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パリィタンクが往く、リーヴラシル・フロントライン  作者: ゼノ
空を見上げ叡智を知り、地を見て深淵を知る。
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耐久が高くて重い武器は好きかい?

うん、大好きさ!!

 今日の夕飯はバイト先のパートさんから貰ったキャベツと商店街の肉屋で買ってきた豚ひき肉を使った餃子だった。作ったのは超ド級のブラコン&シスコンこと蛇ノ目花音。ハイボールと合わせて食べていたが、我が姉よ、お前酒はあまり得意じゃなかったはずでは? ハイボールは別? 酒は酒だろうが。


 そんなことを思いつつ、リヴラインへと帰還。セカンドグロリオの宿で目を覚ました俺は、すっかり夜になった空を一瞥して装備ショップを訪れた。


「おーい、武器完成してる?」


「おお、待ってたぜ蛇目の兄ちゃん。ほれ、受け取りな!」


 ニヤリと笑ったNPCがカウンターに置いた一振りの槍。刀身に亀の甲羅みたいな模様ーーーー亀甲模様だったかーーーーが刻まれているパルチザンタイプの槍だ。……だが、妙に槍の刀身が長いような……?


「……まぁ、そういうデザインなんだろ」


 自分でそう結論付けて、カウンターに置かれた【ドラゴスパイク】を持ち上げる。


「重い……!」


 古草原の槍や放浪者の槍が霞んでしまうくらいの重さだ。


「そりゃシャームドラゴンの甲殻を使ったからなぁ。そのくらいの重さにはどうしてもなっちまう」


「お、おお……! いい……!」


 まさに武器! という主張をしてくるこの武器。重さに慣れるのに時間がかかりそうだが、悪くない。それにーーーー



【ドラゴスパイク】

 シャームドラゴンの甲殻を使った槍。堅牢な殻を使っているため、相応に重い。

 なりそこないと言えど、竜の末裔。その牙はいつの日か、神を貫くのだろうか。

 この武器による完璧なタイミングでのパリィ、ガードによって武器に一定時間の『堅牢』を付与する。



 槍の特殊効果が気に入った。堅牢は、武器耐久値の減少を抑える特殊効果で、長期戦になればなるほどその恩恵は大きい。試し切りをする時に効果をしっかり確かめなくては。


「あ、あと、こいつとこいつの修繕も頼める?」


「おいおい、随分とボロボロになってるじゃねぇか。通り魔にでも会ったのか?」


 カウンターに置いた古草原の槍と闘士の籠手を見たNPCが驚いた声をあげた。驚いたな、正解だよ。途中でとんでもない助太刀が入って助かったけど。


 俺を助けたローニンというプレイヤー……調べてみたが、普通に化け物プレイヤーだ。対人勢クラン【グラディタンズ】所属のプレイヤーで、リーヴラシル・フロントラインが発売してからずっといる古参勢の一人。対人での勝率は9割を維持し続けており、装備や公開されているスキル構成などから誰が呼んだか【剣妖(けんよう)】の異名を持っている。


 対人イベントの動画が配信されていたから確認したが、スキルを使ったのは決勝戦の相手ーーーーローニンに唯一黒星を付けることができるプレイヤー、【拳聖(けんせい)】シャコフィストとの戦いでのみ。


 ああいうプレイヤーもいると思うと……凄くワクワクしてくるな。いつか闘技場に顔を見せるのも悪くないかもって思ってしまう。まぁ、それはともかくとして。


「修理にどれくらいかかる?」


「これくらいならすぐだな」


「折れてるんだけど……籠手はともかく」


「おう。だが、この槍と籠手はまだ死んじゃいねぇ。兄ちゃんの役に立ちてぇって、うるせぇくらいに聞こえてくらぁ」


 ……ロールプレイが必要な感じ? 武器からの声なんて聞こえないんだけど……


「これくらい元気ならこれを使うだけで直るな」


 そう言って銀に煌めく粉を古草原の槍と闘士の籠手にかけたNPC。直後、淡く光った武器が音もなく修繕された。わぁ、ファンタジーだ。


「うし、これで修繕完了だ!また来な、兄ちゃん」


「ありがとう」


 頭を下げて装備ショップを出た俺は、夜のフィールド探索へと駆け出す。湿地帯は無視! 俺がそこよりも気になっているのはセカンドグロリオ坑道! くまなく探索してやるぜ!!


