14 裏
訳の分からない遺跡で、訳の分からないまま戦わされた石像との戦いから翌日。
僕たちはクレアの調査の結果を聞くためにスカウトギルドへと歩いていた。
「いよいよクレアさんに会えるのかぁ………」
「ど、ドキドキしてきました……………」
ウサリィとカノンもクレアに会うのを楽しみにしているようだ。
まあ、一応アレでも神龍だから物珍しいのは分かるけど………
「二人とも、何度も言うようだけど…………あまり期待しないでよ?」
クレアの実態を知っている僕としては、二人が会ったときにイメージの違いにショックを受けないか心配でならない。
「でもあの写真に写っているのを見た感じ、そこまでじゃないと思うけど?」
確かにあの普通の人間ではあり得ない純白の髪と、整った顔立ちを見ればそう思うだろう。
「僕も出会ったばかりの時はそう思ってたよ…………」
「ま、私はどっちにしろ楽しめるから良いけどね~」
どうやらウサリィは心配いらなさそうだ、カノンはまだ若干緊張しているけど。
「カノンもウサリィぐらいのの気持ちで大丈夫だよ」
「………わ、私には無理です…………」
「カノンは真面目だねぇ」
そんな話をしつつ、ギルドの前まで行くと
「…………あれ?随分慌ただしいね?」
スカウトギルドの前は、以前と違い出入りする人でごった返していた。
何か大きな仕事でも入ったんだろうか?
出入りする人を避けつつ、ギルドの中に入ると
「何じゃと!?
それでは見捨てろと………もう良い、分かった!!
貴様、夜を安心して歩けると思うなよ!」
という怒鳴り声とともにガチャンッ!!と何かを叩きつけるような音が聞こえた。
「あのクソ領主め!
やはり軍は当てにならんわい!」
「あのー」
何やら激昂しているギルドマスターに恐る恐る声をかけると、ギルドマスターが振り向く。
「何じゃ?悪いが今はーーおお、お主は」
「何やらお取り込み中みたいですが…………日を改めた方が良いですか?」
「ああ、依頼の件じゃな?
そうじゃな、今は悪いがーー」
「……………あの、マスター。
…………何かあったのですか?」
躊躇いがちのカノンの言葉にマスターは重々しく頷く。
「………うむ、実はーー」
「あ、その話、僕らは聞かない方が良いですか?」
ギルドに属してないので一応聞くと、マスターは首を振った。
「いや、構わぬ。
聞かれて困ることではないからの。
実は、依頼で隣の領地に行っていたウチのメンバーとの定時連絡が途絶えたのじゃ」
「それって………その領地の憲兵に捕まったとかではなく?」
「いや、依頼は領地の調査ではなく、最近その領地に現れたというモンスターの調査じゃ」
「モンスターの調査?」
「そうじゃ。
その領地のモンスターが最近、妙な動きを見せておるらしくての。
事が事じゃから、こちらとあちらの少数精鋭で調査することになり、向こうのギルドと合同でヴァルトとフレーシアの二人に任せることになったのじゃが………」
少数精鋭にしたのは、あまり大規模に調査を始めると周りの住民に不安を与えるからだろう。
それより一人知らない名前が。
「あの、フレーシアって誰ですか?」
ヴァルトはあの僕に奇襲してきた男だろう、だがもう一人は聞き慣れないので聞き返すとマスターは怪訝な顔をし
「ほれ、お主らも一昨日に会ったじゃろう?」
という言葉に思い出す。
「あーあのカノンに酷いことをした人ね!」
ウサリィがまた思い出して怒り出したが、まあ今はそんな場合ではない。
「とにかく、あの二人が今出せる最高の戦力、向こうのギルドもそれなりの強者を出しとるはずじゃ」
「それなのに連絡が途絶えた………ということですね?」
ようやく事態が飲み込め、緊張感を含ませてマスターに言う。
それだけの精鋭が連絡ができない状況にあるーーそれはつまりそれほどの厄介な状況に陥っている可能性が高い。
「すぐに儂は向こうの領主に連絡を取って、軍を動かしてくれるよう頼んだのじゃが………」
そこから先はさっき見た通りだろう。
「あやつめ「いなくなったのなら代わりを送れば良いだろう?」等とぬかしおった!
儂等を使い捨ての道具程度に見よって!!」
マスターはまだ怒りが収まらないのかその領主とやらへの愚痴を言い始める。
確かに人の命がかかっていると言うのに酷い言い草だ、この世界のことはまだよく知らないが、少なくともそこの領主が積極的に事態解決に動くことはなさそうだ。
マスターはひとしきり愚痴を言った後、深呼吸をして落ち着いてから続きを話し始めた。
「そういうわけで今、救出隊を編成したり、作戦を立てておるところでの、悪いが調査に向かわせたメンバーも今街中を駆け巡っておるところでとても報告ができる状態ではない、いつ事態が収拾するかも分からぬ状態じゃ、すまんの」
申し訳なさそうにマスターが謝る。
そういう事情なら仕方ない、けど…………人の命がかかってるかもしれないのなら、見て見ぬ振りはできないな。
「マスター、もし良かったら僕がーー」
「おお、そうか、行ってくれるか!いやー助かるわい!」
言葉を言い切る前にマスターは僕の手を取り、ぶんぶんと振り回す。
この狸ジジイ、さては僕がこう言い出すのを待ってたな?まあ良いけど。
しかしそれに待ったをかけたのはカノンだった。
「……ま、マスター………!
