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パリィタンクが往く、リーヴラシル・フロントライン  作者: ゼノ
空を見上げ叡智を知り、地を見て深淵を知る。
11/68

対人勢とPKって、全くの別物だと思う。

 湿地での戦闘、中々大変だ。水よけのポーションを買っておかなかったら、間違いなくイライラし続けていただろう。そう思ってしまうくらい、泥濘(ぬかるみ)が移動を邪魔してくる。


「体感ちょっと早めに回避!」


 反応速度が遅れる感じ……というか、攻撃が来るのが見えた→回避だと被弾しやすい気がする。攻撃が来るのを予測→回避みたいな行動を要求してくるあたり、製作陣の悪意を感じる。デスペナルティが消えたからこうしてフィールド探索をしているわけだが、中々大変である。


「終わりだこのスライム野郎!」


 叫びながら槍でスライムの核を粉砕する。スライムの弱点は刺突属性か魔法属性。俺は魔法を持っていないから槍で貫くしかないのだが、このスライムが曲者なのだ。


 意外にも動き回るし、跳ね回る。しかも仲間を呼んで融合する。その融合状態はただの群生とでも言いたいのか、核を潰しても分裂して、再結合しようと集まり始めるのだ。言葉を選ばすに言うのであれば、クソモンス。一歩引いてみてもクソモンス一歩手前。バグ技じみたタックルとかしてこないだけまだいい。


「経験値マッズ……外れモンスターかな?」


 集合体になるためには最低でも8体集まらねばならないようだったから、8体以上は倒しているはず。だというのに経験値は微々たるもの……坑道ゴブリンの方が経験値をくれた。


「……そういえばオーアフロッグの経験値でレベル上がってたな」


 腐ってもレアモンスターでボスモンスターといったところか。あいつを倒したらレベルが2つ上がっていた。ステータスは……全部敏捷に振っておこう。これでレベル18で敏捷は43。大分伸びたなぁ。戦士という職業は多分、敏捷よりも筋力と体力を上げるのが正解なのだろうけど、これが俺のスタイルだからな。


「うーん……完全な夜まであと少しかぁ。……ここの夜モンスターってどうなるんだ?」


 正直スライムが強くなるとか面倒なんだが? 称号でスライムの素材も貰えるから狩らなくちゃいけないんだけどさ。……そういえば、このゲームには見える称号と見えない称号があるんだよな。見えるようになる条件は、多分特定のモンスターを倒すか発見すること。スライムやウェザーフロッグなど、このエリアで発見したモンスターの称号が見えているということは、そういうことだろう。


 最初は1体。次は5体。続いて15体……30体、50体と続き……最終的には100体討伐。うーん、やり込み要素の塊だ。掲示板を見る限り、ゴブリンを100体狩ると【ゴブリン・プレデター】、ウェアウルフを100体狩れば【ウェアウルフ・プレデター】……プレデターが付く称号が手に入るようだ。それによって得られるスキルもある……らしい。


「……お」


 称号獲得してる。……【鉱石の宝箱?】…………あ、オーアフロッグの称号か! 報酬はなんだ……お、オーアフロッグの毒爪だ。……爪? あいつ爪あったの!? しかも毒持ちかよ!? 確かに蛙の手だと鉱石は掘れないが……!



 ・オーアフロッグの毒爪

 ツルハシのように鋭利なオーアフロッグの毒爪。

 主食たる鉱石を掘り起こすため、固い岩を溶解するためにオーアフロッグは水生生物として必要な水掻きを捨て、この毒爪を手に入れた。

 強度に優れていると共に、毒を持ったこの爪を使った武器には『毒属性』が付与される。



 ……おお、状態異常付与武器の素材であったか……さすがレアモンスター。2つの属性を持っているとは。これを狙って日夜オーアフロッグを探しているプレイヤーとかもいるのかもしれない。