 スタミナが続く限り全力疾走し、スタミナが切れそうになったらスタミナが減少しない程度の速度で小走り。それを繰り返すこと5回で坑道に到着した。


 途中、ウェザーフロッグの強化個体に出くわしたが、速度が乗った状態で振り抜いたドラゴスパイクで一撃死していた。ステータスも育ってきているのもあったが、さすが重量武器である。


 武器よし、防具よし、アイテムよし! 全て問題なし! ってわけで……!


「夜のミニダンジョン、攻略開始だ!」


 誰もいない坑道へと侵入し、アイテムショップで売っていたランタンを点灯する。松明よりも照らしてくれる範囲は狭いが、松明と違って片手が塞がらないのが利点だ。さて……と。ここで出現するのは坑道ゴブリンだけじゃない。コウモリモンスターのアングラバット、地中からドリルみたいに突撃してくる坑道モグラ、なぜか鎌がツルハシになっているピッケルカマキリ(人と同じくらいのサイズ)……あとはレアモンスターのオーアフロッグ。


 前はクエストの影響でモンスターが現れなかったが、今回は出現するはずだ。


「キィイイイイイイッ!」


「グゲゲゲッ!」


「早速来たな」


 坑道ゴブリンとアングラバットがそれぞれ2体。レベルは……多分俺の2つ上と考えていいだろう。スキルの使用感も確認したいし……いい練習相手になってくれよ。


「まずは遠距離持ちから!」


 ここに来る前に情報を仕入れておいて良かった。アングラバットは超音波ーーーー鎌鼬ーーーーまぁ、そんな感じの風魔法を放ってくる。そのモーションは分かりやすく、細かく動かしている羽を大きく動かすのが発生モーションになっているそうだ。


 さて、話は変わるがイモデスや俺が最近までやっていたロボゲー、バース・オブ・メタルウォー略してBMW、もしくはバオメにおいての狙撃や遠距離タイプのプレイヤーへの対処方法がある。至ってシンプルな対処方法だ。それはーーーー


「近付いて殴る!!」


 遠距離持ちはこれをされると、対策がない限りただの案山子になる。キルスコアをくれる素敵な案山子になるので、積極的に狙おう。


 なお、BMW上級者達は近付かれたら銃を鈍器にして戦ってくるし、イモデスは突スナになって殴り返して来る時がある。たまに自爆前提ドマゾプレイヤーとかいるけど。超長距離射撃がアシスト込みのものだと思ったら、純粋なプレイヤースキルだったなんてのもザラだ。BMWもイモデスも、最近過疎ってるらしいがいいところだよ。皆優しい(当社比)し。


「ハッハァ! めっちゃ便利だなバーストステップ!」


 3回まで任意の方向に回避ができるスキルだが、説明文にないだけで回避行動への敏捷補正もあるようだ。1回目で急接近、2回目を繰り出すタイミングで放たれた鎌鼬を横に避け、3回目はーーーーあ、リキャスト入った。温存できるのは3秒くらい? 結構シビアだけど……間合いに入った!!


「そーらぁっ!!」


 空中で集まっているアングラバットを、バーストステップによって生まれた運動エネルギーと共にただの薙ぎ払いで撃破! これ、坑道が縦にも横にも広いから大丈夫だったけど、天井が低かったら頭が天井に激突してたな。


「んでもってぇ……!」


 飛び上がり、俺を迎撃せんとツルハシを振り下ろしてくる坑道ゴブリンに体を向けて、スキルを発動する。


「パリングカウンター!!」


 カウンターバッシュからの派生、パリングカウンター。スキルによるジャストパリィとなった瞬間、ドラゴスパイクの模様が淡く光り、鱗のようなエフェクトが生じた。


「『堅牢』発動!」


 今回はあまり恩恵がないが、これは便利そうだ。仰け反りモーションが発生した坑道ゴブリンに対して、俺はスパイラルスタブを発動。クリティカルが発生したことによってガガガガガガッ! と多段ヒットになったスキルは、坑道ゴブリンの体力を一気に奪い去った。


「ゲゲゲゲゲェッ!!」


「最後まで殺意たっぷりってか? 甘いんだよ!」


 味方が誰もいなくなったが、それでも向かってくる最後の坑道ゴブリンを闘士の籠手で殴り、吹っ飛んだところに向けて槍をぶん投げる。速度の乗ったドラゴスパイクは坑道ゴブリンの腹に突き刺さりながら飛び、壁に突き刺さったことで停止した。


「……ふぅ」


 坑道に入ってから1回目の戦闘が終了。経験値はーーーーあ、ローニンが狩ったPKと戦闘してたからなのか、今のでレベルアップした。


「経験値美味しい!」


 スライムなんかよりもずっと経験値があるぜ……! この調子でじゃんじゃん攻略してやるぞ!!

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