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第七章 黒鷹の女将軍は裏切りたい

 王都の朝は、前の日より重かった。

 慣れた、とは言いたくない。こんなものに慣れてしまうのは、たぶん危ない。だが、王城の客室で目を覚ました時、窓の外に見える糸の多さに、昨日ほど驚かなかったのも事実だった。

 人の願い。

 義務。

 怒り。

 不安。

 約束。

 借金。

 忠誠。

 好意。

 王都の上には、それらが朝靄のようにかかっている。見ようとすると際限がない。リュシエンヌの言った通り、全部を見ていたら身が持たない。剣士が戦場で全員の動きを見ないように、自分に関わるものだけを見る。そう決めないと、朝食前に気が滅入る。

 それでも、今朝はひとつだけ、見ないふりができない糸があった。

 王城の北西から、王都の空をかすめるように伸びている、黒に近い赤の糸。

 それは街の中ではなく、外から来ていた。

 遠い。

 だが、強い。

 昨日の西区の帰還兵たちの怒りとも違う。カイラの火のような単純な熱でもない。もっと冷えていて、刃物のように薄く、しかし触れれば深く切れる気配がある。

 戦争の糸。

 そう思った。

 思った瞬間、胸が少し冷えた。

 異世界に来てから、俺は魔物を見た。竜娘も見た。王女にも会った。多少のことでは驚かなくなってきたつもりだったが、戦争という言葉はやはり別だった。

 魔物は怖い。

 竜も怖い。

 だが、戦争はもっと面倒だ。

 理由があり、正義があり、補償があり、命令があり、恨みがあり、報告書があり、記念碑ができる。人が死んだ後も、何年も何十年も重さが残る。

 西区の帰還兵たちが、その証拠だった。

 俺は身支度をし、廊下へ出た。

 すぐにリュシエンヌと合流した。彼女はすでに白い外套をまとい、剣を腰に下げている。朝から背筋がまっすぐだった。

「眠れましたか」

「一応」

「顔色がよくありません」

「王都の糸が多すぎます」

「そうでしょうね」

 彼女は当たり前のように頷いた。

 それから、少しだけ俺の顔を見た。

「無理なら、今日は休んでも」

「殿下が休んでいないでしょう」

「それは、そうですが」

「なら、俺だけ休むと、胸の白い糸が引っ張るんです」

 言ってから、少し後悔した。

 リュシエンヌの表情がほんのわずかに変わったからだ。

 王女イレーネから俺へ伸びた、個人的な白い糸。

 俺は昨日、それを受け取った。

 軽めの約束として。

 国ではなく、彼女を見る、と。

 そのことをリュシエンヌは知っている。カイラも知っている。知っているからこそ、何もなかったことにはできない。

 リュシエンヌから伸びる青白い糸が、少しだけ揺れた。

 寂しさ。

 いや、違う。

 寂しさだけではない。

 自分の好意も、いつか受け取ってもらえるだろうかという、慎重な期待。

 それが見えてしまって、俺は余計に困った。

「リュシエンヌさん」

「はい」

「そちらの糸も、見えています」

 彼女は目を伏せた。

「重いですか」

「いえ」

 俺は少し考えた。

「今のは、持てます」

 リュシエンヌの頬が、ほんの少し赤くなった。

 その瞬間、青白い糸が太くなりかける。

「今のは抑えてください」

「すみません」

「いや、謝らなくても」

「謝ると重くなりますか」

「少し」

「では、気をつけます」

 だんだん会話が妙な方向へ進んでいる。

 そこへ、廊下の向こうからカイラが来た。

 彼女は朝から不機嫌そうだった。金色の髪は少し乱れ、尾の先がゆらゆら揺れている。王城で用意された石造りの部屋は、どうやら竜娘にとってあまり快適ではなかったらしい。

「寝床が硬い」

 第一声がそれだった。

「石造りの部屋でしたからね」

「燃えるものが少ない部屋、と言われた。燃えるものが少ない部屋は、寝心地も少ない」

「寝心地は量で測るものでは」

「人間は燃えないものを作るのが下手だ」

「たぶん、想定している宿泊者が竜ではないんです」

 カイラは鼻を鳴らした。

「王女に言う。竜用の寝床を作れと」

「いきなり王女に家具の発注をしないでください」

「家具ではない。巣だ」

「もっとまずいです」

 リュシエンヌが小さく笑った。

 カイラはそれを見て、少し不満そうにしながらも、火花を出さなかった。成長している。

 俺たちは王女の執務室へ向かった。

 扉の前には、昨日の眼鏡の女性士官が立っていた。彼女は俺たちを見ると、いつもの冷静な表情のまま、ほんの少しだけ眉間を押さえた。

「お三方とも、お揃いで」

「何かありましたか」

 リュシエンヌが尋ねる。

