クラウン・オブ・スーツ
第1話・第2話の内容を一部改稿しています。
詳しくは活動報告にまとめているので、
気になる方はそちらをご覧ください!
※本文は完全に創作になります。
実際の地名や人物、団体とは一切関係ありません。
久しぶりに招集されたな。
今回の会議も荒れないといいが。
一体大富豪は何を考えているのか───
手に持っていたダイヤのマークが
刻まれている杖を回した。
定期的に開かれる大富豪主催の会議は、
”クラウン・オブ・スーツ”
と呼ばれている。
ここに集まるのは、
大富豪の他に名だたる4人のプレイヤーたち。
彼らは、それぞれが冠している
スートの頂点に君臨する、いわばクラウン。
そして、彼らのさらに上に立つ者の名を、
〖大富豪〗
と言う。
彼らが集まることは、
この会議以外ではほとんどない。
「ねぇ〜、大富豪様はいつ来られるの〜?
私のティータイムの時間と被ってしまうわぁ。」
「私もオークションの準備があるのですが。」
「ちっ、黙れよ。」
それぞれが思い思いに不満を口にしている。
「やぁ、よく集まってくれたね。」
入口の大きな扉がゆっくりと開き、
中から大富豪が入ってきた。
円卓を囲み5つの椅子にそれぞれが腰掛け、
1番奥にある玉座に大富豪が座る。
「じゃあ、早速今回の議題を発表しようか。」
大富豪は後ろに控えていたスーターに
指示を出し、ひとつの映像を見せた。
「見覚えがある者もいると思うが、
こいつは前大富豪の息子である元王太子だ。」
そこに写っている少年は、前大富豪の
面影を感じさせる顔立ちをしていた。
「別にこいつ自体に何かしら執念が
ある訳では無い。
問題なのは、こいつが
”スペードのデュース”を
所有していることだ。」
一瞬場がどよめいた。
「まさか、回収出来ていなかったのですか!?
道理で戴冠式を行われないとは
思っていましたが…。」
スペードを掲げた椅子に座っていた
男が立ち上がる。
「え〜!?それって、
かなりまずいんじゃないですかぁ〜!?」
赤色の装束に身を包んだ女も、
驚き口に手を当てる。
何故ここまでクラウンたちが
慌てふためいているのか。
この国では代々、大富豪となる者が
スペードのデュースを己のスーターとし、
忠誠を誓わせることで真の大富豪であると
認めさせることが、
正当な王位継承の儀式であった。
もし、それが行われなければ、
大富豪を名乗ろうとも
世界から認められはしない。
「だからね、
君たちを私の腹心だと見込んで、命令する。
やつから、スペードのデュースを
奪ってくるんだ。」
すると、
突然クラブの席に座る男が立ち上がり、
大富豪の目の前に行き発言しだした。
「それってさぁ、
もし俺達の誰かがスペードのデュースを奪って
大富豪だって名乗ったら
どうするつもりなの?
