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視えちゃう僕は、異世界の君と、この世界の謎を解く  作者: HiKaRi
◆第三部◆ 第一章 Blue Bird of Happiness
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父は今どうしているのか

「ある人が飼っていた青い鳥が夜中に逃げ出してしまったんだ。その鳥は星種町の中にいるはずだ。それを見つけて保護し、飼い主の元に戻すのが今回の任務になる」


 これまで僕に与えられた任務は、出現した『CWC(クロスカ)』を無くす対策や、対象者の観察だった。今度は鳥を探すなんて、途方もなさすぎた。僕は尋ねる。


「鳥ということは、あちこち飛び回ってますよね?それをどうやって見つけて保護するんですか?」

「それはコツコツと探し回るしかないかな」


 コツコツ探し回って見つかるものなのだろうか。星種町の中にいると言っても範囲は広すぎる。猫や鳥を専門に探すペット探偵というものがあると聞いたことがあるけれど、そんな経験のない僕たちに見つけ出すことができるのだろうか。さすがに2つ返事で頷くことができなくて、5人共に目を見合わせる。


「そもそもの話ですが、青い鳥をみかけたとして、その鳥が飼い主の鳥かどうかをどう判断するんですか?目印がついているんですか?」

 僕が尋ねると、テルは恵利華をじっと見た。


「飼い主の鳥かどうかを判断するには、恵利華、お前なら出来るはずだ」

「私なら?」


「その鳥の詳しい特徴は俺も知らない。だけど、その鳥は明らかに他の鳥と違うから、恵利華にだけは分かる」

 テルがそういうと、恵利華はピンときたらしい。


「……鳥がまとっている色ね?」

「そういうこと」


 テルはにこやかに微笑んだ。隼人が興味を示す。


「鳥がまとっている色って、何色なんだ?」

「私が今まで見てきた中だと、空を自由に飛んでいる鳥は薄緑色ね。自然と溶け込んだ色だから、見えにくい色かも。ペットショップにいる鳥は青っぽいかしら」


「だが、今回の鳥はそんな色じゃない。恵利華が見たこともない色を放っているはずだ」

「見たことのない色……」


 恵利華がそれがどんな色なのかと、強烈に惹かれた様子がすぐに分かった。これまでずっと生きているもの全てに、いろいろな色を見てきたはずだ。それなのに、まだ知らない色があると知ったら、僕でもそそられる。


「どんな色なのかは見つけた時の楽しみにしておけ。その方が遣り甲斐があるだろう?」

「……うっ、そうね」


 恵利華はこの任務に興味を持ったようだ。


「隼人。お前はこの町の中で『青い鳥』を見たかどうかを聞きまわれ。その鳥がまとっている色は俺たちには見えないとはいえ、特殊な色を放っている。だから無意識に、必ず人の目に付くはずなんだ。情報は必ず集まる。隼人はこれまでだって、情報収集能力は長けていただろう?」


「そうか、必ず集まるのか。そういうことならば、見つけられる可能性は高いな。いろいろ聞きまわるのは得意だし、俺の実力をみせてやるぜ!」


 隼人もどうやらうまく乗せられたようだ。


「そして今回、お前たちにこの任務が回ってきたのには理由がある。その鳥はCWC(クロスカ)と似た特徴があるんだ。あの鳥はな。お前たち全員の世界を跨いで映し出されるんだ」


「僕たち全員の世界にですか?」

「ああ。結人たちの世界で姿が見えるのはもちろん。ここなたちの世界でも姿が見える。そして、その鳥を保護できる人は限られるんだ。この5人の中であれば、ここなとしずく、2人だけだ」


「私たちだけ?」

「どういうことですか?」

 自分たちだけと言われて、ここなとしずくも前のめりになった。


「結人たちの世界とここなたちの世界は次元が違うんだが、そうだな。便宜上、結人たちの世界を3次元、ここなたちの世界を5次元と呼ぶとしたら、その鳥は5次元の世界からでないと保護できない。そもそも3次元の住人は、あの鳥に触れられないんだよ。飼い主だけが例外だな」


「ここなとしずくさんは、その鳥に触れることが出来るんですか?」

「ああ、そうだ」


 その鳥が見えても触れられないのだとしたら、ペット探偵にお願いすることはできない。だからこそ、僕たちにこの任務が回ってきたということなのか。


「でも、どうやって鳥を保護したらいいの?」

「私も鳥さんを捕まえたことなんてないですよ?」


 2人が戸惑っている。ここなたちの世界では、そもそも動物を捕獲するという考え方すらないから無理もない。


「そうだな。その方法については俺から直接、2人に教えるよ。ここなとしずくが嫌がるような方法は何一つない。そこは安心してくれ。だからこそ、2人にしか無理なんだ」


 テルは抵抗感を拭うように懇切な言葉を連ねる。2人は顔を見合わせた。


「それならば、いいかな?」

「うん、ですね」


 ここなとしずくも理解を示したようだ。


「では、今回の任務を一連の流れで伝える!まず隼人が情報収集!その情報を元に恵利華が対象の鳥であるかを判断!そして、その鳥がいる場所をここなとしずくに知らせ、2人は5次元の世界から鳥を保護する!」


