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パリィタンクが往く、リーヴラシル・フロントライン  作者: ゼノ
空を見上げ叡智を知り、地を見て深淵を知る。
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叡智と深淵の愛を舞え 15

 ダンスバトル子育て編を簡単に説明すると、生まれた子供が可愛くて可愛くて仕方ない、私達の子供世界で一番可愛いし天才だ、って感じの内容だ。歩いた、笑った、お父さん、お母さんと呼んでくれた……子煩悩な思い出が出るわ出るわ……季節が変わる時にしか話していなかった二人が、季節が変わらなくても言葉を紡ぐとは――――この夫婦、相当な子煩悩だぜ!! 拗らせ夫婦のくせに生意気な。


「どこで拗らせやがった!? お子さんに彼氏でもできたかぁ!!?」


 そう言った瞬間鼻を掠める長剣の刃。ひゅー、怖い怖い。この感じ、応対ができないかと思ってたけど、聞こえていて無視していた感じか? 無視は良くないなぁ……コミュニケーションくらいは拗らせずにやっていこうじゃねぇか。

 ……まぁ、拗らせた原因がお子さんではなさそうなのは分かってる。初めてこの二人に出会った時、幸せを噛み締めていた時、戦争が起きたって言っていた。戦争――――つまりこの世界、リヴラインの世界で起こった超大規模戦争。それによってこの夫婦は拗れた。拗れたというのも何か違う気がしなくもないが、お互いがお互いを殺してやりたい、死ぬなら愛した人の腕の中で眠りたい、そんな愛を拗らせてる。そのくせ――――いや、そのくせって言うのは良くないか。俺の視点から見たら拗らせているように見えるだけで、あの二人は真面目に純愛やってるはずだ。だからこそ思い出に縋って、叡智テンライは呪術の舞を、深淵テンライは魔法の舞を踊っている。


 じゃあこの舞を踊り終えたら? この夫婦はどこに進むんだ? ダンスバトル終了ではいクエストクリアなんて面白くないぞ。色んな意味で面白くない。というか戦争はいつ起こった? 子育て中か? 子育てが一段落してからなのか? どっちにしたって子煩悩な二人にとっては最悪の一言だろう。


「……まぁ、考えるのは後でいいかぁ!!」


 オラオラおしどり拗らせ夫婦! そろそろ季節が一巡するぜ! その後はどうなる!? 子育て編が終わるぜ!?


「それは春の前触れ……いとし子に舞の全てを教えると約束した、暖かい季節――――」


「そうなる、はずだった」


 深淵テンライの言葉の後、まるで空間自体が止まったかのように全ての動きが止まった。何だ? 何が起こってる? テンライ達も祭囃子も演奏も止まっている。季節が一巡したことで、面がまたもや力を与えてきたが、そんなことを気にしていられるような状況じゃない。

 周囲を見てみると、カッコいい戦士をぶっ倒した三人も不思議そうに固まっていた。あの強そうなやつ倒したのか……いいなぁ、俺もやりたかったなぁ!! それはともかくとして。


「……何だか嫌な予感がしてるぜ、俺は」


「そう、ですね。私もです」


 どこまで行っても前人未踏の領域から外れないカレイドモンスターとの戦闘と、このダンスバトル。覚悟も初見クリアへの意気込みもして、最後の最後まで楽しもうって決めてはいたが、ダンスバトルのその先がこれで終わりってことはないだろう?


「ああ……空が燃えている」


「ああ……地が燃えている」


「神も、竜も、殺し合っている」


「神に与する者、竜に与する者……選択を迫られ、我らは神も、竜も裏切れなかった」


 その声と共に、テンライ達の体に異変が起こる。叡智テンライの体には紫電が奔り、深淵テンライの体には蒼白い炎が奔る。その雷も炎も、命を削って生み出されているような、そんな気がしてならないくらい彼らの姿はどこか痛々しく見えた。


「ああ、染まっていく」


「ああ、染められていく」


「愛した人が、竜に成り果ててしまう」


「愛した人が、神に成り果ててしまう」


 ふと、彼らの目から涙が流れていることに気付いた。それは愛した人が人じゃない何かに変わるのを悲しんでいるのか、それとも――――子供を残して戦争に赴かなければいけないことへの負い目か。俺には分からない。分からないけれど、どちらも含めているような気がした。


