表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大富豪 〜玉座を巡る革命〜  作者: 蒔根 蔦
第一章 ダイヤの喝采
4/8

行方不明者

※本文は完全に創作になります。

実際の地名や人物、団体とは一切関係ありません。


部屋を出ると、宿屋の店主と出くわした。


「おぉ、レリオンじゃないか。」


この人は俺が

お金を持ち合わせていないのを察して、

格安で泊まらせてくれている聖人だ。


「おはようございます!マルクさん!

ちょっと外に行ってきます!」


走って横をすり抜けようとすると

引き止められた。


「おう!行っておいで!

あ、ついでにお使いを頼まれてくれないか?」


そう言って手渡された紙には

地図が書かれている。


「知り合いの家なんだけどさ、

最近娘さんが行方不明になっちゃって

奥さんが相当参ってるみたいでさぁ。」


ここ最近、行方不明者が多発している。

年齢性別を問わず、

突然帰ってこなくなるらしい。


「それでご飯食べてないみたいでね、

ちょうど届けに行こうかと思ってたんだよ。」


「宿代安くしとくから!ね?」と言われ、

いつもお世話になっているし

引き受けることにした。







「わぁーーー!!!すごーーい!!」


地図に従い、進むと広場へ出た。


ここはいつも露店が並び、

市場が開かれている。


スフィは初めて見たのか目を輝かせて、

キョロキョロと辺りを見渡している。





「レリオン様!見てください!」


スフィはひとつの露店を指さした。

そこには沢山の装飾品が並んでいる。


「おー、壮観だな。」


正直自分は、生まれた時から身近にあったから

あまり魅力を感じないが、

スフィは物珍しく観察している。


「お嬢ちゃん、市場を見るのは初めてかい?」


すると装飾品の店主が話しかけてきた。


「あ、勝手に見てすみません!

でも…お金がなくて、買えないんです。」


スフィは慌てて立ち去ろうと踵を返す。


「いいのいいの!

誰にでも美しくなる権利があるんだから。

そうだ!初めて来た記念で、

何かひとつあげるよ!」


「自由に選びな!」と店主は気前良く勧める。


「え、えーっと……、じゃ、じゃあこれを!」


スフィが選んだのは、

銀でスペードの枠組みが作られ、

青色の宝石が埋まったネックレスだった。


「お!お目が高いねぇ!」


店主はスフィが選んだネックレスを、

スフィの首につける。


「ん?この包帯どうしたんだい?」


ネックレスをつける時に、

スフィの首に巻かれた包帯に目がいったのか

尋ねてきた。




スーターには、

それぞれに割り振られたスートと

数字を持っている。

そして、その2つが組み合わさったマークが

体のどこかしらに浮かんでいるのだ。


ルイスは右手の甲に、

スフィの場合は首にある。


これを見られれば、

一発でスーターだとわかってしまうからと

スフィに包帯を巻いてあげて隠しているのだ。


「あー、…えっとこれは!

虫に刺されて掻きむしっちゃって!」


店主は疑り深くこちらを見るが、それ以上

踏み込んでくることはなかった。


「はい!できたよ!

どうだい?なかなか似合ってるじゃないか?」


スフィの首元にかけられたネックレスは

陽の光を浴びて、鮮やかに光っている。


「じゃあお代は銀貨1枚ね!」


突然店主は俺の方に向き直り、

お代を請求してきた。


「え!?

さっきあげるって言ってなかったか!?」


「タダとは言ってないだろ?

連れのお前が払ってやりなよ。男だろ?」


今更返す訳にも行かないため、

泣く泣く支払った。


「はい、まいど〜!

