個性色トリドリ!?③
休憩を告げられると、会場内の空気は緩み緊張が解けてきた。
「凄いですね、流さん……!」
「? 何が?」
大桜が目を輝かせながら流を見ている。
何のことやらと流は首を傾げた。
「ステージで見せたあの光のことですよ……!」
「ああ……」
「やはりとは思っていましたが、白系統の操色師だったのですね……!」
「……ん?」
「……え?」
何を言っているのだ、この子は。
あの男のマジックに魅了されてしまったのだろうか。
流がステージで見せたあの光は、玉に仕掛けが施されているに違いないと考えていた。
そもそも、「カラーコア」は電化製品のエネルギー源だ。
実物を見るのは初めてだったが、家で父が「カラーコア」についてよく話しており、父の口から一度も「カラーコア」が光るだなんて聞いたことは無かった。頭に疑問ばかり浮かび上がる。
しかし、そんなことよりも流は、大桜が言った「白系統」という言葉が気になった。
「白系統の操色師?」
「もしかして、操色師ではなかったのですか……!?」
オーバーリアクションで大桜は驚く。
「……華ちゃん……あのさ、ずっと気になってたんだけど操色師って本当にいるの?」
「? はい」
当たり前ですけどという表情で大桜は頷いた。
「私の実家が代々続く操色師の家系だったので、知っているのが当たり前だと思っていましたが、流さんのような方もいらっしゃるんですね」
「代々続く……? 操色師ってそんなに歴史があるの……?」
「はい。起源は平安時代だと言われています」
「平安!?」
スケールが大きすぎて流の脳内は情報を整理しきれず、パンク寸前の状態だった。
脳の処理が追い付かず体がふらふらと揺れ動いていると、通行人にぶつかってしまい、流は尻もちをついてしまう。
大桜が慌てて流に手を差し伸べようとすると、ぶつかった相手の方が先に流へ手を差し伸べた。
「ごめん。怪我ない?」
優しそうな男の人だ。
この会場内では珍しく髪の色が真っ黒だ。
流は男の手を取り、立ち上がると、軽く頭を下げてその場から去っていった。
「大丈夫ですか……!? 流さん……!」
「う、うん」
流は去っていった男の方を見る。
すでに男の姿はなかった。
休憩終了の音楽が鳴る。
会場内にいる人たちは席に座り、まだ誰もいないステージの方へ視線が集まる。
「皆様休憩はできたでしょうか。では、「我色」の説明会をさせていただきます」
あの眼鏡男がステージに登場すると、会場内に拍手が沸き上がる。
「まず、彼女らの説明から」
男がパンパンと二回手を叩く。
ステージの幕から受付にいたアンドロイドたちが男の横に並ぶ。
「彼女たちはパレット社が制作したアンドロイド「彩」。これから貴方たちの世話をしてくれる存在だ。彼女らに命令をすれば大体何でも行ってくれる。常識の範囲内で自由に使ってくれ」
男はまた手を二回叩く。
すると、アンドロイド「彩」は幕の中へと帰っていった。
「貴方たちがこれから長い期間過ごすことになる寮だが、部屋の数の都合上、二人一部屋で使ってもらう。部屋は元々二人用だから広さの心配はいらないが、風呂や食事は共同場所となる」
「また部屋の相方だが、これから貴方たちは二人組で行動することが多くなる見込みだ。よって、部屋のパートナーがこれから行動を共にする者と思ってくれ」
何か質問がある人と流たちに聞くと、一人手を真っすぐ高らかに上げた。
男はどうぞと言って、手を上げている少女に発言権を譲る。
少女はアンドロイド「彩」からマイクを受け取り軽く会釈をした。
「ありがとうございます。私は銀 香蓮と申します」
「銀……!?」
大桜が思わず言葉を溢す。
「知ってるの?」
「知っていると言いますか、銀家はあの銀鉄の末裔なんですよ……!?」
銀鉄……その名は耳にしたことがある。
たしか虹色町に伝わる昔話の登場人物だ。
流は昔、母から銀鉄という人物が登場するお話を聞いたことがあるが、小さい頃に一度だけ聞かせてもらった話なので、物語の内容をよく覚えていないが、朧げな記憶だと凄いことをした人物だと言われていた気がする。
大桜が反応するということは、銀鉄は操色師だったのだろうと流は銀鉄の末裔に視線を向ける。
銀髪の少女は髪をなびかせながら、男に質問を投げかける。
「部屋の相方はどの様に決められるのですか?」
「良い質問ですね」
男は眼鏡を指で押し上げ、咳ばらいをわざとらしくした。
「これから苦楽を共にするであろう部屋の相方は、私が独断と偏見で決めさせてもらった。勿論、独断と言っても、貴方たちがこの「我色」に応募する際、打ち込んでもらった個人情報や「彩」が分析したデータを基に、相性や貴方たちの成長を見越して決めさせてもらった。あ、そうそう。同性同士で部屋を組んでいるので、その辺はご安心を」
これでいいかなと男は銀に問う。
銀は「ありがとうございます」と淡白に答えて腰を下ろした。