…………ダメです、クロミネさんは…………関係ないんですよ…………!?」
マスターは意外なところから反論が来たことに驚いた顔をしつつも反論し返す。
「じゃ、じゃがのう…………カノンよ、このままではあの二人が死ぬかもしれんぞ?」
マスターの言葉にカノンは一瞬言葉を詰まらせるが、力強い声で
「…………それなら、私が…………!!」
とマスターの目を見据えながら言った。
だがマスターは首を振り
「カノン、お主の実力は皆知っておる。
じゃがお主のはまだ不安定な実力じゃ、マスターとしてお主だけを行かせるわけにはいかん」
マスターの指摘にカノンは自覚があるだけに顔を俯かせる。
「でも…………クロミネさんが………良い人だからって…………そんなのはズルいです…………!」
「カノン…………」
カノンにはどうやら僕はマスターに無理矢理押し付けられたと思って怒ってるらしい、まあ今のやり取りでは無理もないか。
カノンは優しいが故にこういう時は譲らないだろうから、僕が無理矢理手伝ってる訳じゃないことを説明しないと。
「カノン、僕はクレアと会わないといけないんだ」
「………?は、はい」
「あいつはトラブルメーカーだから一緒にいる人にあまり迷惑をかけない内に、早く会いたい…………けど、この状況じゃいつ、会えるか分からない。
だから僕は嫌々じゃなくて、僕なりに利があって動くんだよ」
「…………それは…………」
カノンの勢いが怯んだ、よし畳み掛けよう。
「それにちゃんと報酬も貰うし」
「え?あ、そ、そうじゃな!
もちろん、報酬も出すぞい!
タダで働かせるわけないじゃろう?」
…………この慌てよう、報酬を出す気は全くなかったみたいだな。
全く、そういうところもあのメガネと同じだ。
「だから僕らはギルドには入ってないけど、これは依頼だよ、気に病むことはない」
「そうそう、クロミネは強いんだからこういう時に使わないと!」
「ぐっ…………そ、その通り」
ウサリィの言葉に反論しかけるも、せっかく納得しかけているカノンの気が変わらないうちに説得しておきたいので見逃す。
カノンはとりあえずは納得したのか、それ以上は言わなかった。まあ、二人の命もかかってるからだろう。
カノンなりに僕がマスターに利用されてると思っての行動だから、それは純粋に嬉しいことだ。
マスターはカノンが何も言わないのを見て、改めて話し始めた。
「では早速向かってもらっても良いか?
まず、ダルバスと言う街に向かうが良い。
あやつらはそこを調査の拠点にしていたようじゃからな」
「分かりました」
「歩きなら半月ほどかかるが、幸いテレポートが使える。
テレポートを繰り返せば、三日ほどで着けるはずじゃ。
ただ…………」
マスターはそこで言葉を切り、僕らの方を向いた。
「お主ら、魔法は使えるのかの?」
「おじいさん、それはもちろん使えーー」
「いや、僕にはテレポートは使えないでしょう」
「えっ!?」
僕の言葉に喋っていたウサリィが声をあげ、カノンも驚きの表情で僕を見る。
「二人にはまだ言ってないけど実は僕、普通の魔法は使えないんだ」
「それってやっぱりりゅーークロミネの体質に関係してるの?」
「まあそんなとこ」
僕には元から魔法の才能はなかったのだが、今は龍の力が強大過ぎて普通の魔法が使用できない。
これは向こうの世界でのことだから、こっちも同じとは限らないが、龍の力が使える以上魔法の仕組みも同じはず、だから恐らく僕は地脈とやらを利用するテレポートも使えないだろう。
「ううむ、そうなると妖精と、カノンだけでダルバスまで連続テレポートか…………」
「………私はあまり魔力に自信がありません…………すみません…………」
「いや、僕こそ伝えるの忘れててごめん。
でも困ったな…………歩きなら半月か………」
今は一刻を争う状況だ、なるべく早く行かなければならないのに、そんなに時間はかけられない、どうしたものか………。
「ちょっと皆。
私のこと忘れてない?」
皆で頭を悩ませてる中、ウサリィが少し怒った様子で皆の前に来て言った。
「いや忘れてないけど………でもウサリィもそのダルバスとかいう街までテレポートできないでしょ?」
「ふっふっふっ、私を誰だと思ってるの?
テレポートの途中で森かどっかには出るでしょ?
だからーー」
「おお、そうか!
