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視えちゃう僕は、異世界の君と、この世界の謎を解く  作者: HiKaRi
◆第二部◆ 第三章 Spirit Photo
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あの男性に会うために

外からの光がないせいで、部屋の中は真っ暗だった。ドア付近にある部屋のスイッチを探し、明かりをつける。


 不思議な置物や遺跡があるせいか、夜の書庫部屋は、以前みた昼間のときよりも若干不気味さがある。


 僕は子猫を床の上に起き、子猫が休むのに良さそうな場所にブランケットで寝床を作った。子猫は一度、その寝床を確認してから、部屋の中をゆっくりと物色し始めた。


僕も改めて、部屋の中にあるものを確認し始めた。


 机の上にある資料の索引を開き、僕が知りたい内容が書かれていそうな資料を探す。


 僕が知りたいのは、ここなの世界ではなく、それ以外の人の世界へ行くことができるのかということだ。


 夏至の日に特殊な『CWC(クロスカ)』が発生して、僕は世界の外側から、人の数だけの世界を見て、その世界の一つに入ることができた。


あの時のように、他の誰かの世界に入るということを可能にする方法がきっとある。


だけど、あの日のクロスカはその世界に滞在できる猶予が限られていた。入り込んで出れなかったら、その世界に取り込まれる。それでは意味がない。


 それに反して、辻村家や神道神社の門から訪れたここなの世界は、滞在できる時間に制限はないし、自由に行き来できる。これまで大きなリスクは無かった。


 ここな以外の世界に、リスクなく自由に行き来できるようになる方法。僕がそれを探していることをテルはきっと分かっていたはずだ。そして、ヒントはあると言った。


だから、それに関する情報はあるはずだと踏んでいたのに、書棚に入っている資料の中に、コレだという決定打となる情報は見つけられなかった。


 もちろん、ここなの世界のことについての理解は深まった。


 僕の世界では『神道神社(しんどうじんじゃ)』と呼んでいる神社は、ここなの世界では、『神統神社(しんとうじんじゃ)』と呼ばれていること。


ここなの世界では自分たちのことを『神』と称しているということだったから、その『神』を統べる神のやしろという呼び名は、僕が思っている神社の意味合いとまるで違うのだと理解した。


 僕たちの世界にとっての『神社』は神聖な場所だ。だけど、『神統』となると僕たちの感覚では政府のような場所になる。まさに神職に携わっている人達が居る場所なのだろう。


 それとは別に、『CWC(クロスカ)』の種類に関するようなことを書かれている資料もあった。来條はこの分野を友人と調べていたと話していたから、結構な情報量だった。


今回、僕が探しているのはそれではなかったから、ざっくりとしか読んでいない。


「テル……。どこにあるんだよ」


 僕は本を読むために座っていた椅子に寄りかかり、天井を見上げる。そして、ふと何かよく分からない感覚が脳裏に落ちてくる。僕の手が机の引き出しの中に書類を閉まっている光景が浮かび上がる。


 僕はハッとして、目の前の机に目を向けた。机の右側には深めの引き出しが置かれていた。


 おそるおそるその引き出しに手を伸ばし、棚を引く。僕は目を見開く。そこには、さっき浮かび上がった光景と同じ色をした書類が、そこにずらりと並んでいた。


 この資料を僕は以前、読んだことがあるのか……?


 資料を手に取り、中身を見ると、まさに僕が探していた内容が書かれていたことに気付いた。


「これだ……」


 欲しい情報が見つかり、それに目を通す前に、僕は一呼吸する。子猫は既に部屋の散策に飽きたらしく、ブランケットの寝床でちいさく丸くなっていた。



3.

「えぇ、この階段を全部登る気ぃー?」


 一の鳥居の前に立ち、恵利華は思いっきり嫌そうな顔をしていた。


「神社の娘が何を言ってるんだよー」

 神社の階段なんて余裕の隼人は軽やかに笑う。恵利華の気持ちの方がよく分かる僕は苦笑い。


 僕と隼人、恵利華は神道神社。ここなとしずくは、彼女たちの世界から神統神社へ。書庫部屋で見つけた方法を試すために、僕たち五人は開かずの門の前へと向かっていた。


 あの開かずの門を僕が開けるためには、正式なルートをまずは通らないといけない。それは一の鳥居を潜り、階段を全部登り切って、第三の鳥居をくぐること。これはやはり必須らしい。 


