準備はしっかり、入念に。
アオヘビとの関係性
ソフィア:よく会う。ゲームとか一緒にやってて楽しい。お互い物好きだなぁ。
ヘイズ:やべぇ、変態だ!仲良くなれそう!なった!
フラウヤ:面白。SNSでアオ×ソフィモデルにしたR18含めた作品上げてるの黙っとこ。(ソフィアにはバレて粛清された)
「と・こ・ろ・で……アオヘビちゃんの槍、呪われてるって聞いたけど、どんな感じ?」
ソフィアから解放された俺が起き上がると、フラウヤが興味津々な表情で呪われた槍について聞いてきた。フラウヤのリアルはゲームの考察大好きな同人作家。作品のネタがどこに転がっているか分からないということで、色んなことを勉強しているらしい。作品のネタになると思ったのか、俺の持っているドラゴスパイクの呪いを見たいと思ったようだ。
「まぁ、減るもんじゃないしな」
インベントリから折れたドラゴスパイクを取り出してテーブルに置く。若干緑が入った雷が帯電している槍は、俺がカリュドーンに出会い、敗北した証拠であり、再挑戦するためのモチベーションを上げてくれるものだ。……にしても、本当に剣みたいだな。
「フヒヒヒ……! ほうほう……なるほどなるほど……」
「鑑定士でもないのに、見て何か分かるもんなのか?」
「フヒヒヒ……錬金術師はデフォで鑑定スキル持ちだよ。化石なんかも錬金術で使うからねぇ……フヒヒッ! 凄い、凄いよこの呪い! 木属性なんだけど、それが何重にもかかってる……!」
何重にも、かかっている……だと? 呪いっていうのは、攻略サイトとかを見る限り重なるとかはデバフ以外にないはずだ。この武器にかけられた呪いは、カリュドーンの呪いだけのはず。なのに、フラウヤは何重にもかかっていると言った。それは一体、どういう――――
「アオヘビ君、予定変更。レベリング優先。カリュドーンを倒すわよ」
「え、なんでだよ。解呪が先だろ?」
「フラウヤの言葉が本当なら、カリュドーンを倒した方が早いわ」
「はぁ?」
言ってることが一転、二転とし過ぎではなかろうか。予定が崩れるのは人生でありゲームであるとはよく言ったものだが、それでも予定が崩れたり、何度も変更したら疑問符が浮かぶのは当然の帰結だ。
「解呪に必要な時間は一回の呪いにつき一時間。何重にもなっているなら、もう分かるわね?」
「解除に凄い時間がかかる可能性があるってことか……」
どこまでも最悪過ぎる、この呪い……! 毒に弱くなるわ、修復不可になるわ……踏んだり蹴ったりだよ全く。
「フヒヒヒ……つまり、カリュドーンの呪いがかかってるドラゴスパイクを修理したいなら……」
「カリュドーンを倒すのが手っ取り早くなったわけか!」
楽しそうに笑うフラウヤとヘイズにつられて、俺も笑みが浮かぶ。カリュドーンに出会ってからここまで、予定が転々としていたが、ようやく今後の行動が決定された感じがする。
じゃあ、早速カリュドーンを探しに行こう、と言おうとした矢先。ソフィアが手を叩いて俺達の視線を集めた。
「というわけで、カリュドーンを倒すための装備を作るわよ」
「作る? 買うとか、そういうのじゃなくて?」
「ええ。購入すると高いわよ。属性耐性の高い装備は」
ソフィア曰く、普通の鎧よりも高いらしく、魔法攻撃や呪術攻撃を放ってくるモンスターに挑むために、数々のプレイヤーが属性耐性持ちの装備やアクセサリーを購入するための資金を稼ぐことがあるくらい高額なんだそうだ。
食事やアイテムなどの時間経過で効果が消えるものは比較的安いが、永続的な耐性を持った装備は高い……錬金術師の作るポーションなんかは高い耐性を長く獲得することができるが、使いすぎると中毒状態になって回復アイテムの効果が激減したりとデメリットも存在するらしい。となると、装備を購入した方がいいと考えるプレイヤーが多いのは頷ける。
「私のこの装備なんかも凄く高かったわ……全部合わせたらアオヘビ君の所持金がすぐマイナスになるくらいには」
「てことは……それ一個一個が五万以上はするのかよ!?」
とんでもねぇ価格だ! パーティーの装備は確認できるからちょっと見てみる。何々……? 星辰の呪衣シリーズ……物理系への耐性はあんまり無いが、それと引き換えに属性耐性が凄く高い防具か……しかも、これを装備している場合、エンチャントの効果時間と性能が最大20%向上。さらに、ソフィアの耳にかけられている舞姫の羽飾りは連続で攻撃を与えることで攻撃力が上がっていく。最大で30%!? 馬鹿みたいな倍率だな!?