「ま、俺には縁がない話……かもなぁ」


 そのうち状態異常系武器も欲しくなるが、今はその時じゃない。それよりもーーーー


「そろそろ槍、できてる頃だな?」


 うちに新規加入する予定である槍、ドラゴスパイクは夜になる頃には完成しているとNPCが言っていた。今、この世界に夜が訪れようとしている。ならば……完成しているはずだ。


「夜は……うん、試し切りの時間にしよう」


 そうと決まれば……どうしようか。この湿地の夜モンスターを狩るのもいいが……坑道を探索するのもいいな。あのクエストのクリアを目指していたからそこまで探索できてなかったし、ざわめきの森に繋がっていそうな道も見つけていない。


「よーし、一旦撤収!」


 宿に戻る……前に装備ショップに行って……その後宿に戻る。時間もいい感じだし、1回休憩を挟んでから試し切りだ。


「つーわけで……水よけポーションもう一回ーーーーって、あ?」


 結構雑な殺気!

 掠ったら即死が横行しているロボゲーと、ソフィアやら上位ランカー共とのイモデスで培った産物の回避術を見よ。とりあえず体を地面スレスレになるように傾け、その勢いを使ってサマーソルト! 反撃と回避を同時に行える素敵な技術だ。ロボゲーでそんな技使うなという指摘は受け付けない。


「チッ、ただの新規じゃねぇな?」


「どーも、プレイヤーさん。初心者(ビギナー)相手に何か用?」


 襲ってきた相手を見ると、なんだか蛮族みたいな装備をしていた。明らかに高レベルの装備を纏うそいつのプレイヤーネーム……なんだかよく分からない文字の横にある赤い髑髏のマークは……確かPKを行ったやつに表示されるものだ。いわゆるレッドプレイヤーってやつ。


 リヴラインには対人要素として、闘技場が用意されており、対人勢は皆こぞって各街にある闘技場に入り浸っているらしい。闘技場内でPKを行ってもレッドプレイヤーにはならない。対人上級者達は新規プレイヤーを対人の沼に沈めるため、日夜活動しているそうだ。


 ちなみにこのゲームというかどのゲームでもPKーーーープレイヤーキラー達の中にはマナーが成っているやつと成っていないやつがいる。襲ってくる時点でマナーも糞もないってのは言わないお約束。んで、今俺の前にいるのは……


「対人勢ってわけでもなさそうだし……何、初心者狩り? ビギナーに勝って俺TUEEEEしたい人?」


「あ゛あ゛?」


「PKって、格上プレイヤーを倒すことでカタルシス? ってやつを感じるものだろ。格下ばっか狩っても単にカルマが上昇するだけで面白みがーーーー」


 人が話してるのに失礼なやつだなぁ。人の話を遮るなって親に習わなかったのか?


「チィッ!? 何で弾けるんだよ!? 俺はレベル40だぞ!?」


 うーん……ぶっちゃけ遅いんだよな。比べるまでもなく、ソフィアの方が速いし。下手をすればシャームドラゴンよりも遅い。恐らくだが、新規プレイヤーを一撃で倒せるように筋力を特化させてるのだろう、けど……大雑把というか、なんというか……もしかして、不意打ちばっかしていてまともに戦闘してないPKだったりする?


「クソッ! クソッ! クソッ! 当たれやクソが!!」


「右、左、下、からの袈裟斬り!! 視線が大雑把なんだよ!」


 弾く、受け流す、避ける。そこにスキルを加えてやれば、大雑把な攻撃ばっかりやってくるやつなど簡単に受け流せる。まぁ、問題があるとすれば、古草原の槍と闘士の籠手の耐久がそろそろ無くなるということか。素手スキルは何も無いからなぁ。だからと言って易々と死んでやるつもりもないが。


 ……とはいえ、だ。このままではジリ貧なのも事実。攻撃はしているが、レベルが高くて装備も高レベルなのもあって、全然削れていない。うーん、困った。街に戻ろうにもちょっとばかし遠いしーーーーおん?