「殿下は昨夜、半刻お休みになり、その後三刻ほど書類処理をされました」

「休んでいませんね」

 俺が言うと、女性士官は真顔で頷いた。

「ほぼ休んでいません」

「止めなかったのですか」

「止めました」

「結果は」

「負けました」

 この人にも苦労があるらしい。

 執務室に入ると、王女イレーネは机の前に立っていた。

 今日も白と青の衣装だが、昨日よりさらに簡素だった。髪はきっちりまとめられている。目の下にわずかに疲れがある。だが、姿勢は崩れていない。

 机の上には、山のような書類。

 空中には王都の地図。

 その地図の西区に、いくつもの印がついている。

「おはようございます、セイジ殿。リュシエンヌ。カイラ殿」

「おはようございます」

 俺は挨拶しながら、思わず言った。

「休みましたか」

「半刻」

「短いです」

「昨日よりは休みました」

「比較対象が悪いです」

 王女は少しだけ微笑んだ。

 その笑みから、細い白い糸が俺へ伸びる。

 胸に軽い重みが乗った。

 軽い。

 持てる。

 ただし、油断するとすぐ重くなりそうな気配はある。

「西区の証言掲示は、夜明け前に始めました」

 王女は地図を指した。

「貴族院から抗議。軍務局から疑義。神殿から申し入れ。商会連合からも、広場周辺の通行規制による損失補填を求める書簡が来ています」

「朝から盛りだくさんですね」

「王都は朝が早いのです」

「揉め事が早起きなだけでは」

「それもあります」

 王女は紙の一枚を取り上げた。

「加えて、北西国境から報告が来ました。ノルヴァルト王国軍が、境界線近くで演習を増やしています」

 リュシエンヌの表情が変わった。

「ノルヴァルトが」

「はい」

 カイラは首を傾げた。

「敵か」

「隣国です」

 王女が答えた。

「友好国ではありません」

「つまり敵だな」

「状況によります」

「面倒だな、国は」

「その点は同意します」

 王女は地図の北西を指した。

 俺にはその地図上に、朝から見えていた黒赤い糸が重なって見えた。

「見えますか」

 王女が聞いた。

「はい。北西から、黒に近い赤の糸が王都へ伸びています」

「戦意でしょうか」

「たぶん。ただ、単純な怒りではないです。冷たい。刃物みたいな感じです」

 王女の目が細くなった。

「黒鷹」

「黒鷹?」

 俺が聞き返すと、リュシエンヌが答えた。

「ノルヴァルトの女将軍、アデライデ・ヴァルク。通称、黒鷹のアデライデです」

「女性の将軍」

「はい。北境戦役で、我が国の補給線を二度断ちました。撤退戦の名手です。攻めるより、相手の足を止めることを得意とします」

「評判は?」

 王女が静かに言った。

「優秀。冷徹。兵を無駄に死なせない。敵国の捕虜にも食糧を配る一方で、必要なら村ごと焼く判断もする」

「また重そうな人ですね」

「かなり」

 リュシエンヌの声には、敵への敬意があった。

「黒鷹のアデライデは、我が国にとって危険な相手です。ですが、無能な虐殺者ではありません」

「厄介ですね」

「ええ。厄介です」

 王女は俺を見た。

「セイジ殿。黒鷹の糸が見えるのなら、いずれ接触する可能性があります」

「遠慮したいです」

「私も、できれば遠慮したい」

 王女がそう言うのは、少し珍しかった。

 その時、扉が叩かれた。

 女性士官が入ってきた。

「殿下。西区の証言掲示前に、帰還兵代表のハルヴァン・ロウ殿が面会を求めています。緊急とのことです」

「通してください」

 すぐに、眼帯の元百人長ハルヴァンが入ってきた。

 昨日より顔色が悪い。

 だが、目ははっきりしていた。

 彼は片膝をつこうとして、王女に止められた。

「膝は不要です」

「昨日の約束通りに、立って話します」

「それで構いません。何がありました」

 ハルヴァンは懐から一枚の布を取り出した。

 焦げた黒い羽の紋章が縫い取られている。

 黒鷹。

 俺にもわかった。

「西区の掲示板に、夜明け前、これが刺さっていました」

「黒鷹の印」

 リュシエンヌが低く言った。

「内容は」

「文字はありません。ただ、裏に糸が結んでありました」

「糸?」

 ハルヴァンは布の裏を見せた。

 そこには、細い青い糸と黒い糸が結ばれていた。

 俺には、その糸が普通の糸以上のものに見えた。

 青は忠誠。

 黒は沈黙。

 そして、その二つを結ぶ小さな赤い結び目。

 裏切り。

 俺は思わず息を呑んだ。

「セイジ殿」

 王女が俺を見た。

「見えていますね」

「はい」

「何が」

「忠誠と沈黙を、裏切りで結んでいます」

 部屋の空気が冷えた。

