第二十四話「鋼鉄」
※この物語はフィクションです。登場人物、団体名、設定などは架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
調査隊壊滅バーン!作戦開始ドーン!
全て壊滅ドーン!
宗教黎明バーン!!宗教中興ドーン!!
現代描写バーン!!宗教分裂ドーン!!
国家乱立バーン!!断片開示ドーン!!
聖戦会戦バーン!!救世発生ドーン!!
大公発見バーン!!王国黎明ドーン!!
大公昏睡バーン!!大公覚醒ドーン!!
前線状況バーン!!!研究停滞ドーン!!!
組織改編バーン!!!試験と前線ドーン!!!
監視と外交バーン!!!外交の前提ドーン!!!
天翔ける銅線、流れるは電子の玉突き、地面の石畳には摩耗が見て取れる。
街路に存在するガス灯は、日が暮れれば周囲の官庁街を仄かに照らし出す。
馬車は重苦しく、堅牢な白い宮殿に向けて進んでいた。
翻るは、ロイエンベルクでもロムルスでもない。
馬車に乗る男は、白い宮殿の中で降り立った。
ドーム状の屋根、左右対称に伸びる回廊は、複数階に及びそれそのものが建物となっている。
圧すら感じる宮殿から、別の一団が現れると、一団の一人が、大仰な笑みを浮かべると、両腕を広げ男に告げた。
「ようこそおいでくださいました、リアム大使。
公王陛下より、私共が案内するように、仰せ使っております。」
リアムは静かに微笑む。片手を差し出し、返す。
「お迎えいただき感謝いたします。これからは長い付き合いとなれる事を祈っております。」
男は、その手を取らずに、笑みを崩さず言った。
「それは公王陛下がお決めになる事柄でありましょう。
では、こちらに。」
リアムは数瞬、目を細める。すぐに元の微笑に戻ると、短く答える。
「なるほど。」
リアムを囲むように、一団は進む。
「ここはフュルスト・ハレと言いましてね。」
男は進む最中で語った。
「時の公王、大王フリードリヒの治世に起工し、実に20年の歳月をかけて建立されたのです。
公国の象徴にして公王陛下の権威の象徴であり…。」
話は何処までも続いていく。途切れることなく垂れ流される言葉の群れに、リアムは微笑みを崩すこともなく、時折相槌を打った。
語言は右から左へと流れてゆく中で、一行はとある一室に行き着く。
分厚いオークの扉は開かれ、その中の椅子、革張りのそれにリアムは着席する。
男を含めた一団は扉を背にし壁に並ぶと、暫しの時が流れた。
身動ぎもせずに待つ中で、空間は痛いほどの静寂に包まれる。
四方に紋章が翻る。そうして、別の扉が軽やかに開いた。
「やぁ、待たせたね、リアム大使。」
滑らかなロイエンベルク語が、その人物を象る。
リアムの向かいに座る。
一団は跪き、そうしてリアムは口を開いた。
「いえ、問題ありません、フリードリヒ・アルブレヒト陛下。」
公王は、穏やかに微笑み、和やかな口調で続ける。
「そうかい、ならば良かったよ。父祖の地より来たるロイエンベルクの大使よ、我がベルン公国は、貴国を歓迎しよう。」
リアムは彼の目を見遣る。その目は、冷ややかに輝いていた。
「…感謝します、アルブレヒト陛下。」
公王は、目を細めてリアムを見つめる。そうして、再び口を開く。
「君たちが、我が公国に用があるのは既に聞いている…単刀直入に聞こう。
何の様なのかね?」
「今更」。その意が聞き取れる中で、リアムは微笑みつつ答えた。
「我等も実直を美とします。えぇ、貴国と同じように。
その様に致しましょう。」
痛いほど冷え込む空気の中で、リアムは続ける。
「我が国と、共同戦線を結んでいただきたい。」
時が止まる。そう錯覚を覚えるほど、彼等の硬直は確かなものだった。
「今…なんと?」
公王は、目を見開き聞き返す。
「共同戦線を張りましょうと、そう提案したのです。実直は我等の共通の文化だと、少なくとも我等が王家は認識しておりますので。」
