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Vermilion noon ,indigo sunset  火星コロニー「リトプス1」の日常  作者: 蘭鍾馗
〈火星の日常 その4〉

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48/50

48.データセンターを作ろう(リチャード クロウリーの寄稿)

 リチャード クロウリーです。コロニーの情報処理関係を担当しています。


 ◇


 リトプス1には、今ちょっと大きめのサーバーがあって、これでコロニー内の情報処理やインフラストラクチャーの維持管理、メールやデータの送受信、電源管理等を行っています。

 容量は十分にあって、当面は今の機器で対応可能です。本施工部分が出来たら新しいサーバーも導入される予定になっていますが、万が一新しいサーバーが届かなくても、処理に困ることはないだけの容量と処理能力は確保されています。まあ、前にフライホイール蓄電機の不足とかありましたから、それを教訓に、念のためということで大きめのものが核融合船で運ばれてきました。


 ご存じの通り、火星は気温が低い。なので、発熱量の大きなサーバーを稼働させても冷却がしやすい。もっとも、冬などは外気温が低すぎるので、そのままでは冷媒が凍ってしまいます。なので、ドライアイスの昇華を利用した冷却を行っているんだそうです。この辺のしくみは面白そうなんですが、私もまだ完全には理解できてません。いやその、運用担当なものですから(笑)。ただ、電気をさほど食わない効率的なシステムだとは聞いています。

 というわけで、この大きなサーバーのおかげで、生命維持系のインフラの運用や、地球との大量のデータ通信なんかが、安定した環境で行えるわけです。


 ◇


 でも、せっかくのこの「冷却し放題」の運用環境、何か他にも使い道がないか?


 余計なことかも知れません。でも、これは考えようによっては「無尽蔵の冷熱資源」でもあるわけです。もちろんコロニーの食糧保存なんかにはすでに利用されていますが、もっと他に利用方法はないか?

 もっと具体的に言いましょう。これで作り出す何かを地球に売って、利潤を生みだせないか。


「いや作り出す何かって言っても、地球までどれだけ距離があると思ってるんだよ?」


 ご意見ごもっともです。なので、質量を持った何かを地球との間でやりとりして商売をするのは現実的じゃない。時間とコストで逆立ちしたって割に合いません。


 じゃあ、データなら?


 データだったら、たとえ地球まででも運搬コストはそんなに大したことはない。

 問題は時間です。電波が地球に届くのに最短でも8分かかる。なのでリアルタイムのやり取りは現実的じゃない。地球での同じようなサービスには対抗できません。

 そこで考えました。最短でも往復16分の、この通信時間をかけてでもやりとりする価値のある情報、それを専門に集めて保管すればいい。

 それは何か。


 すぐに思いつくのは、過去の記録。アーカイブですね。過去の新聞や出版物のデータ、テレビ番組、文化財のデータ等色々考えられます。


 でも、そんな事地球でもできるじゃん。


 その通りです。でもね、安定性・安全性が違うんですよ。我々のコロニーは、一歩外に出れば厳寒と無酸素の死の世界。そこで安心して長期間暮らせるように、コロニーの生命維持系を動かすシステムは、何重にもバックアップシステムで保険を掛けてあります。電源はコロニー周辺の太陽電池の他に、砂嵐の影響を受けないオリンポス山のブルーローズがあります。地下にも今や充分な容量のフライホイール蓄電機があります。この鉄壁のシステムと同じレベルの安全性でサーバーは守られているわけですから。

 さらに、サーバーは地下の専用の部屋にあって、太陽の磁気嵐の影響を一切受けません。データは全て量子暗号で暗号化されてやりとりされます。またインターネットからは直接アクセス出来ないようにします。

 なので、リトプス1のサーバーは、地球のそれよりも遥かに高い安全性を持っているのです。その太陽系一安全な環境に、貴方の大切なデータを保管しませんか?ただし、データの取り出しには、ちょっと余計な時間がかかりますけど、とお誘いするわけです。


 どうでしょうね?


 ◇


 まあ、まだ私の妄想の段階を出てませんけど、実現すれば、機構の活動費の足しにもなりますし、将来的には経済的な独立も視野に入って来るかも知れません。地球で誰か投資してくれる人いませんかね。


 ◇


 さて次ですね。

 おお、いよいよ現クルー最後の一人です。

 


 ラファエルさん、お願いします!

 

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