 カイラが鼻を鳴らす。

「面白い結び方だ」

「面白がらないでください」

「裏切りの匂いがする」

 カイラの金色の目が鋭くなる。

「だが、腐っていない」

「腐っていない?」

「卑怯な裏切りは腐った匂いがする。これは違う。焼けた鉄の匂いだ」

 王女が静かに言った。

「黒鷹が、何かを伝えようとしている」

 ハルヴァンは顔を強張らせた。

「殿下。帰還兵の中に、ノルヴァルトの者と接触した者がいる可能性があります」

「わかっています」

「我々を疑いますか」

「疑う必要があります」

 ハルヴァンの顔が歪む。

 王女は続けた。

「ですが、疑うことと、敵として扱うことは違います。あなた方をまとめて裏切り者にはしません」

 ハルヴァンの青い糸が、少しだけ整った。

 昨日より、王女の言葉はうまくなっている。

 いや、うまくというより、重みを選んでいる。

 その時だった。

 窓の外で、鐘が鳴った。

 一つ。

 二つ。

 急報の鐘。

 女性士官が窓へ駆け寄る。

「西区で騒ぎです。掲示板の前に人が集まっています」

 王女はすぐに外套を取った。

「行きます」

「殿下」

 女性士官が止めようとする。

「今、行かなければ、疑いが広がります」

「護衛を増やします」

「目立たない数で」

「無理です」

「なら、目立ってもいい。急ぎます」

 王女が動くと、部屋中の糸が一斉に引かれる。

 この人は、やはり自分を止めるという発想が薄い。

 俺は言った。

「殿下」

「はい」

「今日も休む練習は」

「後で」

「それ、仕事を増やす人の返事です」

「今は西区です」

 勝てない。

 俺たちは王城を出て、西区へ向かった。

 昨日と同じ通りだったが、空気は違っていた。西区の掲示板の前には、すでに大勢の人が集まっている。昨日ハルヴァンたちが語った死者の名前と証言が、木板に張り出されていた。人々はそれを読んでいる。泣いている者もいる。怒っている者もいる。黙って立っている者もいる。

 その上に、黒鷹の布が刺さっていた。

 王女が広場へ入ると、ざわめきが起きた。

 その瞬間、俺には見えた。

 広場の人々の糸の中に、いくつか、極端に薄いものがある。

 色がない。

 いや、色を隠している。

 人は何かしら重みを持っている。恐怖でも怒りでも好奇心でも、色がある。なのに、その数人だけ、糸が空白だった。

 訓練された沈黙。

 俺は背筋が冷えた。

「リュシエンヌさん」

 小声で言った。

「色のない人がいます」

 リュシエンヌの手が剣に触れる。

「どこです」

「右の屋台の前、灰色の帽子。掲示板の左、杖の老婆。あと、子供を抱いた男」

「子供?」

「たぶん人形です」

 その瞬間、右の屋台が爆ぜた。

 爆発ではない。

 大量の白い煙が噴き出した。

 広場に悲鳴が上がる。

 カイラが反射的に口を開いた。

「焼かない!」

 俺とリュシエンヌの声が重なった。

 カイラは踏みとどまった。

 偉い。

 だが、今は褒めている余裕がなかった。

 煙の中で人々が押し合う。護衛たちが王女を囲む。リュシエンヌは俺の腕を掴もうとした。だが、その前に、誰かが俺の背後から布をかぶせた。

 甘い匂い。

 眠り蔓。

 しまった、と思った。

 息を止めるのが、一瞬遅れた。

 頭が揺れる。

 視界が白くなる。

 リュシエンヌの声が遠くで聞こえた。

「セイジ殿!」

 カイラの咆哮。

 王女の命令。

 人々の悲鳴。

 そのすべてが、布越しに遠ざかっていく。

 最後に見えたのは、色のない糸が俺の手首に巻きつく瞬間だった。

 空白の糸。

 意思を隠した者の重み。

 俺は抵抗しようとした。

 だが、体が動かなかった。

 薄れていく意識の中で、誰かの声がした。

「眠ってください。殺しはしません」

 女の声だった。

 冷たく、低い声。

 そして、どこか疲れた声。

 目を覚ました時、俺は馬車の中にいた。

 揺れている。

 いや、馬車というより荷車に近い。木の箱のような空間で、外の音はあまり聞こえない。手は縛られていなかった。足も自由だ。ただ、起き上がろうとすると頭がひどく重く、吐き気がした。

 眠り蔓のせいだろう。

 薬師エルナにもらった眠気覚ましの青い瓶を思い出す。

 荷物袋はない。

 当然か。

 俺は体を起こした。

 向かいに女が座っていた。

 黒い軍服。

 銀の縁取り。

 肩には黒い羽を象った徽章。

 年齢は三十代半ばくらいだろうか。黒髪を首の後ろで短く束ねている。顔立ちは端正だが、柔らかさより鋭さが先に立つ。左頬に古い傷跡。瞳は濃い灰色。腰には剣。膝の上には黒い手袋を置いていた。

