第二十三話「端緒」
※この物語はフィクションです。登場人物、団体名、設定などは架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
調査隊壊滅バーン!作戦開始ドーン!
全て壊滅ドーン!
宗教黎明バーン!!宗教中興ドーン!!
現代描写バーン!!宗教分裂ドーン!!
国家乱立バーン!!断片開示ドーン!!
聖戦会戦バーン!!救世発生ドーン!!
大公発見バーン!!王国黎明ドーン!!
大公昏睡バーン!!大公覚醒ドーン!!
前線状況バーン!!!研究停滞ドーン!!!
組織改編バーン!!!試験と前線ドーン!!!
監視と外交バーン!!!
黒い官邸、王国の中枢、白布に覆われる机。
周囲に腰掛ける、数名の人々が居た。
彼等の対面に腰掛ける男が、口を開く。
「本日は、このような場を設けていただいたことに、感謝いたします。」
彼等の真ん中、上座に座る男が静かに言った。
「我がロイエンベルクの大公、貴公の進言の場を奪うようなことはせんよ。
しかし、感謝は受け取っておこう。続け給え、フリードリヒ大公。」
周囲の者共も、軽く頷く。
その様を見遣ると、フリードリヒは、淡々と告げる。
「了解いたしました、陛下。」
そして、続けて声を発した。
「我が王国が、未曾有の危機に瀕していることは、皆様も既に十分御周知の事と思います。
現時点でも、魔物の発生頻度の増大は我が王国の生産能力を超えつつあり…そしてそれは、戦時体制へと移行しつつある中でも改善の兆しを見せません。」
フリードリヒは言葉を切り、オットー6世とその左右に書類を渡すと、続ける。
「また、その書類にあるように、素材の開発も芳しい状態とは言えません。
元凶と見られる特級怪物…判明した呼称によれば、個体名テュポーンの再入眠を目的とし、我々の総力を投じたオーバーチュア作戦も、御存知の通り失敗に終わりました。
我々は、短期、中期、長期、全てに於いて敵に後れを取っているのです。」
書類を見遣る中で、左右の一人が声を上げた。
「我々とて、王国の窮状は理解しています。えぇ、フリードリヒ閣下、貴方が御存知の通りに。
それで、閣下、貴方には何の提案があるというのです?今のところ、我々の置かれた絶望を具体的に突き付けているようにしか思えないのですが。」
フリードリヒは、両手を軽く前に突き出すと、穏やかな低い声で告げる。
「落ち着いて下さい、宰相閣下。前提を共有したまでの事です。」
眉をしかめる宰相に対して、オットー6世は宥めるように言った。
「ルートヴィヒ、少し堪えてくれ。この場を認可したのは、余に他ならないのだから。」
宰相は、手の平で眼鏡を直すと、咳払いをして口を開く。
「承知しております、陛下。言い訳とはなってしまいますが、昨今休みを取れておりませんので…。恐らく、ここに居たのが他の宰相であっても、似たようなものとなったでしょう…。
続けてください、フリードリヒ閣下。」
無表情にその様を見つめていたフリードリヒは、片眉を上げると、少し間をおいて声を発した。
「えぇ、元よりそのつもりですよ、宰相閣下。
話がズレてしまいましたが、私が申し上げたい進言は、以下のとおりです。」
そうして、フリードリヒはもう一つ、書類を配る。
左右のもう一人が、目を見開いた。
その様を横目に、彼は続ける。
「視点を変えるのです。我が王国の危機、特に今回はこの大陸の危機でもあり、そして…。
この大陸に存在する国家は、我が王国だけではないのですから。」
室内が静まり返る。沈泥していた観念、目に見えていた盲点は、音を消すには十分過ぎた。
「…ベルン公国。」
左右のもう一人が、絞り出すように声を発する。
フリードリヒは、微笑みを浮かべ言う。
「そして、ロムルス帝国。共に大国と呼ばれる国だ。我が国に無謀かつ不幸な事態を起こしてきた、量り売りされているような国々とは理由が違う。
外務長官、貴方ならば良くわかるでしょう?」
左右のもう一人、外務長官はため息を吐くと、答えた。
「えぇ、それが私の職務ですから。」
そして、外務大臣は立ち上がり、オットー6世に対して跪き頭を垂れる。
「本来ならば、これは外務長官たる私が提案すべき事柄でありました。申し訳ありません、陛下。どうか、暇を頂きたく存じます。」
オットー6世は、暫く間を起き、そして静かに告げた。
「アドルフ外務長官。それを決めるのは余の権利だ。
余の下に保障され、そして余自身が従う憲法に基づくものだ。
その請願は認められない。引き続き余に仕え、余を支える事こそが貴公の責任である。
よいな?」
脆弱な静寂は、数秒の後に絶たれる。
「…拝命いたしました。我がアドルフ、この身尽き果てるまで、我等が王家のために捧げます。」
そうして立ち上がると、フリードリヒ、そしてルートヴィヒの顔をそれぞれ見て、一礼した。
「お騒がせして申し訳ありません、宰相閣下、大公閣下。どうか続けてください。」
3名の様を見たオットー6世は、口を開く。
「…つまり、大公、貴公は他の三大国との共同戦線を張るべきだと、そう言っているわけだな?」
フリードリヒは大きく頷くと、言った。
「その通りです、陛下。」
オットー6世は顎に手を置き、長く押し黙る。ルートヴィヒは手を挙げ、問いかける
「大公閣下、しかし、我が国は成立よりこの方、他国との共同戦線を構築したことはありません。
その共同戦線は、如何なる条約により保障し、そして運用するのか、何か考えがあるというのでしょうか?」
フリードリヒは事も無げに答えた。
「私は貴族の代弁者たる大公であり、軍人です。それを考えるのは私の役目ではないことは、宰相閣下もお分かりかと。」
張り詰めた空気は、その瞬間に霧散する。
「…良いだろう。」
ルートヴィヒは、眼光鋭く言った。
「陛下、私は反対です。我々には、その様を称する言葉すら無いのですよ。
何より…」
オットー6世は、遮るように声を発する。
「宰相。余は、『良いだろう。』と、そう言ったのだ。」
ルートヴィヒは、深く嘆息し、髪を掻き揚げ、最後に眼鏡を直すと、言った。
「…分かりました。議会と他の宰相への根回しは此方にお任せを。アドルフ外務長官、貴公は外務庁を動員し、ベルン並びにロムルスに使者を派遣してください。」
オットー6世は、アドルフとルートヴィヒに告げる。
「省ですら無い現状では、まともに動けもしまい。
国王大権を用い、議会に此度の外交法案並びに、外務庁の人員増加に伴う省への増強を要請しよう。
あぁ、あと、大公。」
フリードリヒは片眉を上げ、聞いた。
「なんでしょう、陛下?」
オットー6世は、獰猛な笑みを浮かべ、答える。
「貴公にも働いてもらうぞ?ベルンとロムルス、その重鎮を相手にするのは、フリードリヒ、貴公だ。」
フリードリヒは一瞬目を見開き、そして直ぐに瞳を戻すと、言った。
「拝命いたします、陛下。」
それより数刻ののち、紙とペンの歯車は、蒼い火花を散らしながら動き出す。
後世、一連の出来事は次のように呼称された。
『ロイエンベルク外交革命』
本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体2週間に1話で投稿しています。
前後作も読んだ方が、時系列が分かりやすくなると思うので、オススメです。




