待ち人来たる
長くなったので、二つに切ります。
間が空いた割りに練り足りないかなぁ……
取敢えず形になったのでUPします。
森の結界が揺らいだ。
『魔女の間』で薬を作っていたDは、あどけなさの残る幼い顔を年不相応に引き締め、部屋を出る。
結界を通る許可を与えているのは四人。無条件で通ることができるのはDとアルバートの二人のみで、訪れた事を知らせつつ通すのは残りの二人。
「来たのはどちらか、の」
独り言ちて紅い視線を玄関に送った。
家の周りの結界も揺らぎ、予告も無く扉が開く。
「ディア、やっと見つけた!待たせてごめん。迎えに来たよ」
現われた長身の男をみとめたDは息を呑んだ。
明るい茶色の髪と瞳の人好きのする笑顔を浮かべた姿は、霞み始めた記憶を鮮明に蘇らせ、寸分違わぬ事を見せつけているかのようだ。
「……バート……」
懐かしさと圧倒的な愛おしさに胸と言葉を詰まらせる。その脳裏に、何故か悲しそうな養い子の影が過ぎった。引っかかりの正体を探ろうとした意識は、あっという間に距離を詰め抱きしめてきた男によって中断される。
「あぁ……懐かしい!10歳位の貴女だね。この姿で迎えてくれて嬉しいよ」
安堵と充足感にとろけかけたDの心臓が一気に冷え込み、身を硬くした。
不審に感じた男が顔を覗き込んでくる。
「バート、貴方は10歳の私をいつ見たのだ?」
暖かな榛色の瞳の小さな変化も見逃すまいと覗き返した。
「……いつって……」
人懐こい笑みがぎこちなく歪む。
その顔を見てDの中で警鐘が鳴り響いた。
「離せ!」
束の間の安らぎの檻から逃れようと身を捩りもがく。
視界の端を掠めた窓の外を、養い子の黒髪が過ぎった気がした。
「嫌だ」などと喚きながらますます抱き込んでくる男と揉み合っていると、
「D!」
魔女の家に無条件で入る事のできる唯一の存在が飛び込んで来た。
養い子に縋るような視線を肩越しに向ける。
「貴様は何者だ!Dから離れろ!!」
普段は穏やかで慇懃無礼なまでに丁寧なアルバートが、語気も鋭く誰何して男の肩に掴みかかった。
その手は呆気無く振り払われたが、目的であったDの解放はなされた。
「ディアナ」
逃れたDを甘ったるい声が追って来たので、アルバートは素早く二人の間に体を滑り込ませ遮る。
「番犬ごときが何故ここに居る?」
今までの笑みをかなぐり捨てた男が、アルバートを睨みつけてきた。その瞳が見る間に内側から緑に染まってゆく。
変化を見せつけられた二人は息を呑んだ。
「ねぇ、ディアナ。貴女は何で番犬君なんかの後ろに居るのかなぁ?」
ククク……と喉で笑った男は狂気を孕んだ緑の眼を細め、Dを見下ろしてきた。
「貴様は何者だ?」
Dを背に庇うように軽く両手を広げ、低く問いを繰り返す。
もったいつけたようにゆっくりと視線をアルバートに流し、男は口の端を釣り上げた。
「ギルバートだよ。ディアナと来世の誓いを立てた永遠の半身、ギルバートだ」
誇らしげに左手の甲を掲げ一歩踏み出した男を牽制する為に、アルバートが抜刀する。
背に守られているDがキュっと彼の服の端を震える手で掴んだ。
「アル、やめろ。お前では敵わぬ」
「……どういうこと?」
「本当にギルバートならば、お前は孫弟子にあたる」
「それって……」
「ごちゃごちゃとうるさいな!狗は大人しく家の外で吠えてろよ!!」
小さなやり取りに痺れを切らした男が左手を薙ぎ払う仕草をした。ただそれだけなのに、こん棒で殴られたようにアルバートの体が横に吹き飛ぶ。
「アルバート!!」
Dの悲鳴が小さな家の中に響き渡った。
初めて意味深なところで切って見ました……
誤字・脱字・意味の読み取りずらい表現など、ございましたらお知らせいただけると助かります。