 彼女の背筋は、リュシエンヌとは違う意味でまっすぐだった。

 騎士のまっすぐさではない。

 軍人のまっすぐさ。

 曲がることを許されなかった人間の姿勢だった。

「お目覚めですか、セイジ・アキツ殿」

 彼女は言った。

「あなたが、黒鷹のアデライデさんですか」

「アデライデ・ヴァルク。ノルヴァルト王国北方軍総司令代行。敵国では、黒鷹と呼ばれています」

「誘拐犯、でもありますね」

「はい」

 即答だった。

「否定しないんですか」

「否定しても、事実は変わりません」

「この世界の有能な人たちは、みんな言葉が硬いですね」

「柔らかい言葉で人を連れ去れば、罪が軽くなりますか」

「なりません」

「なら、誘拐です」

 やりにくい。

 また、やりにくい人が出てきた。

 俺は周囲を見回した。

「ここは?」

「王都の地下水路から出た先です。今は移動中ですが、遠くへは行きません」

「俺をどうするつもりですか」

「話をします」

「話なら、王女殿下を通せば」

「通せば、あなたには届かない」

 アデライデの声は静かだった。

「イレーネ王女は優秀です。優秀すぎる。私が正面から使者を送れば、彼女はそれを政治にします。私の言葉は、王国間交渉の材料になり、貴族院、軍務局、神殿、商会、すべてに切り分けられる。その間に、人が死ぬ」

「だから俺をさらった?」

「はい」

「かなり乱暴です」

「戦場では、乱暴でなければ間に合わない時があります」

「それで橋を焼いた竜娘に説教したばかりなんですが」

 アデライデの眉が少しだけ動いた。

「金鱗の竜娘」

「カイラです」

「噂は聞いています。王都に竜種が入ったと」

「あなたの情報網、すごいですね」

「王都に私の眼があります」

「正直ですね」

「嘘をつく時間が惜しい」

 俺は息を吐いた。

 頭がまだ重い。

 だが、意識は戻ってきている。

 アデライデから伸びる糸を見ようとした。

 そして、見た瞬間、言葉を失った。

 複雑だった。

 彼女の胸から、何本もの太い糸が伸びている。

 まず、深い青。

 ノルヴァルト王国への忠誠。

 その青は古く、硬く、軍旗のように張っている。

 次に、黒。

 沈黙。

 作戦。

 敵味方を欺くための影。

 さらに、赤。

 怒り。

 だが、その怒りはエルディア王国へだけ向いていない。むしろ、自国の王城へ、ノルヴァルトの宮廷へ伸びている。

 そして、灰色。

 死者。

 大量の死者。

 彼女が失った兵たち。

 彼女が殺した敵兵たち。

 どちらも混じっている。

 そのすべての上に、細い銀色の糸が一本走っていた。

 鋭い。

 今にも切れそうで、しかし切れない。

 裏切りの糸。

 それは彼女自身の背中から、自分の胸を貫くように伸びていた。

 彼女は誰かを裏切ろうとしている。

 他人ではない。

 自分が忠誠を誓ったものを。

「見えますか」

 アデライデが尋ねた。

「はい」

「では、問います」

 彼女はまっすぐ俺を見た。

「あなたなら、私の裏切りも見えますか」

 その言葉が、馬車の狭い空間に重く落ちた。

 俺はしばらく答えられなかった。

 裏切り。

 普通なら黒や赤だと思っていた。

 だが、彼女の裏切りは銀色だった。

 刃の色。

 自分を切る覚悟の色。

「見えます」

 俺は言った。

「銀色です。あなたの背中から出て、自分の胸を刺している」

 アデライデは目を閉じた。

「そうですか」

「痛そうです」

「痛いです」

 彼女は淡々と言った。

「ですが、まだ足りません」

「足りない?」

「裏切りには、相手が必要です。ただ心で背けば、それは不満です。行動して初めて裏切りになります」

「あなたは何をするつもりですか」

 アデライデは懐から封筒を取り出した。

 黒い封蝋。

 鷹の紋章。

「ノルヴァルト王国摂政府から、私へ下された密命です」

「そんなものを俺に見せていいんですか」

「だから裏切りです」

 彼女は封筒を俺に差し出した。

 俺は受け取ったが、読めない。

 こちらの文字はまだ十分には読めない。簡単なものは意味が伝わることもあるが、正式文書は無理だ。

「読めません」

「読みます」

 アデライデは封を開き、文書を広げた。

「三日後、エルディア王都西区における帰還兵騒擾を支援し、王都守備隊を分散させる。北西境界線にて、エルディア側帰還兵によるノルヴァルト商隊襲撃を偽装。これを口実に国境軍を前進させる。混乱に乗じ、王都内協力者は王女イレーネの移動経路を露呈させること」

