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視えちゃう僕は、異世界の君と、この世界の謎を解く  作者: HiKaRi
◆第一部◆ 第二章 Spirited Away
11/23

僕らが世界を転移する方法は?


「竹林の小道を通り抜けた後だったな。あの時、あの小道に入ったのは、たまたまだったんだ。本殿の左奥に『開かずの門』があるだろう。その門の前に居た時に、河合からLINEが来てよ。それで打ち返した後、俺、あの門に寄りかかったんだよ。


そしたら門が後ろに開いて、そのまま後ろに倒れ込んでちゃって、スマホはその時、落としたんだ。門を開けて戻ろうとしたけど、門はびくともしないし、取手もないから開けられなくて、仕方なく反対方向まで回ったら、あっちの世界だった」


「僕も同じだ」


 開かずの門から入り、反対側の鳥居を抜ける。ここなの世界に転移するのに、あの竹林の小道はやはり関係がありそうだ。


「神隠しにあった人に僕らと同じ方法だったか確認できれば、確定なんだけどな。誰が神隠しにあったか、神社の人に聞いたら、教えてくれないかな」


「あまり良い話じゃないだろう?神社側も隠したいかもしれない」

 つい先日も隼人の件があったばかりだ。話をしてくれる人はいるだろうか。


「神社の知り合いがいればいいのにな」

 生憎僕らには、その伝手はない。


 神道神社に探索に行くことを決めたが、隼人は父親から許可が下りなかった。心配をかけてしまった手前、隼人はしぶしぶ断念する。結果、僕一人で神道神社にまた訪れることになってしまった。


 さすがにもう石段を登るのは遠慮したかった。駐車場に母から借りた自転車を置き、傾斜の道でゆったりと向かわせてもらう。石段を上るよりも息切れは少ない。鳥のさえずりを楽しめるくらいの余裕もある。


傾斜側からの境内の入口には、神社の案内板が立っていた。この神社が建てられた由来に目を通す。


『神道神社は古来より、神々が現世に降り立つための道を守ってきたと口伝されている』


神々のための道を守ってきたなんて、これまた隼人が好きそうなオカルト話だ。


 境内の案内図も見た。本殿や竹林の小道、鳥居などの場所が、分かりやすく示されている。だけど、一カ所だけ在るはずのものが描かれていない。


「本当に、四の鳥居がないのか」

 これは隼人から聞かされていた謎だった。


神道神社には五つの鳥居があると言い伝えられている。

『一の鳥居』は石段の一番下。『二の鳥居』は石段の中腹。『三の鳥居』は石階を登り切った本殿の正面。そして、『五の鳥居』は竹林の小道の出入口である赤い鳥居だ。


だけど、『四の鳥居』の場所は、示されていないのだ。


存在しないのは「四」という文字が忌み嫌われるからという説もあるらしい。だけど、本当のところは分からない。


 僕は一番気になっていた『開かず門』へと向かった。こないだ門は奥へと開いた。門に手を当てて、強く押してみる。今日はびくともしなかった。


前回は鍵を閉め忘れていたのだろうか。

真相を確認したくて、話が出来そうな人を探す。


竹ぼうきを持った作務衣を着た男性を見つけた。

声をかけてと近づくと、彼は人当たり良さそうな表情を僕に向けた。


「あの……。本殿裏の『開かずの門』が、こないだ来た時は開いたんですが、開ける日もあるんですか?」


 途端に男性が怪訝な顔をした。その表情の変化に、聞き方がまずかったっと焦る。


「す、すみません。あの門を開ける方法があるのか、気になったもので……」


 言葉を付け加えると、男性は幾分気を取り直したのか、表情を緩めてくれた。

 

「あの『開かずの門』はその名のとおり、開いたところを見たことはありませんよ。神社の関係者ですら、開け方を知らないくらいですから」


 男性の返答を聞く感じ、門が開いたというワードが良くなかったのだろう。彼の機嫌を損ねないように、僕は他の話題を振る。


「鳥居についても聞きたいのですが、『四の鳥居』は無いのですか?」


「そうですね。『四の鳥居』は、存在はしているそうですよ。ただ境内のどこにあるかは分からないとされています。この神社の不思議として、『開かずの門』と『四の鳥居』のことは、参拝者の方からよく質問されますが、神社の関係者も皆、それ以上、詳しいことは分かりません」


「……そうですか」


 神隠しについても聞きたかったが、男性の態度から感じる気配に、それ以上尋ねる勇気を持てなかった。僕は彼にお礼を言い、その場から立ち去る。その後も境内の中をひと通り見て回ってから、僕はベンチに座り込んだ。


 鼠色の薄汚れた三の鳥居が、お前にこの謎が解けるのかとでも言いたそうに、僕を見下ろしていた。ここなの世界で見た光り輝く白い鳥居とかけ離れたその色は、今の僕に威圧感を与えてくる。

 

 ここなの世界に行く方法。神社の男性が僕に話したことに偽りがないのだとしたら、『開かずの門』はその名のとおり開くはずのない門ということになる。


異世界転移には、まずは門をくぐりぬけることが条件だろう。逆を言えば、あの門が開かない限り、神隠しは起こらない。それならば、僕の心配は杞憂に終わる。


ただ、門は実際に開いてしまった。門が開いてしまう条件があるはずなのだ。


 境内に差し込む太陽が日が陰り始めた。神社は竹林に囲まれているから暗くなるのも早い。参拝客もいなくなっていた。そろそろ帰ろうと思った時、目の前にある宝物殿の中から、ここなが出てくるのが見えた。