あんたがその玉座を
前大富豪から奪ったように。」
我々もまた世界で名の知れた実力者だ。
考えないわけがない。
クラブの男が大富豪の前の卓をバンッと叩き、
挑発してみせる。
「………ハッハッハッハッ!!!!」
突然声を上げ、笑い出す大富豪に
クラブの男は困惑した表情を見せる。
「まさかこの私が、
クラウン止まりの貴様らに負けると、
そう言いたいのか?」
大富豪がクラブの男に一瞥くれたかと思えば、
突然身体中から血を吹き出し倒れ込んだ。
「……………………は?」
「お前らの代わりなんぞいくらでもいるんだ。
勘違いするなよ。」
大富豪の言葉の一つ一つが
重くのしかかってくるようだ。
「あぁ、そうだ。
スペードのデュースを奪えさえ
すればいいからな、
前大富豪の息子の生死は問わない。」
先程の表情とは打って変わって、
初めの貼り付けたような笑顔に戻り、
また話を始め出しだ。
「…………くだらないな。」
誰に向けた言葉でもない独り言だった。
しかし聞こえてしまったらしく、
次に大富豪は私に視線を向けてきた。
「どうした?何か言ったか?」
人1人殺しただけの弱い脅しで、
はい分かりましたと
従うわけがないだろう。
「話を遮るようで悪いですが、私は
スートクラウンを辞めさせていただきますよ。」
そう言って私はガタッと席を立つ。
この人の考え方はどうも理解できない。
というか理解したくもない。
「…私を裏切ればどうなるか、
承知の上で言っているのか?」
こちらを睨みつける大富豪を背に、
部屋の扉に向かう。
「なぁに、大丈夫ですよ。
なんせ、『いくらでも代わりはいる。』
のでしょう?」
子供相手にムキになる大人は
ろくな奴じゃない。
そこに血を吹き倒れ込んでいる男と違って、
私はそう簡単にやられる人間じゃないしな。
「ではごきげんよう。」と告げ、
部屋を後にした。
あいつにスペードのデュースを
渡す訳には行かない。
「……先回りしておくか。」
長い回廊を歩き、足早に城を去る。
やつは、
大富豪になるべき人間では無い──
────────────────────
「……ぁ」
「……たぁー」
「「マスター!!!!!」」
突然耳音で大声で叫ばれ、
びっくりして飛び起きた。
目を擦りながら視線を向けると、
そこには満面の笑みを浮かべるスフィと、
ニヤニヤと笑う見知った顔の男がいた。
「…ノア、
お前、久しぶりに出てきたと思ったら
こんなくだらない真似して。」
こいつは俺のスーターの1人だ。
面倒臭がりだから基本、自分で歩こうとせず
カードのままでいる。
ノアも王宮に仕えていたひとりだ。
能力の手品師として、
城中をフラフラと歩き回り、
出くわした人に手品を披露していた。
新しいスーターが入ってきて
興味本位で出てきたのだろう。
「ルイスさんに起こしておくように
言われたんです!
もう朝になりましたよ!
寝過ぎは体に毒です!」
スフィはさぁさぁと手を引き、
身支度をするよう勧めてくる。
「わかった、わかったから!
自分で出来る!」
どこから持ってきたのか、
スフィに便乗して
変な服を着せようとしてくるノアから
服を奪い取り叫んだ。
「あー!お似合いだと思ったのに〜!」
服を奪われ、ブーブーと文句を言うノアを尻目に
さっさと着替えた。
初めの頃は、ひとりで着替えることすら
出来ずにいたが、大分慣れてきたな。
掛け違えなくボタンをしめられたシャツを見て
少し感慨深くなる。
「ところでルイスはどこにいる?」
起きてから見当たらない。
噂をすれば、ルイスが扉を開け
部屋に入ってきた。
「朝食を買ってきましたよ。
って、寝癖が直ってないじゃないですか!」
ろくに鏡を見ていなかったから
全然気づかなかった。
「全く、世話が焼けるんだから……。」
小言をいいながら、
ルイスは俺の髪をくしでといた。
「いい加減自分の身支度くらいは
できるようになってください!
身なりに気を使うのも、
人として大切なことなんですから!」
ブツブツと続く説教を遮って、
ルイスの持ってきた紙袋を開いた。
1人分のパンとリンゴを取り出し、
先にリンゴにかぶりつく。
「俺の分はありますか?」
ノアがルイスに話しかけると
驚いたように目を見開いた。
「ノア!!居たんですか。
お金がないのに、必要のないスーターの分を
買う余裕はないですよ。
それより、
前に持ち出した銀貨はどうしたんですか?」
「あっ」と小さい声を上げ、
ノアは目を逸らして黙り込んだ。
前に起きてきた時、勝手に金を持ち出して
カジノに行ったんだよな。
怒られると思ったのか、
ノアは逃げるように
1枚のトランプに戻ってしまった。
「全く、とんだ問題児ですね。」
パンを食べている俺の横で、ルイスは
ヒラヒラと床に落ちたカードを拾い上げた。
「よし!
腹ごしらえも済んだし、ギルドに行くぞ!」
昨日言っていた仕事が、
無くならないうちに向かおう。
第3話を読んでいただきありがとうございます!
ついに大富豪側の動きが見えてきましたね。
よければ続きも読んでいただけると嬉しいです!




