↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

9話 「決闘」


芸術家と普通の人の眼は違う。何故なら、彼等には圧倒的な線の多さへの認知量が違う。眼とは脳なのかと錯覚するが、脳の機能の役割の果たす行為の方が大きい。


外輪の眼より


ギークとユミは英雄の壇上へと座り、罪悪感を持ちながら、座る。ユミはそして、席を立つ。人々は賑わい、子供は棒切れを振って剣闘士ごっこをしている。大人が花や虫、動物となる体の部位を喜怒哀楽を交えて、奮起する。屋台では、本や、植物、装飾品、衣服、庭仕事用の道具、雑貨、中でも子供に人気なのが、骨董品屋だ。


「おじちゃんー!一回くじ引き!やらせて!」

子供は特別な植物の種でできた通貨を渡す。彼等は特別なマナと呼ばれる植物の種が硬貨の代わりだ。発芽しない、大地の記憶が残っていると言われる魔術師のみが錬成できる普遍的なこの世界の通貨だ。少年は五粒渡す。

「…あいよ!一枚だけだぞ。さぁ、蔦を引け」

骨董品屋に大概、この類で売られているのは、占星術などの為のカードや、英雄の記された巻物や、如何にも子供が憧れるであろう、遺物をハズレは模造品、当たりは屋台主の呼んだそこら辺にいる武勇を語られている人物が直接、自分を売り出す為に本人が手渡す。今回は特に人気があるらしく、3人も英雄が並んでいた。当たりの蔦の先は蝶々結びで結ばれている。

「大当たり!おめでとう」

「やった!しかも、今回の魔物の討伐で生き残って獣人を助けて回ったネフィルじゃん!」

狼のような姿の獣人が自身の彫像を手渡す。

「褒めてくれるとは嬉しいな。少年も私のようになれるよ。きっと」

そう言い、それをネフィルは手渡しをした後、少年と握手する。少年は歓喜しその場ではしゃいで、他の店の方へ走って行く。

狼のような姿の獣人であるネフィルは、同じく獣人である仲間と部下に囲まれて、子連れや、様々な人々と親しげに会話をしている。


「この前は親切に、花の手入れまでしてくれてありがとうネフィルさん」


「礼には及ばないよ。また必要なら言ってくれ。獣人は働いてこそ英雄になれるのだから、責務だ」


ネフィルは人々の子供達と戯れながら、答える。奥様方は旦那を他所に、ネフィルの色っぽい雰囲気に惹きつけて止まない感情を向けている。


その旦那方や男衆は剣闘士の決闘を見るので、精一杯だった。ユミの試合の時間だ。当然の如く、ギークとデザンの試合の後、数戦経ったその場が最高に盛り上がった状態で、普通は男性ばかり、壇上に上がるが、毎回、ギークの妻だからなのか、ユミも剣闘士としてその壇上の舞台に立ち上がる。幾度となく、首が切られているその舞台では、壇上の砂にサボテンや乾燥地帯に強い植物が散らばる。首を切られた者達も客席で盛り上がる熱狂ぶりである。彼等はちゃんと身体はある。


男衆らは


「やっちゃえ!いつも俺達のプライドをへし折るギークの汚妻は少し痛い目みろ!」


「やってくれ!人の嫁に興味ねーんだよ!」


そのように、罵る男どもは王の前でも声を荒げる。相手はイミュという少女だった。王は試合を見るが、眼だけは冷笑していた。ユミに期待しているかもしれない。

ユミ(ああ…ねーギークどうすんの?)

ユミは口の動作だけで伝えるが、ギークは手振りでフォークを作り食べるような動作を気怠げそうにした。肉を食べるしかないという意味だ。

ユミ(分かっ…え?)


対戦相手を初めてマジマジと見つめると、知っている顔だった。キラキラと輝く凛々しい眼はギークと水車の前で、話していた女だった。歓声と罵る声でガヤガヤする壇上で、イミュは語りかける。


「早く私も王に褒めてもらいに、あなたには散ってもらいにきたよ?」


彼女の背中には、マントがしてあったが、そのマントの陰から出てきた品物を片手の剣と合わせて、握るその姿に、人々は絶句した。あの杖だ。


人々は、屋台の方まで、小声しか響かない程度に静まり返る。


トート「皆、歓声を続けろ。私が許そう。かの御仁、イミュがお持ちになっているのは、ケリュケイオンという先の戦いで戦果を挙げた魔物を塵と化した道具だ。祝う場に相応しい品だと、私は認めよう。続けよ」


