13話 「純朴」
ネフィル「例の少女のお手伝いさんの件だね?」
うさぎの耳の彼女は答える。
うさぎの獣人「その件です」
彼女は周りの人の多さから、肩をすくめる。ティナという少女を目の前でネフィルに向けて会話をさせる。
ティナ「あなた達は?私の何?」
ネフィル「そのコクーンを持っているね?手のひらのそれは私の知人があなたに価値を与える為に差し出したコインだよ?特別な品だ。ギークさん。私はこの子に世界を教えてみたいのだよ。」
ギークは鋭い眼差しで笑みを浮かべて答える。
ギーク「おお!はは!ネフィルさん親になるのは私達も教えられませんよー」
ユミ「この子、本当にあの大金で雇って認めて、どうするの?ネフィルさん」
ティナを見つめて、ユミは潤んだ目でネフィルに聞く。酒場の酒臭い観衆は
「世話はプロだろ!ギークは赤子のコクーンもねぇくせによぉ!」
と無駄に爆笑しているが、ギークは無視する。赤子のコクーンとは、夫婦になる契約を聖域で契り、お互いを交わした際に、全く新たな人の創造を男女に「存在創造を互いの人格から生み出す権利を与える」ことだ。人々に浮気という概念は無い。互いの人格が繋がる為の共感覚の増強は夫婦にしかない。その産物である、赤子を人々は育て、次の世代へと紡ぐのだ。その際に錬金術師達から得られるコクーンが「赤子のコクーン」だ。
とても価値のある品である。
ネフィル「彼女に頼まれたのだよ。」
うさぎの獣人「どうも…私は先の魔物で、子供をナくしました。初めての経験です。完全に散り乱れる人々を目撃したのは初めてです。獣と成り果てるのは、どれか、また、獣の姿に乗って、魂となり、また祭りで人に食べれてその意思が新しく天の使いが連れてきた人々や、獣人の人の力になると信じられてきました。あなたは髪の色こそ違いますが、私の娘にそっくりなんです。散って、この世に居なくなって星に帰った夫を見れない代わりに、あなたを私が産んだ娘の“赤子のコクーン”で、娘を思わせるイタチを食したネフィルさんに託したのです。」
観衆「まぁ、結構、そういうのって運命とかってやつじゃないですかねぇ?性格もその当時のように記憶はないが、瓜二つのようだと、仰る方も多いです。」
うさぎの獣人にユミは語りかける。
ユミ「サユさん。そんなことがあったなんて…私達なんて無神経なのかしら…ごめんなさい」
しんみりとした空気が少しピリ辛になり、周囲は騒めく。笑う者と残念がる姿を群衆はそれをみて反応するが、ティナは質問をする。
ティナ「じゃあ、サユさんのことはお母さんって呼んで良いの?」
サユは涙を流す。ただ、流れる涙を周りの人々は見ないフリをしたり、俯く者もいるが、ギークとユミは真剣に悲しんで同情できるが、共感できない苦しさに2人は小さくなってしまう。しかし、ギークは気を使って言葉を話す。
ギーク「まぁ…ユミと俺は子供を持ったことが無いが…ユミがいなくなっちったら俺も笑えない。ネフィルさんはしっかりしているし、俺達なんかよりも立派にまた育ててくれるよ」
サユ「ありがとうございます…」
しみじみとした空気だ。
モブ「あーまいった。マスター!酒をくれ!追加だ!」
酒場はいつも以上にうるさかった。
ネフィル「おや、イミュ!どうしたんだい?その姿は?」
ネフィルのいつもよりドスの効いた声が酒場を鎮まり返させる。
イミュ?「あひはほはは!私!私!わたし!」
酒場の20人くらいの人々の前で先程のユミと決闘したイミュが異形の姿で酒場の扉の前に立っている。既に人では無いような姿になっており、花の茎に手を生やしたような姿は獣人ではなく、植物の擬人化?それでも、イミュの頭がてっぺんに乗っている。
ギーク「全員!こいつは魔物だ!そう認識しろ!俺が鎮める!」