あの手があったか!
あれなら三日どころか一日で着くぞい!」
ウサリィの言葉を聞いたマスターが納得したように声をあげる。
「あの手…………?」
「まあまあ、行けば分かるよ。
それより時間ないんでしょ?」
「うむ、テレポートの心配もなくなった今、お主らには一刻も早く行ってほしい。
もちろん、準備は必要じゃがもう頼んでも良いかの?」
マスターが言ってるのは正式に依頼として頼んでも良いか、ということだろう。
あの手というのは気になるが、今は悠長に聞いている暇はない。
「分かりました、それでは救出に行ってきます」
「うむ、本当は手続きがあるが、今回はこちらでやっておこう。
どうかくれぐれもあやつらを頼む」
「はい」
マスターに返事をし、ギルドを後にした僕らは、ウサリィの一日で着けるという言葉を信じ、特に準備することもなく門前のテレポートポイントまで行った。
「それじゃ行くよー。
連続テレポートするから酔わないよう気を付けてね」
「僕はたぶん大丈夫」
「私も…………大丈夫です………」
「よし、それじゃ行くよー。
テレポート!」
一瞬の浮遊感の後、それが消え辺りが街中から森の中になっていた。
「テレポート!」
辺りを見回す暇もなく、また浮遊感の後、景色が変わる。
それをウサリィが何回か続けると、またどこかの森へ出た。
ウサリィはそこで一旦テレポートをやめる。
「ふう~~~…………疲れたぁ」
「…………ウサリィちゃん、ごめんね…………?」
カノンが謝ると、ウサリィがパタパタと手を振って
「ううん、私がしたくてやってるんだもん、気にしないで」
そう言うとウサリィは周りをキョロキョロ見回し始めた。
休憩場所を探してるのかな?
「魔力が尽きた?
少し休もうか?」
「ううん、魔力はないけど…………ちょっと待ってて」
ウサリィは一本の周りより少し大きい木を見つけると、パタパタと側に飛んでいった。
蜜でも吸うのかな?と思っているとウサリィが木に触れ
「ごめんね、少しだけ貰うよ」
そう言った瞬間、木から魔力の塊がウサリィの体に流れ込んだ。
そしてそれが終わった後、ウサリィは手を離し、さっきまでの疲れた様子が嘘のように元気になっていた。
「ウサリィ、今のは………?」
「ちょっとそこの木から魔力を貰ったんだー」
「貰ったって…………」
「私たち妖精は自然のものと対話し、自然から魔力を貰うことができるからね。
あれ?言ってなかったっけ?」
ウサリィはこの世界で一番長く付き合いがあるが初めて聞いた。
そんな僕の視線に気づくとウサリィは誤魔化すように
「さ、さあ!魔力も回復したし早く行くよ!
まだまだ道のりは長いんだから!」
「はいはい」
「………ふふ」
僕は苦笑しながらウサリィの近くに行く。
そんな僕とウサリィのやり取りを微笑みつつカノンも近づく。
「ところで、あと何回ぐらいテレポートするの?」
結構してるしあと何回かぐらいだろうと思って聞くと
「あと最低二十回はするかなー」
「……………え?」
だからウサリィの言葉を聞いたときは耳を疑った。
「そ、それ一桁間違えてない?」
「間違えてないよ?」
「…………その時の地脈の流れ方によっても変わるので…………本当はもう少しかかりそうです………」
「……………」
テレポートには慣れてるつもりだったのだが、二桁行くぐらいしかも連続でテレポートするのは流石に体験したことがない。
そして実を言うとすでに結構テレポート酔いがきていて、さっきから頭がふらふらする。
その状態であと二十回…………?
「それじゃ行くよー。
今度は連続で七回するからね」
「まっーーー!!」
道中、テレポート酔いで倒れた僕のせいで、ダルバスに着いたのは予定の時間を大幅に過ぎた夕方となり、捜索は明日に延期になったのだった。
取った宿屋のベッドで転げながら僕は、次からは遠出するときは緊急時を除いて絶対に陸路で行こうと固く誓うのだった。
ーーーーー翌日ーーーーーー
「あー…………まだ若干ふらふらする………」
「大丈夫クロミネ?
