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The RODEO with MONSTERS  作者: 将門来復
伏魔殿で踊れ
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伏魔殿で踊れ 11

20 食うか食われるか


朝になると討伐軍の大部隊が宿場町にもなっている比較的大きな農村に向けて進軍を続けていた。大軍ともなると食糧を確保するのもかなりの量を必要とするものだ。当然のことながら日数がかさめばそれだけ台所事情も苦しくなろう。にもかかわらず行軍は散発的な奇襲によって遅々として進まず、食糧も底をつきかけていた。補給も間に合わないためこれから先は街や村を焼き払い、必要な物資を調達しながら進もうとしていた。


「くっくっく、最初の村が見えたな。可哀想に、それもこれもヴェランが抵抗するからよ。はーっはっはっは!」


煮え湯を飲まされて来たスニールもこれからは存分に敵を蹂躙してやろうと意気込んでいた。


「よいか皆の者!これから我らは戦時物資を徴発する。抵抗する街や村は全て焼き払って構わん。女子供とて容赦するな!一切合財根こそぎ奪い取って来るのだ!」


<オオオォォォッ>


スニールの号令の下、兵士たちが雄叫びを上げて突入して行く。あわれ宿場町は血の惨劇の舞台となろうとしていた。兵士たちは家々の扉を蹴破り、土足で民家を踏み荒らして行く。息を潜めて隠れている者はいないか人狩りも始まっていた。

しばらくすると本陣で茶をすすっていたスニールの下に伝令が飛び込んで来た。


「閣下!」


「何だそのナリは?お前は何も取っておらんのか。」


略奪のために殺害を許可しているにもかかわらず、返り血の一つもついていない伝令を見てスニールの興が削がれた。


「おそれながら、この村は人っ子一人見当たりません。それどころか食糧も医薬品も何もかもありませんでした。畑の作物すら全て収穫されてすっからかんです。」


「な、何だと?」


スニールは予想だにしない伝令の報告に驚愕の表情を浮かべる。しばらく呆然としているのもつかの間、突如思い出したかのように手にしていたカップを地面に思い切り叩きつけた。


「クソがぁっ!どこまでも人を虚仮にしおって!」


「誰もおらぬとはつまらんのぉ。もう良い、焼き払ってしまえ。」


目を半開きにしながらつまらなそうな顔をするギルビーが口を開くと、突然どこからともなく目の前に多数の敵兵が現れて本陣に切り込んで来た。


「敵襲!」


「毎度どこから現れるのだ、この馬鹿どもは?」


スニールはうんざりするように言い放つと宿場町の方へと駆け出す。


「早く本陣に戻れ!敵襲だーっ!」


「閣下、早くこちらへ。」


移動しながらギルビーは妙な搦め手ばかりを用いる敵について考えを巡らせていた。クロードより筋悪ではある、悪手と言ってもあながち間違ってはいない。どうにも戦術が素人くさいが、だからこそ裏をかかれ続けている。それでも奇襲を成功させているのは、おそらく相手は自分たちの動きをつぶさに観察しているのだろう。それというのもことあるごとに誰かに見られている気がして仕方ないのだ。スパイを疑ったが、どうにもそれらしい者も見当たらない。


(後の先か。誰かは知らんが、じっくりと見られておるなぁ。)

「この儂が雑兵ごときと切り結ぶハメになろうとは。ふははは、何とも楽しくなって来たぞ!」


護衛の兵士が助太刀に来たものの全く手が足りずにギルビーは王党派の兵に周り込まれてしまった。現在進行形で敵から逃げているにもかかわらず、ギルビーは焦りの表情を見せるどころか嬉しそうに高笑いをしているではないか。


