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視えちゃう僕は、異世界の君と、この世界の謎を解く  作者: HiKaRi
◆第一部◆ 第一章 Something Mysterious
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神隠しにあった友人の足取りを追いかけて

 神道神社の入場制限が解除された。あまり眠れずに朝を迎えた僕は、まずは学校に向かう。そして学校の校門から神道神社へと歩き出した。

行方不明になった三日前の隼人の足取りを、辿ってみたかったからだ。


 ここなとも今日、神道神社で会う約束をしていた。待ち合わせまで時間はあるから、それまでは隼人の痕跡を探したい。


 帰宅部で日々引きこもり。そんな僕にとって、学校から神道神社への道のりは、かなりシンドイ距離だった。


一の鳥居の前にたどり着いた時にはすでにヘロヘロ。忌々しい目で神社の参道へと続く石段を見上げる。

石段は二の鳥居、更に三の鳥居まで、上へ上へと続いている。


駐車場の裏側へ迂回すれば、なだらかな傾斜を登っていけるルートもある。だけど体力がある隼人なら、そんなことはしない。

遠回りになる傾斜よりも絶対、石階を登るだろう。


僕はへこたれそうになる精神に鞭を叩き、一段目の石階に足を乗せた。



 全ての石階をなんとか登りきり、三の鳥居をくぐり抜けた時、僕は自分を本当に頑張ったと褒め称えた。今までの僕なら、こんな疲れることはしなかっただろう。


そのまま社殿に向かい、隼人の無事を祈って、丁寧に参拝する。


『隼人に謝ります。お礼を言います。本当のことを話します。どうか神様、隼人に会わせてください』


神にもすがる思いとは、まさにこのことだと思った。



 神社の境内はそれなりに広かった。

三の鳥居を背にして、左には手水舎、右には宝物殿と神楽殿、その間に参道があり、社殿へと続いている。


 社殿の裏には十メートル以上の高さがある竹林が壁のように並んでいた。その竹林は境内の周囲を囲むように植わっている。


竹林の壁の向こう側には『竹林の小道』という風情のある小道がある。

その小道には、右側には赤い鳥居。左側には木製の頑丈な門が設置されている。


赤い鳥居は小道への入口になっていて、木製の門は行きどまりだった。その門は取手がなく、いつも重厚な木の扉でしっかりと閉ざされていて、『開かずの門』と呼ばれていた。


 隼人のスマホはこの門の前に落ちていたと聞かされていた。その周辺を意識して見て回ったけれど、隼人の痕跡を一つも見つけることはできなかった。


「隼人。どこに行ったんだよ」

 僕は三の鳥居の前にあるベンチに座り、空に嘆く。


「結人くん、どうしたの?そんなつらそうな顔をして」


 声がして横を振り向くと、そこにはここなが立っていた。


「ここな。友達が、大切な友達が行方不明なんだ」

「え?行方不明?」


 僕は隼人の話を誰にも話せていなかった。

担任からは口外しないようにと言われていたし、母にも心配をかけまいと話していない。


僕の溜め込んでいた思いが、ここなに状況を説明することによって溢れだした。ここなは僕の隣に座り、黙って話を聞いてくれていた。


「本当にどうしたらいいか、分からないんだ」


 僕が泣きそうになった時、

「あなた、大丈夫?」と知らない老婦人が僕に声をかけてきた。


 僕は顔を見上げると、その老婦人は優しいまなざしで僕を見ていた。その後ろに数人、僕を不思議そうに見ている参拝客がいる。


「え……、あ……あの……」


 何もないところに、僕がそんな声を出して見上げたのを見たここなは、すぐに状況を理解したみたいだった。


「ここだと、他の人の目が多いみたいだね。結人くん、向こうにいこう」


 周囲の参拝客が戸惑っていることに、僕はやっと意識が向いた。以前だったら、こんなことをした自分に嫌悪感を抱いただろうけれど、目の前の老婦人の目は本当に偽りなく僕を心配していた。