また来てなー!お嬢ちゃん!」


店主はニコニコとスフィに手を振っている。


「あいつ、騙しやがって!」


少し離れたところで悪態をついていると、

スフィが顔を覗き込んできた。


「ご、ごめんなさい。やっぱり返してきます!」


スフィは殴られると思ったのか、

ビクビクと怯えている。


「…いや、いいよ。

よく似合ってるしな。

スフィが俺のスーターになった

お祝いということにしよう。」


笑ってみせると、スフィは安心したのか

ほっと胸を撫で下ろした。


「私、これ大切にします!」


胸元のネックレスを

ぎゅっと大切そうに握っている。


これなら、買ってよかったな。


「ん?あれ、ルイス!」


少し離れたところで

1人立ち止まっていたルイスに呼びかけた。


「…え?あ、すみません!」


慌てて走って駆け寄る彼に聞く。


「どうした?何か面白いものでもあったのか?」


「いえ、なんでもないんです。…なんでも。」


少し言葉を濁すルイスに

問いただしてやろうかと思ったが、

こんなにグダグダしていたら

ギルドに行く時間が遅くなってしまう。


少し歩くペースを早めて、

地図の指す家へと向かった。




密集した住宅の中に、例の家を見つけた。


しばらく掃除もできていないのか、

庭先がかなり荒れ果てている。


ノックをすると、少ししてから

やつれた顔の男が家の中から出てきた。


「…どちら様?」


酷い隈とボーボーにはえた髭を見るに、

まともに生活出来ていないようだ。


「マルクさんから頼まれて、

ご飯を届けに来ました。」


「あぁ…」と気だるげに受け取るも、

ぼーっと見つめているばかりだ。


「…あの、大丈夫ですか?」


そう聞いても答えることもなく

ただ立ちすくんでいる。


どうしようかとその場を離れれずにいると、

ルイスが耳打ちしてきた。


(かなり疲弊しているようですし、

何かお手伝いしてさせあげては?)


