第二十五話「権威」
※この物語はフィクションです。登場人物、団体名、設定などは架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※用語解説
レウエンベルク…ロイエンベルクのロムルス語読み
グスタブス…グスタフのロムルス語読み
ロマリア…ロムルスの現地語読み
タイフォン…テュポーン(特級怪物)のロムルス語読み。
最高皇祇官…皇帝を頂点とする儀式を執り行う役職。
調査隊壊滅バーン!作戦開始ドーン!
全て壊滅ドーン!
宗教黎明バーン!!宗教中興ドーン!!
現代描写バーン!!宗教分裂ドーン!!
国家乱立バーン!!断片開示ドーン!!
聖戦会戦バーン!!救世発生ドーン!!
大公発見バーン!!王国黎明ドーン!!
大公昏睡バーン!!大公覚醒ドーン!!
前線状況バーン!!!研究停滞ドーン!!!
組織改編バーン!!!試験と前線ドーン!!!
監視と外交バーン!!!外交の前提ドーン!!!
ベルン公国バーン!!!
パイプオルガンの音色、波が空間を満たす。
周囲には人工の小川が広がり、重厚な白樺の机に載せられたものは、蒼に捕らわれ倒れることは無い。
トーガの群れが蠢き、思い思いの歓談に耽り、ある者は隅で何事か抑えて話している。
そんな中で、一人だけ、青いスーツに身を包む男が居た。
男の周りにいる者は、幾ばくか大きな声で囁やきあう。
「あの者は?」「何だったかな…レウエンベルクという国から来たという。」「レウエンベルク?かのような異邦とは…とんだバルバロイではないか。」「あぁ、思い出した。」
「グスタブスだ。」
「彼の名前は。」そう独りごちる者は、一人の存在に目を留めて道を開ける。
その周囲も、手を腹に当てて頭を垂れる中、一人の男が、スーツの男に向けて歩み寄った。
「グスタフよ。此度の宴、我がロムルスとしての歓待は、楽しんでもらえているかな?」
グスタフは、一つ、頭を下げ、そして男の目を見据えると答える。
「えぇ、ロムルスは美食の国だと聞いておりましたが、実に過小な表現であったと感嘆する次第です。
調度品も実に素晴らしい。」
グスタフは周囲を見渡し、微笑みながら続けた。
「我がロイエンベルクでは、机を魔導具にする事はありません。
このような壮麗長大な建物もまた、稀でありますから、当然、美しい小川が屋内にせせらぎを魅せるなど、夢のまた夢でありましょう。」
彼は、間を置くと、結ぶ。
「総じて、ロイエンベルク王国の使者として、ロムルスの歓待には非常に満足しております。皇帝陛下。」
その言葉に、皇帝は緩やかに頷くと、言った。
「それならば、余個人としても、ロマリアのアブソルートゥムとしても、祝うべきであろうな。」
大仰に片腕を広げ、場の全てに響く静かな声を、皇帝は発する。
「ロイエンベルクの客人、グスタフに!」
そうして、ゴブレットを持つ片手を掲げると、広間が震える程の歓声が上がる。
その歓声は、奇妙に冷気を伴っていた。
グスタフに、ロムルス貴族の波が迫る。
旧暦時代、ロマリア千年伝説、共和政から帝政へ。
グスタフの話など、その狭間に飲まれていく。
人の波は次第に収まる。その頃には、グスタフの表情筋は些か引き攣っていた。
そんな彼に、皇帝が声を掛ける。傍らには、白いトーガに身を包む者共が居た。
皇帝が、口を開く。
「楽しんでいるようで、何よりだ。グスタフよ。」
グスタフは、衣服を整えると、軽く頭を下げ、言った。
「皇帝陛下。良き歓待に感謝致します。」
皇帝はアルカイックスマイルを浮かべ、後方の男達を手で示す。
「彼等を紹介しよう。グスタフ。貴兄の目的には、欠かせぬ者たちだ。」
暫しの沈黙。破ったのは、グスタフであった。
「皆様、お初にお目にかかります。ロイエンベルク王国外務省より渡来しました、グスタフであります。」
