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パリィタンクが往く、リーヴラシル・フロントライン  作者: ゼノ
空を見上げ叡智を知り、地を見て深淵を知る。
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叡智と深淵の愛を舞え 14

 アオヘビとティアラが叡淵のテンライとダンスバトルを繰り広げている中、ソフィア、ヘイズ、フラウヤの三名は現れた半透明の人型――――宴の幻影と永遠に思える戦いを繰り返していた。

 一体一体の実力はそこまで高いものではない。どちらかと言えば低い。カレイドモンスターのおまけとして現れたというのにそこまで強いとは言えないのだ。例えるなら無双ゲームの雑魚敵といったところだろうか。強くはないが、数がやたらと多いのである。


「副団長ー! ちょーっと多すぎやしないかなぁ!?」


「フヒヒヒ……無双ゲーだ……VRゲームでは久しく見られていない無双ゲーだ……」


「一応芋デスは無双ゲーあるわよ」


「「マ?」」


 わらわらと現れ続ける幻影を切り裂き、殴り飛ばし、貫く。倒せど倒せど現れる宴の幻影の攻撃は確かに速いが、見てから避けることができるくらいの速度だ。ただ、それが大量に重なると回避をすることが難しい。ゆえに、ヘイズが触媒となるレイピアをバッドのように構える。


「タイミングよく飛んでくれよ! 『星よ、暴風を纏い、我が敵を薙ぎ払え』! 『星大剣:風』!!」


 レイピアが暴風を纏った巨大な大剣となり、四方八方から迫りくる宴の幻影を一気に薙ぎ払った。文字通り薙ぎ払われたことにより、開けた視界の端では呪術の炎を纏った刃を振るうソフィアの姿や、フラスコを投げては矢で割り、デバフをかけて回るフラウヤの姿が見えた。


「無事で何より!」


「飛ぶよりもしゃがんだ方がよかったわ」


「フヒヒヒ……べちゃっと伏せるといい感じに回避できたね……あ、ヘイズちゃん、三歩右」


「ん? っとぉ!!?」


 ヘイズが三歩右に動いてすぐ、毒々しい色のポーションが括りつけられた矢が飛んでいく。まるで生き物のようにうねりながら飛んでいく矢は、ヘイズの死角にいた幻影を貫いて、いかにも毒のような色の液体をぶちまける。


「……ありゃ?」


「おーい、フラウヤ! 何か効いて無さそうなんだけど!?」


「えー……結構強い毒のポーションなんだけどな、あれ……」


 宴の幻影に混ざるように現れたそれは、歪な形をしている大剣を構えて佇んでいた。毒など物ともしない毛皮の鎧を纏った幻影は、他の幻影とは違い、はっきりとした像を持っている。

 ソフィアはその幻影の姿に見覚えがあった。


「オリオン……!?」


 鹿の毛皮をスケイルアーマーと縫い合わせたような鎧を身に纏う戦士は、ソフィアがこのカレイドクエストを受けた際、二番目に戦った追憶の獣。【深淵の戦士オリオン】の姿そのままであった。


「え!? 何!? あいつ追憶の獣!?」


「フヒヒヒ……ボスラッシュかな?」


「そうなるとケリュネイアとカリュドーンも現れるけれど」


「「楽しくなってきたなぁ!」」


「そうよね、二人も同類だものね。……ただ、まぁ」


 炎を纏う大剣を天高く掲げ、両断しようと迫るオリオンにソフィアが正面から挑む。振り下ろされた大剣はギロチンのようにソフィアの細い首を刎ねる――――ことはなく、軽々と受け流され、毛皮の鎧に水の刃を叩きつけられた。


「やっぱりあの時戦ったオリオンよりかは弱そうね。宴に混ざってるせいかしら?」


「んだよつまんねぇなあ!」


「フヒヒヒ……アオヘビちゃんが羨む感じじゃないか……」


 このパーティ、高難易度であればある程燃え上がる戦闘狂や変態しかいないのだ。


「攻略法は簡単よ。向こうが纏った魔法属性の弱点を突くだけ。簡単でしょ?」


 弱体化しているらしいオリオンに武器を向けると、宴の幻影達が攻撃を止め、どこから取り出したのか酒樽と大きな酒杯を持ち、戦いを肴に飲み始めた。


「人の戦いを肴に酒を飲むとかどこの古代ローマ」


「フヒヒヒ……まぁ、宴の幻影っていうくらいだしね……」


 地震のような雄叫びを上げるオリオンを相手に、ソフィア、ヘイズ、フラウヤの戦闘が始まった。





 何か向こうで見覚えのない強そうなやつと戦っているソフィア達が見える。いいなぁ! あのカッコいいやつと俺も戦いたいなぁ!!


「余裕が出てきていますね、アオヘビさん?」


「余所見できるくらいには慣れてきた!」


「それは素晴らしい。舞は加速していきます。置いていかれないように」


 ランダムで高速化してくってどこの鬼畜難易度音ゲー。しかもノーツが見えないとかマジのクソゲーの気配がする。というかVRゲームで音ゲーは難しいってことで、数ある音ゲーを輩出しているゲーム会社はアーケードゲームに力を入れてた。アーケードゲームはまだまだ現役なのだ。

 アーケードゲーム事情はさておき、一巡するくらい踊っていれば体も慣れてくるというもの。ランダムで季節が選出されるとはいえ、四分きっかりで切り替わるのは確定だ。季節の変わり目が挟み込まれたとしても完全に季節が変わるのは四分。これは間違いない。全身に叩き付けられるズキズキと痛むくらいの殺気すらも心地良い気がする極限状態一歩手前の状態で、俺は笑っている。