たしかに、と思い

おそらく行方不明になった子供の

父親であろうその男にこういった。


「あの、もし良ければ

俺何かお手伝いしますよ!」


男は少し間を空けてから、

「じゃあ…」と家の中に通してくれた。


中に入ると大量のゴミの山や、

洗われていない服がそこかしこに

散乱していた。

換気もしていないのか、かなり臭う。


俺ひとりじゃちょっと時間かかりそうだな。


ルイスとスフィにお願いして、

それぞれで家の掃除を始めた。


スフィが洗濯物を洗い干している間に、

俺とルイスで部屋中のゴミを片付けて

雑巾やほうきで綺麗に拭き直した。





「こっちは終わりましたよー!」


スフィが空の洗濯カゴを持って

中に入ってきた。


「俺たちもこの袋を捨てたら終わりだ。」


かなり綺麗になった家の中には、

掃除前には見えなかった沢山の

家族写真が並んでいた。


「ありがとう、助かったよ。」


掃除をしたら気分も洗われるようで、

少しだけ表情の良くなった旦那さんが

奥から出てきた。


「妻はまだ調子が悪いみたいで、

人前に出れそうになくてね。」


家族写真を見ていると、

旦那さんが話しかけてくる。


「…私たちの愛娘なんだ。」


酷く悲しそうに、でも愛おしそうに

写真に写る少女を撫でている。


「怪我をしていないだろうか、

お腹を空かせていないだろうか、

寂しくて泣いていないだろうか、

……せめて無事であってくれれば…。」


顔を顰め今にも泣き出しそうな声を震わせて

話続けている。


この人の胸の内が痛いほど伝わってくる。


…俺達にはどうすることもできないな。





家を後にする時、

それなりに顔色の良くなった旦那さんが

玄関先まで見送ってくれた。


「君たちも、十分気をつけるんだよ。」


見えなくなるまで

手を振って見送ってくれたあの人に、

これ以上悲しいことが起こらないといいが。





────────────────────





ようやくギルドに着いた頃には、

もうお昼すぎになっていた。


中に入るとそれなりに人で溢れていた。



このギルドでは、

市民から貴族に至るまで

様々な依頼を受け付けている。

その受け付けた依頼を、

また別の人間が報酬目的に引き受ける。


難易度によって報酬は様々あるが、

頑張れば1日だけでもそれなりに稼げるから

色んな人が引き受けたりしている。


大昔、魔法がまだあった頃に

作られた仕組みらしい。


今では魔法という存在自体、

軽いおとぎ話のようなものだけれど。


「こんにちはエミーさん。

今日は珍しく人が多いですね。

いつもは閑散としているのに。」


顔なじみの受け付け嬢の所へ行くと、

エミーさんははぁとため息を着いた。


「ここにいる人みーんな、

行方不明者を探す依頼を出してるのよ。

依頼者は増える一方なのに、

受け手が深刻な人手不足なのよ?」


「またクレームが増える」と

エミーさんが悪態を着いていると、

横からこれまた知った顔の人が

割って入ってきた。


「まぁまぁ、

みんな自分の大切な人が行方不明になったら

どんな手を使ってでも

見つけ出したいと思うでしょ。

俺だってエミーちゃんがいなくなっちゃったら悲しいなー。」


警備員として配属されたのに、

仕事をサボりあろうことか

職務中に女性をナンパしているこの男は、

レイターという。


「あんたに悲しまれたって嬉しかないわよ。」


エミーさんはレイターにふんと

そっぽを向くと、レイターは傷ついたように

肩を落としてどこかに行った。


「あんな調子のいいこと言っといて、

どうせまたカジノへ行くのよ。」


エミーさんの悪態が

止まらなくなってきたので、

途中で遮り今日の仕事は何があるのか尋ねた。


「言ったでしょう?

ほとんど行方不明者を探してくれーですって。

それ以外だとひとつしかないわよ。」


はい、と手渡された依頼書を確認すると、

俺が気になっていた仕事だった。


最近行方不明者の増加に伴い、

謎の不審者が付近を出歩いてるらしい。

しかも、その不審者が話しかけた人間は

次の日行方不明になるらしい。


「かなり怪しいですね。

この不審者を捕まえれば、

行方不明の件も進展がありそうです。」


横から覗き込んでいたルイスがそうつぶやく。


まぁ十中八九関係しているだろうな。


「ルイスさんもさぁ、

毎日毎日レリオンくんの護衛やってないで

ひとつくらい依頼受けてくれない?」


エミーさんの矛先がルイスに向いたらしく、

詰められている。


「すみません、自分はこれが仕事なので。」


断られてさらに機嫌を悪くしたのか、

エミーさんの話すスピードが速くなってきた。


これ以上機嫌を損ねると

逃げられなくなると察して、

足早にギルドを去った。




────────────────────




「…レリオンくんってさぁ、」


カジノで大負けして、

トンボ帰りしてきたレイターに

話し相手をしてもらっている。


「ぜっっっったい、いいとこの家の子だよね。」


所作も綺麗だし、

なんなら護衛をつけてるくらいだし。


安酒をかっくらっているレイターでは

ほとんど会話になっていないが、

それでも暇つぶしくらいにはなる。


「んぇ?ぁーそうだねぇ、

それよりもう一杯くれないぃ?」


空になったジョッキを

こちらに差し出してくるこの男に、

いい加減堪忍袋の緒が切れた。


「いい加減にしなさいよ!!

だいたい毎度金も払わず酒ばっか飲んで!

まずツケを払えっての!!てか、

それよりも先に仕事をこなせよ警備員!!」


ガーッと怒鳴り散らすと、

驚きすぎて椅子から転げ落ちていた。


これだけ言っても直す気がないんだから、

せめてまともな話し相手ぐらいには

なって欲しい。




「私の人生つまんないなー。

あーあ、

どっかに性格よくてイケメンで金を持ってる

男がいないかねー。」


暗くなりつつある空を、

ギルドの窓越しに眺めて呟いた。




鮮やかなオレンジが次第に色を変え、


青くなって行くのをいつまでも、


ぼーっと見つめて。

第4話を読んでいただきありがとうございます!


今回で結構キャラが増えましたね。

それぞれがどう思いどう考えるのか、

そこを考えるのが1番楽しいところです。


よければ続きも読んでいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