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責務の王国  作者: Chadenshisu
第二章「熱狂」
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第十六話「糾合」

※この物語はフィクションです。登場人物、団体名、設定などは架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。


前回からの、あらすじ。

魔物増加バーン! 調査決定ドーン! 

調査隊壊滅バーン!作戦開始ドーン!

全て壊滅ドーン!

宗教黎明バーン!!宗教中興ドーン!!

現代描写バーン!!宗教分裂ドーン!!

国家乱立バーン!!断片開示ドーン!!

聖戦会戦バーン!!救世発生ドーン!!

大公発見バーン!!王国黎明ドーン!!

 視界が暗転する。眩くも黒い、何かが弾けようとしているかのように、揺れていた。

そうして眼前が開けた。しかし、以前として暗い。

乾いた音が弾けている。穏やかな橙色が、其処から周囲に広がっていた。


 それが幾つもある。其処には誰も居ない。だが、辺り一帯には兵舎が詰めかけ、油布が張れた天幕が靡いていた。

寝静まった大地、一際大きなテントから、少し抑えられた話声が聞こえている。


 「…兄上、いよいよですね。アイベック、レーベンスシュタット、マルク…此まで、幾つの都市を征服してきたことか。

どれほどの血が流れたことか。

全ては、兄上の目指す『ロイエンベルク』の為に。」


 そう言うアルフォンソに対して、オットーは少し疲れた声で答えた。


 「ククク…アルフォンソ、貴様、随分と棘のある事を言うな。

まったく、誰に似たのやら…。

だが、正論だ。此まで流れた血の責務は、全て私にある。アルフォンソ、貴様だけではない。我が臣下、臣民、須らく私に従っただけのこと。


 …明日になれば私は王となる。もはや後戻りは出来ない。

この為に、ロイエンベルク中から諸侯が集まったのだ。

つまり、なんだ…明日になれば、私は軽々しく礼も言えなくなるわけで…。」


 そう言い淀む彼に、アルフォンソは誂うように問いかけた。


 「つまり、なんです?何か言いたいことでもあるんですか?」


 彼は、少し眉を顰めてアルフォンソを見やり、嘆息して言った。


 「…此まで、ありがとう。本当に、感謝している。」


 アルフォンソは、少し息を呑む。暫く沈黙が流れる。そして、一つ頷くと、アルフォンソは呟いた。


 「どういたしまして、兄上…いえ、陛下。」


 夜は明ける。空が青く、そして紫色から赤くなり、白く染まっていった。

穏やかな春の陽気が降り注ぐなかで、多くの諸侯…この地に存在する全ての諸侯が集う。


 兵舎に人は居らず、風は油布を揺らして、諸侯達へ吹き抜ける。

中心の台座、黒い玄武岩の上に、オットーは立った。

背筋は伸びている、黒いマントがはためいて、彼の姿を彩っていた。


 しばしの静寂、無駄なざわめきが無いのは、流石は歴戦の諸侯といったところか、それとも単にオットーを恐れているのか。

判然と知れない中で、オットーは口を開き、朗々と言い放った。


 「偉大なるロイエンベルクの諸侯よ、今この場に集ってくれた事に、先ずは望外な感謝を伝えたい。」


 その言葉に、彼等はバラバラの拍手を送った。なおざりな者も、ある程度真面目に叩くものも居る。

オットーはソレラを見やり、そして頷く。片手を上げて、拍手を鎮めると言った。


 「彼の地にある、退廃的な宗教国家群が滅び去って、実に百年。

百年だ、百年の時が過ぎた。もはや遠い記憶、否、記録となりて、蒼と紅の衝突の余波は、我等に混沌を齎し続けている。


 瘴気が我等を蝕み、そして魔境から溢れ出る魔物達は、我等を容易に殺戮していく。

故にこそ、我等は団結しなくてはならないのだ。

そのために、我々は戦ってきた。我々ゼンタールは、この地の人民を守り、そして安寧をもたらす為に、諸君らをこの場に呼んだのである。」


 一つ息を吐くと、側に立つアルフォンソが水を差し出す。

それを一気に煽った後で、彼は続けた。額には一筋の汗が流れ、そして地面へと落ちていく。


 「私は考えた、考え続けてきた!何故、魔物に対抗できたはずの宗教国家が滅び去ったのか。どうすれば、それを繰り返さないで済むのか、と。


 そして、今、この場で確信した。王権、絶対なる権力、蒙昧なる物語に期待せず、自らの手で守護者として立ち上がった我等が持つ、正当なる権威こそが、再びの崩壊を防ぐ、唯一にして絶対の手段となるのだと!」


 一度言葉を切ると、彼は場を見渡す。一種の予定調和、されど、そこに物語が与えられたがゆえに、彼等はよく聞いているようであった。

彼は三度語り始める。


 「しかし諸君、絶大なる権力は、一処に留まった水が淀むように、腐り果てていってしまう。

我等が守護者として、正当なる支配者であることを示すために、我等を縛る鎖が必要なのだ。


 この場には、一つの法陣が刻まれている…これから始まる、新時代を象徴する代物だ。

そして、同時にこれは、我等を縛る鎖となる。決断するべきは今しかない。これは契約だ、我等の契約…我等と国家との契約なのだ。


 私は、諸君らが同意するしかない状況を作り上げた。しかし、それは諸君らを守るためのものであるのだ。これが成されれば、未来永劫、我等は無能を曝け出す事を許されなくなる。故にこそ、我等は存在を許されるのだ。


 神の権威を否定し、それでいて君臨し続けようとする我等には、これほどの劇薬が必要となるのである。

考えてみてほしい。諸君らの子、そして孫まではまだ良いとしよう。

だが、それが曾孫となれば?我等が接することすらない遥かなる子孫となれば?その者が有能であると、人民を守れるのか?」


 ある諸侯は顔を顰め、またある者は思わず腰に下げた剣に触れようとする…しかし、そうした武器の類いは、兵舎に置いていることを思い出し、行場をなくして握り拳を作った。


 一人、また一人と、顔立ちが改まっていく。覚悟を決めたのか、はたまた諦念か。

判然と知れぬ中で、広がったざわめきは静まっていった。


 オットーは、一際大きな声を張り上げる。


 「私は、今ここに、ロイエンベルク王国の建国を宣言する!

今より諸君らはわが臣下、そしてロイエンベルクの地に住まうものはわが臣民である!

さぁ、私…否、余に従うは跪き、魔力を捧げよ。

逆らうものは、我が武威を知るがよい!」


 広がる沈黙、アルフォンソが、真っ先に跪き、頭を垂れる。

それに釣られるように、諸侯達は次々と跪いて行った。


 その瞬間、法陣が蒼く輝き、視界を覆い尽くす閃光を発する。蒼い光は白へと変化し、そして艶めかしい黒光りへと収束していく。

それが散った中で、オットーは微笑み告げた。


 「今より我等はロイエンベルク…王国への隷属こそが、我等の責務であると知れ。」


 ロイエンベルク歴001年、ロイエンベルク王国が建国されたのである。

本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体2週間に1話で投稿しています。


前後作も読んだ方が、時系列が分かりやすくなると思うので、オススメです。

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