僕は冷静さを取り戻し、ベンチから立ち上がった。

「ちょっとつらいことがあって、動転していました。でも、もう大丈夫です」

「そう?それなら、良かったわ」


 老婦人は安心したように微笑んでくれた。


「結人くん、あっちの方が人が少ないと思う」

 ここなはそう言って、僕より先を歩き出した。


 僕はここなの後をついていく。ここなは境内の中をスムーズに歩いていた。


目の前に大きな樹があったら、それを避けた。境内の建物が見えてきたら、その周りを通るように歩く。


普通の人だったら、それが普通だろう。

だけど、目の前を歩いているのは、いつも壁をすり抜けたり、急に消えてしまったりするここなだ。それなのに今は、周囲の景色に違和感なく歩いている。


 ここなの身体をよく見た。建物の影を抜けて太陽の日が当たったのに、ここなの身体が透けていない。普段よりもハッキリと映し出されていた。


「結人くん、こっち」

 ここなが社殿の左奥へと進んでいく。そして、開かずの門の前までたどり着いた。


 そこでやっとというのも変だが、いつものように、ここなは門を通り抜けて、姿が見えなくなった。


「……ここなが門の中に入った」


 門の前で立ち止まる。足元を見る。

隼人のスマホが落ちていたのはこのあたりのはずだ。


「結人くーん、どうしたの、立ち止まって。そこを潜り抜けて、こっちに来て」

「えっと、待って」


「あ、そっか。見えている景色が違うんだね?」

「こっちには門があるだ」


 門の扉はしっかり閉まっているはずだから、動かないだろうけれど……。


 僕は右手を門の扉に押し当ててみる。

小さくギィっと音を鳴らし、扉が奥へと開いた。


「開いた……?」


 僕はさらに扉を奥へと押すと、その先は竹林の小道が続いていて、そしてここなが立っていた。

僕は門を抜けて中に入る。扉から手を離すと、自然にゆっくりとそれは閉じた。


「そこに扉があって、中に入れたって感じ?」

 僕の仕草を見ていたここなは僕に聞いてくる。


「ああ。だけどこの門は開かずの門だと聞いていた。昨日の捜索の後、鍵を閉め忘れたのかも」


「この道はどんな風に見えるの?」

「竹林が両脇にある細い道」


「竹林なら一緒!」

「え?そうなんだ」

「結人くんと同じような景色を一緒に見れるなんて、嬉しい!」


 今までここなと一緒に行った場所は少ないけれど、見ているものが重なったのは今回が初めてだった。二人で並んで進む小道。

ここなが僕の隣を歩いても、二人の足取りは周囲の景色と馴染み、違和感がない。


 このまま進めば、社殿の右奥に出るだろう。


「この小道の奥が一番、人が少ないかなぁって思ったんだけど、どうかな?」

「さっきのところよりは人通りが少ないと思う」


 竹林の小道の出入口が見えてくる。


「私の場合、こっちに門があるんだ。いつも閉じていて開かない門」


 ここなが指す方を見る。僕の視界に門は無かった。

そこには鳥居があって、外に通じている。外に通じているはずだけど……。


 僕は目がおかしくなったのかと思って、瞼をこすった。そして、もう一度しっかりと見たけれど、その見えるものは変わらない。


 本来なら鳥居の先には社殿裏の境内の景色が見えるはずだった。だけど違う。


 鳥居の出入口の部分だけが、くり抜かれたように、そこには何もなかった。

景色がない。色もない。音もない。感覚的に何もないと認識する(くう)の世界。


 門の前に落ちていた隼人のスマホ。未だ見つからない行方不明の隼人。神隠しと書かれた本。

それらの記憶がフラッシュバックして、隼人はこの先に居るのだと僕は確信した。


「結人くん?」


 ここなが僕の名を呼んだが、僕の意識はもうその鳥居の向こうへとあった。


 僕はゆっくりとその(くう)の世界の入口に近づく。

そして鳥居をくぐり抜けた。僕の周りが真っ白に光り輝いた。


 ゆっくりと周囲が変化していくのが分かった。

色がつき、音が聞こえ、景色が創られていく。


そこには、僕がまったく知らない世界、異世界が広がっていた。


引き続きここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

とても嬉しいです。


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