 俺はぞっとした。

「暗殺ですか」

「文面には書かれていません」

「でも」

「露呈した移動経路が何に使われるか、私は知っています」

 アデライデは文書を畳んだ。

「ノルヴァルト摂政府は、イレーネ王女を危険視しています。彼女が王位継承争いの中で台頭すれば、エルディアは内乱どころか再編される。そうなれば、我が国はしばらく手を出せない。彼女が死ねば、王都は混乱し、帰還兵の暴動、貴族院の対立、神殿の介入で動けなくなる」

「それを止めたい」

「はい」

「なぜ」

 俺は聞いた。

「敵国の王女でしょう」

「敵国の王女です」

「なら、あなたの国にとっては都合がいいのでは」

「短期的には」

「長期的には?」

「戦争になります」

 アデライデの声が低くなった。

「国境が燃えます。帰還兵は再び徴用される。貴族は名誉のために兵を出し、神殿は戦没者の魂を祈り、商会は軍需で儲ける。若い兵が死ぬ。村が焼ける。捕虜が増える。冬が来る。補給が滞る。凍傷で脚を落とす者が増える。私はそれを知っています」

 彼女の灰色の糸が、馬車の中を満たしそうになった。

 死者の重み。

 数ではない。

 名前のある死者たち。

 昨日のハルヴァンの証言を思い出した。

 トルド。

 ベイム。

 ラシュ。

 サナ。

 そして、アデライデの背後にも、同じように名前があるのだろう。

「あなたは、自国を裏切ってでも戦争を止めたい」

「はい」

「王女殿下へ直接言えば」

「信じられますか」

 彼女は俺を見た。

「敵国の女将軍が、密命を持って現れ、これは本物です、戦争を止めたい、と言う。イレーネ王女は優秀です。疑います。疑うべきです。彼女が疑っている間に、私の国内の者が動く」

「だから俺に見せる」

「あなたは、重みを見る。嘘と誓約と裏切りを見る。あなたが、私の裏切りが本物だと言えば、王女は動く」

「それも俺の利用ですね」

「はい」

 即答だった。

「否定しないんですね」

「否定すれば、あなたは私を信じません」

 アデライデは姿勢を正した。

「私はあなたを利用します。あなたの力で、私の裏切りを王女へ届けたい。見返りとして、あなたを無事に返します。眠り蔓を使ったこと、誘拐したことについては謝罪します」

「謝罪」

「はい」

 彼女は頭を下げた。

 馬車の中で、敵国の女将軍が、俺に頭を下げた。

「すまなかった」

 短い言葉だった。

 だが、重かった。

 彼女の銀色の糸が、少しだけ形を変えた。

 裏切りの刃が、自分だけでなく、俺の前にも差し出される。

 この人は、謝り慣れていない。

 だが、謝ることを弱さだとは思っていない。

 必要なら、謝る。

 必要なら、裏切る。

 必要なら、自分を切る。

 そういう人なのだ。

「俺をさらったことは、普通に悪いです」

「はい」

「怖かったです」

「はい」

「リュシエンヌさんとカイラさんと殿下が、たぶん今頃大変なことになっています」

「承知しています」

「承知しているなら」

「それでも、しました」

 アデライデは顔を上げた。

「正しいとは言いません。必要だと判断しました」

「この件を知る者は、私を含めて四人です。ひとりは王都に残り、ひとりは退路を消し、ひとりはあなたを眠らせた。いずれも、私の命令なら死ぬ者たちです。だからこそ、私はこの裏切りを成功させなければならない」