「少しだけ竜化したってのもあるのか、スタミナ量が尋常じゃない!」


「竜や神は眠らず戦いを幾度も繰り返していますからね。仮初の、一歩程度であっても竜に近付けば、その加護を得ます」


 ポーションのスタミナ回復速度UPと竜化によるスタミナ増強とスタミナ回復速度UPが、舞い続けている俺のスタミナ消費量を上回るという状態。さっきまでスタミナがギリギリだったというのに、スタミナ管理とかしなくても全然動ける。


 一歩前、からの回転。その後迎戟の短剣で長剣を絡め取るように弾く。弾いたら後方にステップしながら下がり、テンライの動きが一瞬止まったところで近付く。動きに季節とかそういった要素が加わるものの、大体の動きはこれが基本となる。ずっと間合いにいるのが怖すぎるが、ダンスとはそういうものだ。芋デスはどんな距離でも間合いだった。そう考えるとそこまでやっていることは変わらない。


 にしても、スタミナ管理をしないでいいというのは楽だな。これがドラゴンの力かぁ、なんて思いながら叡智テンライの雷を纏う刃を金の舞で受け止め、ちょっとした検証を挟む。

 舞を踊りながらパリィングカウンターを発動した際、舞を継続して踊っている判定をいただいた。ドラゴンロアを発動した際も同じ。ならば、他のスキルはどうだ? 攻撃スキルはどうなる? ちなみにドラゴンロアは攻撃スキルではなく強化スキル枠。


 栄えある最初の検証に選出されたのは、いつの間にか名前を変えて進化していた攻撃スキル。


「反転斬りィ!!」


 鹿竜の角刀を切り上げるように振るうと、三日月のような曲線を描いた斬撃のエフェクトが切り上げた場所に浮かび上がり、俺の腕がまるで天井に弾かれたかのように打ち出される。反転斬り。背後から攻撃するとダメージボーナスを獲得できるバックスライサーが進化した姿。スキルの融合とかしなくても進化をするタイプのスキルであるそれは、当たり判定のある斬撃エフェクトを出現させ、その斬撃を放った方向と真逆の方向に攻撃を繰り出すというもの。切り上げて回転するところを、振り下ろして回転する。さて……どうなる?


「それは、冬の残滓」


「過ぎ去った冬の気配が、山風と共に駆け抜ける」


「許されたってことでいいんだな!?」


 まぁ効いている感じは全然しないけどな! だが、これでスキルを発動しても舞を中断したことにはならないはず。

 ただ、確定したのかはまだ分からないので、続いてバーストランサーを発動してみる。銃弾のように放たれた刺突は叡智テンライの腹に激突する――――はずだったが。


「――――天眼(てんげん)柔術」


「ひょ?」


 さっきまで舞のことしか話していなかった叡智テンライの口から、そんな言葉が聞えてきた。聞こえてきた頃には、俺の体は叡智テンライの細くしなやかな手が俺の服に絡みつき――――ふわりと体が宙を舞った。


擲矢天飛(なぐるやのあまとび)


「あ――――ごべすっ!!?」


 リアルでやられたら絶対に首の骨か背骨がへし折れること間違いなしの投げ技を喰らい、地面に叩き付けられる。なぐるやってなんだ……なぐるや……なぐ、るや……なぐる、や? ……投げる矢? 俺は矢ですかそうですか。

 ちゃんと集中して舞をしなさいというお叱りを攻撃によっていただくとは思っていなかったが、マジかよテンライ……! 柔道? 柔術? まぁ何でもいいんだけどさ……! 舞はハンデかと思うくらい普通に戦えるじゃねぇか……!!


「アオヘビさん、離れますよ。動けますか?」


「バウンドしながら踊るなんて初めての経験だぜ……!」


 俺が地面に叩き付けられてバウンドした結果、テンライ達の間合いから離れたようで、季節が変わる前に小休止が挟まった。さて……そろそろ季節が変わる頃だと思うんだが……


「巡る、回る、廻る。季節が移ろい、その時が訪れた」


 よし、思っていた通り季節が変わる! けどさっきまでの季節チェンジの文言と違うような……?


「豊穣の秋、その子がやってきた。やってきてくれた」


「産声を上げ、我らのもとに、来てくれた。我らのいとし子」


 夏→春→夏じゃなくて春から秋に行きやがった!? てか産声? 産声って言ったか今。ご出産!? 誰が生まれたんだ? というか愛情拗らせ夫婦よ、その拗らせた状態でお子さんを育てていたわけじゃないよな? お子さんにもその拗らせた愛情を向けていたわけじゃないよな? 大丈夫だよな? 拗らせてるのを聞いてるからちょっと心配なんだけど。


「ティアラ、あの愛拗らせ夫婦、子供にもそういう感情向けてなかったか?」


「それは……なかったはず、です。はい、きっと」


 知り合いらしきティアラに聞いてみると、何だか怪しい回答が帰ってきた。大丈夫か? 大丈夫なのか? あいつらのお子さん、この世界でヤンデレとかメンヘラとかになってないか? 反面教師にして生きてる可能性も無きにしも非ずだが。


「まぁ、とりあえず文言が変わったんなら色々進行してんだろ。この調子でダンスバトル勝ちに行くぞ!」


「はい。アオヘビさん、油断なきよう」


「検証で死にかけた俺は何も言えないぜ……」


 まぁ、ここまで来たんだ、絶対に勝ってやるよおしどり夫婦!!

 秋が終わって冬になるか? それとも戻るか? どれでもいいが、絶対に攻略しきって倒してやるからな愛情拗らせ夫婦めが。

ラウンド1:ダンスバトル馴れ初め~結婚編

ラウンド2:ダンスバトル結婚~出産~子育て編

ラウンド3:???


盛り上げ役は無双ゲーを繰り返し、オリオン(弱体化)と戦います。勝ったらまた無双ゲー開始です。

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