ハクスラハクスラハクスラハクスラ
ビギナーズラックで凄いいい装備が出る。そんなこともあるよね。
連行された俺を見たウルカンの第一声は「まるで水洗いされたドワーフのようじゃの」だった。ドワーフは砂や溶岩を使って体を洗うから、水洗いされるとしぼんで俊敏に動けなくなるらしい。ドワーフ……悲しい業を背負っておられる。
「さぁ始めるとするか……鍛冶呪術でいいのか……?」
呪術と魔法の鍛冶で詠唱も変わるんだよな。作れるのは……まだ、少ない。というか、素材が俺の知ってる物じゃないし、扱いきれるものが少ない。
「ま、どっちも鍛えていかないとだし……」
最初に呪術から行くか。金属性の素材は……化石が多いな。お、オーアフロッグの毒爪もある。レアモンスターの素材とはいえ、何回も探していれば見つかるモンスターなのかもな。
素材を炉に放り込み、真っ赤に染まったそれらを金槌で打ちながら詠唱を口ずさむ。
「『我、願う。牙阻み、爪阻む、堅牢なる鎧に呪を。地を巡り、留まり続ける呪いを。巡り、留まり、また巡る。鎧に宿れ、鎧に巡れ、鎧に留まり、循環せよ』」
呪術のエフェクトと火花が散る。木を弾く金――――雷を消し飛ばす毒――――あの猪ドラゴンを打ち倒すための力をイメージしながら、素材達を整形していく。あいつに勝つ。絶対に勝って、呪いを消し飛ばし、ソフィアが言っていたテンライに勝ってやるという思いを込めて、槌を振るう。
ガンッ、カンッ、カガンッ、カンカンカン。軽快な音と共に火花が散り、重厚な音と共に呪術のエフェクトが瞬き、段々と呪術の金色が現れ、そして形ができてきた。
「『鎧を呪い、地を覗き、深淵を見る。我ら、いつの日か、呪いの深奥に手を伸ばさん』」
詠唱は武器なら刃、防具なら鎧、と簡単かつ分かりやすい詠唱なのは凄く良心的。しかし、それは序盤のものだからなんだろうなぁ。複雑な詠唱も増えてきそうだから、記憶力を鍛えなくては……ソフィアも多分全部記憶してるんだろうな……ヘイズも、魔法職だから暗記してるはず……負けていられない。
「……さぁ、どうだ? なんか腕輪ができたが」
「第一回目、結果はどうだ!?」
名前は、耐木の腕輪でいいか。問題は性能よ。俺達の命綱なんだから、できるだけ性能がいいものが出てきてくれるとありがたいんだが……
【耐木の腕輪】
木属性の耐性を高める腕輪。
呪術とは、循環し、留まるもの。人の身は呪いに耐えることはできるが、完全には防げない。魔法もまた、然りである。
木属性耐性を10%加算する。
……えー、どうなんだ、これは……?
「ハズレね」
「フヒヒヒ……ハズレだねぇ」
「「ハズレかぁ」」
「加算だもの。欲しいのは乗算ね」
ぐおおおおおおお……!! 加算と乗算があるのかよ……! でも倍率が低いなら加算の方が上回ったりするから、一応取っておく――――いや、出るまで回すんだからこれも炉に入れちゃっていいのか。
「ほぉうあああああああ……!!」
「まだ一回目よ」
「頑張れ団長! 応援と素材しか送れないけど!」
「出るまで回せば100%だよ……」
く、くそう……やってやる……! やってやるぞ、カリュドーン……! 待ってろよカリュドーン! お前を倒すためにガンメタ装備を作ってやるからな!!
炉に放り込み、次は鍛冶魔法を試してみる。えーと、確か詠唱は……
「『我、求む。牙を折り、爪を砕け。反発せよ、順応せよ。星の礫、堅牢なる鎧に宿れ』」
お? 呪術とは違ってなんだか神秘的な蒼白いエフェクトが。なんだろう……月の光みたいな感じがする。月にしてはちょっと薄暗い気がしなくもないけど。
「『鎧に魔を編み、空を見上げ、叡智を知る。我ら、いつの日か魔法の極致へ手を伸ばさん』」
詠唱が終わり、金槌を振るい終わると、出てきたのはチョーカーのようなもの。形状もランダムなんだな、これ。多分、触媒みたいなものを使えば固定できるんだろうけど、その触媒を持っていないから、欲しいものをゲットするまで俺の仕事は終わらない。
「次ぃ!!」
【土撃の首輪】
土属性の魔法の効力を高める首輪。
土の魔力を高めるこの首輪は、オーアフロッグの素材が含まれるがゆえに、少しだけ火属性の耐性が下がる。
土属性魔法の効果を12.1%乗算する。
火属性耐性-10
「……おん?」
「あら……ハズレだけど当たりね」
「こりゃ当たりじゃねぇか? 外れだけど」
「当たり枠だねぇ……ハズレだけど」
やっぱり当たり枠なんだ、これ。でも魔法攻撃力上昇はいらねぇんだよなぁ。
「団長、これもらっていいか?」
「待ちなさいヘイズ。私も使いたいわ。ちょっとエンチャントに乗るのか試したいわ」
「おいおい、俺の土の魔法剣を強化できるんだぜ!? 使わせてくれよ!」
喧嘩……ではないな、うん。バチバチ火花が散っているけれど、喧嘩しているわけではない。俺達の喧嘩は対人戦スタートの合図だからな。
「どうやら雌雄を決する必要があるわね……」
前言撤回。対人戦が始まろうとしている。
「だなぁ! 副団長と戦うなんて久しぶりだぜ……!」
「おいこらお前ら、喧嘩するなら外でやってこい」
ここ、工房。鍛冶場。ウルカンを見てみろ……敵を見る目になり始めているからな!? 怖いよ! 凄い眼光だよ!! やべぇよあれは!? 多分滅茶苦茶強いNPCだろウルカン! ティアラもだけど、ギルド所属のNPCを敵に回したらきっと酷いぞ!?
「フヒヒヒ……アオヘビちゃんがもう一個出せば解決だよね……」
ヒョ?
「……確かに」
「おお、それもそうだ!」
おっと、フラウヤの言葉で何か雲行きが怪しくなってきたぞ……?
「というわけでアオヘビ君、耐性防具と並行して、こういうのもお願いね? 素材は出すから」
「団長! 素材出すから攻撃装備も頼む!」
「……………オ腹ガ痛クナッテキタノデ、一回、休ンデモイイデスカ?」
「「「ダメです」」」
畜生、やってやろうじゃねぇか!! 見てろよ愛すべき馬鹿共!! 今日中に鍛冶師のレベルをカンストさせてやるからな!!
皆ワクワクで笑ってる。アオヘビ? 空笑いというか空元気ですが?