まだ調子悪いんならもう少し休む?」
「いや、大丈夫だよ。
昨日休ませてもらったし、それにあまり時間もかけられないしね」
「…………でも、調子が悪かったら………すぐ言ってくださいね…………?」
「うん、ありがとう」
二人の心配は嬉しいが、自分のせいで遅れたので心配されるほどに罪悪感が…………。
とりあえずこれ以上二人に心配かけないようにしなきゃいけないな。
「よし、それじゃ早速聞き込みをしよう。
二人がどこに調査に行って見つからなくなったのか突き止めないと」
「じゃあ最初はギルドに行くの?」
ウサリィが言ってるのはここのスカウトギルドだろう。
「そうだね、まずはそこのギルドで何を調べてたか、どこに行ったのかを聞ければ良いんだけど」
「はい…………」
マスターに出る前に渡された地図の通りに行くと、向こうのギルドとほぼ同じ造りの建物が見えてきた。
僕は向こうでの件があるので、いつでも剣を抜けるように構えながら慎重に扉を開ける。
「いらっしゃ…………」
扉を開けて目の前の机に座っていた受付のお姉さんは、準戦闘態勢で入ってきた僕を見て怪訝な顔をした。
僕は構えを解いてごほんと咳払いをしてから何事もなかったかのように振る舞う。
「あー………すみません、僕たちアダザーナのスカウトギルドから送られた者なんですが」
「は、はい、すみません、少しお待ち下さい」
お姉さんは受付から出ると、奥の方へと引っ込んでいった。
少し待つと背の高い、細身の目が鋭い男が出てきた。
「お前たちが救援部隊か?」
「はい、そうですけど」
「ふん、ガキ二人と妖精だけか。
あのジジイめ、ついにボケ始めたな」
「なんですって!?」
「どうどう」
無遠慮な物言いにウサリィが怒り始め、それを宥めつつ男に視線を向ける。
「あまり歓迎されてなさそうですね」
「当たり前だ、命がかかってる救出任務にこんなふざけたチームを送ってこられて怒らないわけがないだろう」
男は鋭い目をさらに鋭くしながら僕らを睨み付ける。
怒っていたのにはちゃんと理由があったわけだ。
この人はこの人なりに、行方不明になったメンバーを大切に思っているからこそ僕らにこんな態度をしているんだろう。
「心配しないでください、これでも腕には自信があるので」
「ふん、そうだと良いがな」
男は疑わしそうに僕らをじろじろと見る。
信じてもらえてないかもしれないが、今は押し問答をしている場合じゃない。
「すみません、調査チームがどこへ向かったのか教えてもらっても良いですか?」
「…………ふん、一応あのジジイの使いだからな。
だが実力がないならいつでもやめてもらって構わんからな、お前たちに期待はしとらん」
男はそう言いギルドの受付のお姉さんと一言、二言話すとさっさと出ていった。
「何あの態度ーー!?
めっちゃムカつく!!」
「す、すみません………マスターはその、悪い人ではないんですが、少し口が悪いところがありまして…………」
僕たちに受付のお姉さんが申し訳なさそうに謝る。
ウサリィもそれを見て「お姉さんが謝ることじゃ…………」と、怒りを鎮める。
「でもあの人が良い人ってのは上げすぎじゃないの?」
「いや、僕も良い人だと思うよ。
さっきのは、この件が自分達の手に余ると思ったら無理せずにやめて良い、と言う意味にも聞こえるでしょ?」
「…………む」
ウサリィも思うところがあったのか納得できるような納得できないような微妙な表情で黙り込んだ。
まあ、この辺は全部推測だから本当のところは分からないけど、たださっきの行方不明になった人を心配しているような発言からあながち大ハズレというわけでもなさそうだと思うんだけど。
「では、早速情報を教えてもらっても良いですか?」
「は、はい、えっと…………調査チームはこちらで二日泊まり、装備を整え街の方へ聞き込みに行った後、行方が分からなくなったそうです」
お姉さんが持っている資料を見ながら当時の状況を説明する。
「その聞き込みに行った場所は分かりますか?」
「ええと、東地区の方に行かれたみたいです。
東地区は近くに森があり、そこの人達はよく森へ食材等を探しに行かれてる人も多いみたいですし、モンスターの目撃情報も多数報告されているみたいなので…………すみません、これ以上は………」
「いえ、助かりました、ありがとうございます」
東地区か…………場所も分かったし急ぐのが良さそうだ。
お姉さんから街の地図を貰い僕らは扉へと歩く。
「それでは僕らは向かいます。
情報ありがとうございました」
「ちゃちゃっと助けてくるからね!」
「…………あ、ありがとうございました…………」
僕らがギルドから出ようとすると「あ、あの!」と後ろから声がかかった。
「はい?」
「す、すみません、でもあの…………同じギルドのメンバーでもない貴方に頼むのは筋違いだとは思うのですが、どうか仲間をよろしくお願いします…………!」
お姉さんが頭を深々と下げてお願いするのに、僕らは力強く頷き、ギルドを後にした。
「…………絶対、見つけないとね」
「うん、早速東地区に向かおう」
お姉さんから貰った地図を頼りに歩いていくと、街中から少し離れ、農作物を育てている所が多い場所へ出た。
いわゆる田舎という感じのところに着いた僕らは、まずどう探すかを話し合うことにした。
「やっぱりこの人たちを知りませんかー?って聞きながら探した方が良いんじゃないの?」
ウサリィが提案する、確かにそれが一番確実だけど………
「でもそれだと調査チームの特徴を聞く人に分かりやすく言わないといけないよ。
こっちのギルドのメンバーは知らないし、あの二人のことはそんなに知らないし………」
せいぜい僕に言えるのは「やたらと物騒な男」か「うるさい女の人」ぐらいだ、これだと前者は犯罪者でも追ってるのかと誤解されるだろうし、後者は後者でこれだけで見つけるのは中々難しいだろう。
「あの……………」
「やっぱり地道に聞き込みを続けるしかないと思うんだけど」
「…………その…………」
「でもそれだといつになるか分からないじゃない、その間に死んじゃったらどうするのよ」
「あの…………ウサリィちゃん……クロミネさん…………」
「え、どうしたのカノン?」
カノンの声が聞こえそちらへ顔を向ける。
「…………その、さっきから呼んでたの…………ですけど………」
「え、そうなの?全然気がつかなかった」
ウサリィの言葉にカノンはショックを受けた顔をするが、すぐにそんな表情を消して話し始めた。
「…………さっきの二人の特徴の話…………私ならできると思います………」
「そうか、カノンは僕らの中じゃ一番あの二人との付き合いが長いもんね」
「…………はい、だから私に任せてください…………!」
二人のことを伝えるのはカノンに任せ、僕らは人を探して歩き始めた。
街から離れているためか、今のところ人の姿はない、こればっかりは地道に探すしかないな。
「ところでクロミネ、今回のことどう思う?」
「ん?何が?」
「調査チームが行方不明になったって話のことよ。
だってたかだかモンスターの調査でしょ?
