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第6話・姫殿下第1の願い

 ツッコミどころが多い!


 まずもって俺のステータスとクローディアのステータスの格差!



【クローディア・A・ゴルバトフ】

 種 族:人間

 体 力:750

 攻撃力:550

 防御力:2000

 移動力:340

 魔法力:700


【ピッピ】

 種 族:悪魔

 体 力:20

 攻撃力:20

 防御力:20

 移動力:20

 魔法力:20


 もうこれ何倍とかいう数字じゃないんだが。


 オール20という状態からして、もしかしたら20というのがこれくらいの年齢における通常値なのだろうか? だとしたらクローディアがあまりにも強すぎる。防御力に至っては100倍だ。


 俺達だけでは比較にならない。訓練場なので少し離れた場所に騎士も居る。そちらの騎士達に向けてステータスと唱える。


【グラン・アルノー】

 種 族:人間

 体 力:150

 攻撃力:100

 防御力:150

 移動力:50

 魔法力:20

 ・自然治癒(中)


【ジン・ウォーカー】

 種族:人間

 体 力:120

 攻撃力:80

 防御力:150

 移動力:150

 魔法力:20

 ・気配遮断


【ポプラ・ルルメル】

 種 族:ハーフエルフ

 体 力:50

 攻撃力:30

 防御力:50

 移動力:120

 魔法力:350

 ・魔法力補正(大) ・魔法力還元(小)


 ま、ままままま、まぁ? 相手は騎士達ですし? 鍛えている人たちが産まれたばかりの悪魔より強いというのは人類にとっては朗報だ。全然悲しくはない。


 しかし、体力が高いっぽい男騎士2人が魔法力は20で、魔法力が高いハーフエルフの騎士が攻撃力30なあたりを見ると、もしかしたら20というのは、鍛えていない場合の初期ステータスみたいなものかもしれない。


 で、そうなると、だ。


 視線を、遠くの騎士達から、近くで俺を心配するティファに戻す。


 既にステータスの表示が消えていたため、もう一度唱えて表示する。


【ティファ・ハートアンダーブレード】

 種 族:人間

 体 力:20

 攻撃力:1

 防御力:2

 移動力:4

 魔法力:0


 初期ステータスだから体力は20あるが、その他の能力が軒並み最下限。もはや存在していないみたいな数値に目を細めた。どういうことなんだよ、これは。


 という具合に、ティファの可愛らしいステータスで気持ちを落ち着かせる。そんな前振りを置いてから、自分のステータスを再度見る。


「どうした、顔が青いぞ。……待て、悪魔よ、何が見えている」


 眉をひそめてクローディアが言う。ステータスの表示は他人には見えていないようだ。ならばこそ、俺は今、虚空を見つめて一喜一憂していたわけだ。バレて当然である。


 俺は素直に答えた。


「戦闘能力が見えています。それにより、クローディア姫殿下と俺の格差に辟易(へきえき)としていたところです」


 そんな世辞を述べると、クローディアは目を見開く。


 だが、俺にとってそれは既に終わった話。俺は自分のステータスを次の画面へ進める。スキル解説ならぬ加護解説のページだ。


 そこには、このようなことが書かれていた。


【悪魔の契約】

 悪魔が承認した場合に限り、対象者の願いを3つまで叶える。ただし、異常と見做された場合、悪魔が承認した場合でも却下される場合がある。


 ・異常とは。

 願いの内容が、世界の理論に反する・あるいは矛盾するなどが無い事。

 また、願った者の魂の総量と願い3つが釣り合っていない事。


 ・契約とは。

 3つの願いを叶えたと、ほぼ同時に、願った者の()()()()する。


 ※悪魔の契約において叶えられる願いの制限である3つは、全悪魔との累計である。


 ※この権限は悪魔の特権であり、女神の加護では無いが、表示の都合で加護の枠に記載するものである。


 と。


 その説明文に、自分の血の気が引いていくのが解る。思考の奥のほうで、黒い渦巻が鈍く緩慢に俺を引き込もうとしているかのような、不気味な目眩を伴う感覚。


 考える事が多すぎる。今この場で考えてパッと理解出来るものでもあるまい。だがそれでも、理解は出来ずとも、たったひとつの言葉が、俺の思考を支配する。


 魂の徴収。


 勝手なイメージの話だが、どうしても、死ぬんだ、と思ってしまう。


 1人で考えても仕方がない。この能力についてティファには無論打ち明けるとして、クローディアにはどうする? 国王の娘に打ち明けるという事は、実質この国に教えるような物だ。秘密による優位性は損なわれるが、打ち明ける事による優位性もまた大きい。


 なにせ願いを叶えられるのだ。困った時は承認しなければいい。


 ともすれば、


 クローディアを見る。心配しているのか疑っているのか、睨みつけるような鋭い視線。燃えるような赤い瞳が俺の額に照準を合わせている。下手を打てば殺されるんじゃないかと思うほどの強い目だ。


 少し考える。


 そして決める。


「俺の能力が判明しました」


 クローディアに、全てを打ち明ける事にしたのだ。


 ステータスが見えるようになった事。加護が見えるようになった事。それによって『悪魔の契約』という力が俺にあると判明した事。なお、先のステータスが見えるようになったのは、悪魔の契約によるものであると。


「……」


 今度はクローディアが考える。浅く息を吐き、左手を腹部あたりに巻き付けるように軽く当て、右肘をそこに乗せる。右手の指先は口元を覆い隠す。まるで、失言をしないよう、自分の口に蓋をしているかのように見えた。