「待てぇ、逃さんぞギルビー!」


「ギルビーだ!囲めーっ!」


「前回の内戦では討ち漏らしたが、こ度は生きて帰れると思うなよ。そっ首もらい受ける!」


「くっ!なんの、ホレ。ホッ、ホッ、ホレィ!はっはっはっはー!どうした?儂の首をとるのではないのか?」


3人に囲まれて同時に斬りかかられたギルビーは絶体絶命の窮地に陥った。しかしヒラヒラと剣を振ると冗談のように自身に降りかかる剣戟をいなして見せた。すると今度は逆にニヤニヤ笑いを浮かべながら、敵をおちょくるように突きを繰り出して2人討ち取ってしまった。当のギルビーは左手で自分の首を掻き斬るような仕草を見せて大笑いしている。予想を裏切るほどの腕前を見せつけられた王党派の面々は大将首を前にしていながらギルビーの間合いに踏み込むことができず固まっていた。


「こ奴、強いぞ。油断するな!」


「聞いておらんぞ!何だこの、うわぁ!」


「ホレホレ〜、次々とかかって来んか雑魚領主どもぉ。はっはっはー、マルセロ・ド・ギルビーはここにおるぞぉ!」


「殺し合いを楽しんでおるぞ!おのれ、ギルビーを叩っ斬れ!」


ギルビーは高らかに名乗りを上げたにもかかわらず、兵士たちは一向に斬りかかってこない。兵士たちとにらめっこをしている時間がもったいないとばかりに自分から斬りかかって行く。ギルビーは笑いながら次々と敵を血の海に沈めて行った。すると遠くで大きな爆発が生じた。


<ドンッ>


「撤退だ、今すぐけが人を運べ。」


「足止めもここまでか。殿軍も大変だぜ。」


「おい、見ろ。アイツら地面に潜って行くぞ!」


「今まで姿を見せずに現れたのはこういう仕掛けだったのか!ふざけた真似しやがって。モグラどもを追い詰めるぞ!」


大きな爆発音を合図にして戦場となった本陣から鮮やかに敵が引いていく。すると王党派の脱出経路に飛び込もうとしていた兵士たちをギルビーが制止した。


「やめとけ、追うな。」


「何故ですか、ギルビー卿!」


「あ奴らがこれ見よがしに地面に逃げ込んだのだぞ。あれは罠だ。それとも貴様らは生き埋めになりたいのか?」


「何ですと!」


「おい、深追いはするなー!止まれー!」


既に何人か入っていた兵士を分隊長が大声で呼び戻す。実際に剣を交えて、敵の戦法を見たギルビーは手で頭を掻いてぼやいて見せた。


「ふむ、この手際。スニールでは荷が重かろうよ。つまらん話だが、こりゃぁ撤退だなぁ。」


「おおギルビー卿!ご無事で何より。」


「なーに、雑魚領主ごときに遅れはとらんよ。ところでスニール卿、ここで撤退せんか?」


何とか難を逃れたスニールに手をかざして応えると、ギルビーは軽い調子で撤退を提案した。その言葉に驚いたスニールが色をなして反論する。


「な、何をおっしゃるのか!撤退などあり得ませんぞ。」


「まぁ待て、卿はミスト議長を気にしておるのだろう?あのトカゲじじいにはこっぴどく絞られるだろうが、儂からも口添えする故どうだろう。」


「しかし、このままでは・・・。」


スニールは枢密院で大見得を切った手前、何としてでもヴェランを討たねば引けないようだった。しかしここまで裏をかかれて兵も物資も削り取られては、同輩相手に強硬に主戦論を唱える訳にも行かない。ギルビーはスニールを見透かすように諭して見せた。


「今回は相手が悪かったのだぁ。儂の見立てではこのまま行っても全滅だろうて。この先も徴発は空振りが見えておるしなぁ、お手上げよ。儂らとて腹が減っては戦はできんのだぞ。」


「・・・わかりました。」


「よーし、ここからは死に物狂いよ。グズグズしておれば退路が塞がれてしまう。全力で押し通らねば生きて帰れんぞ。」


ギルビーは総大将の説得に成功すると、周りの兵士にも聞こえるような大声で今後の方針と心構えを叫ぶ。すると今まで死んだような目をしていた兵士たちに生気が戻った。死地にあって生きて帰る希望を説く指揮官に活路を見出すのは、人間の性というものだ。他の侯爵とは違い、根っからの軍人気質のギルビーは兵士の心情を理解し利用するしたたかさがあった。

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