「あ、折れた」


 さすがに限界か。お疲れ、古草原の槍! 街に戻ったら絶対直してやるからな! まだまだ現役で頑張ってもらわなくちゃ困る。具体的には最終盤までお世話になります。


 心の中で古草原の槍に労いの言葉と激励の言葉()を述べ、未だ壊れていない闘士の籠手を両手に装備する。片手装備と両手装備どっちもできるんだからこのゲームは凄いよな。


 さぁ、ここからは槍使いのパリィタンクじゃなくて、拳が武器のステゴロファイターだ。使えるスキルはほぼ無くなったが、そう簡単に死ぬとは思うなよこの野郎。


「死に晒せぇ!!」


 スキルの燐光を纏う斧を振り下ろしてきたPKに対して、俺がカウンターで迎撃しようとした瞬間。



「てめぇが死ね、クソPK」



 奴の体が、一瞬にして真っ二つになってポリゴンになっていた。


「………………ハァ???」


 俺はそんなスキル持っていない。だから、別のプレイヤーが放ったスキルだろう……それより驚くべきはレベル40をワンパンする威力。そうなってくると、間違いなくこの辺にいるわけがない高レベルプレイヤーなわけだが……?


「おう、ナイスファイト初心者(ルーキー)! 格上相手にあれだけやれるとはな。いいもん見せてもらったぜ!」


 そう言いながら歩いてきたのは、浪人? みたいな装備に身を包んだプレイヤー。腰には2本の禍々しいオーラを放つ刀が吊るされている。羽織っている外套には……闘技場を背景に拳と剣が交差したエンブレムがある。あれは確か、掲示板にあった……対人勢クランのエンブレムだ。


「あ、ああ、うん、そりゃどうも……?」


「あのままやり合っていてもお前が勝ってたろうが、悪いね、介入させてもらった。そら、あいつの蓄えてたアイテム。持ってけよ」


 アイテム交換メニューが表示され、奴が持っていたであろうアイテムの数々が一覧できる。見るからに高価なアイテムもあるけど……受け取れないなぁ。


「いや、いらねぇ……俺のスタイルに合わないだろうし……あんたが倒して手にしたアイテムだろ。俺が手にする資格はねぇよ」


 正直助かったし。あのままやり合ったらジリ貧でやられていたのは俺だと思う。それを伝えると侍プレイヤーは一瞬ポカンとした後、ニヤリと笑う。


「いいね。その義理堅い感じ。気に入った!」


 そう言った彼はメニューを開きーーーー


『プレイヤーネーム:ローニンからのフレンド申請を受けました』


 フレンド申請を送ってきた。


「……おおん?」


 拝啓、ソフィアさん。俺は何やら対人勢に気に入られたようです。……とりあえず、情報網を広げると考えてフレンドにはなっておくけど。


「よろしくな、アオヘビ! ーーーーっと、いけね。これから対人イベントがあるんだった。お前も来るか?」


「いや、ちょっと用事があるから保留で」


「そか。気になったら声かけてくれよ。歓迎するぜ?」


 そんな言葉を残して侍プレイヤーもとい、ローニンは跳ねるように湿地帯を去っていった。あの跳ねるの、何かのスキルか? 回避系のスキルの派生とかだろうか……?


「……うーん……なんか……」


 どっと疲れたな……一旦落ちて飯を食ったら1時間くらい寝よう。その方がきっと精神的にもいい。


対人クラン【グラディタンズ】

対人勢達の、対人勢による、対人勢のためのクラン。各街に点在している闘技場で日々対人イベントを開いているクランで、対人に特化しているプレイヤーが集う。最初の街にもある小さな闘技場にもクラン内ランキング上位のプレイヤーが訪れ、PvPの立ち回りなどをレクチャーしていたりする。誰が呼んだか『PvPチュートリアル』。対人をやってみたいプレイヤーは闘技場に行けば手取り足取り教えてもらえて、いつの間にか沼に沈んでいる。

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