「ああ、愛しき人よ」


「ああ、愛しき人よ」


 寄り添うように、お互いに縋り付くように両者の頬に手を振れるテンライ達。


「願い叶うならば」


「もし、夢が叶うのなら」


「その体を蝕む呪いを……不滅の呪いを……」


「その体を蝕む呪いを……不変の呪いを……」


 紫電と炎はまるで血を噴き出しているかのように体のいたるところから噴き出ている。もはや服も襤褸切れ同然となりかけている彼らはまさに亡霊。永遠を生きて、永遠に生きて、永遠に苦しみ続けている、死にたくて死にたくて堪らないのに、死ねない死にぞこない……死にぞこないじゃないか。どちらかと言えば地縛霊とかその類。


「その様子じゃあ、ダンスバトルって感じではなさそうだよな……」


 ただし、空気の読めない祭囃子や演奏者共は激しく音楽を掻き鳴らしている。しかも何だか楽しそうに、祭りのクライマックスを飾るかのように。あいつらの姿を見てそんな音楽を掻き鳴らすというのなら、貴様らから先に屠ってやろうか。


「うるせぇんだよこの野郎!!」


「この空気感で演奏は本当に空気が読めないわね」


「フヒヒヒ……まぁ、所詮は幻影……心などあるものかよ……」


 そう思っていたのはソフィア達もだったのか、やかましい音楽を奏でていた演奏者共を各々の武器で抹殺した。グッジョブ、さすがだぜ。


「さぁてティアラ……これで演奏無しが確定したわけだが、大丈夫か?」


「はい。……そもそも、ここから先は恐らく……舞は必要ではありません」


 いいね、いい返事だ。笑顔も不自然なものじゃない辺り俺達の空気が感染したか? いい傾向だ。もっと染まれよ。


「彼らはもう――――いいえ、ずっと昔から限界だったはず。限界を、思い出に縋り続け、苦しみ続けながら耐えていただけ……」


「なら、自壊を待てばいいって?」


「……はい。ですが……あなたは、それを望んでいないのですね」


「当然よ」


 何を当たり前のことを、と言わんばかりの表情を浮かべながら七支刀をインベントリに格納し、ドラゴスパイクと交換する。やっぱりこのスタイルよ……槍&短剣は本当に手に馴染む。

 向こうが舞を止めて何をしてこようが関係ない。こちとら高難易度であればある程楽しくなってくる変態の集まりだぞ。それをなぜか知らないけど纏め上げることになった変態のリーダーだぞ俺は。超高難易度の初見殺しで前人未踏? 最高じゃねぇか!!


「なぁティアラ。宴ってのは終わるから楽しいんだ」


 アドレナリンとか色々ドバドバ出ているような気がしつつ、笑みを浮かべて横に立っているティアラを見る。ああ、美人だな。ソフィアに並ぶくらいの美人だ。美人の笑顔って破壊力ヤバいよね。……よぉし、興奮と冷静、その狭間を維持していけ。


「はい」


「んでもって、型に嵌まった形式的なものほどつまらない」


「……はい」


 ダンスは楽しかったか? という質問をされたら間違いなく大きな声でYESと答える。本気で取り組んだものは何であろうと楽しいものだ。

 テンライ達の語りや演奏は面白かったか? と聞かれたらYESと答える。赤裸々に語られる二人の幸せそうな記憶、幸せな思い出は聞いてるこっちが嬉しくなってくるくらい、本当に幸せそうだったから。


「自滅するまで耐えるなんて面白くもねぇ」


 そう、耐久ゲー程心が死んでいくものはない。ダンスは楽しかった。ソフィア達も無双ゲーを楽しんだだろうし、強敵とも戦えたようでどこか満足気だ。じゃあ俺はというと、まだまだ不完全燃焼気味。自滅で倒れるのは設計がゴミみたいな超大型ロボットだけで十分だ。

 あの二人が自滅するまで耐えるなんて、いやそもそもあいつら死ぬに死にきれないからああして生きてるのに、自滅するなんて考えられねぇ。それに、テンライ達にはお前をぶっ倒してやると宣言したのだ。ティアラからは宴の幕引きを頼まれてる。なら、自滅、自壊を期待するなんて絶対にしない。してたまるか。


 イベント戦の後はちゃんとした戦闘があるって相場が決まってるんだよ。アーケードゲームだろうが、ディスプレイ型ゲームだろうが、VRゲームだろうがそれは変わらない。そして――――ゲーム性、ストーリー性そのどちらも両立させてくるのがサプライズグッドラックという会社のゲームだ。彼らの作るゲームの全てがプレイヤーへのご褒美タイムを用意していた。「よく耐えたね。ここからは君達が反撃する時間だ。思う存分、自分の好きなやり方で好きなだけやってやれ!!」と言わんばかりの、ご褒美タイムという名のプレイヤーのターンが絶対に用意されていた。

