第二十二話「胎動」
※この物語はフィクションです。登場人物、団体名、設定などは架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※用語解説
インスラ…古代ローマの集合住宅。4〜7階建ての木造、若しくはレンガ造りのアパートであり、1階には富裕者層が住んでいた。
調査隊壊滅バーン!作戦開始ドーン!
全て壊滅ドーン!
宗教黎明バーン!!宗教中興ドーン!!
現代描写バーン!!宗教分裂ドーン!!
国家乱立バーン!!断片開示ドーン!!
聖戦会戦バーン!!救世発生ドーン!!
大公発見バーン!!王国黎明ドーン!!
大公昏睡バーン!!大公覚醒ドーン!!
前線状況バーン!!!研究停滞ドーン!!!
組織改編バーン!!!試験と前線ドーン!!!
紫の粒子、波形が現れては消えていく。眼前に広がるそれに、金属フレームに包まれた魔導は、蒼い火花を散らし悲鳴を上げていた。
男は問う。
「今日は何倍だ?伍長。」
女は、眉一つ動かさず、火花を散らす機器を操り答えた。
「規定値の3倍です、曹長。前月比10%の濃度上昇が見られます。」
曹長は溜息を吐くと、辺りを見渡す。ガラス張りの室内、焦げ臭さが漂う数多の機器に、兵士たちが張り付いていた。
ある者は宥めるような声をかけ、ある者は手元の紙面に何かを書き込み続けている。一様に目はドンヨリと曇っていた。
曹長は手を叩く。彼に視線が集まると、少し大きな声を上げる。
「諸君、良い知らせと悪い知らせがある。
先ずは悪い知らせだ…また、同胞が一つ消えた。これで5つ目となる。
よって、我が対特級怪物第6観測拠点の業務量は、さらに増えることが予測されるため、覚悟しておく事を推奨しよう。」
周囲からはうめき声が上がる。露骨に悪態をつく者さえ居る。
ざわめきが鎮まると、彼は続けて告げた。
「次に、良い知らせだ。補給隊が、つい先刻到着した。喜べ、今日の食堂には、具無しの鹿肉スープ以外が出るそうだぞ?
さて、私からは以上だ。伍長、後は頼む。」
細やかな興奮が広がる中で、伍長は敬礼して言った。
「ラボール、コマンダンテ。」
黒鷲の翻る彼方、そこは中枢、その一角に、一組の男女が歩いている。
傍らの男に、女は手元の書類を捲りながら口を開く。
「フリードリヒ閣下、これは間違いのない事実です。
特級怪物の胎動…魔素の鳴動は増加しており、周辺の魔素濃度もまた右肩上がりで上昇を続けています。
これらはそのまま、特級怪物の活動増大を示している、コレが中央研究所の見解になります。」
そう言い書類を手渡すと、フリードリヒはそれを受け取りながら答えた。
「なるほど…良く理解した。簡潔な説明に感謝する。引き続き、特級怪物の分析を続けてくれたまえ。
ところで、例の術式の開発はどのような状況だ?
報告書は読んでいるが、所長たる君自らの口から聞きたい。」
クリスティアーネは、少し顔を曇らせる。
「あまり芳しくありません。適性素材の開発に行き詰まっている状況です。
コンペティションの結果も、要求値の三分の一程度までしか届きませんでした。
そこで、一つお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
フリードリヒは、片眉を上げ、訝しげに声を発した。
「私に?済まないが、私は材料工学には明るくない、故に役には立たんと思うのだが。」
クリスティアーネは、少し間を置くと、顔を強張らせて口を開く。
「ハインツ少将を、我が中央研究所に呼び寄せてほしいのです。
彼には不思議な知識が複数あります。もしかすれば、妙案があるやもしれません。
しかし、彼はフリードリヒ閣下からの言うことしか聞かないのです、ですから、どうか…!」
フリードリヒは眉を顰め、暫く沈黙する。顎を指で支えるようにした後に、彼はゆっくりと言った。
「ふむ…確かにハインツは、不可思議な知恵者ではあるが…彼は弾道学専攻だぞ?
それに、彼にはランデールの防衛を担わせている。その要請に従えば、防衛線が崩壊しかねん。」
クリスティアーネは、齧り付くように続ける。
「ランデールの状況は、彼の手紙から知っています。
しかし、ランデールを守る司令官に代えは居ますが、不思議な知恵を持つのは彼以外に居ないのです!
先日の報告より、古今合同研究室の苦境はご理解いただけていると思います。どうかよろしくお願いします、ハインツ少将を、呼び寄せていただきたい!」
フリードリヒは数瞬、目をつむる。そして見開き答えた。
「…分かった。ハインツを呼び寄せよう。」
クリスティアーネが安堵の息を漏らす中、フリードリヒの目は、無機質に廊下を映す。
「矢張り、あの計画を陛下に上申するべきであろうな…。」
小さく呟かれたソレを、聞き届けた者は、決して居なかった。
道を覆う石畳、割れるほどに乾いた大気は、立ち並ぶインスラをつつみ込んでいる。
都市の名はロマリア、仕切られし大都市の中心地には、聳え立つような一つの丘に跨る壮麗な建築物群があった。
柱一つない広大な空間、極彩色の大理石に囲まれ、一人の男が軽くひざまずいている。
その男に対して、響くように係る声があった。
「頭を上げよ。」
男は動かない。
「頭を上げよ。」
再び声が係ると、男は漸く頭を上げる。その眼前には、紫色のトーガを身にまとった男の姿がある。
月桂冠を戴き、玉座に座した男は口を開き、言った。
「よくぞ参られた、ロイエンベルクの使者、遠き北方に住まう者よ。
名を名乗るがよい。」
男は淡々と声を発する。
「私の名はグスタフと申します。ロイエンベルク王国の外交官を務めさせていただいております。」
皇帝は一つ頷き、再び口を開いた。
「よろしい、グスタフよ。余は貴君を歓迎しよう。
ロイエンベルクの者は饗宴を好まぬとは言うが、生憎と我がロマリア帝国では客人は盛大に饗すことになっている。」
そう言い皇帝が手を三度叩くと、極彩色の大理石、その一角が擦るような音を立てて開く。
「悪いが、付き合ってもらうぞ。」
皇帝は、グスタフに向かいアルカイックスマイルを浮かべながら、そう言った。
本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体2週間に1話で投稿しています。
前後作も読んだ方が、時系列が分かりやすくなると思うので、オススメです。




