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魔女の待ち人  作者: 周
本編
15/39

麦わらぼうし

今回も短いです。

バランス取るのって難しいですね。

朝食の片付けの合間に、長椅子で食休みをしているDへ声を掛けた。


「D、帽子を玄関に出しておくよ」

「む?ありがとう?」


アルバートに向けられた顔が何とも言えない表情をしている。


「どうしたの?不思議そうな顔をして」


手を拭いながら長椅子に近づいた。


「うむ。今日、畑に出ると言ったかの?」


小首を傾げる仕草は微笑を誘うもので、黒い瞳が柔らかく細まる。


「いや?聞いてないけど。春告げ鳥が鳴いたから、そろそろかと思って」


ここに置いておくね、と言い残してアルバートは家を出た。

残されたDは、窓越しに納屋に入ってゆくアルバートを見ながら独り言ちる。


「あやつは、オカンか?」


ふと胸に過るのはほろ苦い想い。

気遣われている面映ゆさと、今までの寂寥感と、これから訪れるであろう喪失感。

今が心地よければ良い程、恐れや孤独は影を濃くする。


伏せられた睫毛に陰る紅玉の瞳は、現在・過去・未来から目を逸らすように、ゆっくりと閉じられた。


誤字・脱字・意味の読み取りずらい表現など、ございましたらお知らせいただけると助かります。

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