 そして今、きっとこの瞬間からが俺達へ贈られたご褒美タイムだ。


「自由にやろうぜ、ティアラ! こっからは受け身じゃねぇ、こっちが攻める側だ!!」


 涙を流しながら、まるで狂ったかのように長剣を振るった深淵テンライ。発狂していようが、その技量は変わっていないようで、正確に首を刎ね飛ばそうとしてくるそれを、迎戟の短剣で絡め取り、弾き飛ばす。


「堅牢発動……からの、迎戟の短剣の効果発動!!」


 迎戟の短剣。ソフィアから渡されたその短剣の効果は非常にシンプルだ。パリィした際、その攻撃に属性が乗っているのであれば、それと同じ属性をエンチャントするというもの。鹿竜の角刀を使っていた時に恩恵はなかったが、ドラゴスパイクを使っている今なら、その恩恵を十二分に受け取ることができる。

 剣のような刃を持った槍に深淵テンライが纏っていた炎がエンチャントされ、蒼炎が迸る。なりそこないの竜の末裔が、本物のドラゴンの炎を纏う。


「ドラゴン武器達は神様相手に特攻乗るらしいなあ!!?」


 ワンテンポ遅く動き出した叡智テンライ目掛けてバーストランサーを発動、銃弾の如く飛び出した俺の手にあるドラゴスパイクが叡智テンライの鳩尾にぶち当たる。この瞬間、今までにない感触が俺の手に伝わってきた。通る。通っている。ダメージが、全くもって手応えが無かったさっきまでと違って、俺の攻撃が確実に通っている!!


「今までのお返しをたっぷりさせてもらおうじゃねぇか!!」


 バーストランサーの効果が消える瞬間にスパイラルバーストも起動。ガリガリガリガリィイイッッ!! と岩盤を削り取るような、生物にぶつけてる音ではない音と共にクリティカルのエフェクトが散る。


「ガッ……! ァァアアアアアア……!!?」


「そんな適当な攻撃が通用するかよバーカ!!」


 バーストステップで回避することで生まれた慣性を利用して跳躍した後、空中での回避を一度だけ可能とするスキル、スカイウォークを起動してティアラのところまで戻ると、ティアラの剣に黄色――――というよりも金色の雷が纏わりついているのを確認できた。呪術的な雷じゃねぇな。神様の雷って感じだ。なんか神々しい感じがする。


「ティアラ、その雷は?」


「神雷……神の雷、その最も階位の低い雷です。私の力ではここが限界です」


「あー……それはもしや、面の力だったり?」


「この面の力もありますが、私も一応、神雷と竜炎は使えますので」


 ステータス確認してなかったけど、ティアラってマジで序盤にいていいようなNPCじゃないよな。絶対レベルカンストしてるって。敵対したら間違いなく小間切れにされてしまうだろう。


「なんで使えるかって聞いてもいいやつ?」


「これが終わればいくらでも」


「そか。楽しみが増えた」


 クエスト報酬、経験値、打ち上げ、ティアラへの質問。楽しみが増えて、俺はとても嬉しいよ。


「さぁて、フィナーレまでもう間近だと思うし……全力で楽しもうじゃねぇか」


 食い縛りポーションはあと七つ……んでもって色んな状態異常を発生させるポーション中毒ももう少しで発生してしまう……まぁ、食い縛りポーションを何度も使わなきゃいいんだよ。ここからノーダメ余裕でしたってドヤ顔できるくらい頑張ればいいんだよ。頑張れ俺。負けるな俺。楽しんでいけ俺。楽しんでるか俺。全力で楽しむ準備はできてるか俺。


「最初からずっと楽しむ準備はできてるっての!!」


「誰に対しての言葉ですか?」


「俺自身へのだが?」


 よくするだろ、自問自答。……そこまで頻繁にすることは無いけど、自分の手札を再確認する時にするだろ。

 まぁ、とりあえず……ここからは俺達プレイヤーのターンってことで、ダンスバトルと惚気話と子煩悩な思い出話の返礼をさせてもらおう。遠慮するなよおしどり夫婦。楽しくやろうぜ?

叡淵のテンライ(のろけばなしのすがた)

叡淵のテンライ(こそだてのすがた)

叡淵のテンライ(せんそうのすがた)


上から順にダンスバトル&無双ゲー、ダンスバトル&サブボスバトル、プレイヤーのターン及び発狂モード。


つまりもう一段階ある。(ネタバレ)

おらっ! 楽しみが増えたぞアオヘビ! 丸呑みしろ!!

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