8話 「祀り」
マーチェは灯りを必要とする場所に、「火の元」である「油」を大きな祭壇へと続く広場へ、灯していく。ギークとユミはそれに付いて周り、3人の中で杖を持つ2人は、目立ってしまう。それは「勇者様」をお奉りする祭りだからだ。その英雄と肩をならべるくらいの功績を持つ存在は一際目立つ。にしても、女性が多い。人々は少し、数が減ってしまった。特に男は働き盛りで兵士になり、集落では散ってしまった。
今回は、この大きな異形の存在を倒した功績を讃えて、集落の長が王を呼び、讃えるのだ。王は名を代々、受け継いでおり、苗字がある。「ヤシェル」という名を彼等は持ち、その王である、「トート=ヤシェル」が、この地に赴き、人々と謁見するのだ。ヤシェル王国。この地で最も神に物言いできるのは、「王」のみである。故に、今回、神の使いである、アムルの従者であり、勇者でもあるソラとエラが壇上に上がり、玉座の上に降臨する。この世界には王国が3つ存在しており、それぞれ、この地で学んだ知識を国境沿いの建物である「密舞台」で、人知れず、知識を交換している。
「ヤシェル王国」、「エゼル王国」、「ヨウハ王国」
この3つの国は使える神が違うだけで、戦争などはない。知恵比べをしている。
本日の題材は
「今日、この地に参られし、トート=ヤシェル様だ!皆、かの御仁が、真に尊き、神の言葉を捧げる存在だと知れ!トート様は神聖なるお方だ!かの御仁に、身を挺して、知恵を授けよ!健闘を祈る。民よ!闘技を見せよ!」
だそうだ。
一時、歓声が上がる。
ギークとユミは嫌な顔して、口を動かして、周りに合わせて、下を向きながら2人だけで会話をする。
ギーク(おい!また絶対メンバーに選ばれるぞ!これで俺たちはまた斬られたらどうする?俺たち切っても斬られてもまた首チョンパされても、何もならんし、皆変な目で見てくるよきっと!どうすんの?また、王様来たけど、今度こそまた村から除け者にされる!今回も勝った方が良くね?)
毎回、小規模だが、名持ちの魔物を討ち取った後は祭りが開かれる。その祭りで、人々に肉を振る舞うのが、王のすることだと、ギークは理解している。肉を振る舞うのは、この世界において、特別な意味を持つ、食べた、後に寝たら、牛になるということわざではないが、食べれば、美味しすぎて、人々は神の役に立つように、讃えられた獣と調和した人物とされ、下々の安い仕事をさせられる。まぁ、物欲など無いような世の中だ。この世界に死がない故に、仕事を与えられ、讃えられるチャンスと世間は認識しており、実際に獣人となった人の扱いは酷い。ハイアンドローなのである。本当に讃えられるか?本当に安い働きをさせられるか?
文字通り、人々は肉を食べると、獣の姿を持つ人になる。が、2人は10回以上食べたが、その気配が皆無なのだ。そのおかげで、ギークとユミは肉が嫌いなのである。
ユミ(今回は私、特別な仕込みを用意したの!)
ギーク(何?)
ユミ(ほら!糸よ!糸!先に自分で切っちゃうのよ、肉を食べても、何も起こらないなら、最初の初戦で負けておけば良いのよ!!)
ギーク(却下だよ。バレたらどうすんの?王に何されるか分からんだろ?最悪の場合、幽閉だぞ?)
ユミ(んーダメかぁ…)
2人は顔を顰めて、祭壇に跪き、大衆も跪いた。
マーチェや行商人達も丁寧に礼儀を重んじる。
肉が運び出され、王の前に匂いが届く程度に、置かれて、王は豪勢な果物を片手に、歳に似合わないような、見た目と美貌で、それらに齧り付く。その様は集落の女性の目を輝かせた。そして、王は言う。
「名前を呼ばれた常民街の者は、栄誉を讃え、剣闘士となり、王の前で、互いの首を斬る試合を見せてもらう。後に、その試合と、魔物の討伐の賞賛を行う」
2人は冷や汗が止まらなかった。2人は幸いにも、夫婦である為、互いに斬り合うことはさせられなかったが、それでも肝が冷える。何故なら、負けても、勝っても、恥でしか無いからだ。そして、また、獣人の知り合いと仲良しができるだけなのだ。
ギーク(ユミ!今回は杖を持って戦ったから、何もねーよな?)
