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視えちゃう僕は、異世界の君と、この世界の謎を解く  作者: HiKaRi
◆第二部◆ 第三章 Spirit Photo
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僕が視えている世界は誰の世界?

 僕が視えている他の世界の住人は、ここなの世界の住人だけではない。


 今回のことでそれが分かったけれど、恵利華のために出来ることをしようと決めたのに、手詰まりになってしまった。なまじ僕にはあの男性が実際に見えているだけに、歯がゆい思いが募る。


 僕は近所にある小さな公園のベンチに座っていた。この公園は僕が幼い頃、よく遊びに来ていた場所で、父とよく会っていた場所でもあったと、こないだ思い出したばかりだ。


「おまたせー」


 満面の笑みのテルが公園の入り口から普通に歩いてきて、僕のところまで歩いてくる。


その時、公園の中央から少し大きめのボールがテルの元に転がってきて、小さな男の子も駆けてきた。テルはそのボールを拾い、男の子に渡す。


「おじさん、ありがとう!」

「あいよ!」


 テルは子供ににこやかに気持ちよく対応する。その様子は宇宙人ではなく、その辺にいる気の良いオジサンに見えてしまうのだから、おかしなものだ。


 ボールを嬉しそうに抱えて走っていく姿を幼かったころの僕と重ねる。


僕も父に、ボールで遊んでもらった記憶があった。だけど、父の姿は他の子どもからは見えなくて、僕は揶揄われて泣いた。


 父はそんな僕の頭を優しく撫でて、僕は嬉しかったけれど、とても悲しくもなったんだということを思い返す。


 当時の僕は父代わりのつもりで慕っていた。実際に父だったのだと、その時は知る由もない。


「おーい、どうかしたのかー?」

 明後日の方向を見て、物思いにふけってしまった僕の顔をテルがのぞき込んでくる。


「いえ。ちょっと昔のことを思い出してました」

「昔のこと?」


「父とよくこの公園で遊んでたんです」


「ああ、そうだったな。玲人のやつ、ゆりさんとは会わないと決めたくせに、結人とはなかなか会うのを止められなかったんだっけ」


「……そうなんですか」


「お前が寂しそうな顔をするから、放っておけなかったんだろうな。確かにあの頃のお前は素直で可愛かったな。嬉しい時は心から喜んでいたし、辛い時はちゃんと泣いてた」


 テルがニヤニヤする。


「それは今の僕が素直じゃないって言いたいんですか?」

「よく分かっているじゃないか」


 幼い頃の素直さと今を比べられるのは釈然としないけれど、大きくなったのだから仕方がないと片付けてしまうのも違う気がした。


 ここなを筆頭として、恵利華でさえ、僕よりも自分の気持ちに素直だと思わされることはよくある。


僕は成長していくにつれ、空気を読み、我慢を重ねるうちに、自分の感情を抑えることばかりしてきた。


心の奥で感じたものが、口から言葉になるときには別物になっている。そして言葉にしたものが自分の本当の感情だと思い込むうちに、心の動きすら鈍感になっていく。


「でも最近は、だいぶ素直になってきた方じゃないか?以前のお前だったら、こうして自ら俺を呼ぼうなんて、しなかっただろうし」


「……僕自身のことじゃないですから」


 自分だけの悩みだったなら、どうしようもないと済ませていたかもしれない。だけど今回は仲良くなった友達からのお願いで、関わっているのは僕だけではなく、みんなの思いが重なっている。


 ここながどうにかしたいという一心では行動するように、僕も今回はそうしたくなったのだ。


「それで、今日、俺を呼び出したのはどんな理由?」

「テルはあそこの木の中腹あたりに居る人は見えますか?」


「どの木?」

「公園の電灯のすぐ横にある木です」


 僕は指をさす。僕の視点ではその木の中腹に、人が座っているのが視えた。この公園には何人か、他の人には見えない人がいる。幼い頃、他の子どもたちに気持ち悪がられた要因でもあった。


「俺には見えないなー」

「見えないんですか!?」

「見えないよ」


 テルはどちらの世界でも姿をしっかりと映し出せるから、僕と同じ能力を持っているのだと思っていた。これは僕特有のものなのか?


「僕には、僕の世界ではない、別の世界の人の姿が視えるんです。その人達は、ここなの世界の住人だと思っていたんですが、それだけではないと分かって。僕は誰の世界を視ているのか、テルに教えて欲しかったんですが……」


「なるほどね。それが聞きたいわけか。うーん、そうだな。俺には見えないから確かなことは言えないけど、構わない?」

「はい」


「おそらく、結人が共鳴している人の世界が映り込んでるんじゃないかと、俺は思う」

「共鳴している?」


「簡単に言えば、深く関わっている人って言った方が分かりやすいか。結人はこないだ世界を外側から見ただろう?人にはそれぞれの世界があって、その中にその人独自の景色と人との関わりがある。


結人は自分の世界の中に居ながら、同時に彼らの世界の『人の姿』だけを映し込んでいるんだろうな。結人はここなに出会う前から、視えていただろう。それなら最初は、誰の世界を視ていたと思う?」