ネフィルはギークの声を片手を広げて制する。
ネフィル「イミュ!どうしたんだい?話して見せて?何があった?」
ネフィルは冷たい視線で憐れむようにイミュであった何かを見つめる。すると、その異形は植物の茎を翼?たんぽぽの葉のような形にして、人の姿に近い、植物の根を張り巡らせたその葉の翼を持つ異形のイミュは話す。
?「さぁ!迷の時間だよ?名は?いらないのでしょ?」
サユ「ひゃあ!!!!!!!!うぐっ!」
サユの悲鳴は途中で断絶された。
その訳のわからない言葉の次の瞬間、サユの悲鳴が上がる。サユの首を、その異形のイミュの翼?から触手のような?蔦のような特殊な何かが貫いて、サユの頭を自身の体が化した蔦が覆い、サユの頭を黙らせながら、その場に止まる青い花に変化させていく。その青い花は花を大きく揺らして暴れ出す。
その様を見た人々は叫び逃げ出す。散り散りになり、酒場は吹き抜けになるほど、異形は暴れる。ギークとユミは役割である為、持ち前の槍を構える。
ギーク(肉食の魔物?肉食の動物?それとも違う。奴らは錬金術師の管理下にあるはずだ。)
傭兵であるグーとグレンもマーチェとグレッグドを後ろに逃して、窓からグレッグドの側である外へ出て槍を構える。
触手は自在に伸びて、何人かを拘束して、植物化した。それを槍で、ギーク夫妻は連携して弾き、人々を守る。酒場のマスターは怯えて、蹲っている。酒場は酒樽は裂けて、酒が飛び散り、狂気の沙汰であった。
?「私はマリオネット?何をしても良いご機嫌な猫?」
「イミュであった何か」は常に笑いながらものすごい速度で攻撃をやめない。
ネフィルは翼を使い、まるで、勇者様のように、全ての触手を弾く。そして、そのイミュであった何かはティナを執拗に狙い続けて、狙ってくるので、ネフィルは必死に護る。が、あっけなく触手に取られてしまう。
ティナ「あぁ!!!ヤダ!助けてぇ!!!おかぁさぁん!!」
ティナは何故か、イミュの身体へ直接吸い込まれて行く。それをみて、ネフィルは唖然とする。
ギーク「ネフィルさん!だめです!俺がやります!」
ギークは蔦と触手を切りながら、ユミに死角を任せて、舞うように異形のイミュの体全体で、縦に二つに裂けてティナを捕食しようとする様の裂け目の隙間に槍を差し込み、繊細な斬撃で、ティナを掴む蔦を切り刻んだ。
ティナは無事、奪取できたが、
異形は蔦の本数が少なくなった異形は跳ねて、遠くへ行ってしまった。
ティナは意識を失い、植物の蔦でできた根っこを植え付けられ、ギーク達は唖然とする。
ユミ「ティナちゃん!しっかりして!」
ネフィル「ギーク夫妻…すまなかった…私では力不足だった。」
ギーク「ネフィルさん…何かイミュがおかしくなるきっかけで、思い当たる節はありますか?」
ネフィル「今はまだ、私もただ、動揺していて、とりあえず、ティナは私が面倒を見る。聖域が大事に至らないように、イミュの追跡を頼まれますか?」
ユミ「いきましょう!ギーク!」
ギーク「見当はつくのか?」
ネフィル「いつも、彼女は森で花の多い場所に行っていた。私が面倒をみていた子だから、間違いない。そこの近辺だ。北の方角で、日当たりの良い場所に良く行く」
ギーク「ネフィルさんティナちゃんを頼む」
ネフィル「お気をつけて…!」
ギークとユミは直ぐに、外へ出ようとするが、女性の声がする。
マーチェ「私達も手伝うよ。この後に及んでまで、武勲を語るための商売はしない。サービスで道具を貸すし、グレッグドが乗っけてくれるって」
グレッグド「どうぞ!ギークさん!」
涼やかな表情でグレッグドは言う。
ギーク「灯火の運び屋か…グレッグド!よろしく頼むよ。」
北の方角は遠い。半日かかるが、足があるおかげで早くイミュに追いつけそうだ。




