個性色トリドリ!?②
黒髪の少女が、緑髪と紫髪の少女二人組の元から去ると、静かだった会場内が再び賑やかになった。
続々と会場に人が集まり、辺りを見渡すと流と同じ年か、少し上ぐらいの人しかいないことに気がつく。
「ねぇ、華ちゃん」
「! どうしましたか?」
「この会場にいる人たち、若くない?」
「言われてみれば……同い年ぐらいの人ばかりですね」
「我色」参加者に年齢制限はなかったはずだ。
企画内容がうさん臭く、用心深い大人は「我色」に応募する人が少なかったと考えれば納得できなくもないが、メディアにも取り上げられ、世間で話題になり、応募者が約四百万人だったことも踏まえると、何かが引っかかる。
「流さんはおいくつなんですか?」
会場内にいる人たちを眺めながら考え事をしていると、大桜から突然話しかけらつい声を出して流は驚いてしまった。
流の反応を見て、大桜も驚いてしまい「すみません。私なんかが声をかけてしまって……」と身体を小さくして一人反省会を始めてしまう。
「華ちゃん、ごめんね! 私考え事してて、つい驚いちゃったの。だから、そんなに落ち込まないで」
大桜の周りにはキノコが生えそうなほどじめじめしていた。
「す、すみません……面倒くさいですよね私。いつもこうなんです。自分に自信が無くて、すぐ落ち込んじゃって……それで、私、変わりたいと思ってここに来たんです……」
すみません。と、流に謝りながら話す。
「ううん。面倒くさくないよ。だから、華ちゃん顔を上げて?」
お願い。と、流は大桜に頼む。
大桜は小さく頷き、ゆっくりと顔を挙げた。
「ありがとう……ございます……流さん」
「いいえ。それで、私の歳だけど十五歳だよ。華ちゃんは?」
「わ、私は十七歳……です」
「え!? 華ちゃん私の二個上なの!?」
「はい……あ、でも、敬語は必要ありませんよ。いつも通り話してください……!」
不安気な瞳を輝かせながらぎこちなく笑った。
「皆さんお揃いの様ですね」
突然会場内が真っ暗になり何も見えない。
コツコツと革靴の足音だけが聞こえる。
足音がゆっくりになりぴたりと止まった。
会場内にあるステージ中央にスポットライトが当たる。
スポットライトの中には眼鏡をかけ、オールバックの男性が口角を上げて立っている。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。私はパレット社の社長兼「我色」企画責任者の山田と申します。以後お見知りおきを」
胸に手を添え、会場にいる人達にむけてお辞儀をする。
「さて、ここにいる者たちは四百万人の中から選ばれし三十人だ。おめでとうございます。貴方達は運が良いなどと思っているだろうが、これは運だけで選ばれたわけではない。なぜ、自分が選ばれたと思う?」
会場内がざわつき出す。
金? 地位? 頭脳? など様々な意見が飛び交う。
ステージに立つ男は、眼鏡をくいっと上げ口を開く。
「貴方たちは「操色師」としての素晴らしい才能を秘めているからだ。だから、ここに来ることが出来た」
流の辞書に知らない単語が出てきた。
「操色師」なんだそれは。聞いたことがない。
あのおじさんの言い間違いだろうか。
おかしなことを言い始めたと怪しみの目でステージを見上げると、男はコツコツと革靴を鳴らしながら「操色師」について説明を始めた。
「貴方たちの中には「操色師」という言葉に馴染みのない人もいるだろう。「操色師」とは自身が持つ色を具現化し、自由自在に操る者のこと。「操色師」は表に現れない存在だ。故に、人々に知られていない。「操色師」は一歩間違えれば兵器となり得る存在。だから、国はその存在を公には晒さないのだ」
真面目な顔をして堂々と話しているが、流は男の言うこと全てが怪しく、「中二病」なのではないかと疑い始めた。横に座っている大桜の方へ目をやると、真剣な表情で男を見つめている。
「(嘘でしょ……!? 華ちゃんこういうの信じちゃうタイプ!?)」
まともなのは自分だけかと流は頭を抱える。
ステージに立っている男はまだ話を続ける。
流は椅子から立ち上がり会場を抜け出す勇気がなかったので、仕方なく男の言葉に耳を傾ける。
「すでに「操色師」として活動している者もこの中にいるだろう。「操色師」の者たちはまだ才能を開花していない「操色師」の原石たちに力を貸してもらいたい。では、この「我色」、「我社に色を与えた者は、願いを一つ叶えます」とはどういう意味なのか。それは、「操色師」の力でパレット社の会長、無神虹介に色を与える。つまり、感動させた者は何でも一つだけ願いを叶えて差し上げよう」
会場内が再びざわつき出す。
耳を澄ませると、男が言う「操色師」について怪しむ声が聞こえて来る。
無理もない。
おとぎ話を聞かされたような心地なのだから。
男は会場内の声を黙って聞いていると、突然、流に向けて指を指した。
「そこのいかにも信じていなさそうな目をしている貴方」
流の真上からスポットライトが辺り、一斉に視線が集まる。
「わ、私!?」
「そう、貴方だ。こちらへ」
男が手招きをするので、流は人の目を気にしながらステージに上がる。
男の横に立つと、男からビー玉のような無色透明の玉を渡された。
「その玉に想いを入れてごらん」
「想い?」
「あぁ。例えば、貴方が叶えたい願いをこの玉に込めるんだ」
優しい口調で囁く。
何十人もの前で訳の分からないことをやらされている流は、どうにでもなれという精神で玉に「将来の夢を見つけたい」と願いを込める。
流の手のひらに包まれている小さな玉が、願いに反応したかのように白い光を放ち始めた。
会場内の空気が変わる。
流の様に男が話した内容を信じていなかった者たちの見る目が変わっていく。
「ま、眩しい……!」
玉が放つ光を止められず、横に立っている男を見た。
男は流に玉を渡すよう指示をする。
男の言う通りに玉を渡すと、眩しく光っていた玉は段々と光を失い、無色透明だった玉は白く染まっていた。
「皆さん。これは操色師として才能がある者のみが出来る技です。この玉は「カラーコア」と呼ばれ、この玉の持ち主の色を現し、術や武具を具現化する際に必要な道具です」
男は会場内にいる者たちに語りながら、流に白く染まった「カラーコア」を返した。
「これから皆さんにはこの特別な「カラーコア」をお渡しします。カラーコアに変化が起きた後、一度こちらで預かり、運びやすいよう加工してから再びお渡しいたします」
会場内の明かりが元に戻る。
入口の扉から受付に立っていたアンドロイドと全く同じものが会場内に沢山やってきた。
アンドロイドの手には無色透明の「カラーコア」があり、一人一つづつ配布している。
流は男から「協力ありがとうございます」と言われ、ステージを降りた。
「では、これから説明会に移らせていただきますので、十分間の休憩を挟みます」
そう言って男はステージから去り幕の中へと消えてしまった。
この作品に登場する人物・場所、施設は全てフィクションです。




