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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第三章

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20.繋がりのない自分

「リマちゃん、お疲れ様。今日もたくさん魔物を倒したのね。怪我とかしなかった?」


「はい。魔物討伐に慣れたので怪我はしませんでした」


「それは良かったわ。はい、これ。魔石の換金分ね」


 冒険者ギルドのお姉さんからお金を受け取る。この瞬間がいつも好きだ。自分が頑張った証を貰えているようで、達成感がある。


 だけど、金額を見てみると十分ではない。だから、少しずつ報酬を上げる必要がある。


「あの……今の魔物の量を見て、先に進んでも大丈夫だと思いますか?」


「そうねぇ……。この量の魔物を倒せるのなら、初心者の森の奥へ入っても大丈夫そうよ」


「本当ですか? だったら今度、もっと奥に入ってみます」


 本当はもっと魔物を倒せるのだけれど、突出して目立ってはいけない。だから、周りに怪しまれないように、少しずつ難易度を上げていく。


 そうすれば、私は普通の冒険者に見える。誰も、大賢者の遺産を受け継いだ特別な子には見えないだろう。


「でも、大丈夫かしら。リマちゃんは一人だし、誰かと一緒にパーティーが組めればいいんだけど……」


 心配そうなお姉さんの言葉にドキリとした。もしかして、一人で出来ることを怪しまれている? 何か力があると思われている?


 鼓動が速く鳴った。このまま一人で行動するのは、やはり周りに力を持っていると疑われしまうんじゃ……。


 だったら、偽装するために誰かのパーティーを組む? でも、そのパーティー内で自分の力を見られたら、大騒ぎになってしまうかも。


 もし、本当の力を見せてしまったら、その話しが広まって面倒な人たちに目を付けらえるかもしれない。そうなるのは嫌だ。


 だけど、このまま一人で行動しているのも目立つだろう。まだ、初心者の森だからなんとかなっているけれど、他の所に行こうとすれば一人では力を疑われるかもしれない。


 まだ、私は力のない子供。いや、力はあるんだけど、周囲を唸らせるような実績が浅い。実績がない中で力を見せつけると、良からぬ人を呼び寄せてしまう。


 でも、一人だったら……。


「リマちゃん、どうしたの?」


「あっ、いえ……このまま一人で行動するか、誰かと行動するか悩んでいて……」


「そうねぇ。パーティーを組まずに一人で行動している人はいるわ。だから、一人で行動するのは特別ではないけれど、目立つわね」


 そっか……一人で行動するのは目立つのか。でも、無理にパーティーを組んで、私の力が外に漏れるのは避けたいし。


「ふふっ、悩んでいる?」


「えっと、はい……」


「それだったら、一時的にパーティーを組むっていう選択肢はあるわ。パーティーのお助け役っていう立ち位置で、時々パーティーに参加する。そうやって、稼いでいる人もいるわ」


 なるほど、困った時だけパーティーを組むと選択肢か。うーん、そんなので上手くいくのかなぁ。


 ちらりとエルリカを見ていると、話したくてうずうずしているみたいだ。こういう時はエルリカに相談してみよう。


「ありがとうございます。少し考えてみます」


「えぇ、そうしたらいいわ。少しでもリマちゃんが安全に過ごせるといいんだけど」


 お辞儀をすると、私はエルリカとその場を離れた。


 ◇


「リマ、パーティーどうする?」


 箱庭の家に戻ってきて一休みをしていると、早速エルリカが話しかけてきた。


「信頼できるパーティーに入って、そこでリマが無双の活躍をするっていうのが一番いいと思うんだけどな!」


「い、いやいや……無双の活躍なんて出来ないよ」


「えー、どうして? 信頼できるパーティーなら、リマの力のことを言いふらさないと思うんだけどな」


「それならいいんだけど……。現実はそうは簡単じゃないよ」


 そう、どれだけ信頼しても、事実は漏れてしまう。スラムでもあったことだ。


 大金を拾ったスラムの子がいて、最初はそれを仲間内で隠していた。でも、誰かが漏らしたのか、大金を持っていることがばれてしまった。そして、大人の人に殺されて奪われた……。


 どれだけ信頼していも、事実は漏れてしまう。言葉で漏らすこともあれば、他のことで漏れることもある。それだけ、何かを持っていれば気を付けなければいけない。


「それに、結局私が活躍することになるんだから、注目が集まっちゃうでしょ。どれだけ隠しても、全部は隠せないと思う」


「絶対に漏れない信頼を築けばいいんだよ!」


「……おじいさんだって、大変な目にあったんでしょ?」


「うっ、それは……。まぁ、活躍していたから、目立っちゃったね」


 おじいさんはきっと大変な思いをしていたはずだ。だから、それを受け継いだ私が大変な目に合えば、おじいさんが悲しむと思う。


「パーティーに入っても、ちょっと出来る子くらいが丁度いいよ。無理に活躍しようとはしない」


「じゃあ、パーティーを組むことにするの?」


「まぁ、良い人が入ればの話しなんだけど……。そんな人がいるかどうか……」


 出来ることならパーティーを組みたい。今、私が気兼ねなく話し合える相手はエルリカしかいないから、他に話せる人が欲しくなる。


 普通の生活には普通に友達がいると嬉しい。普通の友達……一体どんな関係になるんだろうか?


 スラムでは友達はいなかった。みんなライバルで、出し抜く相手だったから。気兼ねに話し合える相手なんていなかった。


「みんな、エルリカみたいに親し気ならいいんだけどなぁ……」


「えっ、私……褒められた!?」


「凄く話しやすいし、傍にいて安心するし……」


「えへへー、そうでしょ! 私がリマの一番の親友ってところだね!」


 こんな風に話せる相手が他に出来たら、きっと楽しくなる。もし、そんな人がいたら交流を図ってみよう。そうしたら、友達になれるかもしれない。

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― 新着の感想 ―
一人でできることは限られているから、信頼のできる仲間か、保護者は確かに必要ですね。 ミレナお姉さんのお店の常連冒険者を、紹介してもらうとのはどうだろうか どんな世界でも、義理堅く誠実な人間はいるものだ…
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