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パリィタンクが往く、リーヴラシル・フロントライン  作者: ゼノ
空を見上げ叡智を知り、地を見て深淵を知る。
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叡智と深淵の愛を舞え 2

 熱帯夜に外へ向かおうとした愚かしい俺はソフィアに風呂を借りて戻ってきた。風呂掃除はさせてもらった。寝床をいただけるだけでなく、風呂も貸していただけたのでな……さすがに掃除くらいはさせてもらわないと。……いや待てよ? そもそも俺が口を滑らせなければこうならなかったのでは?


「むむむむむむ……」


「何唸ってるんだ、団長?」


「――――いや、気にしないでくれ」


 俺の次に戻ってきたのはヘイズだったか。俺はウルカンに巨骸骨刀の使い心地とかを話して、ティアラと軽く話をして宿に戻ってきた。ソフィアとフラウヤは、ポーションの材料やら色々と買い足したいものがあるとかで、買い出しに向かっている。

 それはそうと、夜になったサードグロリオには昼間と同じくらいプレイヤーがいるようで、宿屋の外は凄い賑わいを見せていた。うーむ、壮観だ。


「日本のゲーマー達が溢れている……」


「三百万人以上いるらしいぜ、このゲームの購入者」


「日本に住んでるゲーマーしか遊べないってのに、凄いもんだ」


 全く、とんでもないゲームを発売したもんだよ、サプライズグッドラック社……お陰様でハマっちまったよ。ありがとうサプライズグッドラック社。


「そういや団長」


「ん?」


「クラン結成するのっていつにするんだ?」


「あー……」


 クランの結成なぁ……このゲームにおいて、クランはギルドにギールを支払うことで結成されるみたいだが、これが中々吟味しなくてはならない要素だと聞く。

 例えば対人戦に重きを置くクランを結成するのであれば、闘技場を管轄する決闘ギルドや盗賊ギルド、暗殺者ギルドなどでクランを結成することで、対人戦においてのステータス補正を貰える。そこでしか購入できないアイテムも、割引されたりするそうだ。

 物作りに関するクランなのであれば、物作りに関するギルドで結成することで物作りでステータスの補正や、完成品の品質に補正が貰える。こちらも特定のアイテムに割引が入るらしい。

 まぁ、そういう感じで、リヴラインはどのギルドでクランを結成するかによってどんな恩恵が得られるのかが変わってくる。ちなみに、これはソフィアから教えてもらった情報。


「うーん……無難にティアラ達がいる通常ギルドでいいんじゃないかなぁ、って思ってる」


 通常ギルドは特にこれと言った恩恵が割引き程度しかないが、色んなギルドから集められた情報が集まってくる。もちろん断片的なものが多いが、それでも情報がたくさん手に入りやすいし、ティアラやウルカンなどの知り合いのNPCがいるというのは、かなり楽だ。新しいNPCに会いに行くというのもいいが、ティアラもウルカンもまだまだ色々教えてくれそうだし。


「なるほど。まぁ、俺達は団長の考えに従うぜ! あれこれ考えるのはあんまり得意じゃないしな!」


「頭を使うようなビルドばっかり使ってるくせに、考えるのが苦手ってどういうことだよ」


「慣れだな!」


 なるほど、慣れか。俺も練習を重ねて慣れていったから一緒か…………いや俺より頭使ってんだろこいつ、騙されんぞ。俺を含めた七人のゲーム仲間で頭を使うビルドを組んでいるのはフラウヤ、ヘイズ、ソフィア、弓侍、海賊(斧)の五人。残る俺ともう一人は殴り続けていれば相手は死ぬ、という考えの下、そこまで頭を使うようなビルドを組んでいない。パリィタンクはそこまで考えることがなくていいぞ……考えることなんて、大体どうすればこいつを上手くパリィできるかとか、どうやればこいつのヘイトを買い続けることができるかくらいだ。あとは魔法の言葉、「しにやすしにやす」と唱えれば全てが許される。あれを唱えれば、全てが許せるメンタルが生まれる。なおPKしてきたやつは地の果てまで追いかけてPKKするのが俺達スタイル。


「ま、クラン結成は七人揃ってからかな」


「だな!」


「「ただいま」」


「「お、おかえり」」


 ヘイズと話をしている間に、ソフィアとフラウヤが戻ってきた。アイテムトレード欄に表示されたアイテム達を受け取り、俺達は顔を見合わせる。


「んじゃ、行くか、拗らせ夫婦のとこに」


「その呼び方止めない?」


「フヒヒヒ……NTR趣味がある夫婦よりはいいでしょ」


 おう、お前が送りつけてきた同人官能小説の題目止めろや。あれが送られてきた時の俺の気持ちが分かるか? 紙ごみに出してスーパーのポイントにしてやろうかと思ったぞ。非常に遺憾ながら誕プレとして貰ったから取っておいてあるけどさ……


「団長と副団長について行けば会えるのかね?」


「ああいや、これを使えばいいらしい」


 そう言って俺がインベントリから取り出したのは、深淵テンライから渡されたスクロール。魔法や呪術をストックしておくことができる超レアアイテムらしいそれに刻まれたものは、【複数転移魔法(テレポーションズ)】。指定した座標に複数名をワープさせることが可能という超レアな魔法だ。戦闘中でも利用できるファストトラベルという感じだろうか。