 俺は彼女の糸を見た。

 忠誠。

 裏切り。

 死者。

 怒り。

 沈黙。

 それらの間に、もう一本だけ、細い糸があった。

 色は、くすんだ白。

 願い。

 戦争を止めたいという願い。

 それは驚くほど細かった。

 大軍を動かす女将軍の願いが、こんなに細い。

 それでも切れていない。

「あなたは、王女殿下に似ています」

 俺は言った。

 アデライデの眉が動いた。

「侮辱ですか」

「褒め言葉かどうかは、俺にもわかりません」

「どこが」

「民を守るためなら、自分を道具にするところです」

 アデライデはしばらく黙った。

「イレーネ王女も、そうですか」

「はい」

「なら、彼女は危険です」

「なぜ」

「自分を道具にする者は、他人も道具にできます」

「あなたも?」

「はい」

 即答だった。

 本当にやりにくい。

「だから、セイジ殿」

 アデライデは静かに言った。

「私を信じる必要はありません。私の重みを見てください。そして、王女に伝えてください。黒鷹は自国を裏切る。三日後の偽装襲撃を止めるために」

「あなたはどうなるんですか」

「戻れば処刑。戻らなければ亡命者。どちらにしても、軍人としては終わりです」

「それでいいんですか」

「よくはありません」

 彼女は初めて、少しだけ苦笑した。

「私はノルヴァルトを愛しています。私の兵を愛しています。あの国の雪も、黒い森も、硬いパンも、冬の朝に鳴る鐘も、愛しています。だから裏切るのです」

 矛盾している。

 だが、見える糸は矛盾していなかった。

 忠誠があるから、裏切る。

 愛しているから、止めたい。

 そんなことがあるのか。

 あるのだろう。

 この世界でも、元の世界でも。

 俺は額を押さえた。

「これは、かなり重いですね」

「でしょうね」

「あなたの裏切りを俺が受け取ると、どうなります」

「わかりません」

「わからないことを人に乗せるんですか」

「はい」

「正直すぎます」

 アデライデは懐から小さな瓶を出した。

「眠り蔓の解毒です。飲んでください」

「今さら毒殺では?」

「毒殺するなら、あなたが眠っている間にできました」

「合理的ですね」

「不安なら、私が先に飲みます」

 彼女は瓶の蓋を開け、一口飲んだ。

 そして俺に渡す。

 俺は少し迷ったが、飲んだ。

 苦い。

 エルナの眠気覚ましほどではないが、十分に苦かった。

 頭の重さが少し引いていく。

「ありがとうございます」

「こちらこそ」

「こちらこそ?」

「話を聞いていただいた」

 その言葉は、想像より軽かった。

 いや、軽いのではない。

 アデライデは、自分の感謝を俺に乗せないようにしている。

 軍人らしい節度。

 あるいは、これ以上利用しないための距離。

 その距離が、逆に少し痛かった。

 馬車が止まった。

 外で短い合図。

 アデライデが剣に手をかけた。

「来ました」

「誰が」

「あなたの同行者たちでしょう」

 その直後、馬車の屋根が消えた。

 正確には、吹き飛んだ。

 金色の爪が屋根板を引き剥がし、夜空が見えた。

 カイラの顔が上から覗き込む。

 目が燃えていた。

「セイジ」

「はい」

「焼いていいか」

「駄目です」

「まだ何も聞いていない」

「聞く前から駄目です」

 カイラの後ろに、リュシエンヌがいた。

 彼女は馬車の側面から扉を開けるのではなく、剣で留め具だけを切ったらしい。扉が静かに外れる。怒っているのに動きが正確だ。

「セイジ殿」

「はい」

「ご無事ですか」

「たぶん」

「たぶんでは困ります」

「眠り蔓を少し」

 リュシエンヌの目が細くなった。

 青白い糸が一気に強くなる。

 その後ろから、王女イレーネの声がした。

「黒鷹のアデライデ」

 王女まで来ていた。

 護衛を数名連れているが、多くはない。場所は王都外れの古い水車小屋の近くだった。どうやって見つけたのかはわからないが、おそらくカイラの嗅覚とリュシエンヌの追跡能力、そして王女の情報網が全部使われたのだろう。