「いつも階段なんて登らないわよ。裏道から行けるもの」

「恵利華は無理して登らなくても大丈夫だよ。僕さえ登れば済む話だから」


 僕は覚悟を決めて、第一歩を踏み出す。


「結人、俺も行くぜ!」

「待ってよ。私も一応、登るわよ!」


 恵利華もしぶしぶついてくる。隼人が軽やかに階段を駆け上がる中、僕と恵利華は途中休みながら、階段を登り続けた。


 * 


「はぁ……。到着」


 僕が三の鳥居までたどり着いた時、「結人くん、待ってたよー」と鳥居の前のいつものベンチで、ここなとしずくが座って待っていた。


登ってくる途中、ここなたちとは一度も会わなかったから、2人は階段ではない別のルートで来たのだろう。


「隼人くんと恵利華さんは居るの?」

「ああ、居るよ」


「結人ぉ。ここなちゃんとしずくちゃんには会えたかー?」

「ああ、会えたよ」


 僕からしか4人全員は見えないけれど、三の鳥居の前に皆が集まる。


「じゃあ、さっそく開かずの門だよな!」


 隼人が僕たちよりも先行して、先に走っていく。門が開いているか、確かめたいのだろう。僕が歩き出して、他の3人もついてくる。


「おーい、結人。門、開いてないぜー?」

 先に門に付いた隼人が、門を触って確かめている。


「開いているわけないでしょ?私、開けてないもの」

「恵利華、開けてよ」

 隼人がふざけて言う。


「いやよ。またテルに怒られたちゃうじゃない」

 恵利華が呆れた顔をして、隼人に突っ込む。


「それで、これからどうするんだ?」

「僕はしずくさんの世界に行く」

「結人くんがしずくの世界に行くの?」


 しずくはここなの姿しか見えないし、聞こえないから、ここなの言葉を聞いたあと、驚いた顔をする。


「そうなんだ。心霊写真の男性はあの裏山に居るのは確認できた。彼は幽霊ではなくて、どこかの世界で実際に存在している人だというのは分かっている。だけど、ここなの世界には居なかった。だとしたら、誰の世界にいるのか?」


「もしかして、ここなさんの世界には居ないけれど、しずくさんの世界には居るってことなの?」

 恵利華が聞いてくる。


「僕はそう考えている」

「私の世界には居ないのに、しずくの世界には居るの?」

 ここなはピンと来ていないようだ。


「二人は同じ世界に住んでいるように見えるから不思議かもしれないけど、その可能性が高いと思ってる」


「でもどうやって行くのよ?」

「この神社の開かずの門を使う」


「うちの門を使うと、それができるの?」

「ああ。この門の本当の役割は、世界を変換する装置なんだ」


「世界を変換する装置!?」

 しずく以外の三人が声を上げる。


「結人くん、なんでそんなことが分かったの?」

 ここなが僕に詰め寄ってくる。


「え……っと」

「どうやって知ったの?」


 ここなの興味深々な目にじっと見つめられ、戸惑う。あの書庫部屋のことはまだ四人には話していない。打ち明けるかどうかもまだ決め切れていなかった。


「……テルに教えて貰ったんだ」

 咄嗟に嘘をつく。


「さっすが。テルさんは、物知りだな!」

 隼人が感心して、僕の言葉を信じてくれる。


「そうだな」

 僕は笑う。


このままここなも納得してくれたらいいなと思っていると、一人笑っていない顔が僕をじっと見ていることにハッとする。恵利華だ。


恵利華には僕の感情の色が丸見えのはずだ。僕が今、焦っていることやホッとしていることも筒抜けだろう。


 恵利華の僕をじっと見る目を見て、「ヤバい」と顔を反らす。これまでの恵利華のことだから、僕に突っ込んでくるかもしれない。


「……みんな」

 恵利華の切り出した声に、僕は観念する。


「じゃあ、さっさとやりましょう。その後は、その男性を探し行かないといけないでしょう。急ぎましょう」


「ふぇ……」

 身構えていた僕は、恵利華の言葉に拍子抜けして、変な声が出てしまう。


その声を出した僕を見て、恵利華がくすりと小さく笑った。でもそれは嫌味のない優しい笑いだったから、僕は1人固まる。


「結人、ほら」

「……ああ」


 僕は門に近づき、扉に触れる。すると隼人が開かないと言っていた門はするりと奥へと扉が動いた。


「おぉ、開いた」

「へぇ、本当に開くのね」

 隼人と恵利華が声を漏らす。


「結人くん、私たちはどうすればいい?」

 ここなが僕に聞いてくる。

次回の更新は明日16時の予定です。

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