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視えちゃう僕は、異世界の君と、この世界の謎を解く  作者: HiKaRi
◆第二部◆ 第二章 Portal to Parallel World
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衝撃の更なる事態

 ふと、目の前から突然現れた気配に、僕の足は立ち止まった。


僕よりも背が高く、スラっとした出で立ちの男性が、こちらに向かって歩いてくる。僕はその男性に意識を吸い込まれるように、何故か目で追っていた。


僕は彼を知っている。どうしてか、強くそう思った。


彼の顔がしっかりと分かる位置まできて、僕は無意識に目を見開き、そして口が勝手に呟いていた。


「……父さん」


 その声に出た音を聞いた瞬間、脳裏に過去の記憶が一気にフラッシュバックした。


幼い僕の頭を撫でながら微笑んでいる顔。僕を優しく抱きしめてくれたときの横顔。

それ以前にも、僕は何度か、その男性と会っていた。その時の光景が次から次へと思い浮かんだ。


 父だと確信したその男性と、僕は視線が合わなかった。


僕が他に視えてきた彼らと同じように、僕からは父が視えても、父からは僕が視えていない。父は僕に気付かないまますれ違い、切れ間があるところへと真っ直ぐ向かっていく。そして、切れ間の中に消えていった。


「父さん!」


 僕はもう何も考えれなくなって、その場から走り出していた。父が消えたその切れ間まで、鉄砲玉のように突っ走り、そして僕の身体も、パッと一瞬で『空』に包まれた。


 とてつもなく眩しい光が強く輝いた。眩しくて反射的に瞑ってしまった目をゆっくりと開くと、僕の目の前寸前に、恐ろしく暗い光が一瞬見えて、またあの宇宙空間にいると気付いた時には、一つの光の粒の中に身体はすっぽりと中に入っていた。


 バリっと靴底の下で音がした。足元には割れたガラスの破片が散らばっていた。鼻を刺すような冷気とカビ臭さ。辺りは薄暗い。割れた窓の外が見えて、その先にも薄汚れた壁があった。雨がシトシトと降っている。


 ここはいったいどこなんだ?こんな場所は、これまで一度も見たことがない。


 足を踏み出すと、腐りかけた床板がみしりと不気味な悲鳴を上げた。剥がれ落ちた壁紙が天井から垂れ下がり、もう何年も使われていないであろう家具が、無残な姿になって転がっている。


 突然置かれた状況に混乱していたけれど、僕は父を追いかけて、ここに来たのだということを思い出した。父のことだけを考えて、あの空間の一つの粒に入り込んだ。これは父が今いる世界であることは間違いないはずだ。


「……父さん!どこかに居るのか?!」


 父は僕が視えてなかった。だから、僕の声も聞こえないかもしれない。だけど、僕は声を上げずにはいられなかった。明らかに不穏なこの場所に、父は何故居るのだろう。


「父さん!」


 僕は父を呼びながら、今いる場所から移動し始めた。ドアの役目を果たしていない崩れかけた隙間をくぐりぬけ、僕は次へと続く部屋へと父を求めて足を進めた。


 いくつかの部屋を渡り歩き、おそらくここはどこかの廃屋なのだろうと察しがついた。もう何十年も放置されたのであろうこの場所で、生活している人がいるとは思えない。


 父はここには居ないのだろうか。そう思い始めて、来た道をそろそろ戻った方がいいだろうと冷静になってきた時、奥から物音が聞こえた。


恐る恐る物音が聞こえた方へと進むと、ある部屋にたどり着いて、暗闇に目を凝らす。部屋の隅に、何かがあるのが分かった。


「……父さん!?」


 それは、椅子に縄で縛り付けられた父だった。


 父以外、周囲には誰もいない。僕は急いで父に走り寄る。椅子の手前で、コツンと僕の足先に何かが当たった。足元を見ると、そこには廃屋には似つかわない 真新しいスケッチブックが落ちていた。


 髪の長い若い女性の絵が描かれていた。どことなく懐かしい感じがするその女性の絵に、僕はスケッチブックを手に取る。右下には筆記体で文字が書かれていた。


───Thujimura


「つ…じむら?」


 それはすぐに、僕たちが拠点としている辻村家と結び付く。そして僕は視線を感じる。

それは椅子に縛られた父の目で、僕ではなくスケッチブックを凝視する。


「……浮いてる?」


 父の口から声が漏れた。そうか。父は僕が見えないから、スケッチブックが浮いているように見えているのだろう。


僕は持っていたスケッチブックを父の膝の上に置いた。そして、椅子の後ろへと周り、父を縛っている縄をほどく。


「父さんは、どうしてこんなことになっているの?辻村って、ここに描かれている女性のこと?」


 ほどきながら問いかけたけれど、その答えは当たり前だけど返ってこなかった。だけど変わりに、小さく震えた声が僕の心を貫く。


「……ゆ、結人なのか?」

「そうだよ!」


 父が僕に気付いたことが嬉しくて、すぐさま答えたけれど、父には聞こえていない。縄がほどけ、父は椅子から立ち上がると、虚ろで定まらない目を、僕の方へと彷徨わせる。


「そうか。結人も『CWC(クロスカ)』に関わっているんだね。輝人と会えたんだね」


 輝人。それはテルの本名だ。父は一人納得したような顔をして、静かに優しく微笑む。


「……だけどね。もう私を追わないでほしい。私がしていることは、結人が関わることじゃない。これは私の問題なんだ。いいね?」


 父の優しい声が僕の行動を戒める。


 父さんを追ってはいけない?関わることじゃない?

やっと父さんに会えたのに?父さんがこんな良く分からない目に合っているのに?


 僕が見えないとはいえ、一人で納得し、僕を突き放そうとする父に、どうして?っと強く反抗したくなる。


「元気でね」


 父はそう言うと、その場から離れていく。


僕は慌てて、父の身体を掴もうとしたけれど、それはするりとすり抜けた。


父の目の前に、光の切れ間が浮かび、父はその中に消えていく。僕は父が消えた光の中を、すぐさま追いかけようとした。


『結人!追いかけるな!』

 テルの大きな声が今度は僕を呼び止めた。


 どうしてテルまで?僕はせっかく会えた父さんと、もっと話したいのに!


 父が消えた光が今にも消えそうで、僕は気持ちのまま、父が消えた光の先へと向いていた。走り出したとき、僕の意を反して、強烈な痛みに襲われる。


「…………っ!!」

 頭が割れそうに痛い。息苦しい。眩暈がする。


 僕はその痛みに耐えきれなくなり、成す術もなく、僕はそのまま気を失った。


次回、第二章終了して、第三章に入ります!

続きは明日の16時に公開します。

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