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スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~  作者: 鳥助
第二章

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15.調合、そして売り込み

 箱庭の家に帰ってくると、さっそく調合室へと向かった。


「今日の調合はまとめてやるから、昨日のようなビーカーは使わない方がいい。異空間棚にしまってある、中型の釜を使うといいよ」


「へー。色々な道具があるんだね」


 言われた通りに壁際にある棚の前に行く。その棚を開けると、異空間に繋がっているような不思議な光の膜が現れた。そこに手を突っ込み、欲しい物を思い浮かべると、物が取り出せた。


 他にも中型のコンロが必要らしく、それも取り出してくぼみに釜と一緒にセットした。


「じゃあ、後はケンジの知識を使って、記憶通りに調合すればいいよ」


「初めての大量の調合……。上手くいくかな」


「大丈夫。要領は変わらないから。あとは集中してやるだけだよ」


 エルリカの応援に自然と力が入る。一度目に作ったポーションを思い出して、釜に水を入れ、コンロに火をつける。


 そうして煮立ってくると、薬草を入れた。


「よし、ここで錬金術」


「リマ、頑張れー!」


 立てかけてあった長めの錬金棒を手にすると、釜に入れてかき混ぜる。そして、錬金術を発動させた。


 すると、水に薬草の成分が溶けだしていき、色が変わっていく。慎重に、間違いなく、あの時のやり方を思い出しながら調合していく。


 そして、錬金術の手ごたえが無くなった。


「ちゃんと出来たかな?」


「……うん、ちゃんと出来ているよ。そうだ、リマも鑑定すればいいよ。ケンジは鑑定魔法も使ってたよ」


「どんなのが作れたのか見れるの? だったら、見ちゃおうかな」


 私は意識をして鑑定の魔法を発動させた。すると、作ったポーションの仕上がりが見えてくる。


【低級ポーション】


・軽い怪我、打撲を治す効果のある薬


・品質:最高品質


「わっ……さ、最高品質?」


 私、そんなの作っていたの?


「リマは手際が良いし、理解力も高いから、ケンジの知識を十分に発揮出来ていると思うよ」


「そ、そうなんだ……。自分では分からないや……」


「まぁ、これくらい出来て当たり前だよ。だから、卑下をしないで」


 卑下はしてないけれど、なんだか信じられない。


「私がこれを売って大丈夫かな?」


「低級ポーションならこれくらいは当たり前だよ。だって、調合が簡単だからね。難しい調合だと品質を一苦労だと思うよ」


 ……そっか。簡単なポーションだから、これくらいは当たり前なのか。だったら、これを売って注目されるってことはないみたい。


「良かった。じゃあ、このポーションを瓶詰めしちゃおうか」


「その後は休む?」


「ううん。時間もあるし、ポーションの売り込みに言ってみようと思う」


 冒険者ギルドのお姉さんが教えてくれたけど、作ったアイテムは直接店と交渉して置いてもらう形らしい。だから、この交渉を勝ち取らないと私のアイテムは売れない。


 ちゃんと話せるか不安だけど、ここでめげていたら、目標が達成出来ない。だから、気合を入れていかないと。


「よし。エルリカ、私……頑張るから!」


「その調子だよ、リマ!」


 ◇


 人通りの多い通りを歩いて行く。目的地は道具屋。そこで、アイテムを売ってもらう交渉をする。


「リマ、ポーション重くない? 空間収納に入れておけば良かったのに」


「いや、流石に人の目の前で取り出したら、能力が分かっちゃうでしょ。そうしたら、目をつけられて大変になるかもだから」


 私はクラフト装置で作ったリュックにポーションを入れて持ち運んでいた。人前で能力を使う時は慎重に。私は何も力のない子供だから、目を付けられると利用されてしまうから。


 重たいリュックを背負いながら歩いて行くと、道具屋の看板が見えてきた。


「……まずは一軒目」


「最高品質なポーションだから、すぐに買い取ってくれるよ!」


「応援ありがと。じゃあ、行くよ」


 エルリカの応援で勇気をもらうと、扉を開けて中に入って行く。中に入ると、様々な棚に商品が置かれているのが見えた。その棚を素通りして、奥のカウンターまで歩いて行く。


 そこに座っていた店主と目が合う。


「いらっしゃい。何か用ですか?」


「あの、ポーションを売りたいんですけど」


「ポーション? でも、うちは専属の錬金術師から買い取っているから、余剰分はいらないねぇ」


「少し見てくれませんか?」


「悪いけど、見ても買い取れないよ。他を当たってくれ」


 店主は嫌そうな顔をして、ソッポを向いてしまった。


「分かりました。ありがとうございました」


 私はお辞儀をすると、店を出ていった。そして、息をつく


「はー、緊張した。断られちゃったね」


「リマ、大丈夫?」


「うん、私は平気。それよりも、ちゃんと対応してくれた。それがちょっと嬉しい」


 えへへ、と笑うとエルリカは苦笑いをする。


「もう、そんなことで喜んでいる場合じゃないよ。まずは交渉してくれる人に出会わないとね」


「うん。お店はまだあるんだし、きっと他に受けてくれるお店があるはず」


 一軒断られたくらいで落ち込まない。それどころか、物乞いだとあしらわれていた過去があるから、普通に対応してくれたのが嬉しい。


 普通に話してくれるなら、きっと道は開かれる。私はそこに希望を見出した。


「じゃあ、どんどんお店の人に話しかけていこう」


「その調子だよ。私も傍で応援しているからね」


 エルリカの応援があれば、どんな困難でも乗り越えられそうだ。私はリュックを背負い直すと、人通りの多い通りを歩いて行った。

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― 新着の感想 ―
飛び込み営業で1軒目から上手くはいかない。 10軒回って断られて11軒目に元気よく営業できるかが大事なんだよね。 電話営業のガチャ切りは当たり前だからね。
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