47.金属資源とその精錬の話(パヴァン クマールの寄稿)
パヴァン クマールです。
火星の鉱物について長年研究していたのですが、リトプス1が出来たことで、その実物を目の前でじっくりと見ることが出来るようになりました。
私的にはそれでもう満足なのですが、リトプス1というコロニーを今後回してゆくためには、これを資源に変える必要があります。精錬ですね。
私は鉱物学の他に冶金の知識もあったため、ある日大学の教授から「お前火星に行って鉱物資源から金属を作れ」みたいなことを言い渡され、気が付いたらここへ来ていた(笑)。
まあ、半分冗談ですけど、半分は本当にこんな感じで。
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さて、そうやって火星に来て、それからどうした。
しばらくはわりと暇でしたよ。物資はとりあえず地球から来たものがあったし、火星の鉱物資源の探索は始まったばかり。有用鉱物がある程度採れないことには冶金の仕事は始まりませんからね。それでもフローレス先生達と一緒に暫くは資源探査の仕事に従事してました。
まず探したのは砂の中。
食糧生産部の土づくりの話の中でも出てきた「レゴリス」ですね。この中には鉄やアルミ、マンガン、チタン等が含まれていました。まずはこのレゴリスの利用から冶金の仕事が始まったんです。
最初はほぼ鉄のみでしたけど、ブルーローズの電気を使うことで、ようやくアルミの精錬も出来るようになりました。
それから、銅。
オリンポス東麓は溶岩台地です。
金属等の鉱物資源は、実はこの溶岩台地にはあまりありません。マグマの中に含まれる金属類が鉱物になるためには、水が必要。なので、狙うのは、コロニーの北西側にある低地。昔、海があった頃には湾のような地形になっていたと思われます。かつて火星にも降っていた雨水が山体に浸み込み、地下にあるマグマ溜まりに触れて金属が溶け込み、それが湧出するあたりに様々な金属を含む鉱物ができた可能性があります。まあ、遠い昔に地球と同じことが火星でも起こったとすれば、ですけどね。
そんな仮説に基づいて、ちょっと遠いんですけど北西部の低地まで行って探した結果、熱水鉱床らしきものを見つけることができました。ここには銅や、ごくわずかながら金、銀その他が含まれる鉱石がありました。いや嬉しかったですね、これ見つけた時は。
遠いので採掘した鉱石の運搬が大問題でしたけど、ミカンヤマさんとオプロンさんがこの問題も解決してくれたので、今後は色々な金属資源が活用できるようになると思います。
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さて、ここからようやく「冶金」の仕事が始まります。
でも、大変なんです。鉱石から金属を取り出すのは。鉄みたいにある程度の温度まで加熱できればあとは何とかなりそうなものは良いんですが、化学物質や電気の力を借りないと精錬できないものも多い。アルミがその典型例ですね。その辺は、ダニエルさん達の知恵と力を借りながら、今もひとつずつ解決しつつあります。
それでようやく出来るのは、金属の種類ごとのインゴット。でも、このままでは重いだけでなんの役にも立ちません。これをまた溶かして、加工して、役に立つ物を作らなきゃなりません。
どうやって作るのか。基本的には「砂型」を使った鋳造。それから3Dプリンタです。
砂型は、耐熱性のある砂を固めて鋳型を作り、それに溶けた金属を流し込んで冷やし、いろんな物を作ります。冷えたら砂型を壊して中の鋳物を取り出します。砂はまた集めて再利用します。この砂型用の特殊な砂は火星では作れないので、今の所地球から持ち込んだものを使っています。
大変なのは板状のものやレール状のもの。圧延機等の大型の設備が必要です。これらの板やレールは、今のところ地球から運んできたものを使っています。ゆくゆくは火星でこういうものも作れるといいのですが、何十年かかるか。
さらに複雑な形のものや試作品等は3Dプリンタを使って製作します。ただし、これは大量生産は出来ないので、同じものを多く作るための役には立ちません。
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まあ、こんな感じ。これが火星の冶金の現状です。
今はまだ出来ることはほんのわずか。本当にこれからです。頑張りますよ。
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では次ですね。
人類が火星に住むための実験がようやく端緒についたばかりのこの段階で、火星に産業を興そうと考えている人がいます。こんなに地球から遠く離れた場所から、一体何を売るの?
クロウリーさん、教えて。




