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視えちゃう僕は、異世界の君と、この世界の謎を解く  作者: HiKaRi
◆第一部◆ 第三章  Psychic Ability
18/20

神社の秘密を知る娘

3.

 隼人が「じゃーん」と言って、学校名が書かれた封筒を僕に見せてきた。


「なにそれ?」

「神道さんに持っていく書類。彼女に会いに行く口実、作ってきたぜ」


 どう担任に話を付けたのかは分からないが、隼人の頑張りには感服する。


 恵利華の自宅は神道神社のある山の麓にあった。駐車場から歩いてすぐだ。日本家屋の佇まいに出迎えられて、「ほぉ」と思わず声が出る。神社の娘の家。まさにふさわしい外観だった。


「立派な家」

「すごいな。庭に池とかありそうだな」


 和風門戸にはインターフォンがなく、鍵は掛かっていない。敷地内へとゆっくり足を進める。門戸と玄関までの間には石畳。辺りはこじんまりとした日本庭園が広がっていた。


 玄関にあるインターフォンを隼人が躊躇いなく押す。現れたエプロンを付けた女性に事情を話すと、しばらくしてから、恵利華が現れた。恵利華は黒いパーカーにフレアミニスカートを履いていた。


「……柏木結人」

 玄関に僕が居るのに気付いて、嫌そうな顔をする。


「なんで、家にまで来ちゃうのよ」

 僕は苦笑いして、小さく肩をすくめた。


「神道さん。俺、東条隼人。同じクラス。先生に頼まれて、神道さんに渡す書類を持ってきたんだ」


 隼人が恵利華にニカリと笑って、封筒を見せる。

「嘘つきね」

 恵利華は僕らを見て、吐き捨てるように言った後、大きくため息をついた。


「もう、私はどうしたらいいのよ!」


 恵利華は困っているようだった。だけど、その困惑は僕らに向けてではなく、何か別のものに当たっているような感じ。どこからか軽快な音が一回、鳴った。


 恵利華がポケットからスマホを取り出す。音の元は恵利華のスマホらしい。どうやら着信ではなく、通知のようだ。


「なによ。もう話していいって。あー、よく分かんない!」

 恵利華はそう言って、スマホの画面を睨む。スマホをしまうと、僕らを見据える。 そして、顎で中に入るように促した。


「いいわ。中に入って」

 門前払いを覚悟していたけれど、中に通してくれるらしい。今回は話を聞けそうだ。


 恵利華に案内され、僕たちは広い畳の部屋に通された。真ん中に置かれたテーブルに、向かい合って座る。部屋の窓からは絵画のような日本庭園がよく見えた。


 様子から見てお手伝いさんなのだろう。先ほどのエプロンの女性がやってきて、僕らの前にお茶が入ったグラスを置いた。


「ありがとう」


 恵利華はその女性に、優しい顔でお礼を言う。ちょっと衝撃を受けた。そんな表情もできるのか。つっけんどんな態度しか見ていなかったから、意外過ぎる。


「いいんですよ。ごゆっくり」

 女性は普通に微笑んで、去っていく。


その女性は違和感なく受け止めたということは、普段からそういう表情で受け答えしているということを示す。気を許せる相手には攻撃的ではないのかもしれない。


「神道さん、これが学校からの書類」


 隼人が恵利華に封筒を差し出す。恵利華は封筒の中から紙を取り出すと、その中身を確認し始めた。


その紙に僕は見覚えがあった。僕が担任から検討しなおすように言われた課外授業のしおりだ。二泊三日でキャンプ場へ行くことになっていた。


「貰ったって、どうせ行かないんだけどね」


 恵利華はそう呟く。僕もこの課外授業に行くかをまだ迷っていた。だからこそ、恵利華の行《《け》》ないのではなく、行《《か》》ないという言葉が引っかかった。


「担任が心配してたぜ。二年生になってから保健室登校すらもしないって」

「そうね。このまま退学してもいいかなと最近、思ってきてるから、それならそれでいいかな」


 今日の恵利華は以前の時よりも覇気がなかった。どこか人生を投げ出しているようなそんな危うさすらある。

そのギャップに、僕の心は素直に、目の前の恵利華を心配していた。


「無理に話さなくてもいいんだけど、神道さんが学校に行かない理由って、何?」


 退学してもいいと投げ出したくなるくらい、恵利華は辛いことを抱えているのかもしれない。僕がどうこうできることではないのだろう。だけど、前回と今回の落差を見せられると、聞かずにはいられなかった。