あの人たち、聞く限りじゃ強いみたいだし、この辺にいるモンスターはそんなに強くないはずだし、行方不明になってるっておかしいと思わない?」
「うん、実は今僕もそのことを考えてたんだ」
ウサリィの言葉に頷き、僕は考えられる予想をあげてみる。
「考えられるとしたら、予想外に強力なモンスターが出たとかかな。
例えば…………Sランクのモンスターとか」
ウサリィとカノンがSランク、という言葉に怯えた表情になる。
「で、でも、Sランクなんてそうそうーーー」
ウサリィがそう反論しかけるが、最近のことを思い出して黙り込む。
「僕たちは何故かSランクモンスターに縁があるからね……………」
「そんな縁いや~~~!」
ウサリィが叫び声をあげるが、正直僕はその可能性が一番高いと考えてる。
もしそうだとしたら戦うのは後回しで、まずは逃げることが先決になるだろう。
四人が全員無事とも限らないので、その時は負傷した人を連れて逃げなければならない。
願わくば僕の予想が外れていて欲しい。
密かにそう願いつつさらに歩いていくと、やっと農作業をしている人を見つけることができた。
「じゃあカノン、頼んだよ」
「はい、任せてください………!」
カノンはてくてくと農作業をしている人のところに歩いていく。
僕らはどう見ても親子じゃない男と女の子が一緒にいて不信感をもたれないように、近くの小屋の後ろに隠れて様子を伺うことにする。
「あの…………すみません…………」
カノンの声に、農作業をしつつ欠伸をしていた中年のおじさんは顔をあげた。
「ん?君、ここらじゃ見かけない顔だな。
どこから来たんだい?ここら辺は田舎だから何も見るところないし、俺みたいな暇人しかいないよ?」
「あの…………その…………」
「親とはぐれちゃったのかい?
探してあげようか?ん?」
「あ、あう……………」
僕は少し遠くからそのやり取りを見ながら呟く。
「くっ、よりにもよって割りとお喋りな人に当たるなんて」
「あ、クロミネ、見て!」
ウサリィの指差す方を向くと、おじさんの友達か、中年のおじさんやおばさんが「何だ何だ?」「迷子か?」と言いながら数人、カノンの方に近づいてきていた。
「マズイ、ただでさえ人見知りなカノンがあんなに知らない人に囲まれたら…………」
案の定、カノンは周りの人から質問攻めにあい、本題を切り出すどころか話すことさえできない。
「クロミネ、私たちも行った方が良いんじゃ…………」
「…………そうだね、相手には少し不思議に思われるかもしれないけどそこら辺は説明してーーー」
そう決めて出ようとした時、質問攻めでおろおろとしていたカノンが少し大きめにした声で
「あの…………私、聞きたいことがあるんです…………!」
と、おじさんおばさん達に言ったのを聞いて出るのを思いとどまる。
「クロミネ?」
「………もう少し、様子を見よう」
僕とウサリィは小屋の後ろに隠れ直し、カノンとおじさん達のやり取りを聞く。
「聞きたいこと?」
「そう…………なんです。
あの…………最近、この辺に見覚えのない人が………来ませんでしたか…………?」
「知らない人?」
おじさん達は「そんな人来たか?」「この辺は見知った顔ばっかだから来たらすぐに分かるけどなぁ」等と話し合う。
「お嬢ちゃん、もう少しこう、具体的にどんな人ってのは分かるかい?
