいから、という理由で知り合いや友達を一緒に冒険者になるっていう流れの方が自然だ。


 子供でも冒険者が危険な仕事だって分かっている。だから、事前に準備をするのが当たり前なのかもしれない。


「パーティー募集はしてないけれど、戦力は欲しいと思うんだよね。だからここは、リマが自分を押し売りに行くのがいいと思うよ」


「押し売り……出来るかな」


「大丈夫! だったら、私がリマが喋っているように喋ろうか? そしたら、どんな人でもイチコロだよ!」


「いや、流石にそれは……」


 エルリカに代わりに話された、どんな展開になるか分からない。ここは私が頑張るべきだろう。


 私たちはカウンターが良く見える席に付くと、冒険者が来るのを待った。狙うのは私と年の変わらないグループだ。


 しばらく、見ていると――子供のグループが入ってきた。みんな軽装といった感じで、いかにも初心者の森に行っている様子だった。


「あのグループとかいいんじゃない? 早速、話しかけてみようよ!」


「う、うん……。でも、パーティーが完成されているように見えるから、私が入れる隙間がないような……」


「そんな怖気づいてどうするの? ここはバンバン話しかけないと!」


 エルリカが応援してくれるけれど、体が動かない。物乞いをしている時とは違う、緊張感がある。こんな緊張感は初めてだ。


 今まで物乞いをしてきたんだから、今更怖気づかないだろうと思っていた。だけど、現実になると心が萎縮した。


 色んな悪い予感が頭をよぎって、体が動かない。ただ見つめるだけで終わってしまう。


「あー……あのグループ行っちゃったよ? リマ、どうしたの?」


「なんか緊張しちゃって……。私なんかがパーティーに入れてくれるのかなって……」


「大丈夫だよ! だって、リマは大賢者の遺産を受け継いでいるんだから。それを見せれば、一発イチコロだね!」


「いや、流石にそれは……」


 エルリカは時々、先を考えない発言をする。その気持ちはありがたいが、やはりここは慎重になってしまう。


「もう、そんなに慎重だと出来るものも出来ないよ? ずっと、一人のままになっちゃう」


「う、うん……」


「だから、ダメもとで話しかける! ダメだったら次に行くだけだから! ね、簡単でしょ?」


 分かる、分かってる。そうするのが、良いって言うことぐらいは。だけど、心が委縮してしまうのだ。


「ほら! 次、来たよ!」


 エルリカの言葉に顔を上げる。すると、扉を開けて子供の入ってきた。女の子で片方が高くて、片方が低い。顔立ちも似ているから、もしかして姉妹?


「女の子だよ。きっと、話しかけやすいよ。ほらほら、リマ!」


 エルリカがテーブルの上でそわそわと動き回る。催促しているのは分かるけれど、中々体が動かない。


 行かなきゃ、でも……。そんな風に萎縮していると、背の高い女の子と目が合った。あっ……、と思ったら体が固まった。


 しばらく、二人で見つめ合う。すると、その女の子が近づいてきた。えっ、ど、どうしよう……!


「ねぇ、あなた」


「は、はい……」


「もしかして、何か用?」


「えっと、その……」


 突然話しかけられて頭が真っ白になった。何か言わないと、何か……。


「し、姉妹かなって思って……」


「やっぱり、珍しい? そう、姉妹で冒険者しているのよ」


「そ、そうなんですね。こ、これでスッキリしました。ありがとうございます」


「分かった。じゃあね」


 そう言って、姉っぽい人は離れていった。すると、嫌な視線が感じる。おそるおそる見てみると、エルリカがジト目でこちらを睨んできた。


「リーマー。凄いチャンスだったじゃん! どうして、パーティーの事を話さないの!?」


「だ、だって……」


「そんなことをしていると、一生一人で冒険者をすることになるよ!」


「うぅ、分かっているって……」


 エルリカの叱責が痛い。その通りだから、反論もしようがない。


「さぁ、あの姉妹を追うよ!」


「……ちょっと待って、勇気が」


「リマ!」


 分かっているんだけど、体が動かないんだよー!

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