当たりとかってポンと出てくるよね。
素材を炉に入れ、槌を振るう。作って、作って、作って、作って――――名前を付けては性能確認。時折、名前が最初から付いているものが生まれる時もあるが、とにかくそれを繰り返し続ける。魔法、呪術、魔法、呪術……交互に鍛冶の技法を使い、マナポーションをがぶ飲みしてMPを回復させてまた技法を使う。
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も。同じ作業を繰り返し続けていると、いつしか脳がバグり始める瞬間が訪れる。
「ぐっがががががががががっががががっがが!!?」
「また団長がバグったぞ!! バケツだ!!」
「い つ も の」
「アオヘビ君、落ち着きなさい」
精神が暴走し始めたら、ソフィア達が用意した水バケツが俺のバグり始めた精神を物理的に冷やす。そんなものまであるのかよリヴライン。
「はぁ、はぁ、はぁ……!! 俺はあとどれだけ防具を打てばいい……!? あとどれだけ打てばゴール装備が手に入る!?」
「乱数の女神に祈りなさい」
無慈悲。あまりにも無慈悲なソフィアのお言葉に頭を抱えたくなる心を抑えつけて、冷静に作り終えた防具達を確認していく。この確認作業が休憩時間になるって、世も末だよ全く。
えーと、どれどれ……? 呪術耐性5%乗算、火属性(呪術)+15%加算、魔法耐性12%加算……加算、加算、加算、加算、乗算、加算、加算、乗算……デメリット持ちだけど10%以上乗算が二つ……うーん、微妙なものばっかりだな……当たりっぽいのは五行相剋倍率9%乗算とか、魔法反射3%とか……? 3%は大きいと思うんだ。
「ぐぬぬぬ……木属性耐性、中々出てこないなぁ……!」
「フヒヒヒ……でも当たりは出始めてるね……あ、この錬金結果増量確率+13.6%加算は貰っていい?」
「ああ、どうぞ。俺達は錬金術使わないからな」
クリティカル率アップとかもありそうなものだが、中々出てこないものだな。目的としているのは木属性耐性の乗算なんだけど、クリティカル率強化や威力強化みたいな効果があるものがあると心が躍るんだけどなぁ。
「……アオヘビよ」
「んあ? なんだよウルカン」
「打ち直しを試してみろ。望みの装備が出てくるかもしれん」
……ああ、そういえば打ち直しなんてものあったな!? 生産にばっかり目が行っていたせいで忘れていたけど、打ち直しをした結果がいまの呪毒の槍だもんな! ガチャ要素がありそうだと思っていた打ち直しだが、調べてみた結果、ベースにした装備+たくさんの素材or装備=掛け合わせた武器が生まれるという派生強化。生産こそがガチャシステムであることが判明した。だというのに、どうして生産ばっかりやっていたんだろう。
「よーし溶かせ溶かせ!」
六時間ぶっ通しで作りまくった防具を炉に放り込んでいけば、どんどん禍々しく、それでいて神秘的なエフェクトが溢れ出していく。呪毒の槍をベースとして放り込んだらどうなるのか、ちょっと気になるが、今回の目的はそれじゃない。
プレイヤーレベルが上がり、今の俺のレベルは35、鍛冶師のレベルは10! 合計レベルは35+20+10=65! はははは!! 36ポイントを敏捷と技術にぶっぱした結果、敏捷が102、技術が75となった! 鍛冶には技術と筋力と魔力がものを言うらしいが、技術敏捷戦士なので俺は技術しか振らないぞ。
「そして、鍛冶スキルが上がったお蔭で手に入れた――――鍛冶呪術Ⅳで行くぜ!」
「フラウヤ、錬金術師って上位職あるのか?」
「フヒヒヒ……あるよ。私はもう少しスキルを育てたいからまだ下級職で止めてるけど」
もう皆も飽きてるだろうしな。さっさと当たりを引いてカリュドーン探しに赴きたいものだ。
「『我、願う。牙阻み、爪阻む。堅牢なる鎧に澱みの呪い。地を巡り、留まり、呪いの澱みを。鎧に宿れ、鎧に巡れ、鎧に留まり、鎧よ澱め。循環し、澱め、廻れ、廻れ、濁れ、濁れ』」
鍛冶呪術Ⅳになって、詠唱が変わったんだよな。これ、最終的には凄い長い詠唱になりそうでちょっと恐怖を感じている。