「ここな?」

 ここなは僕にすぐに気が付いてくれた。駆け寄ってくる。


「結人くんも来てたんだね。今日はどっちの世界?」

 その質問が予想外で、思わず笑ってしまう。ここなの世界に居るなんてことになっていたら困る。


「僕の世界だよ」

「あはは。……なぁんだ」

 ここなは僕につられて笑った後、声色を小さく下げて、とても残念そうな顔をした。その表情に少し戸惑う。どうしてそんな顔をするのだろう。


「私ね。どうやったら、結人くんの世界に行けるのかを調べているの」

 僕も調べていた。だけど、行くためじゃない。行かないためにだ。


「ここなは僕の世界に来たいの?」

「うん」

「どうして?」

「……先生を、探しているから」


 ここなから、居なくなった先生を探していることは聞いていた。先生はまだみつかっていないのか。


「先生は、僕の世界に来ている可能性があるの?」

「それは分からない。だけど、隼人くんが私の世界に迷い込んだみたいに、その可能性もあるかなって思って……」


 確かに世界は二つ、存在している。有り得ないとは言い切れない。せめて、ここなの探している先生がどんな人なのか分かれば、僕もこっちの世界で気に掛けることはできるけれど……。


「それで、結人くん!」

 ここなの表情はコロコロ変わる。考え込んでいた表情から打って変わり、僕に期待を込めた目を向けてくる。

「どうやって行くか、何か分かった?」


 僕は現時点で分かっていることを、ここなに説明してあげることにする。


「僕が推測するに、異世界転移が起きるのは、『開かずの門』が開くことが条件になっている気がする。だけど、その肝心な『門』の開け方はまだ分かっていない。神社の関係者すら、その開け方を知らないらしい」


「私もさっき、神職の人に話を聞いてきたんだけど、あの『門』は鍵がそもそもないって言われたの」


「鍵すらないのか。僕の世界とここなの世界ともに、本当に『開かずの門』なんだな」


「そういうことみたい。物知りの来條さんも、あの『門』の秘密を知らなかったくらいだし、あの『門』について知っている人自体、こっちには居ないみたい。だから、ちょっとお手上げ中なんだ」

 

 ここなは宝探しで宝が見つからなかった子供のように、小さく唇を尖らせてみせた。

 

「ここなの神社には四の鳥居ってある?」

「四の鳥居?」


「そう。ここなの世界で言うと、この目の前にある白い鳥居が、僕の世界では三の鳥居。階段を下って、途中にあった白い鳥居が二の鳥居。そんで、おそらく使われていない道の先に鼠色した鳥居があっただろう?あれが一の鳥居」


「あぁ。鳥居って、ゲートのことだったんだね」

「ゲート?」

「私たちはゲートって呼んでるよ」


 ゲートといえば、出入口とか門とかの意味だったはずだ。


「ここなの世界にある開かずの門は『白い門』だったよね。あれは『ゲート』って言わないの?」


「言わないなぁ。『門』だね。あ!そういえば!ゲートには番号があるよ。目の前にあるゲートは確か三番だと思う」


「三番のゲートと三の鳥居」

 言葉は違えと、意味合いは近い。


「うーん。……確かに、四番ゲートはないね。五番ゲートはあるけれど」

「ここなの世界での五番ゲートってどこにある?」


「あっちのゲートだよ。神社の左奥にあるのが、五番ゲート」


 僕の世界では門があるところが、ここなの世界では五番ゲート。

どうやらそこの数字は逆のようだ。『門』『ゲート』『鳥居』これらが全て同じ意味だとしたら、存在していない『四の鳥居』の位置は、『門』のある場所を指すのではないだろうか。


「もしかしたら、『四の鳥居』『四番ゲート』は、『開かずの門』のことを示すのかもしれない」


 僕はある一つの仮説を思いついた。異世界転移をするために、開かずの門を開ける方法。僕はそれをここなに伝えた。


 * * *


 翌日、僕は昨日ここなに話した仮説を隼人にも話してみた。

隼人はその話に目を輝かせて、ノリノリになり、今日の放課後に一緒に行こう!それを試そう!とはしゃぎだした。


父親の説得はどうするんだと聞くと、内緒にしておけば大丈夫だと言い張った。コレでまた行方不明にでもなったら、僕は隼人の父に顔向けできなくなる。


仮説を話さない方が良かったかもしれない。


だけど僕は、その思いを向ける相手を間違えていたことに後から気付くことになる。それに気付くのは、さらにもっと僕の心を揺るがす事態が起きてしまってからだ。



 授業中。教室の扉が突然開いた。


その不自然な動きと、独りでに扉が開いた音に、教室にいる教諭とクラスメイト達が、一斉にその扉を見た。だけどそこには誰も居ない。


教諭は何が起きたのかと驚いて、扉から廊下を見た。誰も居ないことを確認し、首をかしげる。そして、静かに扉を閉めた。

教壇に戻ると授業を再開する。それを眺めていたクラスメイト達も、それに倣ってつつがなく、何事もなかったことになった。


 だけど……。僕の目には皆が見えない姿を捉えていた。


「結人くん!見つけた!」


 ここなが安堵したように息を吐く。そして僕の席に向かって駆け寄ってくる。


ここなが席にたどり着くまでに、机の横に掛かっていた物がパラパラと床に落ちた。

その不思議な出来事は、見えないつむじ風が通ったように見えただろうか。


 僕はひとり教室で、目を見開き固まるしかない。

ここなが僕の机の前まで来て、両手を机の上に寄りかかるように乗せた。


「結人くん。お願い!先生を探すのを手伝って!」


 僕は少しのけ反りながら、ここなはその潤んだ瞳に掴まった。


引き続き、ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。


ここなと始まる先生探し。それがもたらす未来とは……?

ぜひ、感想お待ちして理ます。

皆さまの応援がとっても励みになります!


続きは明日、12時30分の予定です。

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