錬金術師達は皆驚いた表情で、槍と弓を構えていた彼等自身の手を緩める。人々に囲まれていたネフィルは真っ直ぐ2人を見ていた。皆が静まるまま、試合は始まる。


イミュ「さぁ、ユミさん!ギークおじいさんにも会えなくしてあげるかもね?あは!楽しみな未来だね」


ユミ「へぇ…」


ユミは剣を片手に持ち、もう一つの手を剣で、剣の刀身に触れない方で、叩きながらイミュに近づく。顔は冷静だった。


雰囲気が2人を壇上に押し上げ、静まり返る中、人々は真剣な眼差しを向ける。王は頬杖をつき、錬金術師は身を乗り出して観戦する。


ユミはギークに目線をやると、満面の笑みを浮かべて、イミュを睨む。


試合は壇上に2人が上がった瞬間に始まる。

2人は同時に壇上へと上がり、お互いに鍔迫り合いへと、発展する。が、ユミはあっという間に、イミュの刃を受け流し、イミュの剣を地面へ刺させた。それに追撃を与えられるように、イミュはもう一つの腕でケリュケイオンを振り回して、ユミに当てるように振りかざす。が、イミュの顔の隣を花が舞い散る。


いなしたユミの刃がイミュの杖を持った腕を切り落とす。


そこで、観客は大いに盛り上がる。これまでにないほど、歓声が響き渡り、2人の戦いを大勢が歓喜する。しかし、ギークは雰囲気とは裏腹に、疑問が残るような節がまだ抜けておらず、周りとは違う表情をしている。


「お嬢ちゃん!未亡人製造機予備軍には散ってもらいな!」


「ユミさん!そんな脅しになんか負けないで!」

その声援は確実に獣人がユミを応援していた。それらの歓声はグレッグドのいる待機場所まで響きわたり、彼は1人、いや、1馬俯く。


イミュの杖は落ちてしまうが、イミュは剣を振りかぶり、ユミを切ろうとしたが、ユミはイミュの頭の下にいつの間にか、近づいており、ユミはそのまま、イミュの顔に向けて、下から剣を鋭く華麗に振り上げて、イミュの顎を掠めるくらいの距離で、イミュの胸を切った。


ユミ「その杖お似合いよ…」


イミュ「この!…」


そうユミは言うと、激情したイミュは負けじと、再生した左腕で、身体の状態を起き上がらせて、散っていった腕のなれ果てである植物を顧みず、掴み、ユミへ、右腕を振り翳そうとするが、既に右腕はなかった。ユミは振り上げた剣を死角からさらに回転させて、イミュの右腕を削いで、イミュの後方へと飛び上がっていた。イミュの顔前を、切られた肉片が変化した2匹の蛇とそれらの近くを植物が飛び散る。


イミュ「なんのその!!!!!」


イミュは杖を振りかざして、地面からユミを迎え撃つ。すると、ユミは自ら杖に足を乗せて、打撃をくらい、花吹雪を散らすように、イミュの首を体を回転させながら切り落とした。


イミュの首が涙目で壇上に落ち、イミュの首から下は蛇と花や草木になれ果て、散っていった。


「私の旦那を馬鹿にした罰よ」


そう言うと喝采と、歓声が響き渡り、勝者が決まる。全身身ぐるみを剥がされた少女イミュは泣きながら、試合の幕引き係に連れ出される。


王は魔術師や僕に囁き、伝える。

「彼女の杖は回収しなくても良い。返してやれ」


げっそりとしたユミはギークに駆け寄って、抱きつく。

ギーク「やりすぎだろぉ…ユミ…」

満開の笑顔でユミは答える。


ユミ「それ相応でしょ!?」

ギークは預かっていた杖をユミに渡して、英雄とされる席の隣へと一緒に行こうとすると、1人の獣人が気さくに手を上げて歩いてくる。

「やぁ、凄かったよ。あの剣技は祭りで大層な、年月を重ねていなければ成せない技ですな。私はネフィル。この集落にある獣人達とはよくしてもらってまして、最近、集落の人達と世話になる中で2人の話は聞いてますよ。最高の試合でした。ユミ様。宜しければ、後ほど、数人を交えて、宴席へとお誘いしたいのですが、いかがですか?」


ギーク「あーネフィルさん。知人がお世話になってるの聞いてます。是非!」


ネフィルの話もギークとユミの耳にも入っていた。悪い印象のない人物だったので、2人は了承し、祭りの“肉を食べる権利を持つ席”に座る。


肉とは、そこら中にいる動物と変わらない野うさぎや、いのしし、それらを眠らせて、ハーブや、油などで皿の上にそのまま置いた生モノ料理であり、


この世界では、動物を焼いても焦げないのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。