「『鎧を呪い、地を見つめ、深淵に指を差す。我ら、いつの日か、呪いの深奥に手を伸ばさん』」
詠唱を終えた瞬間、ズアアアアアッ、と呪術のエフェクトが防具に巻き付く。まるで蛇とかムカデみたいだなぁ、と呑気なことを考えながら呪術のエフェクトが落ち着くのを待つと、やがてエフェクトが落ち着き、一つの腕輪が誕生した。
【呪金の腕輪】
呪術が練り込まれた防具を集め、精錬して生み出した腕輪。
魔力を消費することで、己に金属性の力――――呪毒を纏わせる腕輪。
呪術の毒は雷を弾き、雷は呪術の毒を嫌う。この呪毒は己の肉体と周囲を蝕む。
・MPを消費し、呪毒状態になる。
・呪毒状態になった場合、一定時間、毒霧を散布する。
・火属性への耐性-20%
「あ」
「あら?」
「お!?」
「ふおおおお……?」
こ、これは……
「「「「か、神装備来たぁあああああああああああああああああああ!!!??」」」」
鍛冶工房全体が震えるような叫び声が俺達の口から迸る。うおおおおおお!! ドンピシャな神装備だぁ!!? 六時間ぶっ通しでの作業が今実ったぞ!! 呪毒状態ってことは、金属性を纏うってことだ。つまり、雷を無効化できるはず。
「呪毒……普通の毒とは違うのか」
「蛇とかの毒とは違って、HP、MPが削られる状態異常ね」
「うーん……中々悪辣な状態異常だな……」
モンスターとか、プレイヤーが使ってきたら凄く厄介な状態異常だけど……それが俺達を救うデバフとなる。でも体力が削られるということは、短期決戦……じっくり戦うなんてやっている場合ではないな。悪いなカリュドーン。お前との戦いは短い時間で終わらせなきゃいけなくなった。
「これ、量産するべきなのかね」
「安定取りたいなら量産は必要かもね」
なら作らなくてもいいや……それよりも……オールでやってたから凄く頭が痛い……! そろそろ日が昇る時間じゃねぇの?
「ごめん、一回解散でいいか……? 頭が痛い」
「おう、お疲れ! ずっとぶっ通しだったし、仕方ないな!」
「フヒヒヒ……お疲れ。次に集まるまで、私はポーション作っとくね……」
頭痛は恐らく単純作業のし過ぎとゲームのし過ぎと仮眠をせずに休憩をした結果だ。これは三時間以上は寝なくてはなるまい。
「お疲れ様、アオヘビ君。またね」
「ああ、お疲れ。またな」
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ログアウトボタンを押し、現実世界へと帰還する。
時刻は四時を過ぎていた。夜明け、ってわけでもないが、外が明るくなってきている。睡眠時間を確保しないとよくなる、ぐわん、ぐわん、というあまりいい感じがしない脳の揺れっぽいのが不快感があるが、水を飲んでから眠ろうとリビングを訪れる。
「……あれ、碧。早いね」
「鈴音姉さん?」
リビングには、コーヒーを飲みながら動画を見ている鈴音姉さんがいた。
「何見てたんだ?」
「今回の大会の動画。ちょっと粗が目立った。ほら、こことか」
映像を見せられたが、鈴音姉さんの踊っている姿が凄く綺麗だということしか分からない。ただでさえ美人な姉さんが綺麗なドレスを纏って踊るんだから、そりゃあ綺麗なのは当然なんだけど。
「どう? ステップのタイミングズレてるでしょ?」
「分からん。姉さんが綺麗なことしか伝わってこない」
「ありがとう。けど、見てほしいのはそこじゃない。こことか、凄く失敗した」
うーん……そう言われてもなぁ……伝統芸能ぐらいしか踊らない俺には分からない。確かに伝統芸能にも息を合わせるとかはあるけど、こうも極まっているとそういう粗を探す方が難しいぞ……?
「……睡眠不足だから分かってないんじゃない?」
「いや、寝不足がなくても分からん。というかなぜ俺が寝不足だと分かる?」
「碧のことは何でもわかるよ」
「……ごめん、ちょっと花音姉さんみたいだと思った」
「ふふん」
鈴音姉さんよ、胸を張っているが、褒めていると思ってるのか?