 アデライデは馬車から降りた。

 剣は抜かない。

 両手を見える位置に置いた。

「イレーネ王女殿下」

「敵国の将が、王都内で私の協力者を誘拐しました」

「はい」

「弁明は」

「ありません。理由はあります」

「聞きましょう」

 王女の声は冷たかった。

 だが、怒りだけではない。

 興味もある。

 警戒もある。

 そして、たぶん俺の胸から伸びる白い糸を通じて、彼女は俺がまだ話を遮っていないことを感じている。

「殿下」

 俺は言った。

「彼女の裏切りは、本物です」

 王女が俺を見た。

「見えたのですね」

「はい」

「色は?」

「銀色です。自分を刺している」

 王女の表情が変わった。

 ほんのわずかだが、確かに。

「黒鷹」

 王女はアデライデに向き直った。

「話してください」

 アデライデは密命文書を差し出した。

 王女の護衛が受け取り、確認してから王女へ渡す。王女は文書を読み、目を細めた。

 読み終えるまで、誰も喋らなかった。

 カイラだけが、今にも火を吐きそうに鼻を鳴らしていた。

「三日後」

 王女が言った。

「西区騒擾支援。国境偽装襲撃。私の移動経路露呈」

「はい」

「あなたは、これを止めたい」

「止めます」

「なぜ私に直接来なかったのですか」

「あなたが、私の言葉を政治にするからです」

 王女の目が少し鋭くなった。

「的確ですね」

「敵を調べるのは軍人の務めです」

「誘拐は不要でした」

「必要と判断しました」

「誤りです」

「かもしれません」

「謝罪は?」

 アデライデは王女へ向かって頭を下げた。

「あなたの協力者を誘拐したことを謝罪します」

「私のものではありません」

 王女は即座に言った。

 俺は少し驚いた。

 昨日なら、彼女は「国の」と言ったかもしれない。

 だが今は、言わなかった。

 王女は続けた。

「セイジ殿は、私の協力者である前に、セイジ殿自身です」

 胸の白い糸が、軽く引かれた。

 俺は黙ってそれを受け取った。

 アデライデが俺を見た。

 その目に、ほんの少し驚きがあった。

「王女殿下は、学ぶのが早いですね」

「あなたに褒められても、嬉しくありません」

「でしょうね」

 二人の間に、冷たい火花のようなものが散った気がした。

 この二人は似ている。

 似ているから、噛み合わない。

 似ているから、見えてしまう。

 王女は文書を畳んだ。

「この密命が本物なら、三日後までに西区を安定させ、国境の偽装襲撃を防ぎ、私の移動経路を偽装する必要があります」

「さらに、あなたの周囲にノルヴァルト協力者がいる」

 アデライデが言った。

「誰です」

「それは、まだ言えません」

 カイラが唸った。

 リュシエンヌの手が剣にかかる。

 アデライデは動じなかった。

「私が名を出せば、その者は切られます。すると、その先の糸が途切れる。偽装襲撃を指示した中枢へ届かない」

「あなたは、こちらにも策を指図するのですか」

 王女の声は冷たい。

「必要なら」

「敵国の女将軍が」

「戦争を止めるためなら」

 沈黙。

 俺は二人の糸を見ていた。

 王女からは白金の民への愛と、俺へ伸びる細い白。国を守る重み。

 アデライデからは深い青の忠誠と、銀の裏切り。自国を愛するがゆえに、それを裏切る重み。

 二つの重さは、似ている。

 違う国から伸びているのに、根は同じだ。

「殿下」

 俺は言った。

「彼女は、あなたと同じくらい、自分の国を愛しています」

 王女の目が揺れた。

「同じくらい?」

「たぶん。ただ、向きが違う。殿下は国を守るために民へ広がっている。彼女は戦争を止めるために、自分の忠誠を切ろうとしている」

 アデライデの銀色の糸が、少し震えた。

「そして」

 俺は続けた。

「どちらも、自分を道具にしすぎです」

 カイラが鼻を鳴らした。

「同類か」

 リュシエンヌが小さく言った。

「どちらも危うい」

 王女とアデライデは、同時に黙った。

 その沈黙が、少しだけおかしかった。

 おかしい状況ではないのだが、二人ともあまりにも似た顔で黙ったので、ついそう思ってしまった。

 王女はやがて言った。

「黒鷹。あなたを信用はしません」

「当然です」

「ですが、あなたの裏切りの重みを、セイジ殿が見た。その事実は使います」

「使ってください」

「あなた自身も使います」

「承知しています」

「ただし」

 王女は俺を一瞬見た。

 そして言い直した。

「あなたを道具としてではなく、交渉相手として扱います」

 アデライデの表情が、ほんの少し変わった。

「それは、甘い」

「学習中です」

 王女は言った。

「甘さと軽さの違いを」

 俺の胸の白い糸が、ふわりと揺れた。

 王女が、少し誇らしげに見えた。

 困る。

 そういう表情をされると、こちらまで少し嬉しくなる。

「では、交渉を」

 アデライデが言った。

「私はノルヴァルトの密命の詳細を渡します。代わりに、王女殿下には偽装襲撃を表沙汰にせず潰していただきたい」

「なぜ」

「表沙汰にすれば、摂政府は開き直る。私の裏切りを口実に、より強硬な将を送るでしょう」

「あなたを守れと?」

「私ではなく、戦争を止める道筋を守っていただきたい」

 王女は少し考えた。

「条件があります」

「何でしょう」

「あなたは一時的に王城の保護下に入る。名目は捕虜ではなく、非公式接触者。逃亡すれば、私はあなたを敵将として扱う」

「承知しました」

「セイジ殿を誘拐した件については、別途処分を検討します」