ただ只管の無表情が公王に貼り付く。数秒か、数十秒かの後に、彼は言った。
「…先ずは、理由を聞こう。話はそれからだ。」
声すら硬く響く。リアムは笑みを崩すことなく、淡々と声を発する。
「我等ロイエンベルク王国は、未曾有の危機に晒されています。
特級怪物…旧時代の遺産が今更のように興ったのです。
そして…」
「お待ち頂きたい、リアム大使。」
公王が口を挟む。そうして、一団に払うように手を振る。
男は目を見開き、口を何度か開け締めする。公王がもう一度手を振ると、男は口を噤み、深々と頭を下げると、一団を引き連れて退出する。
硬い沈黙が、両者を隔てた。
「失礼した。リアム大使。続け給え。」
リアムは、咳払いをして続ける。
「いえ、こちらこそ、不用意でした。
ともあれ、その特級怪物が目覚めようとしているのです。
旧時代を滅ぼし、迷信を過去の物とした災厄、その遺産が。」
公王は無表情で沈黙する。しかし、直ぐにアルカイックスマイルを浮かべた。
「なるほど。事態は把握した。しかし、それとこれとは別の話であろう。
我が国と貴国の共同戦線を張る理由にはならん。」
リアムは、静かに頷く。
「仰る通りです。全くもって真っ当な話だと、私も考えております。」
公王は笑みを崩さない。その中で、彼は続けた。
「それでは、貴国は亡びることになりますがね。」
公王のアルカイックスマイルが凍る。
「特級怪物の活性化に伴い、魔境もその活動を活発化している、というデータが我が国の研究機関より上がっております。
現物も持参しております。」
リアムは、両者の間、横たわるオークの長机に、書類を置いた。
「こちらです。そして、特級怪物は我が国単体ではハッキリ言って手に負えません。そして、特級怪物が目覚めようとする、その余波だけでも魔境の活性化は悍ましいほどなのです。」
公王は書類を捲る。
「…我等がロイエンベルク王国が抱える魔境は、他国のそれよりも活発です。
その事は、かつて我等が王家に仕えた者から生まれた、貴国もよくご存知かと、我々は考えております。」
書類を捲る音は止まない。
「我等から離れ、独自に技術を磨き上げてきた貴国だからこそ、我等が王家も私を派遣したのです。
我等ロイエンベルクが抑え込んできた魔境。
本来ならば、大陸すら飲み込んでいたはずのそれを、我々は…。」
音が止んだ。公王は口を開くと、言った。
「もう良い。もう、十分だ。」
公王は、冷ややかに続ける。
「恩着せがましい態度は辞めていただこう。
我等は、貴国と対等なるベルン公国だ。始祖公は貴国の出であることは歴史的事実であり、そして貴国の担ってきた責務もまた歴史的事実ではあるが、だからといって我がベルンが従う道理は無い。」
無表情な時間が流れる。置き時計の音だけが響いていた。
「…盟約を同じくする。」
公王の言葉に、リアムはいぶかしげに片眉を上げる。
「我等が始祖公が残した言葉に、そんなものがあるらしい。
対等なる個人ないし集団同士が結ぶ、対等な関係であるそうだ。」
公王は、リアムを無視して続けた。
「『同盟』と、そう言うらしい。余とて、ベルン公国の公王である以上、ロイエンベルクの責務。その重さは叩き込まれている。
…当然、条件がある。本交渉ですらない。宜しいですかな、リアム大使?」
リアムは、初めて心寄りの笑顔を浮かべると、力強く頷く。
「勿論ですとも、アルブレヒト陛下。」
3度目のロイエンベルク=ベルン会合は、その顛末の多くが謎に包まれている。
終始否定的であったベルンが、何故応じたのか、資料は未だ公開されていない。
それは、ロムルスの宴会、グスタフ大使のそれと時を同じくしていた。
本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体2週間に1話で投稿しています。
前後作も読んだ方が、時系列が分かりやすくなると思うので、オススメです。