ユミ(今回はギークの勘を少し信頼しないことにしたよぉ)
「決闘者!常民街の民!ギーク!そして、灯火の聖域より、用心棒のデザン!」
ギーク(まさか、最初に呼ばれるとはなぁ…)
王の側に近い、錬金術師は大きく叫んだ。丁度となりにいた、大男のデザンが、俺と勝負するらしい。割と細身である俺とこいつじゃあ、勝負にならなそうだ。とギークは感じる。その横でマーチェは涼やかな目で、デザンを見つめていた。
マーチェ「あんた、応募したの?」
デザン「嗚呼、肉はうまいし、あんたのためにもっと役に立ちたい。」
2人は大衆が囲む中、それぞれ、用意された箇所に夜、様々な果物や、玩具、市場を開催している最中に、人々はその試合の周りの壇を汚すことはなかった。綺麗に縁取られたサンクチュアリに、ギークとデザンはお互いの信頼をおける仲間と妻から声援を貰っていた。
2人はそれなりに真剣な顔をしていた。デザンはこれまでの不甲斐なさと感じている感情を払拭せんと意気込んでいる。外野から、獣人の声援がギークへ届く。
「負けなし!今回は俺たちと共になれ!」
「ギークさん!頑張って!」
ユミも声援を送る。
「とりあえず、ギーク…負けてるとこ見たくないからよろしく」
その一言でギークは奮い立つ。
「嗚呼」
王、トートは冷酷でもなく、慈愛でもなく、神妙な面持ちで試合を玉座に座り、見届けようとする。
「我が興を失墜させるなよ、勝利を恵む剣闘士」
そう呟く王には、誰にも肩入れしない心意気があった。王とは、何か?それは血筋だ。これは勘違いしてはいけない。王は王だ。「大地の意志を最も受け継いだ者」…それが王だ。人々は「蒼き瞳」として、太陽の近くに存在する、星より、舞い降りる神聖なる存在である「アムル」を迎えて、実際に目で見ており、そのアムルが最初に連れてきたとされるのが、「ヤシャル、エゼル、ヨウハ」である。彼等は皆、良くそこらに魔物から我々を徹底的に守ってくれる錬金術師と一緒にいる「瞳の使い」の翼と似た頭の後ろに光の玉がある為、一眼で王と分かる。王は定期的に立場を退き、いなくなるが、その詳細は不明だ。
砂の上に無造作に置かれたその、剣は何年も使い続けられた形跡があり、お互いの目の前に、壇の上に突き刺さっている。この剣はもはや、鈍らだ。
それを気にせず、デザンは勢いよくそれを引き抜き、天にそれを向けて、勇み、ギークに向けて、その後丁寧にお辞儀をする。
デザン「先程知り合ったばかりで、申し訳ない。手柄への挑戦は外部の集落の私達にとって、参加することは光栄であり、申請が通れば戦える場。
貴殿のような、先の騒動で散らなかった方と戦えることに感謝します。」
錬金術師は大きく、どよめき、不気味な笑みを浮かべ興奮している。
ギークは静かに、剣を取り、剣先で、自分の手をなぞり、自らの腕を切り落として、花と蛇と兎に変わる落ちた腕を見向きもせず、両手で、剣を構える。
ギーク「いいだろう。少し面白いことを考えてしまった。」
会場は大きく盛り上がる。
試合開始の旗を錬金術師が上げるが、それと同時に、デザンの首は瞬く間に落ちる。
会場は大きく静まり返り、歓声が後から上がるが、その後に、人々は響めく。
何故なら、デザンは「獣人」になった姿と「人のままの姿を保ったまま」の2人に分かれたのである。
ギーク(これは王へ、英雄が2人になった時に喜ぶか?という疑問だ)
王は顎を触り、微笑む。
「実に奇妙で面白い。」
ユミは口の動きだけでギークに伝える。
ユミ(何してんの!あれギークがやったの?)
ギークは答える。
ギーク(疑問だな)
ユミ(はぁ…何か王様、デザンを気に入ってるみたいだったよ。そういう切り抜け方をするのね。派手すぎだってーギークぅ。)
ギーク(ちょっとやばいかも)
ギークは武才に満ち溢れている。




