第十四話
「アルフォンス殿、それにエリス殿に……そやつがアイリーンの娘、アナスタシアか」
アルフォンス様と共に再びデルバニア国王と謁見する私。今度はアナスタシアを連れて……。
彼女の身の安全は保証するとアルフォンス様が仰せになってくれましたので、私はそれを信じることにしました。
アイリーンは既に捕らえられ、ロバートの遺体も回収されています。
国王陛下は今回の騒動を内々に済ますおつもりみたいでした。
「アナスタシアは“勇者の血”とデルバニア王家の血の混血。成長すれば初代国王と同様に神の如きの力を持つようになるであろう。だからこそ、処刑する。罪人の娘が英雄になることなどは許されんからな」
アナスタシアには英雄に成れるほどの才覚がある――だからこそ国王陛下はこの子を許すことが出来ないと仰せになります。
理屈は分かりますが、それでも私は罪もない娘が処刑されるなど到底承服出来ないでいました。
アルフォンス様、陛下の意志は固そうですが逆転の手立てはあるのでしょうか……。
「陛下、覚えていますか? アイリーンが逃げ出した日のことを」
「アルフォンス殿、勿論覚えておるぞ。そなたやベゼルーク王国には多大なる迷惑をかけたと思っている」
「そのとき、約束をして頂いたことも覚えておられますか? デルバニア王家の名に置いて、私の望みを何でも一つ聞こう、と仰せになられたことを」
「当然だ。娘の不始末は親が責任を取らねばならぬ。アルフォンス殿はそのとき何も望まなかったが、いつでも話を聞く準備は出来ている」
何と、国王陛下とアルフォンス様の間でそんなやり取りがあったとは。
確かにアイリーンの不祥事は大きな国際問題ですし、アルフォンス様が一方的に被害を被りました。
陛下がきちんとした贖罪をしたいと思われるのは当然でしょう。
「エリスとアナスタシアを私に下さい。必ず私が幸せにしますので」
「「――っ!?」」
「実はエリスさんにプロポーズしたのですよ。彼女の両親には勿論のこと、二人を頂くには陛下のご許可が必要と思いまして」
なんとアルフォンス様は私にプロポーズされたことを告白します。
まさか、彼が陛下に望むモノというのは――
「エリスとアナスタシアの身の安全の保証。それが私の望みです。それでアイリーンの件はそっくり水に流しましょう」
「……ば、馬鹿な! アナスタシアはアイリーンの娘だぞ。分かっておるのか!?」
「いいえ。アナスタシアはエリスの娘です! 彼女が乳飲み子の頃からずっと育てて来たのですから」
「ぬぅ……」
アルフォンス様は陛下にも一歩も引かずにアナスタシアは私の娘だと主張しました。
私にはそれが何よりも嬉しい言葉でした。
「しかしだなぁ。アナスタシアは――」
「お父様、許してやりなよ。エリスとアナは何にも悪くないんだからさ」
「エリザベート、お前もエリス殿たちの味方か……。はぁ、仕方あるまい。ベゼルーク王国がアナスタシアについて全面的に責任を負うと約束をするならば、アルフォンス殿の願いを受け入れよう」
アイリーンの姉である第一王女、エリザベートが現れてアルフォンス様の言葉に援護射撃を加えると遂に陛下は観念してくださいました。
こうして私はアナスタシアと共に隣国に行くことが決まります。
更に私は、信じられませんが……私はアルフォンス様の婚約者となりました――。