 恵利華はじっと僕を見てくる。だから、僕も恵利華をじっとみつめかえした。


「ふーん。本当に心配してくれてるのね」

 恵利華が静かに言う。


「そうじゃなきゃ、こんなこと聞かないよ」


「そうね。学校のみんなが二人のような人達だらけならいいんだけどね。あなたたちの色は落ち着いていて、心地がいいわ」


 恵利華の言葉がまた引っかかる。初めて会った時も、僕の色が変だと言っていた。そして今日は色が落ち着いているという。


「こないだも言っていたけど、色ってなに?」

「まぁ、隠すつもりもないから言ってもいいわ。私、目の前にある生きもの全部に色が付いて見えるの」


「色が付いて見える?」

「人間だったら、二種類の色があってね。纏っている色と、感情によって変わる色が見えるの。一般的にいうオーラやシナスタジアが見えるっていうやつね」


「それって、霊視能力じゃないか!すげー!」

 隼人がめっちゃ食い付きそうだなって思っていたら、案の定、前のめりになっている。


「本気で感心してる色を放つ人、ひさしぶりに見た。たいがいこの話をすると、みんな疑いの色を出すのに」


「そっか、つまりはそうやって、色で本当の心が読めるんだ」

「そう。あなたは、驚きもしてないのね」


 確かに僕は驚きもしていなかった。自分の能力のこともあるけれど、ここ最近はおかしなことが起き過ぎている。非現実的なことに免疫がついているのだろう。


そして恵利華の能力のことを考えれば、彼女が抱えている問題は優に想像できた。

言葉に出されなければ気付かなくて済む感情が読み取れてしまうのだ。それは生き辛いに違いない。


本音を隠しているからこそ続く関係性だって存在する。能力のせいで、人間不信になることもあるだろう。


「こないだ登校した時、すぐに帰っちゃったのはその能力のせい?」

 あの日の教室の雰囲気は、僕の感情も含めて、あまり良いものとは言えなかった。


「まぁ、そういうこと。だから学校に居ると気分が悪くなるのよね」


 恵利華が学校に登校しない理由。それは能力のせいということか。

能力に悩まされてきた僕としては、恵利華に共感できるところはあった。だけど、これまでの僕への態度を考えたら、理解が追い付かないところもある。


僕なら、恵利華のように感情を逆なでるようなことはしない。相手の心の反応みて、穏便に済ませようとする。相手の感情に反応し過ぎない方が良いのではないだろうか。


僕が言葉を口に出さすにそう思っていると、恵利華はすかさず僕をキッと睨んできた。そして、声を上げる。


「何か私に言いたいことがあるなら、言いなさいよ!」


 ほら、そういうところだ。でも言うなれば、素直ということでもあるのかもしれない。不器用すぎる。

僕はそんな恵利華が愛らしく思えてしまって、思わず「ぷぷ」っと吹き出してしまった。


「な、なんで今度は、急にそんな色に変化するのよ!もうわけわかんない!」


 今度は照れた顔をして、戸惑い始めるところも憎めない。

どうやら僕の感情の変化は恵利華に筒抜けらしい。だけど僕は、自然とそれがまったく嫌じゃなかった。


 周りの目を見て、隠すことばかりしてきたからかもしれない。だけど隠すことすらできない相手。隠すこと自体に意味がない。それって逆に楽かもしれない。


僕の中の恵利華に対する思いが書き換わる。

何も言わない僕を感情の色だけで判断した恵利華は、一度、唇を不服そうに尖らせた。だけど、「もう、いいわ」と観念する。


「それで。今日、ここに来たのは別の理由があるんでしょう?」

 恵利華がそう言ってくれて、今日の本題に移ることが出来た。それを確認できなければ、今日ここに来た意味がない。


「そうなんだ!」

 隼人が前のめりになり、僕より先に切り出してくれる。


「神道さんに聞きたいことなんだけどな!」


「まずはその神道さんっていうの止めない?神社の名前で呼ばれるの、嫌なの。恵利華でいいわ。あなたは隼人よね」


「おっけー。じゃあ、恵利華。恵利華は神社の娘だろう。あの神社の裏手にある『開かずの門』について、知っていることがあったら教えて欲しんだ」


「開かずの門……ね。話してもいいのかしら?」


 恵利華はそう言った後、間を置いた。数秒。僕らの居る畳の間がシンっとなる。隼人が「ん?」と不思議そうにしていると、


「全部話しちゃうわよ。細かい区別はできないから」

 と恵利華は続けて、また間を置く。


「いろいろ聞かせてくれるなら、俺は助かるけど」

 隼人が首を傾げる。僕はその二人の様子を静かに見ていた。


「……いいわ。何から聞きたいの?」


 恵利華は僕らにしっかり向き直って、座りなおした。


「俺、一度だけあの開かずの門をくぐり抜けたことがあるんだ」

「知ってるわ。アレは私がミスったのよ」

「ミスった?」


「本来、あの開かずの門を自由に通る資格があるのは、結人、あんただけなの」

 恵利華が僕を見る。


「そういえば、こないだ会った時にも、資格がどうこう言ってたね」

「結人だけが資格があるっていうのは、どういうことなんだ?」


「その話をする前に、あなたたちは神道神社の起源って知ってる?古来より、神々が現世に降り立つための道を守ってきたっていうやつ」


「ああ、神社の案内にも書いてあるよな」


「その道というのがあの開かずの門をくぐりぬけた先の道を指すの。そしてその門を守る役割、継承者の間では『門番』って言ってる。その今の『門番』が私」


「門番……」


「代々、神道神社を守ってきた血筋のある者の中から、その『門番』は選ばれてきて、その事実は『門番』を受け継ぐ人しかその事実を知らない。私は祖母から直接、その役割を継承したから、私の両親すら、私が『門番』であることは知らないわ」


「え……、両親も知らないのか?」

 隼人が驚く。


「そうよ。話題に出すことすら基本、許されたことはなかったわ。だから、知り合いにこの話をするのは二人が初めて」


「……そんな大事な話、しちゃって大丈夫だったのか?」


 隼人がそう言って心配するが、僕はこの話の続きを早く聞きたいという思いの方が強かった。


「大丈夫なんじゃない。止められなかったし。それに二人は実際にあの門を通っちゃってるしね。その『門番』を受け継ぐ人は代々、『生きもの全部に色が付いて見える力』を継承している。


あの門を通れるかどうかは、身体の一番外側に纏っている色・オーラが関係している。私はその色で判断して、あの門を通していい人かどうかを決める。


私は産まれた時から、その色が見える子だったんだけど、門番を継承して、あの門を通していい人の色を一度も見たことがなかったの。こないだまでは」


「それが結人だっていうのか?」

「ううん、違う」

「違う?」


「結人がこないだ連れていた女の子だけ」

 恵利華が僕の目をじっと見る。


「え……?」


引き続き、ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。


神社の開かずの門の秘密が明らかに!

そして、門番である恵利華がミスった理由とは?

次回の更新は明日12時30分の予定です。


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