「受けます」

「そして」

 王女の声が少しだけ強くなった。

「今後、私の協力者に眠り蔓を使わないでください」

「誓います」

 アデライデはそう言った。

 その瞬間、彼女から細い銀と青が混じった糸が伸びた。

 俺へではない。

 王女へ。

 敵同士の誓約。

 冷たく、硬く、しかし明確な糸。

 王女もそれを受けた。

 俺には見えた。

 王女の白金の糸と、アデライデの銀青の糸が、空中で細く結ばれる。

 友好ではない。

 信頼でもない。

 戦争を止めるための仮の結び目。

 持てるかどうかは、まだわからない。

 だが、結ばれた。

 その時、遠くで鐘が鳴った。

 王都の方角。

 急報ではない。

 夜の鐘だ。

 空はすっかり暗くなっていた。

 カイラが俺のそばに来た。

「セイジ」

「はい」

「さらわれるな」

「俺もそう思います」

「今度さらわれたら、焼く」

「まず考える」

「……考える」

 かなり不満そうだった。

 リュシエンヌも近づいてきた。

「セイジ殿」

「はい」

「次から、私の手の届くところにいてください」

 青白い糸が伸びる。

 少し強い。

 だが、これは持てる。

「努力します」

「努力では困ります」

「では、なるべく」

「それも困ります」

 彼女は珍しく譲らなかった。

 俺は少し考え、頷いた。

「わかりました。手の届くところにいます」

 青白い糸が、胸元で結ばれた。

 肩ではなく、胸の近く。

 王女の白い糸とは少し場所が違う。

 カイラの金色も、背中で小さく熱を持つ。

 そしてアデライデの銀色の裏切りの一部が、俺の手のひらに残っていた。

 重い。

 また増えた。

 だが、これは好意ではない。

 信頼でもない。

 証言の重み。

 俺が見たと言った責任。

 王女がアデライデを完全には信用しないように、アデライデも王女を完全には信用しない。二人の間にいる俺が、裏切りの重さを見た者として立たされる。

 面倒だ。

 非常に面倒だ。

 だが、見なかったことにはできない。

 王都へ戻る馬車の中、俺は四人と一緒だった。

 王女イレーネ。

 リュシエンヌ。

 カイラ。

 そして、敵国の女将軍アデライデ。

 妙な並びだった。

 王女と女将軍は向かい合い、互いに沈黙している。リュシエンヌは俺の隣で警戒を解かず、カイラは窓から顔を出しかけて、王女に「火花が外へ出ます」と注意されていた。

「人間の馬車は狭い」

 カイラが言った。

「竜基準では、ほとんどのものが狭いです」

 俺が言うと、カイラは不満そうに尾を丸めた。

 アデライデが俺を見た。

「セイジ殿」

「はい」

「あなたは、私を赦しますか」

 急に難しいことを聞かれた。

「誘拐の件ですか」

「はい」

「今すぐは無理です」

「そうですか」

「でも、話は聞きました」

「十分です」

 彼女は頷いた。

 その反応が、少しだけ人間らしかった。

 王女が静かに言った。

「黒鷹。あなたは、赦されたいのですか」

 アデライデは少し考えた。

「いいえ」

「では、なぜ聞いたのです」

「私が彼を傷つけたことを、彼がどう持つのか知りたかった」

「なるほど」

 王女は俺を見る。

「セイジ殿は、また重みを増やしましたね」

「殿下も増やしてます」

「否定できません」

 王女は少しだけ笑った。

 アデライデがその笑みを見て、ほんのわずか目を細めた。

「噂と違いますね」

「何がです」

「氷冠の王女は、笑わないと聞いていました」

「最近、少し練習しています」

「笑う練習ですか」

「人である練習です」

 馬車の中が静かになった。

 アデライデは、王女をしばらく見ていた。

「それは、よい練習です」

 短い言葉だった。

 だが、その中には敵国の将としてではない、一人の人間から一人の人間への、かすかな敬意があった。

 王女の白金の糸が少し揺れた。

 受け取るかどうか、迷っている。

 俺は小声で言った。

「持てる重さだと思います」

 王女は俺を一瞬見た。

 そして、アデライデへ向かって頷いた。

「受け取ります」

 アデライデも頷いた。

 敵同士の間に、本当に細い糸ができた。

 友情ではない。

 好意でもない。

 だが、戦争を止めるには、たぶんこういう細い糸が必要なのだろう。

 王都の灯りが近づいてきた。

 三日後の偽装襲撃。

 西区の帰還兵。

 王女暗殺の可能性。

 ノルヴァルトの協力者。

 黒鷹の裏切り。

 俺の帰還方法は、また遠ざかった気がする。

 だが、今度はただ遠ざかったのではない。

 俺自身が、見えてしまった道の上に立っている。

 馬車が王城へ入る直前、アデライデが窓の外を見ながら言った。

「セイジ殿」

「はい」

「裏切りは、忠誠より軽いと思っていました」

「違いましたか」

「重いです」

「でしょうね」

「ですが、戦争よりは軽い」

 俺は何も言えなかった。

 王都の門が開く。

 夜の王城が、白く浮かび上がる。

 その上空には、また無数の糸がかかっていた。

 その中に、新しく銀色の一本が混じっている。

 黒鷹の裏切り。

 敵国の忠誠。

 戦争を止めたいという、細い願い。

 俺はそれを見上げた。

 そして思った。

 たぶん、明日からもっと重くなる。

 そう思っているのに、逃げようとは思わなかった。

 それが一番、困った変化だった。


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