 確かにそうだ。僕は物心がついたときから、視えている。そんな頃から、僕と深く関わっていた他の世界の住人。


「父さんですか?」


「ああ。結人はおそらく、玲人の世界をずっと視てきた。そして、ここなと出会ってから、ここなの世界も同時に映しこんでる。


そしてもし、二人以外の世界の人が視えるなら、結人が関わったことのある人の誰かなんだと思うよ」


 父さんとここな以外で関わっている人。しずくはあの写真の男性を見たことがあると言っていた。そうなると、しずくの世界の住人である可能性はある。


「辻村家は僕たちの世界とここなたちの世界に行けますけど、僕はあの家の玄関を出た後、誰の世界の中を歩いていることになっているんですか?」


「一つはもちろん結人自身の世界だと思うけど、もう一つの世界は今は誰の世界なんだんだろうな。完全に同じではないにしても、似たような景色をしているし、俺も確実なことは言えないな。


ちゃんと把握したいなら、自分で調べたらいいじゃないか。前にあの家の書庫部屋の鍵を渡しただろう?」


「あ……」

 僕はテルと初めて対面したときのことを思い出す。


『知識や術を知らないということならばだ。来條さんがこの世界の秘密をまとめた資料があの部屋の中に保管してある』


『お前がこれから先、人を助けたいと思った時、役立つ資料ばかりだと思う』


 そう言って、小さな鍵をテルから受け取っていた。あの鍵は貰ったその日に一度使ったきり、自宅の机の中に閉まったままだ。


「あの書庫部屋の中の資料、読むのを躊躇ってたりするのか?」

 そう言われて、気付かされる。


確かに僕は、あの資料の中に禁忌に値するような情報も含まれていると怖がり、あの日以降、あの部屋に近づいていなかった。


ここなたちにも内緒にしている手前、自分だけが読むことに気が引けているのもあった。


「結人がもし、恵利華が相談してきた『CWC(クロスカ)』を解決したいと思うのなら、書庫部屋の中にヒントはあると思うよ。そんなときのために、玲人が保管してきたんだからな」


 この世界の更なる真実を知ることの不安。友達を助けたいという思い。その二つを天秤にかけたとき、どちらを重んじる?きっと今後の僕の行動がそれを左右している。


「しかし、俺が『CWC(クロスカ)』の任務を与える以前に、お前たちで『CWC(クロスカ)』を抱えているんだから、おかしなもんだな。お前たちが集まると、『CWC(クロスカ)』が寄ってくるってことか?」


 テルに今回のことは話していなかったけれど、僕たちがしようとしていることを把握しているようだ。


「裏山の幽霊は、やっぱり『CWC(クロスカ)』なんですね」


「そうだよ。結人が『CWC(クロスカ)』に関わるのは、避けられないことなんだろうな。そこに隼人が加わって、余計に」

「隼人ですか?」


「異世界を認識する結人とオカルトセンサーが敏感な隼人。その二人の世界の掛け合わせが『CWC(クロスカ)』を引き合わせて、お前らと関わっている奴らまで、影響するんだろう」


「……なんかあまり嬉しくないような」


「そうか?元々この世に『CWC(クロスカ)』は溢れているんだし、俺としてはそれを自ら解決してくれるっていうなら、万々歳だけどな!」


「だけど、いつも動くのは僕たちですよね?」


「ああ、もちろん。俺は地球人じゃないからな。この地球上にある世界に俺が直接介入するのはルール違反なんだよ。だから、結人たちに任務を依頼して、解決してもらっているわけだ」


「そんなルールがあるんですか?」

「そ!地球人に対してもそうだよ。俺は勝手に人に介入できない」


「でも、こないだ僕には直接介入してきたじゃないですか?」


「それは特別。結人は覚えていないだろうけど、俺は結人から許可を貰っている。だから、俺が結人に何をしようとそれは許されるんだ」


 テルは急にニヤニヤと笑い出して、僕の脇腹を思いっきりくすぐってくる。


「や、やめてくださいっ!」


「だから、結人自身の悩みでも、俺はちゃんと助けてやる。それは覚えておいてくれな」


 テルはそう言うと、くすぐるのを途端にやめて、僕から離れる。


「俺に聞きたいことはこれでオッケーだろう?じゃあ、行くわー。頑張ってなー」


 テルは相変わらず、要件が済むと軽やかに去っていく。


 ああ、こいつってそういうやつだったっけ。

 僕は去っていくテルを苦笑いして見送りながら、何故か漠然と、そう思っていた。


 * * *


 その日の夜、僕は辻村家に1人泊まることにした。


母には父から残された本があって、それをゆっくり読みたいと伝えたら、『それはいいわね、楽しんでらっしゃい』と明るく見送られた。


 まだ預り先の決まらない子猫が段ボールから顔を出して、「みゃあ」と鳴く。


「一緒に2階に行くか?」


 僕は子猫と子猫用のブランケットを抱くと、辻村家の2階に上がりった。書庫部屋の鍵を開ける。


次回の更新は明日の16時の予定です。

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