「作るっていうことには納得してくれた?」
「した。マジで高いな……で、作るってことは素材集めか?」
「素材は私が出すわよ。ちゃんと上手く使ってね?」
「俺も素材あるし、出すぜ! 鉱石類が多いのは許してくれな!」
「フヒヒヒ……私も、錬金術で使う素材に呪術耐性の高いモンスターの素材があるから、それを出すよ」
そう言って各々が素材を取り出して、小さいテーブルに置き切れないくらいに置いていく。見たことがない素材が多いんだけど、これらを使って属性耐性の高い装備を作るのか……でもなぁ。
「俺だけ何も出さないっていうのはちょっと気が引けるな」
「あら、構わないわよ」
「いや、こういうのは皆で出し合ってこそ――――」
「あなたが作るんだし」
……俺が作る? 俺が、属性耐性の高い装備を作る? ……全員分の?
「無理だろ」
「行けるわよ。ほら、鍛冶場に行くわよ」
俺の右腕をソフィアが捕らえる。布系の素材だからか、柔らかい感触とかが伝わってくるところに、リヴラインの本気度を感じられるな。グラフィックでごまかして感触とか操作性を適当にするようなゲームは少なくないのだ。美人に腕を絡められてその反応になるのがおかしいのかもしれないが、ソフィアだし。確かにソフィアみたいな彼女がいたらって思ったことはあったが、俺もソフィアも笑い話にするようなことだ。
「俺達が素材を渡して、団長が作る! いつも通りだな!」
左腕をヘイズが捕らえた。うーん、凄く硬くてごつごつしている。凄いぞ、金属の冷たさを感じるしフルプレート系特有の重厚さも感じられる。圧も凄い。ヘイズはリアルでも背が高いんだよな。バレー部だっけか、ヘイズ。
「フヒヒヒ……満足のいく装備が出る頃には鍛冶師のレベルマックスになってそうだよねぇ……」
そして最後にフラウヤが俺の背中を押す。うーん、こういった指や手のひらの感触もしっかり感じられるのは、まさに最先端といった感じ……おいコラ同人作家、なぜ首を触る。背中を押すだけでいいだろうが。
「満足のいく装備が出るまで作らせるから、そのつもりでいてね?」
「ハクスラかな?」
「乱数の女神に祈りなさい」
上等だよ、やってやろうじゃねぇか!!
「ところで休憩時間はいただけますか? 姉さんと兄さんいるんだよね、今」
昼にはちょっとした団欒とかもしたいわけですよ、ソフィア様。
「じゃあダンス練習も頑張ってね」
「おかしいな、休憩時間って言ったはずだぞ?」
どうした、音楽作りすぎて耳がイカレたか? 頑張れ天才シンガーソングライターよ。耳鼻科に行ってこいよ、耳の不調は放っておくとVRゲームが面白くなくなるからな。
「冗談よ」
「なんだ、驚かすなよ……」
「ところで来週の献立だけど」
「おーい、忘れてたこと掘り返してくるなよぉ」
マジで俺を家に招き入れるつもりかこいつ。モラルとかネットリテラシー? とかどうなってやがる。オフ会とか抜きでプライベートで何度も会っているとはいえ、もっと警戒しといた方がいいだろ。親御さん泣くぞ。
「何、団長達そういう関係になったのか!?」
「いや、なってない」
「なってないわよ、まだ」
「フヒヒヒ……まだ、ということは、つまりそういうこと……! 捗るぅ……!」
「おいソフィア、語弊を招くな」
「ごめんなさいね?」
よし、謝ったからノーカウント! 切り替えていけ、俺!