そうすれば思い出せそうなんだが」
おじさんの一人がそう言ったのにやっぱり来たかと心の中で呟く。
カノンはあの二人の特徴をどう分かりやすく伝えるのだろうーー
「あの………“ぶっきらぼうで失礼な男の人”と…………“高飛車で態度が大きい女の人”を見ませんでしたか………?」
「「ぶっ!!?」」
カノンの言葉を聞いた瞬間、僕とウサリィは同時に吹き出した。
た、確かにあの二人の特徴をこれ以上ないぐらい言い表している…………!
「く、クロミネ………私、お腹痛い…………!」
「ぼ、僕も……………!」
あの二人が聞いたら一人は怒りそうだ、もう一人は分からないけど…………!
でもあの人たちに伝わるかな………
「ああ、もしかしてちょっと前に、近くの森のモンスターの調査をしていたという二人ことかい?」
伝わったということはつまり…………うん、これ以上やめよう。
「は、はい…………その人たちです………!」
「そうか、その人たちなら…………」
カノンはおじさん達から話を聞くと、最後にたどたどしくではあるが、お礼を言って僕らの方に小走りで戻ってきた。
「クロミネさん…………!
ヴァルトさんとフレーシアさんの行ったところが分かりま…………?
どうしました…………?」
「いや、うん、何でもないよ、ありがとうカノン、それと頑張ったね」
僕はカノンの頭を撫でる、カノンはくすぐったいような恥ずかしいような表情で撫でられる。
ただ、耳と尻尾は嬉しそうにピコピコと動いていたが。
「カノン、それで二人はどこに行ったの?」
「…………えと、森を進んだところに湖があるらしいのですが…………そこの周辺でモンスターが出ているそうで…………」
「なるほど、その湖に向かったんだね?」
「はい…………」
「よし、それじゃ早速レッツゴーー」
「ちょっと待った」
僕は急いで森の方へ飛び出そうとするウサリィをぎゅっと捕まえる。
「わわっ!?なになにっ?」
「く、クロミネさん…………?」
「驚かせてごめん。
確かに今は急がないといけない、でも確実に何かが起こってる森の中に焦って入るのは危険だ。
今からはまっすぐ、だけど警戒しながら慎重に進もう、でないと僕らもやられたらそれこそ誰もあの人たちを助けることができなくなる」
僕の真剣な口調にウサリィとカノンが頷くのを見て、僕はウサリィを離した。
「よし、それじゃ行こう。
二人ともくれぐれも気を付けて」
「う、うん…………!」
「はい…………!」
僕は剣をいつでも抜けるように警戒しながら、東地区の端にある森の中に入っていったのだった。
さて、S級モンスターが出るか、それとも昨日の石像みたいな変なやつが出るか…………とにかく今は調査チームの無事を祈るしかない。
入った森の中は生えている木々のせいで薄暗いが、視界はある程度確保できる。
これなら暗闇に乗じて不意打ちを受ける心配はなさそうだ、その代わり今出ている日が落ちたら僕でも視界を確保するのは難しくなるだろう。
その前には調査チームを救出してこの森を抜け出したいところだ。
「それにしても街のすぐ近くにこんな森があるのって珍しいね」
ウサリィが周りを見回しながらそう言ってくる。
確かに街のすぐ近くにモンスターがいる森を放置してるなんて普通は考えられない。
いつモンスターが攻めてくるか分からないし、特に東地区の人とかは毎日不安ではないのだろうか。
「カノンは理由知ってる?」
「いえ…………。
でも…………領地のことは領主の人が判断しますので…………この森が残っているならそれは領主の人が何かの理由で残したのではないでしょうか…………。
す、すみません、私もよく知らなくて…………」
「いや、答えてくれてありがとう。
何せ僕はこの世界の統治方法とか全く分からないから」
「とうちほうほう?」
統治すら分かってなさそうなウサリィが首を傾げるのはともかく、街のすぐ近くにこんな森が残ってるのには理由がありそうだ。
「と、着いたね」
「ここが湖っぽいね」
話してる内に目的地に到着したみたいだ。
僕らから少し離れたところにその湖はあった。
意外に小さいが、今のところ何かが襲ってきたりする気配はない。
「ここに調査チームは向かったみたいだけど…………」
「…………誰も、いませんね………」
見渡す限り、湖の周辺には人も、人がいた気配もない。
考えたくはないがどうしても最悪な考えが頭をよぎってしまう。
「どうするクロミネ?」
「…………もう少し、辺りを探してみようかーー」
そう言った時、不意に背中の辺りがざわつく感覚がした。
これは…………前にも覚えが…………!?
僕が剣を抜き自分の正面に構えるのと、誰かの武器が当たり火花を散らすのはほぼ同時だった。
「…………お前は…………!?」
僕に奇襲をかけて驚いているのは、感じた通りヴァルトだった。
「…………ヴァルトさん…………!」
「カノン、お前まで………まさかマスターの差し金か………くっ………!」
ヴァルトはカノンも来ていることに驚いたように目を見開くも、その直後苦しそうに膝をつく。
「………ヴァ、ヴァルトさん…………大丈夫、ですか………!?」
「お前に心配されるほど…………落ちぶれちゃいねえ…………良いから、逃げろ…………!!」
「逃げろ?何からーー」
ヴァルトに聞き返そうとした瞬間、ヒュンヒュンヒュンッ!と大量の何かが風を裂く音が聞こえてきた!