 その仕草で本音を呑み込んだのであろうクローディアは、淡々と尋ねる。


「加護も見える、という事の証拠が欲しいな。遠距離攻撃が効かない事はさっき言ったかもしれんが、他に私の加護は何がある」


 確認というより尋問のような声色。だが、あえて裏を取らず、真摯に行く。


「遠距離攻撃無効・中。一刀両断。ガーディアン。カリスマ・小。魔法攻撃補正・小。この5つです」


 クローディアは少しの間だけ目を閉じて、すぐに開ける。


「推定だが、私の能力と名称は合致するため、信じよう。だが信頼はしない。お前が今言った内容、私の加護は国家機密なんだ。国家機密を知った以上は、相応の対応が必要になる」


 予想していた通りの対応だ。クローディアが取るべき最前手でもあるだろう。予期していた交渉である。


 だから、俺はその交渉のテーブルに着く。


「そこで、悪魔の契約です」


 と。


「ほお」


 クローディアは、口元を覆っていた手を僅かに浮かせる。興味を持ったようだ。


「まず、悪魔の契約は全ての悪魔との累計で3つとの事です。なので、もし他の悪魔に2つの願い事をしていたら、これ以上の願い事はNGとなります。なので確認しますが、クローディア姫殿下。悪魔に願い事をした事は?」


「無い」


 きっぱりと断言するクローディア。まぁ、そんなに沢山加護を持っていれば、悪魔に願う事も少なそうだ。


「なら、2つまでは願いが出来ます。そのひとつを消費して、俺に『敵対するな』などの契約をすれば良いのです」


「その提案をして、お前になんのメリットがある?」


「メリットはありませんが、ついでにもうひとつの願いを使って、俺のステータスを上げてくれたら助かります」


「因みに今、お前のステータスはどんなものなんだ?」


「全て20です」


「20とはどんなものなんだ?」


 遠くに居る騎士達とクローディアのステータスも一通り説明する。クローディアの表情が見る見る暗くなり、


「…………弱いな……。ステータスを倍に、でもまだ弱いぞ……」


 と呟く。面と向かって言われると傷付く。


「だがダメだな。努力無き力は理性を持たない。10倍にしてやるのはお前のためにもならないだろう」


 その考え方は嫌いでは無いが、もっと気楽に俺を強くして欲しかった。


「理性なら多分大丈夫だと思いますが……」


「理性というのはな、自分は大丈夫と思った時から遠のいていくものだよ」


「それは」


 言い返そうとしたところで、なんとなく、言いたい事が解ってしまったため、押し黙る。確かに、なんだってそうだ。成績だって、自分は大丈夫だと油断した瞬間から落ち始める。自分は大丈夫だと油断した人間から事故を起こす。気を引き締めないとな、と、改めて考える。


「そういうわけで、2つの願いは決まった」


「え、もうですか? 何日か考えても」


「無条件で叶う願いになど未練は無いからな。雑に決めるくらいが丁度良かろう。ひとつ、私の不利益になる事はするな。一切だ」


「え」


 確認するよりも先に、淡々としたナレーションが始まる。


『クローディア・A・ゴルバトフ、第一の願いを受理。内容:クローディア・A・ゴルバトフの不利益になる一切の言動を禁ずる。承認しますか?』


「姫殿下1人でよろしいのですか? 最悪、俺が国に危害を加える事もあるかもしれませんよ?」


 念のため確認すると、クローディアは首を傾げた。


「国家が間違ったなら、そうする必要がある可能性もあろう?」


 つまり、身内びいきはしない、と。カリスマの加護の補正だろうか、中々願えない事だと思う。


「承認する」


 と俺は答える。


 そして、ナレーションが続く。


『承認を確認。顕現内容の精査を開始。異常無し。残存魂の査定を開始。異常無し。取引成立。ここに、悪魔の契約を締結する』


 すんなりと成された。


「成立しました」


 告げるが、どちらにも実感は無い。


「ふむ」


 と少し考えたクローディアは、


「悪魔。私を叩け」


 と、簡単に言う。


「えっ……いやいや、姫殿下を叩くなど、契約の有無無く普通に無理ですよ」


「その姫殿下の命令だ。叩け、攻撃力20」


「うぐ」


 攻撃力20が防御力2000を叩いた所で何も起きないのはそりゃそうだろうが……悔しい。


 しかも、どうせ先ほどの契約によって、俺はクローディアを叩けない。半ばやけくそでクローディアにビンタすると――普通に叩けてしまった。


「えっ! す、すみません、何か失敗したのかな……」


 焦りながら取り繕うが、対照的にクローディアは冷静だ。


「いや、問題無い。叩けるという事は、私が暴走した時、間違った時に止められるという事だ。それが出来る事は重要だろう。次に、そうだな、私のステータス、カリスマについて、勇者に説明しろ」


 そう言われたので、言われるがままにしようとする。


 が。


「…………」


 言葉が出て来なかった。喋りたくないし、喋る事が出来る気すらもしない。ただ、人々の関心を買いやすく、また、好感度も上がりやすいというバフなのだが、たったこれだけの事が言語化出来ない。


「早く。説明しなければお前を殴るぞ」


 と、言われても、説明出来ないので、首を横に振る。


 そして、その反応に満足したらしい。クローディアは微かに微笑んだ。


「願いは叶えられたようだな」


 と。

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