 テルがハキハキと彼らを順々に見ながら、指示を出す。


「……僕は?」

 ずっと自分のことは呼ばれていないことに気付き、思わず尋ねる。


「結人はこの『CWC(クロスカ)解決室』のリーダーだろう?」

「え?僕がリーダー?」


 そんなこと一度も話し合ったことはない。だけど、他の4人を見ると疑いもなく当たり前だとでもいうような視線をみんなから貰う。


「そもそも結人が居なければ、この任務は進まないだろう?だから、お前はリーダーとして、4人と協力し、この任務遂行に尽力をつくしてくれ!」


 僕は4人の顔をそれぞれ見る。彼らから僕に返ってくる前向きな表情を受け取り、僕は頷いた。


「分かりました。僕たちでその『青い鳥探し』を頑張ってみます」

「おうよ!」


 こうして僕たち5人での初任務を請け負うことになった。


 *


 任務の説明が終わった後、僕はテルを呼び止めた。どうしても相談したいことがあったのだ。僕はテルと2階の廊下に向かう。


「相談したいことって?」

「僕たちがそれぞれの世界に居たとしても場所を共有できるように、位置情報を確認できるものが欲しいんです」


「位置情報?」

「はい。今回、ここなやしずくさんが自分たちの世界に居ても、僕たちと同じ場所にたどり着けるようにしないといけないですよね。一緒に行動するとなると、2人は僕たちと違う景色の中を歩くことになるので、逸れる可能性もあるし、僕は2人の安全を確認できないんです」


 前回、恵利華の友人である楓の相談に乗った時、ここなを学校の裏山に連れていくのに、そこまでのルートが安全なのかが僕からは分からなくて、隣を歩いていても心配だった。最初から目的地の場所を位置情報で伝えることができれば、現地集合に出来る。ここなたちは自分たちの判断で安全なルートを辿り、同じ場所にたどり着くことが出来るはずだ。


「ああ、確かにそうだな。おっけー、分かった。それに見合うものを手配しとくよ」

「ありがとうございます」


「それと……」

「ん?」


 さっきの件もあったが、どちらかというとこっちの方がテルに一番話したかったことだった。


「実はまた父さんに会ったんです」


 僕は隼人と夜に出かけた際に見かけた父のことが気になっていた。父は僕が見えないし、僕も父に話しかけることができないからこそ、あの日の父の顔が頭から離れない。幼い頃の僕の記憶の中の父はいつだって朗らかに微笑んでいたのに、再会してからの父の顔はいつだって険しかった。


「ああ、そうか。結人も会ったのか」

 テルの返しに僕は驚いた。


「《《も》》ってテルもですか!?」


「案件が重なって、たまたまね。どうやら俺が思っていたとおり、余計なことに首を突っ込んだせいで、特命を受けることになってたよ。まったくアイツらしいよな」


 父の性格がどんなものなのか僕は知らないけれど、テルはそんな父を愛着の滲む呆れ顔で笑う。どうやら過去にも似たようなことをしているようだ。


「特命って、どんな内容なんですか?」

「俺も担当外だから詳しいことは分からないけど、ある対象者の観察と保護かな」


「ある対象者って?」

「さすがにそれは教えられないよ、ごめんな。だけど、これからは俺もアイツのことを気にかけておくよ。だから、結人は心配しなくていい」


 そうは言われても、まったく気にしないでいられるわけがなかった。再会した父が険しい顔をしていることもそうだが、前回会った時の父は、廃墟で椅子にロープで縛られていたし、今回はベランダから飛び降りた影の真下に居たのだ。いつだって大変なことに巻き込まれているようにしか見えなくて、心配せずにはいられない。


 一緒に暮らしていなかったとはいえ、僕の父に変わりはないし、母やここなが大切に思っている人なのだ。父が危ない目に合っているのだとしたら、僕は父を助けたかった。


「父さんは僕に関わるなって言っていたけれど、僕は父を助けたいんです。父さんが辛い目に合ったときに、何も知らないままなんて嫌なんです。僕に何ができるかは分からないけど、そんな時は、僕にちゃんと教えてください」 


 テルが父のことを気にかけてくれるのであれば、今後は状況を把握できるということなのだろう。それならば、僕にも共有して欲しかった。


 必死な目で訴えかけると、テルは一瞬、驚いたように目を見開いてから、優しく笑った。


「分かった。結人の力が必要だと判断したときには、ちゃんと言うよ」

「約束ですよ」

「ああ」

 テルは僕の肩をポンポンと叩いた。


次回更新は明日17時です。

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