咄嗟に動いた僕とヴァルトが武器を使ってそれを弾き、叩き落とす。
「矢…………?」
僕らに放たれたそれは、木や動物と思われる骨を削って作られた矢だった。
「ボサッとするな…………!
第二射が来るぞ!」
ヴァルトの警告通り、間髪入れず弓の大群が飛んできた。
弓をつがえて放つまでにはいくらかの時間を必要とするはず、それがほぼ間を置くことなく飛んでくるということは…………
「クロミネ、考え事はあと、あと!
何とかして~~!!」
「あ、ああ。ごめん!」
僕は再びヴァルトとともに矢を防ぐ。
「ふう、これでーー」
「まだだ!」
ヴァルトの声に空を見ると、第三射が迫ってきていた。
「く、これじゃキリがない…………!」
「俺たちもこれにやられた…………防いでも防いでも次が来やがる…………!」
どういう手段を使っているかは分からないが、やはり元を叩かないとダメか…………。
「……………仕方ない」
「クロミネ?まさか…………」
「ったく、この世界の奴等はよほど俺に喧嘩を売りたいらしいな!」
俺は迫り来る矢に向けて剣を上段に構える。
「炎龍の息吹よ!」
剣に魔法をかけ、一気に振り抜くと炎が矢を呑み込み、さらにそのまま矢が飛んできた場所も呑み込んだ。
それから油断なく剣を構えておくが、それ以上矢が飛んでこないのを見て剣を納める。
「ふう、どうやらこれ以上攻撃は来ないみたいだね」
「お前…………今のは………それに龍と言ったか………?」
ヴァルトは今まで見せたことのない驚きの表情で僕を見る。
やっぱりこうなったか、でも僕も考えなしに使ったわけではない、ちゃんと言い訳も考えてある。
「実は今のは僕の固有魔法で、龍と付いているけど、龍とは一切関係な」
「嘘だな」
何故一発でバレた!?
「あの炎は、前に龍とやりやった時に見たものと同じだった。
感じる魔力もな…………だから龍と無関係とは考えられん」
「…………」
ヴァルトの淡々とした指摘に僕は何も言い返せず黙ってしまう。
「クロミネ…………まさかその言い訳で通ると思ってたの?」
「いや…………その………はい、正直思ってました………」
まさか龍と戦ったことがあるなんて…………これは誤算だった…………
「ちなみにアダザーナのギルドに入ってる人全員にその言い訳は通用しないと思うよ?」
「えっ!?」
「…………この前龍が街に来た時…………皆で戦いましたから………」
「そ、そういえば…………」
あの言い訳でいざ使っても通ると思っていた僕はその事実に膝をつきたい気分になった。
誰だ龍と戦えとか命じた奴…………剣で五十回ぐらいどつきたい…………。
「…………それより、お前のその魔法について話してもらおう。
返答次第では…………」
ヴァルトが痛みを堪えながら武器を手に取る。
ただ龍の力があるかもしれないというだけで、ここまで警戒されるなんて…………迂闊に龍魔法を使ってしまった僕も僕だがこの世界の龍たちは何をやらかしたんだ。
とにかく説得しないと、救助しに来てその救助対象と戦うことになるなんて本末転倒も良いところだ。
「えーととりあえず僕の話を…………」
『ウオオオオオオオンッ!!』
突如、狼のような吠え声が聞こえ、ヴァルトと二人警戒態勢を取る。
「今のは…………!?」
「ちっ、もう気づかれたか………!
来い!こっちだ!」
ヴァルトはそう叫ぶと木々の間を縫って走り出した。
流石、怪我を負っていてもその走りは早く、油断すると見失ってしまいそうだ。
そしてウサリィとカノンではこのスピードに付いていけないだろう、仕方ない。
「カノン、ちょっと失礼」
「………え、きゃっ!?」
「ウサリィ、僕の髪の毛でも服でも良いからしっかり掴まって」
「は~い」
「あ、あああの、く、クロミネさん…………!」
僕はカノンをお姫様だっこし、ウサリィが服にしっかりしがみつくのを確認して言った。
「ごめん、ちょっと今から揺れるよ!」
「え………きゃああああ!?」
僕はカノンを抱え、ウサリィを引っ付けたまま走り出した。
ヴァルトの後ろに並び、ヴァルトの走る道をそのままなぞるように疾走する。
「ヴァルト!一体何が来たんだ!?」
「良いからとにかく走れ!
