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更新がとんでもなく遅くなり、申し訳ありませんでした!((スライディング土下座


「何で?」と思った方は活動報告をご覧いただけると幸いです……









「殿下!!」


常時は許されていない剣を腰に下げたヒューは、切羽詰まった様子で床に跪く。


「西門にアリサ・ローダントが…。殿下の予想どおりです、マシューも側にいます!!!」


なんてこと、と義姉上が口元を両手で覆う。兄上はそんな義姉上を励ますようにその肩を抱く。寄り添い合う姿は今までみられなかったものだ。…この二人の間に何があったのか、気になるところである。


「…最悪の状況だな」


苦々しい兄上の声がポツリと響く。それは今ここにいる全員の心情そのままだ。


「殿下…、どうかご指示を」


両親が外遊で公国を離れている今、兄上と俺とで判断しなくてはならない。さもすれば、国家の信用と存続に関わる重大な案件だ。


「…兄上、城にいる貴族や大臣たちの統制をお願い出来ますか」


今はなりふり構っていられない。兄上には第一公子としての役目を果たしてもらわなくては。


「分かった。ジークはどうするつもりだ?」


「俺はヒューや近衛と西門へ向かいます」


「…余程危険じゃないか」


「よく城の外に出る兄上程ではありません。…それにマシューとは俺が決着をつけないと」


渋い表情をした兄上は深々とため息をつく。


「…少しは自分の身の心配をしろ。リルフィリア殿が気を揉むぞ?」


気付かないフリをして心の奥底に閉じ込めていた感情が、兄上の言葉をトリガーに溢れ出してゆく。それまでは強く持っていたはずの心が簡単に折れてしまいそうだった。


「何を…」


「本当はわかってるんだろ。…イレーヌ、リルフィリア殿の部屋に行って呼んできてくれ」


「わかりましたわ」


真摯な光を宿した藍色の瞳にはしなやかな強さがある。つかつかとこちらへ近付いた義姉上はしっかりと俺を見据えた。


「…ジークハルト様はリルフィリア様のお気持ちを考えるべきですわ。わたくしが貴方様に意見するなど烏滸がましいですけれど言わせていただきます。リルフィリア様は貴方様の妃である前に、守られるべき存在なのです」


何を今更、という反抗心がむくむくと芽生える。俺は彼女をただの妃としてはみていない。大切な守るべき存在だと、愛すべき存在だと感じている。


「ジークハルト様、貴方がそれはそれは大切にリルフィリア様のことを想っていらっしゃることは存じ上げております。…ですが、それを自己満足で終わらせるつもりですの?ここでジークハルト様が傷でも負ってしまえば、リルフィリア様の心は深く傷付いてしまいますわ。それこそ…、父君を亡くしたときのように」



『いかないで…』


まだ共に眠っていた頃無意識のうちに流していたあの涙と、ヒュランジィーネの館で見せた何かを堪えるような涙。知りたいとは思っていても、終ぞ聞けていないその理由…。


俺がリーファから溢れる涙を拭える間はいくらでも泣いてくれても構わない。全てを受け止めて、包み込めるから。だが、俺がいない場所で泣いているリーファの涙を誰が拭えるだろうか。


心を許せる存在は側に居らず、孤独に泣き暮れる…。……そんな彼女の姿は想像したくない。


「……俺はリーファの泣き顔を見たくありません」


「ならば答えは決まっていますわ。リルフィリア様と素直にお話しなされませ。…西門はヒューが時間を稼いでくれますわ」


ね?と義姉上はヒューを見てにっこり笑った。「正しくは団長ですけど…」とボソッと呟いたヒューは意味ありげな義姉上の視線に慌てて取り繕う。


「…という訳だ。心置きなく話して来いよ?」





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




何も喋らないイレーヌ様に連れてこられたのはジークハルト様の執務室だった。相変わらず書類の山が成されているのは変わらない。


しかし、アリサがいるというのはどこなのだろうか。


「…アリサがいるのは西門なのです」


それまで無言を貫き通していたイレーヌ様が唐突に口を開く。私の中に静かな憤りが生まれ、ありのままをイレーヌ様にぶつけてしまう。


「…騙した、のですか」


「いいえ。それとは別に、リルフィリア様とお話ししなくてはならない人がこの先にいます」


イレーヌ様が示したのは執務室から続く扉。ここがジークハルト様の執務室だという事を考えれば、この先にいる人物はひとりしかいない。


「…先程のイレーヌ様は、何だったのですか?」


扉に手をかけるその前に、私はそう問いかけた。


「…あら、気付かれまして?」


「その、不自然でしたから…」


ここまで私を連れてくるのがイレーヌ様の目的だとすれば、いろいろと辻褄が合わない。イレーヌ様はこんなにも回りくどい性格ではなかったはずだ。イレーヌ様は肩をすくめてわずかに笑うと、今度は真剣な表情になる。


「リルフィリア様。今、ヒューたちが西門を抑えています。…ご心配なさらなくとも大丈夫ですわ。リルフィリア様はしっかりお話しなさるべきですもの」



遅くなりましたが、ポイント評価・ブックマークともにありがとうございます!

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