第1話04
ガチャ
「ただいまー」
弟の声が聞こえた。
時計を見ると既に19時を回っていた。
雅鷹はあれからずっとゲームをしていたのだ。
画面を見すぎていたせいで起こる目のクラクラに
顔をゆがませながらも、雅鷹はパソコンを落とし、1階へ降りた。
「あ、兄さんただいま。今日学校休んだんだって?」
「あぁ」
「全くどうせ遅くまでゲームしてたんでしょ?しょうがないなぁ」
本音を言うとそれは正しい。
昨日は夜遅くまでゲームをしていた。
ズル休みで休んだつもりだったが、少し喉が痛いのはそれのせいだろう。
「うっせ。お前には関係ないだろ」
「母さんと父さんがいないからってハメはずしたらダメだろ?
2人から言われてるんだよ。”雅鷹のことよろしくな”って」
雅鷹はピクッと眉間にしわを寄せた。
普通は兄に弟をよろしく、と伝えるであろうに。
どっちが兄だかわからない今の現状が雅鷹は大嫌いだった。
「とりあえず兄さん、風邪薬置いとくから飲んでね。
あとおかゆとか作るから寝ててよ」
「いらねぇ。今お腹すいてねぇもん」
「そんなこと言ってると何時までたっても治らないよ?」
鷹尋の言うことはいつも正しい。
それはわかってるつもりだった。
自分よりも何倍も正しく、賢い弟。
ふと見上げた時計が目に入った。
”19時00分”
『そういえばアイツ”19時25分”に誰か死ぬって・・・』
そんなことを信じてるわけない。
だが、少し興味がある。
”自分の大切な人”
身内、友達・・・
思いあたるふしはたくさんあるが、その中の1人となると
誰なのか見当もつかない。
「・・・さん、兄さん・・・兄さん!」
「えっ?何?」
「だから早く部屋で寝てて、って言ってんの」
「はあ?大丈夫だよ」
「良いから早く!あとでお粥とか持ってくから!」
その時、世話焼きすぎる弟にイラっときたのだろうか。
それとももしかしたら魔の手が差して、そう言うようにさせられたのだろうか。
「うっせーなさっきから!いらねぇって言ってんだろ!?しつけぇんだよ!
昔からそうだよな。自分は良い子です、みたいなことばっかやりやがって」
「べ・・・別にそういうわけじゃ・・・」
「そうやって否定するところも変わってねぇよな!マジむかつくんだよお前!」
ハッと我に返った。
自分は何を言ってるのだろうか。
今の言い方はない。兄として、いや人間として
自分を心配してくれている人に向かって言う言葉ではなかった。
「あ・・・鷹尋っ・・・」
心が痛んだ。
雅鷹は咄嗟に家を飛び出した。
鷹尋の表情が、
とても悲しそうで、今にも泣きそうだったから。