追い付かれたら終わりだ!」
ヴァルトはそう言いながらも走るスピードを緩めず真っ直ぐに進む。
程なくして目の前に割れ目のような崖が見えてきた。
向こう側との距離はおよそ十メートルぐらいか。
「ヴァルト!目の前、崖!」
「………おい、跳躍力に自信あるか?」
……………な、何で今そんなことを聞くのか。
「それってどういう意ーー」
「飛ぶぞ!」
そう言うとヴァルトは崖まで全力疾走し、そのままドンッ!と地を踏みつけて飛び上がった。
その跳躍は崖を飛び越え、向こう側に楽々と到達した。
「ここまで来れば追っては来れん。
さあやってみろ」
「あの…………さ、僕人抱えてるんだけどおおお!?」
ただでさえ人一人分、重くなっている上に、抱えているせいで体勢も上手く整えられない。
この状態で十メートル飛べと?
ヴァルトは僕の叫び声を聞くと抱えられているカノンを見、そして僕の後ろを見て静かに言った。
「…………何とかしろ」
「無茶言うなああああ!?」
「く、クロミネ!
後ろから来てる来てる!」
ウサリィの必死の叫び声を聞いて猶予がないことを知る。
「くっ…………こうなったら…………!!」
僕は瞬時に頭の中でシミュレートをし、それを実行するべく走り出した。
「ちょちょちょクロミネ!?
この状態で向こうまで飛べるの!?」
「無理!
だからーーカノン、ごめん!!」
「え…………」
僕は走りながらカノンを思いっきりーーー投げた。
龍の力を使わなくても小柄なカノンは、僕の思った以上に飛んでくれた。
カノンは何が起こったか分からないままの表情で、崖の上を飛び越えていく。
そしてカノンを投げた僕は素早く体勢を整えると、地が割れるほど踏みつけて飛んだ。
すぐ後ろで何かがガチン!と歯を噛み合わせるような音を置き去りにしながら、僕は宙にいるカノンを再びキャッチし、勢いのまま向こう側の陸地へと迫る。
だが
「く、くくくクロミネーー!?
届かないよーーーー!?」
途中でカノンを抱えたことで勢いが落ち、崖に到達するかどうかは怪しいところだった。
「ど、どうするのさー!?」
「大丈夫、僕には…………こいつがある!」
僕は届かない距離を埋めるように剣を伸ばし、崖の斜面に突き刺した。
人間二人の体重のため止まりきらず少しガガガッ!と音を響かせながら斜面を滑り落ちるも、そのまま落ちることはなく陸地から少し離れたところで止まってくれた。
僕は片手で剣を持ち、片手でカノンを抱えながらふうと息を吐いた。
とりあえず助かったみたいだ、カノンが軽くて、そしてウサリィが妖精で本当に良かった。
「おい、大丈夫か?」
ヴァルトが剣一本で崖に掴まってる僕にそう声をかける、まあ普通なら折れてるしね。
「大丈夫、この剣はこの程度じゃ折れないから。
それよりカノンを先に上げてくれる?」
「あ、ああ…………」
ヴァルトにカノンを上げてもらい、懸垂と壁登りの要領で上に上がる。
向こう岸を見ると、僕らを追っていた何かは、もう森の中に消えたのか影も形も見えなくなっていた。
「た、助かった~!」
「何とかなったね…………それと」
僕はカノンの方を向く。
カノンは未だ何が起きたか分からないといった表情であちこちを見回している。
僕はカノンの前に頭を下げた。
「ごめん、カノン!
あの時はああするしかなくて、怖かったよね?
本当にごめん!」
何だか最近カノンに謝ってばかりなような気がする、本当に申し訳ない。
カノンは僕の言葉にハッとした顔をして
「い、いえ…………気にしないでください…………!
私も…………クロミネさんに頼りっぱなしで…………」
「そうだな、お前が走れていればあんなサーカスみたいなことをしなくても済んでいた」
「あう……………その通りです…………」
ヴァルトの歯に衣着せぬ言いようにカノンは項垂れてしまう。
「ちょっと、言い過ぎなんじゃないの?」
「ふん、それより早くここを離れるぞ。
この崖は広いが回り道がある、ぐずぐずしているとせっかく近道を使ったのに意味がない」
ヴァルトはそう言うと、スタスタと歩き出した。
悪い人ではないんだけどなぁ、さっきだって追い付かれるリスクがあるにも関わらず、カノンを抱えてスピードが落ちてる僕に合わせて走ってくれてたし。ただ………
「な、何よあの態度ーーー!?
あんたなんかクロミネが来てくれなければやられてたじゃない!
この不機嫌面男ーー!」
ウサリィとはウマが合わなさそうだなと思いつつ、僕は怒るウサリィを宥め、落ち込むカノンを元気付けながらヴァルトの後を付いていく。
それにしても…………さっきの息つく間もない連続斉射、アレは人間が使う戦術だ、モンスターが、少なくとも僕の知る限り、考えられるようなものじゃない。
一体この森に何がいるんだろう…………?
不吉な予感を抱きつつ僕は無言のまま歩くヴァルトを追いかけるのだった。
ーーーーーENDーーーーー




