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大富豪  作者: 蒔根 蔦
第一章 スペードの憧憬
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3/5

この世でただひとり

※本文は完全に創作になります。

実際の地名や人物、団体とは一切関係ありません。




「私と、大富豪をしようか。」




その言葉に胸が踊る。

血が沸き立っているのを感じた。



「あ───」



口から言葉を発そうとすると、

オルガレットはそれを遮ってきた。



「ただ!

普通にやるんじゃつまらない。

お互い条件をつけようか。」



彼は持っていたティーカップを置き、

立ち上がって俺の前まで歩み寄ってくる。



「私が勝ったら、

君はグランドデッキに強制入会。

君が勝ったら、


……そうだなぁ。


私の知る限りいちばん強いランカーを

紹介しようじゃないか。」



この大富豪好きの集まるグランドデッキで

いちばん強い人間、

それはもう──────



「最高じゃないか!!!

やるやる!!

やってやる!

覚悟しろよ!」



オルガレットは嬉しそうに頷く。


すると次の瞬間、

部屋の外でガシャンという物音が聞こえた。




すぐさまオルガレットが扉を開き確認すると、

そこには床に落ち、

割れた皿と散乱したクッキー、

そして唖然とした顔の

この施設の従業員らしき男が立っていた。


推測するに、

この部屋にお茶請けを運んで来たのだろう。


男は青ざめた顔で、口から言葉をこぼした。



「……今、なんて言いました?」



床には目もくれず、

割れた皿を踏みしだきながら

オルガレットの元へ近寄る。



「あなたの?

知る限りで?

いちばん?

強いランカー?」



すごい剣幕でオルガレットに詰め寄っている。


こいつは何か地雷を踏んだのか?



「グランドデッキのオーナーである

あなたが知り得る中で

いちばん強いランカーなど、

たったおひとりしかいないでしょう。」



オルガレットはさすがの剣幕に、

どうどうと獣でも宥めるように

落ち着かせようとしている。




「この国で……、

いいや、この世界で!!

その名を関するに相応しいお方は、



『大富豪』おひとりでしょう!!!!」




従業員は自社のオーナーであるはずの

オルガレットを捲し立てている。



「大富豪?ゲームの名前がどうしたんだ?」



そう呟くと、

怒りで周囲が目に入っていなかった従業員は

ようやく俺の存在に気づき、

正気を取り戻して謝り倒してきた。



「も、申し訳ありません!

お客様の前でこんな醜態を……。

なんとお詫びすれば良いか…………。」



ひとしきり頭を下げると、

従業員は気まずそうに

そそくさと床の惨状を片し始めた。



「なぁ、大富豪がなんだって言うんだよ。」



そう質問すると、

オルガレットは帽子を正しながら話出した。




「大富豪……、


それは全人類の頂点に君臨する人物だ。

ランクの概念を超え、

その強さを関するに相応しいと

みなされたものが名乗ることを許された

世界でただひとりの人間。


それが大富豪だよ。」




ランクのさらに上を行く人物……。



そんなの、


そんなの、



心が踊らないわけがない!!!




「本当に俺が勝ったらその人を

紹介してくれるんだよな!?!?」



そう叫ぶと、欠片を拾いながら

従業員はギロリとオルガレットを睨んだ。



「本来、大富豪様と対戦できるのは

ほんのごく一部なんです。

数年に1度あるかないかの

大イベントになりうるんですよ。


なのに…………、



なのに………………!!!!!」



男はすくっと立ち上がり

再びオルガレットに詰め寄った。



「こんなふうに安請け合いして

いいものじゃないんです!!!

世界のビッグイベントなのに!!!!

誰しもが憧れる大富豪様と戦う機会なんて、

上位ランカーですら与えられることなく

引退する人ばかりなのに!!!!!!!!」



あまりの衝撃に、

オルガレットの帽子が床に落下した。


その後、従業員は

欠片をあらかた拾い集めると、

目に涙を浮かべながら「オーナーのばか!!」

と走り去っていった。







「……ほんとに約束してくれるんだよな。」



帽子を拾い上げるオルガレットに問いかける。



「ん?」


「俺が勝ったら、

大富豪と勝負させてくれるんだよな。」



オルガレットは改めて帽子を正して、

俺に向き直りこう告げる。




「あぁ、約束するとも。

私は嘘が嫌いなのでね。


その代わり、君も約束してくれよ。


私が勝てば強制入会だからね。」







あまりにもローリスクハイリターン

すぎる気もするが、


今の俺には

大富豪との対戦のことしか頭になかった。

第3話を読んでいただきありがとうございます!


この世でただひとりの大富豪。


その名に冠するに相応しい実力を持つ人物……。



よければ続きも読んでいただけると嬉しいです!

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