「フヒヒヒ……こんなスクロールをポンと渡せるなんて、さすがって感じだね……!」


「で、どう使うんだこれ……」


「開けば発動するわよ」


 おお、分かりやすい。普通のスクロールと違って、使い捨てじゃないというところに深淵テンライ――――いや、魔法だから叡智テンライか? ―――――の優秀さを感じる。

 テンライの凄まじさを感じながら、スクロールを開くと、刻まれていた魔法が起動して魔方陣が開く。俺達の視界を白く染め上げ、視界がはっきりとした頃には、俺やソフィアが招かれた空間に俺達は立っていた。


「おお……!?」


「……こりゃ凄いね……宴の会場みたいだ……!」


 言われてみれば、確かにお祭りの会場にも似ている。この空間を囲うようにあるしめ縄のようなものや、紙垂など、神社で開かれる祭や宴の会場と言われたら確かにそうだ。しかしそうなると、あれだな……


「太鼓とか笛とか鉦とかは誰が奏でるんだよ」


「あら、アオヘビは知っているのですね」


 シャラン、と風に揺られた鈴の音が鳴ると共に、巫女服とドレスを融合させた服を着た美しい女性が現れた。彼女こそが【叡智の神人テンライ】――――叡智テンライであり、俺の舞の先生である。深淵テンライは本日お休みのようだ。


「こんばんは、ソフィア、アオヘビ。そして、二人の仲間である解放者の方。私は【叡智の神人テンライ】と申します」


「……すっごい美人だな! 団長と副団長の言った通りだ!」


「フヒヒヒ……是非とも旦那様との馴れ初めをお聞きしたく……」


「止まれ同人作家」


 さすがに叡智テンライと深淵テンライを題材にした同人誌を書かせるわけにはいかない……!!

 とりあえず俺達の仲間であることが伝わったようで、叡智テンライは上品に微笑んだ。


「ふふ、愉快な方達ですね」


「俺達の仲間だからな。……あ、叡智テンライ、この二人にも軽くでいいから話してくれよ。俺とソフィアはもう聞いてるけど」


「ええ、もちろんです」


 叡智テンライから語られる、夫婦の愛と舞の話。うーん、神、竜、呪い……何度聞いても分からない話だな。その呪いを解きたいから魔法と呪術に手を伸ばして……うーむ……


「神様の呪い、竜の呪い……」


「うーん……なんかあったような……ダメだ、締め切りギリギリまで描いてたせいで頭が回らない……」


 キャラ付けのための口癖が消えてるもんな。ロールプレイって大変だな、フラウヤよ……俺はロールプレイとかあんまり得意じゃないからやらざるを得ない時しかしないが、フラウヤはいつもやってるから疲れるのは無理もない。


「まぁ、叡智テンライに挑むにしても、深淵テンライに挑むにしても、俺が踊れなきゃ意味ないんだが」


「そうだな! 頑張れ団長!」


「私達はダンスが得意じゃないからね……」


「盆踊りは踊れるか?」


「「踊れる」」


「ならソフィア以上のダンスセンスはあるぞ、安心――――危ねぇ!?」


 事実を言っただけだろうが! そんなに怒るんじゃねぇよソフィア!! 事実を並べられたら怒る? うーん…………まぁ、状況によるかな! また殺気!!


「PKしてあげましょうか」


「やれるもんならやってみろや……!」


 こちとら高速移動する多段ヒット攻撃持ちのインファイターと戦ってんだよ……シャコフィストめ……次挑むことがあったら絶対に一本は取ってやる……! ま、それはそれとして。


「最終確認だ、皆」


 そう言った瞬間、全員の目がギラリと輝く。闘争心に溢れたいい笑顔と目だ。


「この世界で最も強いとされるやつらに挑むんだ。楽しみだよな?」


「楽しみで仕方ないね!!」


 ヘイズがレイピアを構える。


「楽しみで眠れないよ……!!」


 続いてフラウヤが弓を構える。


「私も楽しみ。それで? 一番ワクワクしてそうなあなたはどうなの?」


「最ッッッッッ高に、楽しみでワクワクしてるよ!!」


 シミターを構えたソフィアと一緒に槍を構えて、四人の武器を重ね合う。うーん、久しぶりのこの感じ。厨二心が擽られるし、こう、心が躍る。ただ、これをやると皆の心が一つになる感じがして、俺は結構好きだ。


「リーヴラシル・フロントライン史上、初めてのカレイドモンスター撃破の称号、俺達で獲りに行こう!! ゲームのニュース記事に乗るくらいの偉業ってやつに挑戦して勝つぞ!!」


 俺の言葉にソフィア、ヘイズ、フラウヤが頷き、同時に武器を掲げてから背に仕舞う。よーし、さらにやる気が出てきたぞ!


「つうわけで叡智テンライ! 俺達はあんたと、あんたの旦那、どっちも倒すぞ!」


「……ふふ、私達を倒す……できますか、あなた方に?」


 馬鹿め、俺達の辞書にできるできないの話は無いんだよ。


「やるんだよ。舞も、追憶の獣も全部片付けて、あんたらに挑戦して勝つ!」


 俺の宣言に、叡智テンライは強者の笑みを浮かべた。上品さはあるが、闘争心を隠し切れていない戦士としての笑みと風格に俺達の笑みが深くなる。


「ならば期待しましょう、解放者達よ。私と彼――――【叡淵のテンライ】を、見事打ち破ってみせなさい」


 …………おや? もしかしてフラグが立ったか? まぁ、それはともかく、舞とカリュドーン撃破を急がないとな。

挑む準備を整えろ。

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