男達の中で、初老に差し掛かろうかというものが、頷き口を開く。
「ロマリア帝国元老院議員、クレイスだ。アブソルートゥムへの絶対的な服従者である。」
クレイスに続き、中年の男が声を発した。
「同じく、最高皇祇官セリヌンティウス。ロマリアの下僕と言われている。」
最も若手に見える男は、無表情に答える。
「護民官ガイウス。ただ、民衆の下僕たらんと欲している。」
皇帝は、笑みを深めると、言った。
「皆、余の忠実な臣下であり…。」
グスタフの目を鋭く見つめ、続ける。
「元老院の有力者達だ。」
ゆっくりと左右に歩き、そして皇帝は言った。
「要件を聞こうか。王国の使節、グスタフよ。」
グスタフは、周囲を密かに見渡す。皇帝はそれを見やると、声を発する。
「案ずることは無い。余の周囲を越える場に、ここでの音は届かぬ。」
紫色のトーガは、微かに蒼く揺らめていた。
グスタフは、静かに笑みを消すと、皇帝を見つめる。クレイス、セリヌンティウス、ガイウスの顔を其々見やり、口を開く。
「ならば、良いでしょう。出来うるならば、大使館にあるトーガを身に着けておきたかったところではありますがね。」
そうして、ゴブレットの中身を飲み干すと、彼は続けて言った。
「ロイエンベルク王オットー6世陛下より、ロマリア皇帝オクタウィアヌスへの意志を授かっております。」
皇帝は、片眉を上げ、問う。
「ロイエンベルクの王は、なんと?」
グスタフは、一息に答えた。
「我がロイエンベルク王国は、ロマリア帝国との共同戦線を提案します。」
クレイスの顔が歪む。セリヌンティウスは眉を顰め、ガイウスの顔は変わらない。
皇帝は、口を開くクレイスを止めるように片手を挙げ、緩やかに下げながらグスタフに問うた。
「何に対するものだ?」
グスタフは、淡々と言う。
「特級怪物…確か、こちらの言葉で言うところの…」
「タイフォン」
皇帝は、目を見開き声を発する。直ぐにアルカイックスマイルへと戻り、そして聞いた。
「俄には信じがたい。アレは眠っていた筈だが?」
グスタフは、静かに答える。
「えぇ、つい数年前までは。」
「よろしいですか?」そう断りを入れ、グスタフは懐から書類を取り出す。
滑らかな紙面には、規則的な文字が並んでいた。
「これが、証拠となります。あぁ、ご安心ください、ロマリア語への翻訳は済んでおります。」
差し出された書類。クレイスは皇帝と目配せし、ゆっくりとソレを受け取った。
紙面がめくれる。クレイスは一つ頷くと、ソレを皇帝へと渡した。
数分に渡り、紙のこすれる音が響く。
皇帝は、書類をクレイス達に手渡す。その顔は、些か蒼白に近づいていた。
それは、伝染するように面々へと広がっていく。
「何故だ。」
掠れるような声で、皇帝は問うた。
皇帝は、続けて言う。
「何故、我々に助けを乞う。否、それだけではない…。」
グスタフは黙して語らず、皇帝は口を開く。
「何故抗えるのだ。」
グスタフは答えない。
「旧暦時代、貴様らの地は蛮族の地であった。それは貴様らの咎ではなく、ただただその地が、旧世界の手に負えなかったからだ。
ここにある内容は、真に迫っている。なればこそ…。」
皇帝は、そこで口を閉じる。グスタフは、皇帝の目を正面から見つめ、そして答えた。
「我等には、彼の地しか無かったからであります。
貴方達ロマリアが、この地を平定した理由と、全く同じでしょう。」
皇帝は、少しの間目を瞑る。静かに目を開けると、口を開き、言った。
「話を聞こう。」
本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体2週間に1話で投稿しています。
前後作も読んだ方が、時系列が分かりやすくなると思うので、オススメです。




